オフェンスの理解
まずはポジションの理解

 まず何もいわずに下の図を見てください。ボールはCと書いた四角の上にあって、上に向かって攻撃する体型です。これを「プロTフォーメーション」といいます。ボールのある位置から左右に水平にラインを引きます。このラインを「スクリメージライン」といいオフェンスはそこに1列に並びます。ここでどうしても覚えなくてはいけないルールがあります「オフェンスはスクリメージラインから1ヤード以内に最低7人が並ばなくてはいけない」というルールです。実際は真横に並んでいなくて結構くさび形のようになっていたりします。因みにスクリメージラインを越えると「オフサイド」という反則です。

 ではまず略号に従って各ポジションの役割を覚えましょう。


センター

 Cと書かれた真ん中の四角は「センター」というポジションです。文字通りラインのセンターに位置しています。主な役割は「スナップ」というクォーターバックへのボールを渡す役目があります。その際ルールで「センターの股をくぐらせること」という一文があります。ですから、センターは(右利きの場合)大抵四つんばいになり、右手でボールを持ち左手で身体を支えます。クォーターバックが数回「ハッ、ハッ」と声をかける(ケイダンスという)ので、決められた回数(予め打ち合わせしておく)でボールをスナップします。クォーターバックは大抵センターのお尻に手をつけてボールがスナップされるのを待ちます。

 アメフトのポジションに重要でないものはありませんが、センターは特に重要です。毎プレー必ずボールに触りますし、クォーターバックの真ん前にいます。パスプレーではクォーターバックを守るためにパスプロテクションを行い、ランプレーでは真ん中から(プロではほとんど4−3ディフェンスなので)ディフェンスの要であるミドルラインバッカーと対峙しなくてはいけません。

 特に記しておくこととして、アメフトのゲームでよく「右」とか「左」などといいますが、これはセンターを中心に、センターの右を右側といい、そちらに走るプレーは右へのランプレーといい、逆は左のランプレーになります。パスも同様です。因みにスクリメージラインよりディフェンス側を「ダウンフィールド」といい、ランプレーはそこを目指してのプレーということになりますし、オフェンスラインはダウンフィールドに出て様々なブロックをします。


ガード

 センターの横にいるGと書かれたポジションは「ガード」です。右のガードはRGと書いてライトガード、左のガードはLGと書いてレフトガードとも呼ばれます。アマチュアやカレッジでは左右両方のガードをする場合もありますが、プロの場合は専門性が強いので何か理由がない限りは逆サイドにはいることはありません。

 ガードの役割はとにもかくにもブロックです。ディフェンスのフォーメーションによってブロックする相手(この役割をアサインメントという)が変わりますが、ランでもパスでもとにかくブロックです。しかもガードは左右に動いてブロックする機会が多いので、敏捷性の高い人が選ばれるようです。

 ガードで特に注目すべき動きは2つあります(本当はもっとあるのでしょうが)。1つはプルアウトブロック、もう一つはトラップブロックです。両方ともガードの仕事の中では極めて重要です。

 プルアウトブロックをする時はスナップバックと同時に2人のガードは横を向いて走り出します。後ろから走ってくるフルバックとテールバックの前でダウンフィールドに出てブロックするのが役目です。下の図はオフセットアイフォーメーションの右スイーププレーです。名称はともかく図の赤い両ガードに注目して下さい。

 下手くそなアニメで申し訳ありませんが、ポイントは両ガードがタックルの(この場合ライトタックル)の外側に走り込んでダウンフィールドブロックを行う点です。

 トラップブロックは主にパスのシチュエーションやディフェンスのブリッツに対抗する手段のようです。例えばセンターがディフェンスのレフトエンドを右のガードがディフェンスのレフトタックルをブロックします。間を抜けて走り込んできた左のアウトサイドラインバッカーは誰もブロックがいないので意気揚々と突進してきます。そこへ真横からガシーンと左のガードがプルアウトしてブロックします。予想もしないところからのブロックに驚くのでトラップ(わな)ブロックというわけです。

