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コラム2月2日第37回スーパーボウル「己の影と闘ったオークランド」
「矛盾」という単語は中国の故事で、ある商人が「世界一強い矛(ヤリのことですね)」を売っていた。どんな物でも突き通すという。その口上が終わるやいなや今度は「世界一強い盾」を紹介しだした。どんな物からでも身を守れるという。それを聞いていた人が「じゃあ、そのヤリでその盾を突いてみてよ」といったのが「矛盾」の語源だといわれています。 世界一強いヤリ=オークランドのオフェンスは今シーズンナンバー1。そして世界一強い盾=タンパベイのディフェンスも同じくリーグナンバー1。その故事がいつの時代のものか分かりませんが、21世紀に入ってその答えが出るのです。しかもその場所はスーパーボウル。 ここ数シーズン、アンダードックというかシンデレラチームがスーパーに出場していましたが、今回は文句なく両カンファレンスの実力者同士の戦いになります。最高のスーパーボウルが期待出来るのではないでしょうか。そして私の答えは問われるまでもなく「タンパベイの勝ち」です。NFLはディフェンスのゲームだというのが私の持論ですから、ここでオークランドに勝たれると困るのです(笑)。どちらにしても久々に愉しいスーパーボウルになりそうだ、というのが戦前の私の予想でした。 しかし、私がスタッツをそれほど重要視しないことをちょっと脇に置いておいて、目を転じれば、タンパベイのオフェンスはリーグ24位、オークランドのディフェンスは11位。普通に考えればタンパベイのオフェンスではオークランドには勝てないことになるのです。ラスベガスのブックメーカーのオッズは3点差でオークランドだったそうです。 さて、ゲームです。衝撃的な幕開けを迎えます。最初のタンパベイのシリーズいきなりB.ジョンソンのパスはインターセプトされます。オークランドは返すシリーズでフィールドゴールの3点を貰います。しかし私はこの3点こそがタンパベイのガソリンになったと考えるのです。事実最初のオークランドのシリーズ、パスはそこそこヒットするものの、ランはシャットアウトしました。タンパベイのジャブは既に始まっていたのです。 2回目のタンパベイのシリーズ。前シリーズのインターセプトを受けてなのか、最初からなのかとにかくタイミングパスを織り交ぜるようになりました。B.ジョンソンは昔からプレッシャーに弱いQBで私はあまり評価していないのですが、タイミングパスを投げるいい腕は持っています。しかも目を見張ることにこの日のタンパベイオフェンスラインはとてもランク24位のチームとは思えない程いい仕事をします。真っ直ぐ押し、アングルで押し、パスプロもがっちり。私は実はこの日のMVPはオフェンスラインではないかと考えています。 第1Qはその後タンパベイが3点取り同点とした後パントの蹴り合いになります。セオリーからいえば自陣10ヤードから20ヤードの間でパントを蹴るタンパベイよりもハーフウェーライン上から攻撃を始められるオークランドの方が有利に見えます。しかし私はこの点も見た目とは違いタンパベイ有利な材料と考えるのです。 タンパベイオフェンスは言ってみれば押し込まれた状況からのオフェンスに慣れているといえます。しかしオークランドオフェンスはいい位置でボールが貰えるもののなかなかいつものようにボールが進まないのです。オークランドは知らず知らずのうちにジャブを貰っているのです。因みに1Q終了間際にギャノンは3ダウンで投げたロングパスをインターセプトされます。 第2Qに入りこのゲームを象徴する反則が出ます「ディフェンスのオフサイド・エンクローチメント」です。なんとオークランドはこの反則を6回も行います。91番のアップショウに至っては一人で3回もやっています。私はこれはB.ジョンソンのファインプレーだと思います。微妙なケイダンスによって彼は30ヤードも進み、しかもこれにより展開が微妙に変わった場面すらありました。 今まで意図的にコーチ・グルーデンの名前を出しませんでしたが、このコーチは本当に若いながらタヌキおやじです。私が今まで分析したように見た目は五分でもモメンタムは確実にタンパベイに向いたと見るや、タイミングパスに加えてリーバスフェイクやプレイアクションなどキーとなるプレーを織り交ぜてきたのです。ヴェテラン揃いのオークランドディフェンスは大混乱です。タンパベイはフィールドゴールで3点追加しまんまと逆転に成功しました。 