白い死 「(GDW) WHITE DEATH」 のプレイ
by
S.Yamaguchi
「WHITE DEATH」の輸入元だったH社は,「赤軍大反攻
北方ウェルキエ・ルーキー包囲戦」という邦題をこのゲームに付けました。原題は(WHITE
DEATH-Velikiye Luki,TheStalingrad of the
North)であり,直訳すると「白い死−北方のスターリングラード『ウェルキエ・ルーキー』」となります。原題では,同時期に南方で行われていた「スターリングラード包囲戦」に対し,規模こそ異なるものの,ウェルキエ・ルーキ包囲戦こそ北方における「小スターリングラード」というニュアンスを出しています。
このゲームには,テーマ的にもシステム的にも大変興味深いものがあるのですが,一般的ではないシステムのわりには解説書があっさりと書かれていて,やや説明不足であると感じられる部分も少なくありません。そのせいかあまりプレイされている様子も無いようです。かつて「シミュレイター創刊第2号」では「プレイ不可能」というような紹介もなされました。
この小文では,このような不明点をできるだけ解決することを目的とし,あわせてErra-taの反映,追加ルールの採用,ルール変更の提案などを折り込んでありますので,プレイのご参考にしていただければ幸いです。
なお,ルールの曖昧な点については,続編ゲーム「スエズ73」のルールに照らし合わせた上で解釈するという方法をとりました。これは,基本的に同じシステムでつくられたゲームは,多くの場合,前作での問題点を解決してあるという希望的観測に基づいています。(ただし,「スエズ73」は,ルールが一層複雑化したためにプレイが困難です。)
1.Errata and Clarifications
筆者の所有する「ホワイト・デス」には,標記の正誤表と解明が添付してありました。
その大部分は日本語解説書(以下は全てH社のものによる)の方にも反映されているようですが,どういうわけか抜けている項目がいくつかあるので以下に列記します。
○カウンター
ドイツ軍
・捕獲されたT−34で編成された1個中隊の部隊番号は,「2/60」ではなく「2/66」です。
・T/55ロケット砲大隊の弾幕力は,「30」ではなく「20」です。
・3/5 スキー猟兵中隊と第459 SS突撃砲中隊のカウンターの裏面が相互に逆になっています。
〔*訳注 「シミュレイター創刊第2号」では理由不明となっています。〕
ソヴィエト軍
・部隊番号表示が抜けているオートバイ狙撃兵大隊は「68」です。
・第257 狙撃兵師団に所属するV/793 砲兵大隊の支援力は「3」ではなく「2」です。
・第1124狙撃兵連隊は「第334 狙撃兵師団」に所属します。「第34」ではありません。
○セットアップ・シート
・ドイツU/47砲兵大隊の配置する場所が抜けています。この大隊はArko
103の構成部隊ですが,第331 歩兵師団に随伴していました。
〔*訳注 したがって,師団所属ユニットではありません。〕
・ドイツ第3山岳歩兵師団のV/112 砲兵大隊の配置には,いくらか混乱を招くおそれがあります。この大隊は第3山岳歩兵師団に所属していました(それゆえに所属する師団の番号をもっています。)が,管理上Arko
103に割当てられていたため,セットアップ・チャート上のArko
103のボックスに置かれます。
しかしながら,セット・アップの際に第3山岳歩兵師団の全てのユニットが必要とされる場合には,この大隊は同師団の戦区内に配置されることになります。
○ソヴィエト軍増援到着表
・これにはちょっと焦ります。UターンからYターンまでにソヴィエト軍が受取る補給ポイントは,チャート上の数値ではなく,各ターンにつき3ポイントです。
○ルール
・15:ユニットの補給と孤立の状態は,各イムパルスの最初に決定します。
*以上が日本語解説書に反映されていない項目の翻訳です。ソヴィエト軍の補給ポイントの訂正など重要な部分も多いので,ぜひともこれらを組込む必要があると思います。
2.追加ルール
今は亡きTACTICS 誌第6号の「内外ゲームガイド」のコーナーに,「ホワイト・デス」について書かれた同誌における唯一の記事があります。ここではソヴィエト軍が第Tターンの第1イムパルスに全ての移動ポイントをつぎ込む作戦が記されており,これに対抗する手段として,デザイナーのフランク・チャドウィックによる追加ルールが紹介されていたので以下に再掲します。