 ガードというポジションは大きな体と敏捷性そして多彩なブロックを繰り広げる知性が要求されます。ほとんどスーパーマンといっていいでしょう。しかしそれなのにこのポジションはゲーム中ボールに触ることが皆無です。アメフトを何十年もやっていて1回もボールを触ったことが無いというのがこのポジションです。


タックル

 ガードの両脇のTと書いてあるポジションは「タックル」といいます。右がライトタックル、左がレフトタックルです。このポジションは近代NFLでは非常に重要なポジションです。彼らと対峙するディフェンシブエンドやアウトサイドラインバッカーが大型化ししかもスピードを増してきているからです。

 一昔前はタックルといえばとにかく大きければよいという時代もありましたが、最近ではとにかくパスプロテクションが上手でないといけなくなりました。本当はこのあと紹介するエンドというポジションを含めて「オフェンシブラインマン」なのですが、特にセンター、ガード、タックルは常にこの5人がこのように並ぶので(実はアマチュアでは違う並びもしますし、プロでもたまーにトリックプレーをしますが)特に「インテリアラインマン」と呼びます。一番最初の図で赤くなっている5人がそうです。インテリアのように不同でそこにあるからですね。

 またオフェンスラインはボールに触ることが禁じられています(スナップ時のセンターを除く)上図の赤い5人はもしパスプレーの時にクォーターバックが投げたボールが最初にオフェンスラインのヘルメットや防具に触れただけで「フォワードパスへの不正なタッチ」という反則をとられます。また同様にパスプレーの時にこの5人はパスが投げ終わるまでスクリメージラインより前に出てはいけないことになっています。「無資格レシーバーのダウンフィールド進入」という反則になるのです。

 本当はこのラインの説明のところで、様々なブロックのテクニックについて説明しなくてはいけないのですが、このサイトが目的とする「テレビ観戦」の際にはあまり役に立ちません。専門書を読まれるか、質問のメールをいただければお答えします。ランプレーに関してはとにかく目の前のディフェンスをどれだけ押してダウンフォールドに進み、ランナーのためにスペース(これを穴またはホールという)を開けられるかが勝負です。しかし度々出てきましたようにパスプレーの時の「パスプロテクション・ブロック」についてだけは説明しておこうと思います。

 上で説明したようにパスプレーの時にはラインはスクリメージラインより前に出ることはできません。ではどうするか?スクリメージラインより2、3歩下がって、立ち上がり両手を前にして迫り来るディフェンダーをブロックするのです。オフェンスラインは自分の身体の幅より手を広げてブロックすることは禁じられていますし、掴むこともできません。そこで様々なテクニックを用いてブロックするのですが、ランプレーのダウンフィールドブロックとの違いはとにかくディフェンダーとクォーターバックの間に自分の身体をおく、ということです。因みにパスプロテクションの際にはオフェンスラインは逆U字形に並んで、ポケットと呼ばれるスペースを作りその中にクォーターバックを入れて守ります。


タイトエンド

 タックルの両脇には「エンド」というポジションがあります。タックルにくっついているのがTEと書かれた「タイトエンド」です。上図のように右につけば「右タイトエンド」、左につけば「左タイトエンド」です。

 上図ではラインの一番左に少し離れてSEと書いてありますが、これはタイト(くっついた)エンドに対してスプリット(離れた)エンドといい、近代フットボールではワイドレシーバーといわれるポジションになっています。スプリットエンドをタックルにくっつけて両側にタイトエンドをつける「ダブルタイトエンド」というフォーメーションもありますが、タイトエンドとスプリットエンドは体型などが全然違いますし、単にくっついたり離したりすればいいというものではなく、全く違う選手がそのポジションに入ることになります。

