憲法上、「議会の招集は、最後のセッションから6ヶ月以上の間隔を置いてはいけない」、「上下両院いずれかの議員でない大臣は6ヶ月を越えてその職に留まることはできない」との規定があることから、6ヶ月以内に新たな議会が招集され、新内閣が組閣される必要がある。今回の場合、下院の最後のセッションは4月21日であったことから、10月21日までには新議会招集、10月26日までには新内閣の組閣が必要となる。
BJPは今回の政権崩壊劇に対する民衆のシンパシーを最大限利用すべく、出来るだけ早い選挙を志向するものと見られている。一方、国民会議派にとっては、体制固めのために出来るだけ遅い選挙の方が望ましいとの見方がある一方、暫定政権としてBJPが政権の座に残る期間を出来るだけ短く抑える必要があるため、出来るだけ早い選挙を目指すとの動きもある模様。
いずれにせよ、選挙の時期を決めるのは、憲法上の独立機関である選挙委員会であり、明日以降、選挙人名簿の更新など、必要な作業を終わらせるためにはどれくらいの期間が必要なのか、具体的な検討が始まる。
国民会議派は、今回のBJP政権崩壊劇について、「会議派が作り出したものではなく、BJP連立政権がそもそも内包していた矛盾により、起きるべくして起きたもの」としているが、AIADMKへの水面下での働きかけ、信任投票直前のBSPへの働きかけなどを行ってきたこと、2日間272議席の支持を集めると公言し、大統領から期限の延長を得ながらも、少数単独内閣を志向する余り反BJP政権をまとめきれなかったことなどから、そのCredibilityに疑問が呈されている。特に、各勢力との協議の終盤では、これまで政権奪還に拘泥せずとしてきたSonia Gandhi総裁自らが首相の地位に拘ったとも言われている。
国民会議派は、今回の組閣失敗を受けて、今後の各党との協力関係について戦略の練り直しを必要とするが、BJP勢力は今回の政変について、国民会議派の責を問うと共に、Sonia Gandhi総裁の政治的未熟さを指摘していくものと見られ、その中では、(控え目な形で)彼女の出自についても疑問を呈していく、ということが予想される。
選挙に向けて、注目すべき点のもう一つは、BJP、国民会議派が地方勢力と如何に選挙協力を行うかという点である。前回の総選挙では、各地域で地方政党と選挙協力を行うことにより、BJPは従来基盤を有しなかった東・南インドに地歩を築くことが出来たが、今回も同じようなことを志向するものと見られる(前回タミルナドで協力関係を結んだAIADMKは既にBJP陣営にはなく、信任投票に賛成したDMKは選挙協力については未決定と言われる)。国民会議派はUPのムスリム票田をSPから奪還するためにBSPと協力する可能性もある。このような中、Chandrababu Naiduアンドラプラデシュ州首相のTDPは11月までに行われる予定のアンドラプラデシュ州議会選挙を控えており、ムスリム票田を押さえつつ州内の仇敵である国民会議派に対抗する必要があることから、BJPとも距離をおいた選挙活動を行う旨明らかにしている。また、カルナタカ州も州議会選挙を控えていることから、州政権の座にあるJDも総選挙対策を考える必要がある。
以上のような状況で、選挙の実施時期が地方政党の動きを左右する。8月以降となる可能性が示唆されていることから、当初今年9月から来年2月に予定されていた各州の州議会選挙(カルナタカ、アンドラプラデシュ、ビハール、オリッサ、シッキム、マニプール、アルナチャルプラデシュ、ゴア)と同時に下院総選挙が行われる可能性もある。BJPも国民会議派も、単独で過半数議席を得ることは困難と考えられる中、今後ともTDP、DMK、JDなどの(地方)政党の動向に注目する必要がある。
総選挙・BJP暫定政権の継続となった影響で、中央政府は主要な政策変更が実質的に不可能となった。選挙委員会の規則により、新たなプロジェクトの取り上げ等、「民衆の歓心を買う」政策が制限される。また、外交面においても、パキスタンとの対話継続、CTBTの署名などに影響が出ることが必至となっている。経済面では、予算が23日に上院を通過済であり、当面の経済政策面では大きな影響は予想されないが、先行き不安感は継続するものと見られる。