| オフェンスの理解 |
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観戦する時にどこを見るか?
七面倒くさいことはどうでもいいけど、とにかく観戦する時にはオフェンスのどこを見たらよいのか?この質問にすぐ答えられればいいのですが、私自身模索している最中ですし、実はどこを見ていてもいいというのが正解かも知れません。しかしそこに至るまでにはいくつかのキーがあると思います。この項の最後に私なりの「観戦の肝」を書いておきますが、その前にいくつか理論的なお勉強もしてみましょう。 オフェンスの理論 オフェンスの理論といっても戦術の専門書などに書いてあるようなことを書くつもりありません(かけないのです)。誰が考えても当たり前の考え方に基づいてオフェンスは展開しますが、プレーのテンポが速いので(プレーを分析しようと思ってみていると本当に時間がありません)考える間もなくゲームは進んでしまいます。しかし予め基礎的な考え方が頭に入っていれば見る時に助けになります。そうすればプレーの流れが読めて、ゲームの展開が理解できるようになります。考えると「理論」なんてのはちょっと大風呂敷ですね。ここでは分かり易く2つの考え方を説明します。1つはボールの進め方、1つはディフェンスとの数合わせです。 オフェンスは1回の攻撃で4ヤード進むことを目的としています。3つのダウンまでしか攻撃できないことを考えると、10÷3で1回当たり3.33333ヤード進まなくてはいけません。一応1ヤードは切り捨てるとして、3ヤードでは足りないので、1回当たり4ヤードとなります。ランでもパスでも1回4ヤード以上は取れるようにデザインするのが基本的な考え方です。 以前は、パスの場合は10ヤードは取ると考えるのが普通でしたから、基本的には1ダウンと2ダウンはランで、足りない分を第3ダウンのパスでというのが保守的な考え方でした。しかしここ20年間は新しい考え方のオフェンスがリーグを席巻しています「ニッケル&ダイム・オフェンス」です。 ディフェンスラインとディフェンスバックの間のアンダーニースといわれるゾーンに、ルックインパターンで走り込んでくるレシーバーにタイミングよくパスを投げるとそのパスをカットするのはほとんど不可能です。ディフェンダーは6ヤード以下のパスというのはランと同じ効果しかないのでそれを止めるようにデザインしたフォーメーションを持っていなかったからです。もちろんフィールドの真ん中ですから、パスをキャッチした途端にディフェンダーには止められます。しかし6ヤードを止めるように考えているディフェンダーですから、5ヤードのパスは逆に通って当たり前なのです。もしディフェンダーがタックルミスでもしようものなら10ヤードは進める計算になります。このオフェンスは5と10をアメリカの5セント硬貨と10セント硬貨になぞらえてそれぞれの愛称である5セントのニッケル(材質がニッケル)と10セントのダイム(ラテン語で10を表す)から取ってニッケル&ダイムオフェンスと呼ばれました。 ニッケル&ダイムオフェンスを最初にNFLに取り入れたのはサンディエゴ・チャージャーズのヘッドコーチであった、シド・ギルマンだといわれており、それを完成させたのがスタンフォード大のヘッドコーチからサンフランシスコ・49ersのヘッドコーチになったビル・ウオルシュです。現在では彼のオフェンスは「ウエストコースト・オフェンス」と呼ばれ彼の弟子や孫弟子達がNFL31チーム中14チームで取り入れています。 少し話が横にずれましたが、現在ではラン・パス共に4ヤード進めばいいと考えると分かり易いようです。これが前に進む考え方です。次の考え方はフィールドのバランスに対する考え方です。 オフェンスのフォーメーションがセンターを中心にしたバランスに基づいていることはフォーメーションの項で説明しました。これは左右のバランス。もう一つはディフェンスの項で説明しますが、ディフェンスのフロント7人(ディフェンスラインとラインバッカー)ととオフェンシブラインの5人とランニングバックの2人のマッチアップとディフェンスバック(コーナーバックとストロングセーフティー)の3人対タイトエンドと2人のレシーバーとのマッチアップの前後のバランスにおける数合わせの考え方です。 プルアウトブロックを使ったスイーププレーははその左右のバランスで力づくで優位に立とうとデザインされたものです。ショットガンフォーメーションからのドロープレーは、ディフェンスがパスカバーに人数を割き後列重視になったところへラン攻撃をかけるから意味があるのです。 オフェンスは予めやることを決めているので、誰がどのディフェンダーをブロックするか、もしくはどの地点を守ればいいかは予め決まっています。オフェンスは何とかそこにミスマッチを作って、数のアンバランスやポジションのミスマッチによって有利にオフェンスを展開しようとするのです。これがオフェンスの基本的な考え方だと思います。 シチュエーションの考え方(1)場所 ここで解説することはどの戦術書でも書いてあることですが、念のため記しておきます。