インド下院解散・総選挙へ

インド政治日記(1999年4月27日以降)
表紙に戻る
日記のページに戻る

BJP政権の信任投票否決(4月17日)に始まった新政権への動きは、結局国民会議派による少数単独政権に対する反BJP勢力の支持がまとまらず、4月26日、Narayanan大統領はBJP暫定内閣の勧告に基づき、下院の解散を宣言した。大統領官邸のプレスリリースはhttp://alfa.nic.in/rb/pr119.htm参照。


BJP信任投票否決(4月17日)以降の経緯

4月18日
  • Samajwadi PartyのMulayam Singh Yadavは政権に加わることを求める一方、左翼のRSPは国民会議派内閣には反対。

4月19日
  • 下院議長主催の全党協議会で、99年度予算については、水曜日に再開される国会で特段議論を行わず通過させることが決定された。
  • 株式市場はこの決定を好感し高騰。一方、外国為替市場は、安定した新政権樹立を疑う見方からルピー安へ。
  • Sonia Gandhi会議派総裁、国民会議派院内会派から、新政権樹立に向けての全権委任を得る。その後、国民会議派の代表が、国民会議派が中心となって政権を作る用意がある旨、大統領に申し入れ。
  • 左翼勢力、新政権樹立に向けて協議を行うが、RSP(5)とAll India Front Bloc(2)は国民会議派主導政権には絶対反対との立場を貫く。
  • Jayalalitha、Sonia Gandhi、Mulayam Singh Yadav (SP)、Jyoti Basu西ベンガル州首相(CPI(M))とそれぞれ面談。Jyoti Basu州首相との面談後、「新政権は早々に出来る。BJPが再度政権に返り咲くことは阻止する。新政権の枠組みは現時点では公表できないが、Jyoti Basu氏が首相の座に就くことを受け入れてくれるのでば、AIADMKは諸手を挙げて歓迎する(be over joyed)。」、と発言。
  • BJP、反BJP勢力はまとまりに欠け、過半数を確保することが困難であるとして、「再度BJPが組閣するか、さもなければ総選挙」とのスタンスを明らかに。
  • Naiduアンドラプラデシュ州首相(TDP)、BJPと距離を置く発言。秋に州議会選挙を控えていることもあり、宿敵の国民会議派に近づくことはないものの、州内のマイノリティー票田を考慮しているものと考えられる。

4月20日
  • 国民会議派、多数党の連立内閣、もしくはThird Front内閣への閣外支援よりは、会議派単独少数内閣を志向するとの方向性を打ち出す。
  • Sonia Gandhi国民会議派総裁、Jyoti Basu西ベンガル州首相と面談。面談後、「Mr Basuは首相のポストには興味がないと言った。現在、どのような政府をつくればよいのか、コンセンサスを作るために各党と協議中」と発言。会議派政権への支持を拒んでいるRSP(5議席)、All India Forward Bloc(2議席)に対する働きかけをJyoti Basu州首相に依頼したものと見られる。別途Deve Gowda、I K Gujral両元首相にも面談。
  • Samajwadi PartyのMulayam Singh Yadav党首、「自分は20議席を有する政党の党首であり、それなりの立場がある」と発言。国民会議派単独政権には反対する意向と言われる(=会議派政権が出来た場合には、地元UP州でのSPの基盤が崩される可能性があるため)。
  • Janata Dal(6議席)、国民会議派政権を支持するか否かについて態度を保留(Janata Dalには国民会議派により退陣を余儀なくされたDeve Gowda、I K Gujral両元首相が属する他、今年末に州議会選挙が予定されているカルナタカ州はJD政権)。
  • TDP(12議席: BJP政権を閣外支持)のVijayarama Raju議員、国民会議派政権を支持する旨を国民会議派本部における記者会見で表明。
  • Chandrababu Naiduアンドラプラデシュ州首相(TDP党首)、Raju議員の行動を激しく批判するとともに、国民会議派は議員をまるでモノ扱いして引き抜き工作を図っていると批判。
  • BJP、信任投票に賛成した269議席分の支持表明レター(但し署名者は各党党首のみであり、BJD、TDP、Samata Party等、構成党内が分裂し、一部が会議派支持に回った場合には269を下回ることとなる)を集め、大統領に提示する予定であると発表。
  • 一方、国民会議派も、支持レターの取り付けを開始。