「Lowatj川より西にあるすべての町ヘクスには,最初から守備隊がいるものとします。これらの守備隊は,戦力が1で,防御射撃のみに使える戦闘力4を持ちます。ただし,対戦車力はゼロで,ZOCもありません。攻撃された時には兵員(Pers)として扱い,士気チェックを受けることはありませんが,損害がでれば除去されます。ドイツ軍ユニットがすでにいる時は,守備隊の防御射撃は行われませんし,そのドイツ軍ユニットが撃破及び撃退されれば,守備隊も自動的に消滅します。また,当然のことですが,一旦ソ連軍に占領された町ヘクスにこの種の守備隊が復活することはありません。」
3.ルールの不明点について
以下にルールブックの不明確な部分の筆者自身の解釈について,その根拠などに触れながら説明します。(以下の文章はH社の日本語解説書に基づいています。)
1戦 闘
前記「シミュレイター創刊第2号」の記事では,戦闘のルールが不明確なためにプレイができないことになっています。
このゲームの戦闘は簡単に言うとメイアタックで攻撃の前に防御側の反撃があり,その後に攻撃を解決します。攻撃目標となるヘクスは常に1ヘクスですが,攻撃側は複数のヘクスから当該ヘクスに対して「襲撃」を宣言することができます。攻撃側の「襲撃」に先立ち,防御側による「防御射撃」が行われます。戦闘力はそのユニット固有の戦力にステップ数を掛けたものですが,防御力はユニットのタイプによって,一定の地形において一律(AFVを除く)となります。つまり,ステップ数が防御力に影響しないことでもわかるように,攻撃と防御が完全に別の概念となっております。AFVはそれぞれの車種により固有の防御力を持っています。
さて,「シミュレイター」の記事に出てくる,「射撃」における火力の振分けについてですが,筆者は次のように解釈しています。通常戦闘における「防御射撃」の場合を例にとりますと,多くの場合「襲撃」をかけてくるユニットは複数であり,かつ複数のヘクスに存在する状況となります。
したがって,防御側の「射撃力」を全ての攻撃側ユニットに割当てることは困難です。ルールでは「襲撃を行おうとしている全ユニットは,その襲撃目標であるヘクス内の全敵ユニットから,射撃され得ます。」となっています。
これを防御側から解釈すると「襲撃目標ヘクス内の全ユニットは,襲撃を行おうとしているどのユニットに対しても射撃できます。」となり,極端に言えば,攻撃側の特定の1ユニットに対して,全射撃力をもって「射撃」を実施してもかまわないことになります。(当然,他の無視された「襲撃」ユニットは何の影響も被りません。)ただし,ルール9のCの3にもあるように「標的ヘクス内のすべての火器ユニット(重火器も軽火器も)は,同じヘクス内のどの兵員ユニットに対する戦闘力よりも少ないか,又は等しい戦闘力比で,射撃されなくてはなりません。」という例外があります。
また,前掲のルールには続きの文章があり,「標的ヘクス内にいる各兵員ユニットが射撃を受けないのなら,同じヘクス内の火器ユニットも射撃を受けません。」となっています。実はこの訳文にはやや問題があるように思います。原文では下線部の「各兵員ユニットが─」の部分は,at
all unless each personal unit is attacked.であり,直訳すると「ともかくも,それぞれの兵員ユニットが射撃を受けないのなら,」となり,文意としては「あるヘクスに存在するすべての兵員ユニットが射撃を受けない場合は,同じヘクス内の火器ユニットも射撃を受けません。」となるのではないでしょうか。この表現は明らかに1スタックの中の特定のユニットに対して,射撃力を集中するようなケースを想定して書かれています。(ただし,「ホワイト・デス」の続編ゲームである「スエズ73」では,「最小射撃値」というルールがあり,それによると「可能ならば,標的ヘクス内の各大隊ユニットは,少なくとも5の射撃値で射撃されなくてはなりません。もし,これが不可能であるならば,射撃を好きな様に振り分けて構いません。」となっています。)
なお,通常戦闘において戦闘比が1:3に満たない場合(例えば上記のような射撃力の割当てを行った後にあまりにも小さい数字が端数として残るケース)は,そのような端数は切捨てるということでしょう。
ルール9のCの4「戦闘の解決」において,「防御側ユニットは,通常戦闘の結果,その残存戦力の半分を上回る戦力損失を被ることはありません。」となっていますが,士気チェックに失敗して「潰走」の結果を被った場合の1戦力の追加喪失,並びに退却の際に敵「制圧ゾーン」内を通過することによる場合の1戦力の追加喪失は,これとは別にカウントすると解釈するべきでしょう。(つまり,上記のような条件が重なった場合,1度の戦闘で完全戦力の部隊が壊滅することも十分に起こり得ます。これは,戦闘における「包囲」の重要性を高めることにもなります。)
