ディフェンスの理解
観戦する時にどこを見るか?

 ディフェンスのどこを見たらいいか?この問題は実に深遠です。私自身クォータバックがどこを見ているのかを聞きたいくらいです(誰か教えてください)。しかもひどい状況はテレビではセーフティーが写らないことが多いという点です。クォーターバックがデフェンスを読む際にキーになるセーフティーが写らないのです。しかもどうしてもオフェンスに、ボールに画面は集中します。ディフェンスのセカンダリーが写った時はすでにボールが到達している時で、もし抜かれていたらなぜ抜かれたのかという課程はわからずじまいです(リプレーがない限り)。

 ランプレーでのディフェンスのリアクションは見ていればわかります。男と男の力のぶつかり合い、ガチンコ勝負です。どちらが優勢で、どこで失敗したのか、どこが上手くいったのかはすぐにわかります。しかし近代NFLでの最高の攻防はパスプレーにあるのです。もう少し時代が進んでアメフトの放送もマルチアングル化するのを待ちましょう。


ディフェンスの理論

 ディフェンスの理論といっても、オフェンスの項同様大したことは書けません。しかもオフェンスは「数合わせ」が基本だと書きましたが、ディフェンスはそれすらも当てはまりません。数をオフェンスに合わせていてはやられてしまうのは、選手の能力が余程上回っていない限り目に見えています。

 本当に使い古されて手垢が付いている逸話ですが、新人のラインメンを面接するコーチがどこでオフェンスとディフェンスに振り分けるか?部屋に入ってきて「エクスキューズミー・サー」といって礼儀正しく椅子に腰掛ければオフェンス、ガムを噛み、つばを吐きながら椅子に座りどっかと足を組んだらディフェンス、といわれています。つまりオフェンスラインには規則正しくきちんと冷静に任務(アサインメント)をこなす人間が適していて、ディフェンスにはとにかく乱暴で(かなり無理してよくいえば)奇想天外に本能むき出しなワイルドな人間が適しているというわけです。

 つまりディフェンスは理論ではなく、反射、反応、読み(これは理論の範疇にはいるが)といったなかなか数字にしにくいものと、肉体的能力がものをいうのです。もちろん基本的な担当は決まっています。しかしオフェンスのやることがわからない以上、精密機械のようなディフェンスというのはあり得ないのです。目の前に現れた敵の攻撃に素早く反応するというのがディフェンスの要点なのです。

 しかしそうはいってもいくつかのポイントはあります。進ませない。痛めつける。驚かせる。ミスさせる。ミスリード(読み間違え)させる。奪い取る。パスを投げさせない、ランを出さない。これらの語を読んでどう思われますか?いくつかはディフェンスの基本的な用件ですが、近代NFLではディフェンスはとても積極的なのです。オフェンシブなディフェンスという矛盾した単語さえ使っても問題ないほどなのです。その最たるものが「ゾーンブリッツ」ですね。

 ディフェンスの基本的な考え方は「相手に得点をさせない」です。得点さえ取られなければ、自陣1ヤードまで攻め込まれても何の問題もないとさえ言えるでしょう。下で紹介しますが、時には点数を取られてもいいから時間を消費したいという場面もあることにはありますが、基本的には点数を取られないということです。

 野球では絶対に3アウト取らないと攻守交代はあり得ませんが、アメフトは違います。パスをインターセプトすれば、ファンブルしたボールをリカバーすれば瞬時に攻守交代です。こうした積極的なディフェンスを敷かなければ、近代NFLではオフェンスにズタズタにされてしまうのです。


シチュエーションの考え方(1)ダウン

 ダウンに対する明確な考え方というのはオフェンスよりもむしろディフェンスの方にあるといえると思います。つまり第1ダウンを3ヤードに押さえれば(平均的ラン獲得ヤードです)第2ダウン以降オフェンスの打つ手は限られてくるため、ディフェンスは相当有利に展開できます。逆に第1ダウンで5ヤードも進まれてはディフェンスはそれこそ守る一方で、7ヤード以上進まれると働いていないも同然です。

 この考え方は第1ダウンはラン、第2ダウンもラン、それでも残れば第3ダウンはパスという古いアメフトのシナリオに基づいています。その考え方の裏をついたのが、ウエストコーストオフェンスでしたね。最初のパスで5ヤード取ってしまえば、あとはランもパスもロングもショートも思いのままです。ディフェンスは為す術もなくフィールドに立ちつくすのみです。しかもウエストコーストオフェンスはパスキャッチのあと、ディフェンダーがミスをすればあっという間に15ヤードも30ヤードも進んでしまいます。