もちろん教科書通りの解説ですので、その裏をかくプレーがぴたりと決まることもあります。そこはスポーツで騙し合いですから何でもあり、成功さえすればいいのです。 まず自陣20ヤード以内はかなり危険なゾーンです。フラットへのうかつなパスがインターセプトでもされようものなら瞬きする間もなくリターンタッチダウンです。展開の遅いプレーも御法度です。ドロープレーとかリバースプレーも危険といえば危険です。 自陣20ヤードから敵陣40ヤードくらいまでは通常のプレーゾーンといえるでしょう。得意なプレーや敵の弱点を探るプレー、トリッキーなプレーも何でもありです。 敵陣40ヤードから20ヤードまではそろそろフィールドゴール可能域に入ってくるので、そのことを視野に入れた攻撃をします。消極的にならず、かといって積極的すぎずにという頃合いが難しいところだと思います。 敵陣20ヤードからは「レッドゾーン」といって最も厳しいディフェンスを受けます。オフェンスは一番確実で得意なプレーによってボールを進めます。このゾーンに入って確実に淡々とオフェンスをするチームを見ると「ああ、自信があるんだなぁ」と思います。 最初に書いたようにこういった考え方はあくまで基本的なものです。自陣5ヤードからフリーフリッカーをやって成功すれば、30〜40ヤードくらいゲインできたりするかも知れません。逆に敵陣15ヤードから「ダブルタイトエンド」でごりごりランで押してきた92年のワシントンのオフェンスなども思い出されます。 こうしたフィールドの垂直方向のボールの位置の他に水平方向のボールの位置も大切です。ハッシュマークのどちら側にボールがあるか?どちらかが広くてどちらかが狭くなっていれば、そのどちらを使うのか?狭い方にレシーバーをたくさん出せば、ディフェンスはゾーンディフェンスを敷けなくなります。このことにもセオリーはありませんが、どちらをより多く使うかはコーチの好みもあるようです。 シチュエーションの考え方(2)ダウン ダウンによってのオフェンスのセオリーというのは確立しているようでないと私は思っています。例えば第1ダウンのランとパスの比率はそんなに離れていないというのが私の印象です。つまり第1ダウンはランであるとは言い切れないし、ランが確実であるとも言えないわけです。 しかし第3ダウンというのはオフェンスにとってもディフェンスにとっても剣が峰です。一番最初にオフェンスは1回当たり4ヤード進むことデザインしていると書きましたが、実質第2ダウンまでにダウンを更新したいとコーチは考えていると思います。第3ダウンの攻防はアメフトの見どころの1つです。失敗すれば次の第4ダウンでは攻守交代になり、成功すればダウンの更新。 第3ダウンにどういうプレーを選択するかでコーチの性格が出るといっていいと思います。特にサードダウン4ヤードなどはオフェンス・ディフェンス共に様々な動きをします。その日ランが出ていなければ、パスの可能性が高いでしょう。ではどこへパスするのか?それともその裏をかいてランか?考え方と書いておいて無責任ですが、ここには手引きはありません。ただ単にテレビの前で固唾を飲んでプレーを見て、次の機会にはどうするのかを見るというのがゲームの流れの中でポイントになると思います。 シチュエーションの考え方(3)時間 アメフトにおける時間の使い方は非常にシンプルです。「味方がオフェンスしていれば、相手はオフェンスできない」という攻撃は最大の防御なりの考え方です。この考え方を先鋭化したのが「ボールコントロールオフェンス」です。とにかくランを主体にして、パスは短いパス(長いパスが通ると時間をコントロールできない)で、なるべくアウト・オブ・バウンズに出て時計を止めないようにして相手のオフェンスの時間をなくす作戦です。オフェンスが60分時間を使い切ってくれれば相手はオフェンスはできません。理論上「セイフティー」という得点方法があるので、得点できないとは言い切れませんが(そんなことをいえば理論上だろうが何だろうが60分間、時間を使うことはあり得ない)とにかく攻撃時間が勝っていればそれだけ勝利に近づくわけです。 しかしではただ闇雲に時間を使えばいいかというと、時として時計を積極的に止めてオフェンスを進めなくてはいけない場面もあります。自分のチームが負けている状況であったり、どうしても追加点が欲しい場合の、2ミニッツワーニング中などです。では逆にどういう時に時間が止まるか?ということを考えてみましょう。 まず「パスの不成功」で時計が止まります。ボールを持った人間がサイドラインからアウト・オブ・バウンズに出ると時計が止まります(アウト・オブ・バウンズでのボールデッド)。この2つと前半3回後半3回与えられるタイムアウトがコントロールできる時計の止め方です。そのほか反則があった時、得点のあと、攻守の交代時、怪我人の発生時、オフィシャルが必要とした時にも時計は止まります。以前はタイムアウトがない時に怪我をしたふりをして時計を止めることが行われていたようですが、見破られるとお咎めがあるようで最近は見なくなりました。