このディフェンスのリズムの狂いがオフェンスにまでやって来ます。オークランドオフェンスはパスは出るもののランはほとんど出ず、しかもギャノンはこのタイミングで2回目のインターセプト。全くセーフティーが目に入っていませんでした。決して慌てる場面ではなかったのですが、私はギャノンを知り尽くしたグルーデンの罠があったのではと考えています。 とりわけビッグプレーはないのですが、2Qに入ると何故かオークランドは自陣深くからの攻撃が続いていました。1Qとはまるで立場逆転です。オークランドはオフェンスでもディフェンスでもいいところが全くないのに対し、タンパベイはとにかくラインがよく押せて、ピットマンのランが随所で出て、何事もなかったかのようにオルストットの中央ランでタッチダウンをとってしまいました。13対3です。 一つのプレーが大きなチャンスになったり、モメンタムを引っ張ってくるきっかけになったりしますが、次のオークランドのシリーズではその逆が起きました。3ダウンの厳しい状況でサイドラインに放られたパスを名手T.ブラウンが落としてしまったのです。それほど難しいパスではなかったのに、このことは単なる1つの落球ではなくオークランドが迷路にはまっていることを象徴していました。 ピットマンのブラストが出るので、プレイアクションも面白いように効いてきます。オークランドはジョンソンに対しブリッツをかけたいのでしょうが、この日のジョンソンはブリッツの裏にパスを通すのに何の苦労もないようでした。2Q終了間際に余裕のタッチダウンパスをヒットして、20対3。 因みに前半終了間際残り25秒で勝っているタンパベイがタイムアウトをとったのですが、これは嫌がらせだったのでしょうか? 後半はオークランドのオフェンスからスタートですが、まず目に付いたのはタンパベイが4メンラッシュを徹底しだしたことです。最初のシリーズは3&アウト。恐ろしいことに次のタンパベイのオフェンスシリーズはなんと7分52秒を使って73ヤードのタッチダウンドライブ。27対3になりました。 これでガックリ来たのかどうか分かりませんが、タンパベイの見え見えの後列重視の4メンラッシュに対し余裕たっぷりでパスターゲットを探せるはずのギャノンでした。オークランドはノーハドルで対抗しリズムを取り戻そうとするのですが、ギャノンまたしてもセーフティーが目に入らないのか、イージーなインターセプトを献上します。しかもリターンタッチダウンで34対3。 もうオークランドはどうしていいのか分からないようです。グルーデンの呪縛に捉えられたのでしょう。自慢のオフェンスは結局グルーデンが作ったものです。どんな点も知り尽くされているのです。タンパベイのラッシュは4人。後列重視とはいえ才能豊かなレシーバー揃いです。余裕を持ってターゲットを探していると、サック。この状況でも落ち着いているギャノンはさすがに並のQBではないですが、それでもタンパベイのディフェンスに絡め取られていく様は無抵抗も同然です。苦し紛れに投げたロングパスがようやく通りました。これはシステムの勝利ではなく個人技の勝利です。 そして最後のミスが出ます。コーチ・キャラハンここで2ポイントコンバージョンを指示するのです。私はこれは結果論ではなくリアルタイムで疑問でした。ここで点差は34対9ですから、25点差です。確かに2ポイントが成功すれば23点差になり、2ポイントとタッチダウンのセット3本で逆転です。しかし相手はタンパベイディフェンスです。確率としてどうでしょう? キャラハンは確かにギャンブラーでハスラーです。ここで2ポイントで無理矢理でもモメンタムを引っ張りたい気持ちは分かりますが、ここは1ポイント確実にとっておくべきだろうと思います。 次のタンパベイのオフェンスで3Qは終わりました。4Q最初のタンパベイのパントはブロックされ、オークランドにリターンタッチダウンを許しました。何やら波乱の予感です。しかし先ほど2ポイント失敗しているので、ここは是が非でも2ポイントをしなくてはならない状況に追い込まれています。結果失敗し、34対15。オークランド2点損しています。 次のタンパベイのシリーズではオークランドにつまらない反則が2回あり、結果フィールドゴールが失敗だったものの5分以上も消費されてしまいます。もちろんこのゲームのキーであったオフサイドの反則もきっちりやらかしています。 次のオークランドのオフェンス。もうプレー自体はヨレヨレなのですが、ベテラン揃いなので、気合いだけで進めていきます。思ったようにプレー出来ないながらも実力は並ではありません。