 最もシンプルにそのウエストコーストに対抗するには、第一にブリッツによる混乱を目的としたパスラッシュ、そしてゾーンによりパスをキャッチされてもそれ以上進ませないディフェンスの二点が上げられると思います。これがゾーンブリッツの考え方の基本にあると思います。

 オフェンスは第3ダウンまでに10ヤード進めばいいですが、ディフェンスはとにかく第1ダウンのランは3ヤードに押さえること、パスは通さないこと、これが基本になります。考えてみるとオフェンスの剣が峰は第3ダウンですが、ディフェンスは毎プレーが剣が峰なのですね。


シチュエーションの考え方(2)時間

 ディフェンスによる時間のコントロールというのはどういう事でしょう。基本的にはディフェンスがフィールドに長くいればいるほどオフェンスの時間は少なくなります。状況は有利とはいえないでしょう。

 味方チームが勝っている時に、敵がなるべく時間を止めて追っかけてくる時には、なるべくインバウンズで選手をタックルします。インバウンズでタックルすれば時間は止まらないからです。ですからコーナーバックはアウトなどのパターンをカバーすることになります。

 同様に味方チームが勝っている時は、相手に点さえ取られないで時間を消費させるためにわざとゆるめのディフェンスをすることがあります「プリペンドディフェンス」といって、パスラッシュは3人くらいにしてパスを投げさせます。しかし後列重視にディフェンスを敷き、パスが通ればすぐにタックル(時間は止まってしまいますがパスをカットすることもします)をします。セーフティーなどは最初から10ヤード以上下がって待っていて、とにかく確実にタックルに行こうとします。

 アメフトは点数との戦いですが、一方で時間との戦いです。しかも重要なことは相手が得点をすれば、味方が攻撃をできるわけです(オンサイドキックといって再び攻撃チームが攻撃権を得ようとする方法もありますが、とにかく得点したあとはキックをしなければならない)。20点以上点差があれば、1つくらいタッチダウンを取られても逃げ切れる計算があれば、なるべく時間をかけて攻めてもらっても勝ちは一緒です。つまりこのときは「一発」にだけ気をつけて、相手に(わざと)「ボールコントロールオフェンス」をさせるのです。


観戦の肝

 テレビ観戦時は前述の通り、ディフェンス全体が写らない場合が多いです。その少ない情報で(しかもオフェンスの動きも見ながら)ディフェンスを判断するのは相当忙しいでしょう。しかしそれでもディフェンスの動きから目は離せません。

 実際ランプレーの時はディフェンスの動きはほとんど見るべきものはありません。それぞれが己の本能に向かってボールキャリーをタックルに行くので、頭を使うより、見て感じることの方が重要だし、その時はオフェンスを見ていることが大切だからです。

 しかしパスプレーとなると違います。クォータバック同様どこにあきがあるのか?ゾーンなのかマンカバーなのかを一緒に判断する楽しみがあります。まずオフェンスがセットしたら、ディフェンスはフロントに何人いるかを数えます。そしてオフェンスの項で書いたように、オフェンスがマンインモーションしてそれに誰かがついていけばマンツーマン、セットしていた人間が下がればゾーンディフェンスだと判断できます。

 次に見るのはブリッツに入るか入らないかです。入るなら何人入るのか?簡単に分かり易くいうと4人のパスラッシュに3人ブリッツ入れば、もう絶対にディフェンスはマンツーマンなわけです(残りの4人ではゾーンは敷けない)。

 そしてボールがスナップされれば本当にブリッツが入ったのか(ブリッツを入れるふりをしてゾーンに戻るということはままある)?パスラッシュは何人か?本当にゾーンか?マンツーマンか?恐らくここまでが限界でしょうね。オフェンスの動きをチェックしてここまでディフェンスを見ることができればほとんどプロのコーチですもんね。私もビデオに撮らない限りはここまでは頭に入ってきません。

 しかしディフェンスの動きが理解できていれば、クォータバックのパスが投げられた瞬間に通るか通らないかわかる時もありますし、通らないと思ってももの凄い個人技でパスをキャッチした場合に「ディフェンダーのせいじゃないよ」とテレビの前で慰めてあげることも出来ます。 以上でディフェンス編も終了です。


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