それに怪我で時計を止めた時はそのプレーヤーは1プレーは参加できないというルールもあります。 元に戻って時間を流すには上記の条件をクリアすれば時計はずっと流れます。ランが得意な2チームの試合はパスが得意な2チームの試合より早く終わる理由です。基本的にはパスをしなければアメフトのゲームというのは驚くほど早く終わるものです。 しかしパスが得意なチームは短時間で得点することが可能ですので、多少タイム・オブ・ポゼッションが少なくともゲームに勝つことはあります。ボールコントロールの考え方に基づかずにオフェンスを展開するチームもあります。素早くボールを進め、とにかく点数を取る。ハドルを全くしない「ノーハドルオフェンス」には素早くオフェンスを進める意味のほか、ハドルをしなければディフェンスは選手を交代できないので、それだけオフェンスは有利に展開できるという利点もあります。どちらにしても数学的、物理的にいって持ち時間が少なければ勝つ「確率」は減ります。 当たり前の確認事項 テレビ観戦の場合は(生でもそうですが)交代選手を全員把握することは難しいです。これができればオフェンスが何をやるかの大きなヒントになると思います。なぜなら選手によって個性があるのと同様、そのプレイにその選手が選ばれるのには理由があるからです。一番分かり易いのは「サードダウンレシーバー」と呼ばれる選手です。この選手はワイドレシーバーの順番(デプスといいますが)でいえば3番目か4番目の選手で、サードダウンで4ヤード以上残っているシチュエーションではかなりの高確率でパスプレーを選択しないとファーストダウンは取れないという時に出てきます。 この「サードダウン・ロング」のシチュエーションで3番目(または4番目)のレシーバーとしてフィールドに入ってくる。またはランニングバックの代わりに入り、パスプレーに参加する。つまりこの選手がでてくればパスの準備をしているということがある程度予想できるわけです(もちろんその裏をかくということもあります)。 因みに選手の背番号はルールによって大まかに決まっています。若干違う選手もいますが、原則的には以下の通りです。 しかし大まかに背番号で分かったとしても個人の名前や能力までは分かりません。それができない我々はオフェンスがセットした段階で少しヒントが貰えます。フォーメーションです。例えばある決まったフォーメーションから変わったプレーをするチームがあるとします。そうするとそのチームはヘッドコーチが変わらない限り同じ体型から何年か後に同じフェイクプレーをすることがあります。 TV観戦時は上手なアナウンサーはテンポよくフォーメーションについて説明してくれますし、多少英語の分かる方はAFN(昔はFENという名前でしたね(米軍の極東軍事放送))を聞けばアメフトのフォーメーションについて驚くほど自然に紹介してくれます(当たり前ですけどね)。 フォーメーションは同じでもチームによって取り組みは全然違います。基本とするフォーメーションを覚えてそこから細かいアレンジをすることもあります。時代によってフォーメーションに流行もあります。 ハドルが終わってから上記のことを確認するのは結構忙しいです。これにあとダウンと残りヤード数、ボールがフィールドのどこにあって、ハッシュマークのどちらにあるかを確認しておけば観戦の基本は終了です。 観戦の肝 上記の様々なオフェンスの仕組みを理解した人はもうここを読む必要はありません。恐らく私と同じ結論に達しているでしょうし、もしかしたらもっと深くオフェンスを理解している人はもっと面白い点に気が付いているかも知れないからです。 私はテレビでNFLのゲームを見る時はまずタイトエンドを見ます。つまりタイトエンドはどちらのサイドについているのか、タイトエンドのついている方が大抵は人数が多いサイドということになり、ランプレーはそちらに展開されることが予想できます。タイトエンドが2人いればほとんどランプレーだとさえいえます。 通常セットした時にはディフェンスも見るのですが、それはディフェンスの項で解説するとして、オフェンスがマン・イン・モーションするかを見ます。モーションにディフェンダーがついていけばマン・ツー・マンディフェンスですし、ディフェンダーが動かないか、後ろに下がればそれはゾーン・ディフェンスだと理解できます。 次にボールが動いた瞬間にパスかランかを見る方法があります。センターとガードが前に出ればラン、後ろに下がればそれはパスプロテクションですからパスだと判断できます。ただしプレイアクションやドロープレーやスクリーンパスなどの時はやっぱり騙されます。 最後にランプレーの時はボールを持っている人を何となく視野に入れつつ、その前でブロックしている人を見るようにします。これができるようになればオフェンスに関する理解は完璧でしょう(と私はいま思っていますが、もっと勉強したいとも思っています)。 Copylight NO TIMES 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