総選挙について
1998年3月3日
12月3日以降、忙しくて、ぐずぐずしていたら、既に開票が始まってしまいましたが、選挙について簡単に。尚、選挙全般の情報及び開票速報については、http://www.indiavotes.com/に非常に詳細なデータが掲載されており、開票結果がそれこそ「分刻み」で更新されていますので、そちらを参照のこと。(但しサーバーの反応が悪いことがある。ここやここでも最新の結果をみることは出来る)
インド下院(Lok Sabha)は、12月4日に解散され、2月〜3月にかけて、インド各地で6億人を超える有権者を対象に「世界最大の民主主義のための」総選挙が行われました。投票日は2月16日(222議席)、22日(186議席)、28日(132議席)、及び 3月7日(3議席:Jammu & Kashmirのみ)であり、グジャラート、メガラヤ、トリプラ、ナーガランド、ヒマチャル・プラデシュの各州においては州議会選挙も同時に行われ、グジャラート州議会選挙では、BJPが優勢で同政権が樹立されることが確実です。
インド下院の選挙前の各勢力の議席数は以下の通り(定数543議席)。
| BJP及びその友党 | 187 |
| 国民会議派及びその友党 | 136 |
| United Front | 180 |
| その他 | 40 |
今回の総選挙の注目点をまとめると、
- 首相候補(A B Vajpayee)を明示できたのはBJPのみであり、UF、国民会議派とも、明確な首相候補を担がずに選挙に臨んだこと。
- Kesri総裁の人気及び統率力不足に悩む国民会議派は結局Sonia Gandhiを担ぎだしたが、彼女は積極的に演説を行ったものの、出馬はせず、飽くまでも局外からの役割を果たすことに終始した。
- BJPは、従来地盤を持たないといわれていた、西ベンガル州からタミルナドゥ州にかけて、各州地方政党との連携により、勢力拡大(=国民会議派及びUFの地盤の取り崩し)に努めていること。(但し、これが奏功し、政権を取った場合には、BJPのヒンドゥー至上主義が他の政党(元は国民会議派と連携していたところが多い)との間で衝突を起こす可能性がある)
- UFは、Samajwadhi PartyのMulayam Singh Yadav国防相がマハラシュトラ州で国民会議派と共闘するなど、完璧に足並みがそろっている訳ではないこと。UFの中だけでも、首相候補となり得る人材が、Gujural現首相、Gowda前首相、Jyoti Basu西ベンガル州首相、Mulayam Singh Yadav国防相、Chandrababu Naiduアンドラプラデシュ州首相、と揃っているが、選挙後にUFを誰が背負って立つのか、はっきりしない。
- BJP、国民会議派、UFを通じ、いずれも単一勢力では絶対多数を占めることは難しいが、BJPが過半数近くまでの議席を占めた場合に、実質的にUF政権崩壊の引き金を引いた国民会議派とUFがSecularism(宗政分離)の下に「小異を捨て大同を採」って連立することが可能かどうか。特に、国民会議派による「DMK外し」の要求からUF政権の崩壊が始まったことを考えると国民会議派とDMK(及びTMC)は和解することができるのか?
- 絶対多数勢力が現れない状況下、昨年の就任以降、様々な憲法上の問題に直面し、慎重な対応を採ってきたNarayanan大統領はどの勢力に組閣を指示するのか?
経済政策については、各政党とも基本的に自由化路線をとるという点については違いがなく、識者の大体の見方は、「改革の方向性は誰が政権を握ってもは変わらないが、その進捗のスピードはどの政党が政権につくかによって異なってくるかもしれない」というものです。確かに、91年以降一連の経済改革政策は既に後戻りできないところまで来ているものの、BJPはSwadeshiという自国産業保護政策を看板に上げていますし、UFには共産勢力も加わっているわけで(国民会議派政権となる場合にもUFからの支援が不可欠)、改革の進捗度合いについては、誰が舵取り役になるかによりある程度異なってくることが予想されます。
今回の選挙では、Sonia Gandhiが出馬するのか、もしくは国民会議派の支持遊説を行うかどうかが当初注目を集めました。結局、彼女はまずRajiv Gandhiが暗殺されたタミルナドゥ州から遊説を開始し、有権者の同情を買いました。それだけであれば、良かったのですが、段々と言うことがエスカレートしていき、1992年のAyodiyaのモスク破壊事件について、「Rajivがいればあのようなことにはならなかった」といってみたり(実際には、Ayodiyaの問題はRajiv Gandhiも火をつけた側だというひともいる)、武器輸入に関してRajiv Gandhiが巨額の賄賂を受け取ったとされるBofor疑惑についても、「BJPのVajpayee氏はうそつきだ」といってみたり、積極的な発言を行うようになりました。
彼女自身が候補者として立ち、政治生命をかけて発言しているのならば良いのですが、立候補もしておらず、その気も無い人がよくもまぁ、いろいろと言いたい放題言えるものだなぁ、インドは世界最大の民主主義ということをよく言うが、こんな人が左右する選挙というのは一体何なのだろうか?(勿論、某国の選挙や政治家も似たり寄ったりですが)と思い始めてから後は、すっかり今回の選挙に対する興味を失ってしまいました。
BJPは、Ram Raja ya Rome Rajaといって、Sonia Gandhiのことを皮肉っています(Ramは理想的な政治をしたと言われるラーマヤナのラーマ王のことで、Rajaは統治と言う意味。yaはor。Romeはいうまでもなくローマのこと。Sonia Gandhiがイタリア人であることを皮肉ったもの。)
14年前に始めてインドに来たときには、総選挙の直後であり、街中の壁と言う壁に大きな右手の絵が描かれており、神妙な気持ちで「あれはヒンドゥー教の崇拝の対象ですか?」とインド人に聞いて「いやいや、国民会議派のマークです。文字が読めない人々のために、選挙はシンボルで戦われます」と言われたのを思い出しますが、今回の選挙は、選挙管理委員会が厳しい規制を行った結果、右手(国民会議派)、ハスの花(BJP)、車輪(Janata Dal)、象(BSP)等のシンボルが街中至るところににあふれる、といった(私が密かに期待していた)ことは起きませんでした。