2002年1月19日のゲームの感想
今週のゲームの感想「モバイル・クオーターバックの完成形を見た」

 ディヴィジョナルプレイオフのゲーム、フィラデルフィアatシカゴのゲームを見ました。今シーズンのシンデレラチームは間違いなくシカゴでしょう。シーズン前誰もこの活躍を予想できなかったと思います。一方のフィラデルフィアについては私は地区優勝までは予想できていましたが、その割に成績が伸びなかった。私にとって原因を探る上でもどうしても見たかった2チームのマッチアップです。

 私は「モバイルQB」と呼ばれる、走れるQBがあまり好きではありません。そのプロトタイプはフィラデルフィアで活躍していた頃のランドール・カニンガムで、その後、デトロイトのロドニー・ピートなどのいわゆる「ブラックQB」(黒人QB)は多かれ少なかれこの流れをくむものでした。現在では、ピッツバーグのコーデル・スチュワート、デトロイトのチャーリー・バッチ、ミネソタのダンテ・カルペッパーとフィラデルフィアのドノバン・マクナブなどがいます。その一方で、83年組のデンバー、ジョン・エルウエーやサンフランシスコのスティーブ・ヤングなどは純粋な「モバイル」ではないものの「走れるQB」というのを売りにしていました。現在ではジャクソンビルのマーク・ブルネル、オークランドのリッチ・ギャノンなどがその流れをくみます。

 「走れるQB」の反対にいるのがいわゆるオーソドックスな「ポケット・パッサー」で、彼らはポケットの中にとどまってパスターゲットを探す。しかし走れるQBは自分からポケットの外に動いてディフェンスを混乱させパスターゲットを探すという違いがあるのです。古い人はやはりポケットパッサーこそがQBの王道であると信じていますし、私が古いかどうかは別にして私もそう思っています。

 「走れるQB」にはやたらに走りたがるのと本当に困った時に走るのと2タイプいると思います。若い頃のカニンガムやエルウエーなどは大変に視野が狭く、ターゲットが見つけられないが為に走りまくっていた印象があって、私は好きではなかったのです。視野の狭いQBはインターセプト率も高いですし。

 しかしそうした走れるQBも年齢を経ることによって、経験を積み、視野を広げたり、逆に走れる能力が衰えることによってQBとしての完成度を高めることもまた事実のようです。エルウエーなどはウエストコーストオフェンスの導入によって、彼のキャリアーの最後の2年で素晴らしい結果を残すことができました。またカニンガムは一度引退したにもかかわらず、現在も毎年どこかのチームにバックアップとして残っており、出場の機会があれば、きちんと役目を果たしているようです。

 そういった中で、フィラデルフィアのマクナブは3年目ながら、既にいままで挙げてきたQBたちに遜色のない能力を発揮しています。彼はもちろん走れます。足は早いです。しかし彼はきちんとディフェンスを勉強しており、視野も広く、とにかく最後までパスターゲットを探します。その過程で左右に動きディフェンスを混乱させ、最後まで誰も空かなければ自分で走ります。

 キャリアー12年のギャノンの域にマクナブはたった3年で達しているかの感があるくらいです。しかもマクナブはプレー中よく笑っています。プレーが成功した時よりもむしろ失敗した時に笑っているQBを私はあまり知りません。

 さて、ゲームの方は、まるで古いフィルムを見ているような、モバイルQBと堅いディフェンスのフィラデルフィア(80年代を彷彿とさせます)とインサイドラインバッカーを中心に思いラインとで強固なディフェンスのシカゴ(これ又80年代)の対戦。オールドファンも熱いものがこみ上げてきます。

 ゲームが始まると、とにかくフィラデルフィアのオフェンスが進むこと進むこと。ウエストコーストプラスモバイルですから正にヤングのいたサンフランシスコも真っ青の進軍ぶりです。シカゴのランディフェンスが堅いとなるとそのランを捨て石に右に左に振っておいて、要所でパスを決めます。

 しかし見方によってはそのオフェンスをFGだけで止めているシカゴのディフェンスも侮れないものです。7点を3点に止めるのはやはり意味があるのです。事実前半を終わって13−7とロースコアゲームになっています。TDをとられていれば、21−7でもおかしくなかったのですから。

 シカゴの泣き所はやはりオフェンスにあります。QBジム・ミラーが2Q開始早々にアホみたいなパスを投げてINT、しかもそのプレーで怪我をして退場。替わったシェーン・マシューズもいまいちピリッとしません。もちろんその一方フィラデルフィアも効果的にオフェンスを進めてはいますが、TDまで届かず、プレースタイルの確立が求められるような詰めの甘さです。

 後半に入りゲームは緊張感を保ったまま進みます。マクナブのパスがINTリターンTDされ、一時は13−14と逆転に成功するシカゴですが、次のシリーズであっさりTDで再逆転、シカゴがFGで追いすがれば、フィラデルフィアもFGで逃げる。といった感じ。

 そしてこのゲームのキーは訪れます。フィラデルフィアのキックオフをシカゴリターンチームがファンブル、これで得た攻撃シリーズをFGにつなげ、後は良いところなく結果終わってみれば33−19と完敗。

 シカゴは本当に目立つところがありませんでした。その一方でフィラデルフィアはきちんと結果を残すことができました。両チーム共にスーパーをとるにはまだ足りないところがあるかも知れませんが、それはスーパーを経験して初めてわかることです。シカゴは久しぶりのプレイオフでしたが、ディフェンスを中心によくチームがまとまっていると思います。この敗戦は必ず来年に生かされるでしょう。

 そしてマクナブは来週、何をやらかしてくれるでしょうか?ワクワクさせてくれるQBの出現に期待はふくらみます。


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