2砲兵隊
砲兵隊の運用は,このゲームのセールスポイントでもあります。ルールでは「支援射撃」と「弾幕射撃」を全く別の射撃として扱っております。砲兵隊が間接射撃によりAFVユニットを射撃できるのは「弾幕射撃」だけです。なぜならば,「支援射撃」は「通常戦闘」における「通常戦闘力」に「支援力」を加えるように規定されているからです。
また,「支援射撃」は攻撃時と防御時の両方で行えますが,防御時においては1補給ポイントを消費しないと支援力が一律に「1」となってしまいます。(攻撃時つまり「襲撃」を行うユニットに対する「攻撃支援射撃」には,余分に1補給ポイントを消費する必要がありません。これは,「襲撃」を宣言したことにより消費される1ポイントの中に含まれているということでしょう。)
さて,砲兵隊の射撃において射程距離は重要な意味を持っています。射程の半分を超えるユニットに対する「支援力」あるいは「弾幕力」は半分になってしまうからです。
「支援射撃」における射程ヘクスの数え方は,攻撃時においても防御時においても,常にその「支援射撃」を受ける友軍ユニットまでの距離になります。一方,「弾幕射撃」における射程ヘクスの数え方は,実際に弾幕射撃を受ける目標ヘクスの敵ユニットまでの距離になります。ルールでは明記していないのですが,射程ヘクス数とは砲撃を行うユニットのいるヘクス(含めない)から,目標ヘクス(含める)までと定義するのでしょう。
この「支援射撃」における射程の数え方は,SPIの「西部戦線シリーズ」などの砲兵ルールに見られるように,常に攻撃を受けるユニットまでの距離(攻撃時は敵ユニットが存在する防御ヘクスまでの距離とし,防御時は支援を受ける自軍ユニットのいるヘクスまでの距離を数える。)とした方がシンプルだと思いますが(このようにすると,攻撃時には砲兵隊ユニットをより前線に接近して配置させる必要があります。),ルールどおりと解釈すべきでしょう。ただし,「スエズ73」では「支援射撃」における「射程」の概念を以下のように変更しています。「砲兵ユニットは,その射程内にある標的ヘクスに対する他の友軍ユニットの通常射撃を,支援することができます。なお,砲兵ユニットの通常射撃値は,射程の半分を超えると,半分になります。」
3制圧ゾーン
H社の日本語解説書の訳語に従いましたが,「制圧ゾーン」とは一般的に言う「支配地域」あるいは「ZOC」のことです。
このゲームでは,ZOCのルールもやや説明不足なところがあります。ZOCは部隊の移動,戦闘,補給などに影響します。移動の際に部隊が敵のZOCに侵入したら停止するというのは良いのですが(例外有り),戦闘で退却する際に味方ユニットの存在するヘクスは,敵のZOCの効果を打ち消すのかどうか(これは「1戦闘」の最後に述べた,部隊の追加喪失にかかわってきます。),あるいは補給線を設定する際も同様なことが言えるのかどうかがルールに触れていません。筆者はルールに無い以上はどちらも不可と解釈しています。(ただし,「スエズ73」では,補給線の設定においては,友軍ユニットの存在が敵ZOCの効果を打ち消すとなっています。退却の際のZOCの効果についてはやはり触れていません。このゲームでは「士気チェック」のルールがなくなり,退却(ルールでは「撤退」)はプレイヤーの任意となったのです。)
4イムパルスの種類
ルール5:ゲームの手順「イムパルスの種類」について述べます。イムパルスには実行イムパルス(3以上の移動力を消費しなければならない。)とパスイムパルス(1移動力だけを消費する。)がありますが,パスイムパルスの定義がよくわかりません。「パスイムパルスでは,当該プレイヤーは1移動力だけを消費し,弾幕攻撃と鉄道移動のみを行います。」となっています。これだけ読むと,弾幕攻撃(射撃)と鉄道移動はパスイムパルス中でないと実行できないようにも解釈できますが,「弾幕射撃を行う場合に2補給ポイントを消費すれば,同じインパルス中に何個のユニットが弾幕射撃(及び襲撃)を行っても構わない。」となっているので,当然ながら実行イムパルス中に弾幕射撃を行えることになります。しかも,「弾幕射撃を受けて士気チェックに失敗した防御側ユニットは,そのイムパルスの間中,防御射撃を行えない。」という重要なルールがあるため,パスイムパルスに弾幕射撃を行うということは,単に相手(トーチカやAFVユニットなどで,当該イムパルス中には攻撃目標とはしないようなユニット)の戦力を消耗させるために貴重な2補給ポイントを消費させるという場合だけです。