 このポジションはそれほど目立ちませんが、実はオフェンスの花形ポジションです。いろんな事ができるからです。先ほど紹介したインテリアラインマンはボールを持って走ることができませんが、タイトエンドはボールを持って走ることもできるし、ダウンフィールドに出てボールをキャッチすることもできます。ランの時はリードブロッカーとなることもできますし、パスの時はパスプロテクションをすることもあります。


ワイドレシーバー

 上図オフェンスラインの左端のSEがスプリットエンドということは説明しました。このスプリットエンドと右側に一人だけいるFLと書かれた「フランカー」のポジションを「ワイドレシーバー」と呼んでいます。実際にはテレビ中継でもスプリットエンドやフランカーという言葉はほとんど出てきません。しかしそのポジショニングや役割など、フランカーとスプリットエンドの違いを分かっていればワイドレシーバーというポジションに対する理解が深まるので敢えて書きました。

 スプリットエンドとフランカーの大きな違いはスプリットエンドはエンド(つまりラインの最後)ですから、スクリメージラインに並んでいなくてはいけません。インテリアラインマンと離れていようと関係ありません。ボールに対して水平にサイドラインまで引いたフィールドの端から端がスクリメージラインです、とにかくそのラインに並ばなくてはいけません。

 一方フランカーはラインマンではないのでバックスです。バックというからにはラインマンの後方にいる人間全員を指すのが本則です(テレビ中継ではスプリットエンドもバックスとしています)。つまりスプリットエンドがスクリメージラインに並ばなくてはいけないという制約を受けているのと反対に、フランカーは「マンインモーション」という動きができる点が大きく違うのです。

 マンインモーションはスナップ前にバックスのうち一人だけ(ランニングバックとフランカー及びスプリットバックなど)、スクリメージラインに対して水平か後ろ向きに動いてフォーメーションを変更することで、このことによりディフェンスのカバーの仕方を見破ったり、ディフェンスのアサインメント(誰が誰にタックルするか、どの穴をふさぐかという担当)を混乱させたりする役目があります。

 さて、本来の役目としてはとにかくダウンフィールドに出てパスをキャッチするという役目があります。昔はすばしっこくてボールをキャッチするのが上手な選手が選ばれていましたが、近代フットボールでは、まず長身であることが求められているようです。

 このワイドレシーバーの動きは「パスパターン」または「パスツリー(その名のようにパターンが木の枝のようになっている」と呼ばれるものに集約されます。でなければクォーターバックはコンマ数秒でワイドレシーバーが走る先を予測してボールを投げることは不可能なのです。予め決められたパターンを走ることによってクォーターバックは人のいないところにボールが投げられるのです。

 ヤードラインとあまりマッチしていませんが(実際はこんなに深いパターンではないようです)番号順に解説します。このパスツリーはチームやプレーによって曲がる地点が違いますし、右と左では鏡のように反転させれば違いはないので、基本的にこういう走り方をするということだけ覚えてください。

1は「アウト」のパターン、適当に走り決められたところでサイドラインに向かうパターンです。
2は「フライアウエイ」とか「ストレート」というパターンで、とにかく縦に長く走ります。
3は1の反対で決められたところで内側に切れる「イン」のパターン。
4は「カール」円弧を描いてアンダーニースに切れ込んでいきます。
5は「スクエアイン」真っ直ぐ走りアンダーニースに走り込みます。
6は「ルックイン」スタートと同時にインに切れ込んでいきます。
7は「クイックアウト」時計を止めたい時とか、ファーストダウン更新に必要なショートヤードを獲得する時のルートです。
8は「ポスト」ゴールポストに向かって走っていきます。
9はその反対の「コーナー」で、エンドゾーンのコーナーめがけて走ります。
10は「フック」進んだ先で円弧を描きます。
11は「カムバック」決められたタイミングで急に反転して戻ります。
12は「クロス」アンダーニースに切れ込みそこから反対サイドのコーナーめがけて走ります。

