うんこの大冒険(音と語り)


Music

ぼくは、うんこ
ある日、ぼくは、ロバのパティから、うまれた。
SE(ウッドブロック)
街に続く道を、荷物をいっぱい背中にしょって、パテぃが歩いていた時の事だ。

SE(スライドホイッスル)
SE(太鼓)

ずっと暗い中にいたから、ぼくは、うれしくなって、飛び上がった。
「やっほー、これからは、お日様の下で、自由にあそびまわれるぞ!」
ぼくは、さっそく歩き出そうと思った。
{あれ?」
ぼくには、手も脚も無い事に気づいた。
しょうがないので、誰かが来るまでそこにいる事にした。
でも、待っても待っても誰も通らなかった。
だんだん暗くなり、ついには、夜になった。

SE(小さいスターチャイム)

ちょっと寒かったけど、空には、沢山の星が輝いて、それはそれは、キレイだった。

いつのまにか、僕は眠ってしまった。そして、夢を見た。

SE(波の音、みんなで、)

広―い海の上で、僕はプカプカと浮きながら、お日様を浴びている。
「あー気持ちいいなあー、ずっとこうしていたいなー、僕はうんこだから、
最初から茶色くて、これ以上、日に焼けてひりひりしなくて済むし…」
そう、思った時だった。

SE(ひときわ大きな波の音が一回)

「うわあ、」僕は、大きな波にのまれて、あっという間に溺れてしまった。
そこで、目が覚めた。

SE(バードなんとか)

「あー、夢でよかった。ほんとに溺れたら死んじゃうよー」
気を取り直した僕は周りを見回した。
一匹の犬が、こっちに向かってくるのがみえた。

SE(カホン)

「犬さん、犬さん、僕を、どこかに連れてってください」
僕は目の前を通り過ぎようとする犬に向かって言った。
すると、彼は、鼻をぴくつかせながら、僕の方を見るなり怒ったように言った。
「くっせーなあ、なんだよ、誰かと思えば、うんこかよ、」
僕は、いっしょうけんめい訴えた。
「そうです、僕はうんこです。僕は見ての通り、自分では動けないので、どうか、
犬さんが何処かに連れてってください。」
「えーっ、何だって?  だいたい、俺の仲間のもんでもないし、お前みたいに、
くっさくて、汚いやつを、なんで、一緒に連れて行かなきゃ行けないんだい。」
犬はそういうと、さっさと行ってしまった。
僕は、悲しくなった。
生れてきたとたんに、嫌われ者だと、知らされたのだから。

Music

それから、三匹のロバと、一匹の犬と、二台の馬車が僕の脇を通った。
みんな僕をさけて、道一杯に大回りをして進んでいった。

誰一人、僕の話は聞いてくれなかった。

SE(小さいスターチャイム)

また、夜が来た。
僕は、夢を見た。
ME(アラブの曲、中国の曲、ほか)

僕は、空を飛び、世界中の街を回った。

そして、とある街に降りた。

SE(スライドホイッスル)
SE(太鼓)

夢の中では、僕は、自由に歩きまわれた。

SE(缶のふた)

まちには、綺麗な木が、沢山生えていた。
「うわあ、何て素敵な街なんだろう」
僕は、楽しくなって、町中を見て回った。
そして、飛び切りかわいいうんこの子と、出会った。

SE(スターチャイム)

その子は明るい緑の葉っぱを茂らせた若い木の根元にいた。
驚いた事に、そばには、犬や、ろばも、いた。
この街では、うんこは、嫌われていないらしい。
僕は、その子に聞いてみた。
「ねえ、君、うんこなのに、どうしてみんなから、避けられないの?」
その瞬間、みんなが、いっせいに僕を見た。でも、すぐに何も無かったように別のほうを向いた。
「あら、はじめまして、何で、私達が、避けられるの?」
「だって、僕の街では、みんなが僕の事を避けるよ、汚いって」
「おかしいわね、わたしたちは、野菜や、草や、木の、大切な栄養になっているのよ。
だから、みんなに大事にされてるわ。」
「えっ、僕たちって、大切なの?」
そのとき、僕は、夢から覚めた。

僕は、相変わらず同じ所にいた。
なんだか体が、乾いてきていた。
「僕たちって…大切なの?」
おもわず、僕がそう言うと、道のはずれに居た大きな木が、応えてくれた。
「そうさ、大切さ。お前のおかげで、わしは、こんなに大きくなる事が出来たんだ。
おまえは、決して、汚くなんかないさ。」
そうだったのか、夢で言ってた事は本当なんだ。
そう思ってなんだか嬉しくなってきた時、僕は宙を舞った。

SE(波の音で代用した風の音)

強い風が吹いて、僕の体は、空高く舞い上がった。
「あ〜、夢と一緒だ。空を飛んでいる〜」

でも、夢とは、違っていた。
乾いた僕の体は、ボロボロと離れていった。
小さくなった固まりは、風に当たって、更に小さな粉になった。

風が止んだ時、バラバラになった僕は、畑や、草原や、森の土の上に居た。
いろんな所で、野菜や、果物が話をしていた。
「よかったー。これで、もっと元気になれる。」
「本当、力が、出てくるわ。」

ぼくは、バラバラにはなったけど、みんなが喜んでくれたから、嬉しかった。」
僕の体は、やがて、土に溶けていった。
全部溶けちゃうと、話すことが出来ないので、僕のお話は、これでおしまいにする。
みんなも、草や、木を眺めた時、僕の事を、思い出しておくれ、それじゃあ、」

Music


END


                                      2001/10/19/01      M Hishida   



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