2.損益法と内部統制

 内部統制の概念は、財産法から損益法への転換の過程で形成された、と考えられる。財産法と損益法を理論的に解明したものに、岩田巌教授の『利潤計算原理』がある。『利潤計算原理』は、企業会計の構造を財産法と損益法の結合計算である、ととらえるところに特徴がある。その基礎には、つぎのような独特の照合の論理がある。

「会計は財産変動の『結果の計算』と『原因の記録』と『結果と原因の対照』という三つの手続からなるのである。
「ところが実際上会計は財産変動を継続的に記録するにあたって、すべての変動をその発生の都度ことごとくとらえて記録するものではない。
「通常は、財産の受入引渡といったような、明確に確認することのできる具体的な事実だけを手掛かりとして記録するのである。現実には財産変動があったとしても、手掛かりとなる具体的事実が確認されなければ記録しないのが普通である。
「これを基礎として結果を計算するのであるから、それは必ずしも現実の状態を示すとはかぎらないし、その原因記録もつねに完全であるとは言えないのである。それ故、取引を継続的に記録するのみでは、結果と原因の正しい対照をもとめることは、できない場合が多いのである。
「そこで会計は記録の誤記脱漏を補正するため、継続記録のほかに特別手続をつけ加えて行う必要が生じてくる。この特別手続と云うのは、定期的に、または適当な時期に、帳簿からはなれて、財産の現実の状態を直接調査して、その実際の在高を確定し、記録にもとづいて計算された残高と照合することである。
「実際の在高と計算上の在高を突合せることは、結果と原因を正しく対照せしめるために是非必要な手続であって、会計の欠くべからざる特徴である。」6)

 このように、会計上の認識とそれにもとづく記録は完全性を保証するものではない。記録にもとづく損益法は、事実にもとづく財産法と結合されてはじめて会計の信頼性を保証することができる。しかし、企業規模の拡大と財産構成の複雑化にともない本来の財産法を行うことは困難である。そのため、損益法の発展過程で、財産法に代るものとして物量計算に認識と測定の基準がもとめられた。この過程が内部統制の発展過程である、と考えられる。岩田教授は、損益法の発展過程をつぎのように説明されている。

「貨幣収支の事実にかかわらしめて収益費用を計上することを抛棄した損益法は、これに代るに何をもってしたか。あくまでも収支計算を母体とする点においては変らないのであるが、収益費用の認識および測定の基準を貨幣動態からはなれて、財貨動態にもとめるにいたったのである。すなわち原則として可能なるかぎり、生産要素の費消および生産物の給付の事実をもって収益費用の発生をみとめ、費消量と給付量にかかわらしめて収益費用の額を決定するのである。
 収益については当該期間に生産物を給付した事実を確かめるとともに、その大いさを数量的に把握し、これを尺度として収益たる収入のうちから、当期に所属する収益を確定する。費用についても当該期間に資材、労務、役務等の生産要素を給付のために費消した事実を確かめるとともに、これを物量的に補足し、これにもとづいて費用たる支出のうちから、当期に属する部分を決定する。たとえば材料についていうと、当期の材料費負担額をもとめるには材料消費を物量的に記録計算し、この消費量に相当する支出、すなわち購入原価を算出して材料費とするごときである。労務費については時間記録や出来高記録が基礎となり、各種の経費についても、それぞれその項目に適当な物量が選定されるのであって、要するに、物自体の運動にそくした物量計算に認識と測定の基準がもとめられる。かように今日の損益法は、単に貨幣の収支計算を基礎とするばかりでなく、財貨の数量計算をとり入れて成立するのである。」7)

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Last updated on 9 April 1996
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