 レシーバーはタイミングプレーの時にいかにディフェンダーに邪魔されずにパスツリー通りに走れるかが要求されます。またこのツリーはレシーバーだけでなく、ダウンフィールドでレシーバーになるタイトエンドや、ランニングバックもこの考え方でルートを取ります。

 スリー(3)ワイドレシーバー(つまりパス攻撃を重点的に行う時)のフォーメーションとの時は通常はフルバックを外して、スロットバックというポジションでワイドレシーバーを追加します。

 更にフォー(4)ワイドレシーバーの時はタイトエンドを外してスプリットエンドを一人増やしたり、ランニングバックをレシーバーにしたりもします。

 ワイドレシーバーを使ったプレーで特に面白いのが「リバースプレー」というプレーです。ガードのところで習った「プルアウトブロック」のように、ワイドレシーバーがスクリメージラインに平行に走り、オフェンスラインが押す方向とは逆の方向にボールを運ぶものです。

 勘の良い方ならお解りだと思いますが、更に「ダブルリバース」というプレーがあります。左右両サイドのワイドレシーバーが共にボールに向かって進みプレー全体を左から右に展開すると思わせてやっぱり左に進むというもの。このワイドレシーバーの動きはかなり変わっているので、サイドラインで見ているより、テレビで見ている時の方が早く気づくと思います。


クォーターバック

 QBと書かれたクォーターバックはオフェンスの花形であり、司令塔です。なぜクォーターバックというかというと、ハーフバックとセンターの間にいるので4分の1のクォーターバックといわれています。

 一昔前はプレーを選択する「プレーコール」というのはクォーターバックの仕事でした。いまでもラインがセットしてからディフェンスのフォーメーションを読み、予め決めていた攻撃内容ではあまりゲインが望めないという状況では「オーディブル」といって寸前にプレーを変更することがあります。

 少し前はそのオフェンスの交代の選手が(大体毎プレー選手は交代する)サイドラインからの指示をクォーターバックに伝えるという方法がとられていたようです。しかし最近ではプレーコールはサイドラインにいるオフェンスコーディネーターが無線でクォーターバックのヘルメットに出すというのが一般的なようです。

 クォーターバックの仕事は多岐に渡っていますが、順番に説明しましょう。まず決められたプレーを「ハドル」でオフェンスのメンバーに伝えます。「ハドル」はルールで「スクリメージラインから10ヤード以内で行うこと」と決められていますので、場合によっては声がディフェンスに聞こえることもありますし、ハドルでクォーターバックが喋っている口の動きを目のよいディフェンダーが読んでいたなどということもあったようです。ですから普通プレーは暗号で伝えられます。

 この暗号はチームによって色々付け方が違うようです(自分で考えても結構楽しいですよ)。伝える内容はランプレーの場合「フォーメーション」どの体型で行くか、「ボールを受ける選手」、「どちら側のどの穴に向かって走るのか」、「どういうプレーなのか」、「カウントはいくつか」、「オーディブルのキーは」ということが多いようです。

 例えばいま私が適当に考えたものですが、「左ワイドインディゴ、28、シエラ、2、グリーン」という暗号があったとして、クォーターバックはこれをオフェンスのメンバーに伝えます。意味は左にスプリットエンドの出た(左ワイド)、アイフォーメーション(Iをインディゴに置き換えた)、28はハーフバックが20でフルバックが40と決めておき、センターと左ガードの間の穴を「2」センターと右ガードの間の穴を「3」と決めておき、8は左のエンドの外のプレー、シエラは「スイープ」の暗号で、次の2はカウント2でスナップを行うという意味、最後のグリーンはオフェンスラインがセットしたあとで、クォーターバックがディフェンスのフォーメーションを見て、自分たちの攻撃が見破られていると感じたら、プレーコールを「オーディブル」という予備のプレーに変更する時のキーで「グリーン」と言ったら「オーディブル」を実行するという意味で、その際には予め「グリーン」のオーディブルはフルバックが2の穴をブラストプレーで突っ込むという約束がしてあります。