伝家の宝刀ライスへ48ヤードのタッチダウンパスがヒットします。因みにライス自身8回目のスーパーボウルのでのタッチダウンです。 もうここまで来たら後には引けないのでやっぱり2ポイントを狙いますが、やっぱり失敗して、34対21。タラレバでいえばキックを蹴っておけば24点で10点差です。残り時間は6分。まだ何が起きてもおかしくない時間帯です。 タンパベイは時間を消費したいものの、執念にも似たドライブを行い、1度ファーストダウンを更新しますが、オークランドも踏ん張りパント。残り時間は2分45秒。2タッチダウン取れなくもない時間だったのに。 しかし2ミニッツを挟んでのドライブも虚しく、ギャノンの明らかなミスパスでインターセプトリターンタッチダウン。残り1分18秒で41対21、万事休すです。 最後のオークランドのオフェンスで本当に余計な、不運なインターセプトリターンタッチダウンがあり、結果48対21でタンパベイの勝利となりました。 私はこのゲーム結局オークランドはグルーデンの影に怯えて思うようにプレーできなかったのではと思います。またタンパベイはその知り尽くしたオークランドを絶妙なジャブでコーナーに追いつめ身動き出来ないようにしてしまったのです。本国では「チャッキー・ボウル」と呼ばれた今回のスーパーでしたが、まさにグルーデンのグルーデンによるグルーデンの為のスーパーボウルだったと思います。 恐らくオークランドはフィラデルフィアが出てきたら勝てたかもしれません。この世で唯一勝てない相手がスーパーボウルで立ちはだかったのがオークランドの悲劇だったといえるでしょう。自分のチームのアイデンティティであったヘッドコーチのグルーデンと闘ったオークランドはまさに自分の影と闘ったのです。 |
| バックイシュー | ||||
| #1 | 2001年11月4日 | DEN at OAK | 28対38 | モンタナ+ヤング÷2=ギャノン? |
| #2 | 2001年11月11日 | BAL at TEN | 16対10 | キックをおろそかにするチームは負けるのだ |
| #3 | 2001年11月18日 | NYJ at MIA | 24対0 | スタッツを信じちゃいけないよ |
| #4 | 2001年11月26日 | TB at STL | 24対17 | 恐るべしターミネーターオフェンス |
| #5 | 2001年12月3日 | GB at Jax | 28対21 | もっとも危険な男の復活 |
| #6 | 2001年12月10日 | IND at MIA | 6対4 | フットボールは一人でやるものじゃない |
| #7 | 2001年12月17日 | STL at NO | 34対21 | 熱いハートに、クールな頭脳 |
| #8 | 2001年12月29日 | BAL at TB | 10対22 | 鳴り物入りの重責 |
| #9 | 2002年1月19日 | PHI at CHI | 33対19 | モバイル・クオーターバックの完成形を見た |
| #10 | 2001年8月20日 | 2001年シーズンのスーパーボウル予想 | ||
| #11 | 2002年2月3日 | NE vs STL | 20対17 | 第36回スーパーボウル・予想外の大熱戦/見落としていたヘッドコーチの実力 |
| #12 | 2002年3月3日 | フランチャイズプレーヤーの移籍とフリーエージェントに思う | ||
| #13 | 2002年8月4日 | SF vs WAS | 7対38 | アメリカン・ボウル大阪・スパリアー旋風吹き荒れる |
| #14 | 2002年9月5日 | SF at NYG | 16対13 | Are you ready to Football? |
| #15 | 2002年10月2日 | NFLのトレンドチェック | ||
| #16 | 2002年10月21日 | SD at OAK | 27対21 OT | 天才のゲーム |
| #17 | 2002年11月30日 | GB at TB | 7対21 | 人間だもの |
| #18 | 2002年8月25日 | 2002年シーズンのスーパーボウル予想 | ||
| #19 | 2002年2月2日 | OAK vs TB | 21-48 | 第37回スーパーボウル・己の影と闘ったオークランド |
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