4月21日
  • 99年度予算案を通すことになっていた国会、昨日のTDP国会議員の国民会議派政権支持発言を巡って、TDP及びBJP連立与党側が国民会議派による"Horse Trading"(馬を競りにかけるように、色々な政治的(金銭含む)な代償をつり上げていって反対党の議員を味方につけること)であるとして、激しい抗議を行い、議事進行が不可能となる。結局、本日予算案は下院を通過せず。(その後、大統領を中心に協議が行われ、予算は明日下院通過の予定)
  • 昼刻、Sonia Gandhi会議派総裁が大統領に面談。大統領に対して、2日間の猶予の後、272議員の支持レターを取り付け、国民会議派単独による少数内閣を作ることを目指すと述べた。但し、会議派政権の首班が誰になるのかは明らかにせず。
  • 反BJP勢力の内、非会議派全勢力(SP(20議席), RJD(17議席), AIADMK(18議席)、左翼政党)は夕刻会合を持ち、「国民会議派単独政権には反対。首班候補としてJyoti Basu西ベンガル州首相を推挙」と発表。JayalalithaとLaloo Prasad Yadavは同決定をSonia Gandhi会議派総裁に連絡。(会議派の一方的な「単独政権構想」に激しく反発したもの)
  • しかし、その直後、Jyoti Basu州首相自身と、所属政党であるCPI(M)が、首班を受け入れる用意がない旨発表。
  • BJP及び支持政党、大統領に面談、270議席相当の支持レターを提示(但し、TDP、Samata Partyなどの一部からは会議派支持を打ち出す議員が出てきている)。政権への返り咲きは特に求めず。

4月22日
  • 99年度予算が下院通過(いずれの場合(上院通過、上院による修正のいずれの場合にも上院に提示されてから14日以内に予算成立の運びとなる)。
  • CPI(M)、CPIそれぞれ大統領と面談。
  • Laloo Prasad Yadav(RJD:17議席)及びJayalalitha(AIADMK: 18議席)、国民会議派単独政権を支持する旨の確認文書を提出。Jayalalithaは、「Sonia Gandhiによる会議派単独政権を支持」と語る。
  • Mulayam Singh Yadav(SP: 20議席)、会議派単独政権には反対との立場を変えず。予定されていた大統領との面会を延期。

4月23日
  • 連邦予算、鉄道予算、共に下院案のまま上院を通過。
  • Mulayam Singh Yadav (SP (20議席))、大統領に面会。会議派単独政権は支持しない旨伝える。SP、国民会議派を反ムスリム的であり、「Secularismの仮面を被っているが故に危険である」として非難。Third Frontによる組閣を主張。
  • RSP(5議席)、AIFB(2議席)、大統領に面会。会議派及びBJPと同じ距離を置く旨伝える。但し、反BJP政権樹立がRSPとAIFBのみの不賛成により成立しなくなる場合には、立場を見直す可能性ありとする。
  • JD(6議席)、最終的な立場を決定できず。明日大統領に面談予定。但し、JDのRam Vilas Paswanは、Laloo Prasad Yadavの関係する政権は支持せずと発言。
  • Sonia Gandhi会議派総裁、大統領に233議席相当の支持レターを提出。過半数には大幅に不足しているため、もう少し各党間の調整をしたい、と大統領に申し入れ認められる。大統領との面会後の記者会見で、連立政権の可能性を排除せず。
  • BJP及びその連立党、共通の戦線(Front)を設ける方向で議論。Vajpayee首相は、首相ポストが代ることによってBJP連立政権が可能となるのであれば、辞任する余地があると発言したが、全会一致でVajpayee氏が首相には最適であるとの結論に至る。

4月24日
  • Jayalalitha、大統領との面会後、Jyoti Basu西ベンガル州首相(CPI(M))と面談。その後の記者会見で、「現状を打開するためには、Third Frontの連立政権に対する国民会議派の閣外支援以外に方途はない。会議派がそれを呑めるかどうかがポイント」と発言。Jyoti Basu首班支持を明らかにする。
  • CPI(M)はJyoti Basu首班については引き続き態度を留保。明日の政治局会議でJyoti Basu首班を受け入れるか否か決定する見込。
  • 国民会議派、公式見解としては、今尚少数単独内閣を志向。但し、何らかの連立にも柔軟に応じられるとの見解も伝えられる。
  • BJPのJaswant Singh外相、大統領に面会。大統領から、BJPも今回の新政権樹立プロセスから排除されている訳ではないこと、BJP政権を復活させるためには270議席以上の支持を再度確認する必要があること、について確認を得る。

4月25日
  • Mulayam Singh Yadav、Jyoti Basu首班を無条件で支持する旨表明。
  • Sonia Gandhi国民会議派総裁、大統領に面会し、「他の勢力を説得することに失敗した。一部勢力(=SP?)が国家の利害よりも個人の利害を優先したため」と、会議派による組閣工作の失敗を報告。同時に「Third Frontだか、Fourth Frontだか何だか知らないけれど(third or fourth front or whatever ...)」と言いつつ、反BJP・非会議派政権は支持しない方針であることを述べる。
  • CPI(M)、いずれのケースにおいても、会議派が責任を果す必要があり、として、公式にはJyoti Basu首班を受け入れるか否か明らかにせず。(但し、本日のCPI(M)の政治局会議で、Jyoti Basu首班を原則受け入れ可との結論を出したにも関わらず、それを会議派が一蹴したとの情報もある)
  • Laloo Prasad Yadav (RJD)、Rashtrya Loktantric Morcha(全国民主戦線)の盟友であるはずのMulayam Singh Yadavを今回の新政権不成立の責任を負い、BJPを助長するものであるとして批判。
  • CPI(M)のSurjeet書記長及びJyoti Basu西ベンガル州首相、大統領に面会、国民会議派及びSPをBJP政権を長らえさせるものとして批判。
  • 夕刻、大統領がVajpayee首相を招き、これまでの各党との協議状況(= BJP政権に替る政権樹立は不可能)について説明した模様。これを受けてVajpayee首相は「明日閣議を開く」と発言。それ以上の説明は無かったが、実質的に下院解散の勧告を大統領に対して行うこととなる見込。