 こうしたプレーの選択はチームが持つ「プレーブック」によって行われます。プレーブックはそれぞれのチームで違うし、同じフォーメーションでも呼び方が違うし、コーチが変われば新しいプレーブックを覚えなくてはいけません。ラインの選手はいくつかのパターンを覚えればあとはそのバリエーションですむこともあるでしょうが、クォーターバックは全てのプレーを覚えなくてはいけませんし、NFLだと200〜300ものプレーを覚えなくてはいけないようです。ただし1ゲームでプレーするのは多くても40種類のプレーくらいのようです。

 ハドルがとけてオフェンスラインがセットします。クォーターバックはディフェンスのフォーメーションを読んで、決めたプレーで行けるかを判断します。NFLのディフェンスはとても複雑なので、ルーキーのクォーターバックはよく読み違いをしてサックされたりパスをインターセプトされたりします。

 ランプレーの時は仕事は割とシンプルです。後ろから走ってくるランニングバックにボールをハンドオフ(手渡す)か、ピッチといって後ろ向きに放り投げて渡し、あとはせいぜい「あとフェイク」といってパスのふりをする、くらいなものです。ただしプレーの選択によっては自らダウンフィールドブロックに行かなくてもなりませんが、NFLのクォーターバックは怪我しないことを第一に求められますので、そういうことは少ないです。

 クォーターバックの一番の見せ場はやはり「パスプレー」でしょう。パスプレーの時のクォーターバックの動きはスナップを受けると「ドロップバック」といって真っ直ぐ下がるというのが一番シンプルな動きです。オフェンスラインが作ってくれた「ポケット」の中であいているレシーバーを捜しパスを投げるのですが、このドロップバックの際には、3歩、5歩、7歩のドロップバックの3種類があります。普通スナップバックを受けて最初に下がる一歩は利き足ですから、右利きのクォーターバックの場合は右足です。すぐにお解りのように、2歩下がると左足が後ろになるのでそちらに体重を乗せてボールを投げることは難しいのです。ですからドロップバックは3歩か5歩か7歩なのです。

 実際は1歩下がって投げるというもの凄く早いパターンもないわけではないですが、ちょっと例外っぽいです。また11歩以上下がる場合もありますが、それはディフェンダーに追いかけられての場合とポケットから出た場合ですので、この「ドロップバック」の際には含みません。下図の「1」の真っ直ぐ下がるのがドロップバックです。

 そのほかにクォーターバックの動きのパターンはいくつかあります。まずは直線的に斜め45度に下がっていく「スプリントアウト(上の図の2、左右はどちらでも同じ)」、円弧を描きながらポケットの外に出ていく「ロールアウト」(上の図の3、左右どちらでも同じ)この2つと先のドロップバックを覚えておけば差し支えないと思います。

 レシーバーの動きはハドルで伝えてあるので基本的にはタイミングさえ捕まえておけばどこにいるのかは大体は分かっています。あとはそのレシーバーがフリーに、つまりディフェンダーのきついマークを受けていないかどうかの見極めが必要になります。マークされていても通るようにパスを投げるべきか、それともフリーのレシーバーを捜すべきか、時間はほんの3、4秒です。

 パスを受けることができるプレーヤーはフォーメーションにもよりますが、4人か5人はいるはずです。全員を捜すことは現代NFLではほとんど不可能です。ではどうするか?初歩的には第1レシーバーを捜し、ダメだったらパスを投げ捨てるのです。投げ捨てるというのはサイドラインの向こうに投げてディフェンダーに絶対にインターセプトされないように投げることをいいます。さすがに第1レシーバーだけしか見つけられないようではNFLのクォーターバックは務まりませんので、優れたプレーヤーほどフィールドに対する視野が広く多くのレシーバーを見ることができます。そうしたプレーヤーはインターセプトが少ないのですぐに分かります。

