1942年のロシア戦線南部、独軍夏期攻勢「青の場合」において、ソ連の石油資源を根絶する為、広大なカルムィク平原を縦断し、遥かにそびえる大コーカサス山脈を越えカスピ海に面するバクー大油田の占領を目指すドイツA軍集団と、それを阻止すべくスターリンの厳命を受けて全力を挙げて抵抗するソ連軍。
ゲームでは大小合せて10枚もの地図をつなげて、この戦場全域を再現。地図上には戦場となったロシア南部コーカサス地方が、目を見張る美しさで描かれ、コーカサス山脈の険しい山肌まで視覚的に感じ取ることが出来る程である。さらに実際にこの作戦に参加した部隊はもちろんのこと、参加する可能性のあった空挺師団、山岳軍団まで、水も洩らさぬ徹底的な調査にもとずいて登場する。
肝心のゲームシステムも、膨大な内容物に負けず劣らず精密を極め、各軍団司令部が配下の師団司令部を統轄(攻撃か防禦などおおまかな作戦を決定)し、師団司令部が直接、戦闘部隊に各種の命令を与えることで作戦を具現化していく。その他にもソ連黒海艦隊が1隻単位で登場し、海上輸送から艦砲射撃まで行なえる。天候も実に15種類の多種に渡り、夏から冬にかけての南部ロシアを余すところ無く再現している。
ゲームの展開は、ロストフを陥とした独軍が当初は無人の野を行くがごとくカルムィク平原をコーカサス山脈目指して進撃し、ようやく山脈の麓にたどり着いた頃には補給線が延びきり、不足するトラックの代わりにラクダやラバで編成された補給キャラバンまで使って、補給物資を前線の部隊まで届ける姿が頻繁に見られるようになり、その補給路もゲリラにたびたび寸断される。戦闘自体も山地に入ると独軍お得意の戦車戦術も使えず、飛行場不足から急降下爆撃機も投入できないことから不利な消耗戦に引き摺り込まれていく。さらに天候の悪化に伴い徐々にソ連軍に主導権を奪われ、遂には全面的撤退を余儀なくされていくドイツ軍の姿がリアルにシミュレイトされている。
このゲーム、扱うテーマも貴重であるばかりでなく、作戦級と呼ばれるシミュレーションゲームのジャンルの中でも、その精密さ、システムの完成度、グラフィック面の美しさなどでひとつの頂点に位置すると言うに相応しい内容を誇っている。いまだパソコンSLGでは再現できない、真実のシミュレーションの姿がここにはあると言っても過言ではないだろう。