4月26日
  • 12時から開催された閣議において、下院の解散を大統領に勧告する旨決議。
  • 内閣からの勧告を受けて、大統領は下院の解散を宣言
  • 選挙委員会のGill委員長、大統領と面会。面会後の記者会見で、現在選挙人名簿の改訂作業を行っているところであって、その作業に2ヶ月は要するので、7月末以前の選挙実施は不可能である旨発言。
  • TDP、来る総選挙では、BJPとも国民会議派とも選挙協力を行わない旨発表。


今後の見込み等

憲法上、「議会の招集は、最後のセッションから6ヶ月以上の間隔を置いてはいけない」、「上下両院いずれかの議員でない大臣は6ヶ月を越えてその職に留まることはできない」との規定があることから、6ヶ月以内に新たな議会が招集され、新内閣が組閣される必要がある。今回の場合、下院の最後のセッションは4月21日であったことから、10月21日までには新議会招集、10月26日までには新内閣の組閣が必要となる。

BJPは今回の政権崩壊劇に対する民衆のシンパシーを最大限利用すべく、出来るだけ早い選挙を志向するものと見られている。一方、国民会議派にとっては、体制固めのために出来るだけ遅い選挙の方が望ましいとの見方がある一方、暫定政権としてBJPが政権の座に残る期間を出来るだけ短く抑える必要があるため、出来るだけ早い選挙を目指すとの動きもある模様。

いずれにせよ、選挙の時期を決めるのは、憲法上の独立機関である選挙委員会であり、明日以降、選挙人名簿の更新など、必要な作業を終わらせるためにはどれくらいの期間が必要なのか、具体的な検討が始まる。

国民会議派は、今回のBJP政権崩壊劇について、「会議派が作り出したものではなく、BJP連立政権がそもそも内包していた矛盾により、起きるべくして起きたもの」としているが、AIADMKへの水面下での働きかけ、信任投票直前のBSPへの働きかけなどを行ってきたこと、2日間272議席の支持を集めると公言し、大統領から期限の延長を得ながらも、少数単独内閣を志向する余り反BJP政権をまとめきれなかったことなどから、そのCredibilityに疑問が呈されている。特に、各勢力との協議の終盤では、これまで政権奪還に拘泥せずとしてきたSonia Gandhi総裁自らが首相の地位に拘ったとも言われている。

国民会議派は、今回の組閣失敗を受けて、今後の各党との協力関係について戦略の練り直しを必要とするが、BJP勢力は今回の政変について、国民会議派の責を問うと共に、Sonia Gandhi総裁の政治的未熟さを指摘していくものと見られ、その中では、(控え目な形で)彼女の出自についても疑問を呈していく、ということが予想される。

選挙に向けて、注目すべき点のもう一つは、BJP、国民会議派が地方勢力と如何に選挙協力を行うかという点である。前回の総選挙では、各地域で地方政党と選挙協力を行うことにより、BJPは従来基盤を有しなかった東・南インドに地歩を築くことが出来たが、今回も同じようなことを志向するものと見られる(前回タミルナドで協力関係を結んだAIADMKは既にBJP陣営にはなく、信任投票に賛成したDMKは選挙協力については未決定と言われる)。国民会議派はUPのムスリム票田をSPから奪還するためにBSPと協力する可能性もある。このような中、Chandrababu Naiduアンドラプラデシュ州首相のTDPは11月までに行われる予定のアンドラプラデシュ州議会選挙を控えており、ムスリム票田を押さえつつ州内の仇敵である国民会議派に対抗する必要があることから、BJPとも距離をおいた選挙活動を行う旨明らかにしている。また、カルナタカ州も州議会選挙を控えていることから、州政権の座にあるJDも総選挙対策を考える必要がある。

以上のような状況で、選挙の実施時期が地方政党の動きを左右する。8月以降となる可能性が示唆されていることから、当初今年9月から来年2月に予定されていた各州の州議会選挙(カルナタカ、アンドラプラデシュ、ビハール、オリッサ、シッキム、マニプール、アルナチャルプラデシュ、ゴア)と同時に下院総選挙が行われる可能性もある。BJPも国民会議派も、単独で過半数議席を得ることは困難と考えられる中、今後ともTDP、DMK、JDなどの(地方)政党の動向に注目する必要がある。


総選挙・BJP暫定政権の継続となった影響で、中央政府は主要な政策変更が実質的に不可能となった。選挙委員会の規則により、新たなプロジェクトの取り上げ等、「民衆の歓心を買う」政策が制限される。また、外交面においても、パキスタンとの対話継続、CTBTの署名などに影響が出ることが必至となっている。経済面では、予算が23日に上院を通過済であり、当面の経済政策面では大きな影響は予想されないが、先行き不安感は継続するものと見られる。

表紙に戻る
日記のページに戻る