 クォーターバックにももの凄く多くの能力が要求されますが、ここでは最後にクォーターバックの最大の仕事ともいえるボールを隠すということについて説明したいと思います。

 アメフト観戦の最大の問題点はボールがどこにあるかわからないということに尽きると思います。それは至極当然の話で、クォーターバックはボールを隠すことに一生懸命で、見つからないように様々な方策を巡らすのです。

 そういう作業の集大成が「フェイク」と呼ばれるだましプレーで「プレイアクション」というプレーを多く耳にします。「プレイアクションパス」は、ランニングバックにボールを渡すふりをしてパスをするというプレーで、特に「ブーツレッグ」というプレーは有名です。ブーツレッグとはボールをランニングバックにハンドオフしたように見せかけて実はクォーターバックがキープしランニングバックが右に走れば、クォーターバックは左にロールアウトしてからパスを行うというフェイクプレーです。こういう名前のおもしろさもアメフトの楽しみの1つですが、禁酒法時代(1920年代のアメリカではアルコールは法律違反だったのです)にブーツにお酒を隠して持ち歩いたことからのこの名前が付いたそうです。

 このときに実際はクォーターバックは1回ランニングバックの腕にボールをハンドオフするように習うようです。そしてハンドオフと同時にボールを腕から抜き取り「首を下げたまま」方向を転じてロールアウトです。この首を下げたままというのが基本で、基本に忠実にやられるとTVのカメラでさえフェイクに騙されることがあります。


ランニングバック

 いよいよオフェンスの選手も最後になりました。HBと書かれた「ハーフバック」とFBと書かれた「フルバック」はランのスペシャリスト、ランニングバックです。ランニングバックには上の2つの他に「TBと書かれたテールバック」、「UBと書かれたアップバック」、「ランアンドシュート」というフォーメーションでは「SB(上のスプリットバックとは違う)と書いてスーパーバック」などと呼んだりもします。

 どれもフォーメーションの中での呼び方ですので、基本的にそれほど違いがありません。主にフルバックが自分で持って走るより、ハーフバックのためのリードブロッカー(前を走ってブロックする人のこと)としての役割も大きい、という点にさえ注意すれば、ハーフバックもアップバックもテールバックもいる場所が違うだけで選手は同じ人だったりします。

 因みにテールバックと呼ばれている時はボールから7ヤードも後ろにセットします。このことによりスクリメージラインに到達した時にはもの凄いスピードと勢いをつけて走るわけです。またテールバックに入った時のプレーはボールがハンドオフ(下で説明)ではなく、ピッチされてよりスピードを重視したりするなど、細かくいうと意味が少し違うことも記しておきます。

 ただし近代フットボールでは、ランニングバックといえどもただ走ればいいというわけではありません。第3、第4のレシーバーとしてダウンフィールドに出る場合もあります。またハーフバックはパスプロテクションに参加したりもします。

 さてランニングバックの走る場所も予め「ある程度は」最初に決めます。もちろんプレーの選択は「左のラン」なのに、ボールをもらった瞬間にランニングバックの「カン」で右に進む場合もあります。しかしこれはほとんどの場合失敗することが多いです。アメフトのフォーメーションやプレーブックというのは計算され尽くして作られているからです。

 センターとガードの間を走るのが1の「センタープランジ」(またはガードとガードの間、センターの後ろを走る)、ガードとタックルの間を走るのが2の「オフガードプレー」、タックルと(タイト)エンドの間を走るのが3の「オフタックルプレー」、エンドの外側を走るのが4の「オープンプレー」ということになりますから、理論上はこの4つのプレーを左右に走るので8つのパターンしかないことになります。方向は8つですが、走り方に様々な工夫があるのです。

 一番よく見るのが「ブラストプレー」です。これは前にブロッカーを置いてそれぞれの穴に向かって突っ込むもので、何でわざわざ密集したところに突っ込むのかと思われるかも知れませんが、こうしてディフェンスの「壁の強度」をはかることがゲームで(特に序盤)は大切です。どこが強いのかどこが弱いのか、その後のプレー選択について必要ですし、こういうプレーでディフェンスの注意をより前に、より真ん中に集めることも大事です。

 次によく見るのが「スイーププレー」です。ガードのプルアウトブロックを使ってなるべく多くのブロッカーをハーフバックの前に走らせてディフェンダーを「掃くように、掃除をするように(スイープ)」蹴散らしていくことからこの名前が付きました。ブラストプレーはセンターからエンドの間を走る時に使いますが、スイーププレーはオープンを走る時に使います。

 一瞬パスプレーのように見せかけて、ドロップバックしてきたクォーターバックからおもむろにボールをもらいタイミングをずらして走り出すプレーを「ドロープレー」といいます。このプレーの肝はオフェンスラインが「パスプロテクション」を1瞬だけ行うことにあります。つまり1歩2歩下がることによってディフェンダーは「パスプレーだ」と判断します。こうしてディフェンダーがパスに備えて下がったところにワンテンポ遅れてランナーがボールを持って走ってくるので、大きなゲインが期待できるわけです。当然の事ながらランニングバックにボールが渡った瞬間にオフェンスラインは(後ろを振り向けないのでタイミングを計って)ダウンフィールドブロックに出ます。

 上記三つのプレーは基本的にクォーターバックからランニングバックへボールがハンドオフ(手渡し)されます。ただし素早いスイーププレーの時やワンバックのテールバックに入っている時などはハンドオフまでに時間がかかることを嫌うために「ピッチ」といってクォーターバックがボールを後ろに向かって放り投げるようにします。後ろ向きなのでこれはパスには当たりませんので、オフェンスラインは余裕でダウンフィールドブロックに行けます。

 このほかランニングバックはパスプレーで第3、4のレシーバーとなる場合があります。通常パスプレーの時にクォーターバックに与えられた時間(パスプロテクションが持つのは)数秒しかありません。その間にワイドレシーバーがマークされている時にはフリーになっているランニングバックのバスが選択されるのです。当然ランニングバックにもパスパターンがありますが、基本はワイドレシーバーと一緒です。

 因みに最初から決めてランニングバックへの(例えばスクリーンパス)パスでない限りはランニングバックにパスをする局面というのは切迫している場合が多いです。この場合のランニングバックを「セイフティーバルブ」と呼びガス管の「安全弁」に例えて、プレーを「逃がす」役割を果たします。

 最後にランニングバックを使った非常に面白いパスプレーを2つ紹介します。1つは「オプションパス」でもう一つは「フリーフリッカー」です。オプションパスは見た目にはいろんなパターンがあるのですが、パスプレーですからオフェンスラインはダウンフィールドには出られません。クォーターバックが真後ろのランニングバックにピッチバックして、そのボールをランニングバックが持って走る(おっ、ドロープレーか?とディフェンスに思わせる)と思いきやおもむろにそのボールをパスします。ドロープレーを数回繰り返したあとなどには効果があると思います。なぜ「オプション」というかというとそれは「パス」をするか「そのままキープして走るか」という2つのオプションをランニングバックが選択するからです。

 もう一つはその「オプションパス」をもう一捻りした「フリーフリッカー」です。クォーターバックがランニングバックにピッチバックします。ランニングバックはセンター方向めがけて走り、クォーターバックはランニングバックの位置くらいまで下がります。しかしランニングバックはスクリメージを越える前にくるりと後ろを向いて更にクォーターバックにピッチバックします。ボールを受けたクォーターバックはパス(大抵はロングパスになる)を投げてプレー完了です。後ろ向きのパスは何回してもいいというルールを逆手にとったプレーで、ボールがピッチされるたびに跳ねているように見えるので「蚤が跳ねる」という意味の「フリーフリッカー」とつきました。

 これでオフェンスの各ポジションの理解は終了しました。


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