同様に,鉄道移動についても,実行イムパルス中に行っても支障は無いと考えられます。よって,「ソヴィエト軍は各イムパルスにおいて,可能であるならば,最低3移動力は消費しなくてはならない。」という規定だけしておけば,イムパルスを2種類に定義する必要はないと思います。(ただし,相手に先に移動力を消費させてしまうためにパスイムパルスを行うといった作戦は,成り立ち得ます。)因みに「スエズ73」には,イムパルスの種類はありません。
4.ルール変更の提案
ソヴィエト軍の「短機関銃歩兵」についてルールの変更を考えてみましたのでご紹介致します。
●ソヴィエト軍の「短機関銃歩兵」
ルール21:特別ユニット A.白兵戦ユニットの項に追加
ソヴィエト軍の「短機関銃歩兵」ユニットは,所属が同じ部隊(戦車旅団)のAFVユニットとスタックして移動する場合,敵ZOC内に入っても停止する必要はありません。また,敵ZOCから移動を開始する際に,追加1移動力を消費する必要もありません。あたかもAFVユニットと同様に移動できます。「短機関銃歩兵」ユニットは決して対戦車射撃の目標にはなりえません。ただし,一緒にスタックしているAFVユニットが,敵ZOCから離れる際に敵ユニットの対戦車射撃を受けて1戦力でも損害を被ったら,ただちにそのAFVユニットと同じサイコロ修正による士気チェックを受けなければなりません。
もしも,この時スタックしている複数のAFVユニットが損害を受けた場合,全ての損害結果の合計と同じだけのサイコロ修正による士気チェックを受けなければなりません。この士気チェックは,AFVユニットが損害をうけたヘクス毎に行います。士気チェックに失敗した「短機関銃歩兵」ユニットは,そのヘクスで移動を終了しなければなりません。また,AFVユニットとは異なり,「潰走」の結果を受けた場合は追加の1戦力を喪失します。
所属が同じ部隊(戦車旅団)のAFVユニットとスタックして「襲撃」を行う「短機関銃歩兵」ユニットの通常戦闘力は,地形にかかわらず「3倍」になります。ただし,その際の防御力は「1/2」となります。
○コメント
ソヴィエト軍短機関銃歩兵は文字通り,PPsh1941短機関銃を抱えて戦車に跨乗し,敵陣地に突撃していく命知らずの精兵で,大戦中のソヴィエト戦車隊戦術の代名詞とも言える部隊です。1942年のこの戦いが行われた時点において,すでにソヴィエト軍がこの戦術を用いていたのかどうかは確証がないのですが,これらのユニットの移動手段は「T」であり,少なくとも装軌式車両は装備していたと考えられます。そのように判断すると,これらのユニットに臨時に装甲防御力を「1」程度与えて,対戦車射撃の目標となりうるようなルールも考えられます。その際は通常戦闘における火器ユニットと同様に,同一ヘクス内にスタックする全てのAFVユニットが対戦車射撃を受けなければ,短機関銃歩兵は対戦車射撃を受けないといった制限ルールが必要となるでしょう。
筆者は以前から,この短機関銃歩兵が敵ZOCを通過できないという理由で,AFVユニットに置いてきぼりにされてしまうことに不満を感じていたので,このような改定ルールを考案してみました。当初は分割ユニットにして実際に各AFVユニットに随伴させるようなルールも考えたのですが,できるだけシンプルな形にするべきであるということからこのようなルールになりました。(「短機関銃歩兵」という名称は,跨乗歩兵を意識して付けられたと思います。)戦闘力が3倍云々というのは誇張気味ですが,元々の戦力が低いのでたいした影響はないでしょう。また,この部隊の消耗率が非常に高かったことを反映させるため,損害を受けやすくしました。(これらの兵士の平均寿命は数週間と言われていました。)
5.最後に
「ホワイト・デス」もすっかり古いゲームとなり,今では手に入れにくくなってしまいました。1ユニットが大隊規模のゲームは部隊編成を細部まで再現でき,しかも適度の戦術性を持たせられるという利点があるため,楽しめるゲームが多いように感じられます。実際,「ホワイト・デス」に出てくる多数の独立部隊は,もう少し規模の大きいゲームでは恐らく省略されてしまうようなものばかりです。ドイツ軍は当初この方面に小兵力しか配置していなかったため,あらゆる雑多な部隊がかき集められて前線に投入される様子が良く分かります。観測大隊,ブランデンブルグ部隊などはこのゲームならではのユニットです。(それぞれの特殊ルールも!)また,砲兵部隊の重要性をひしひしと感じさせてくれる点でも希有なものと考えます。
コンポーネントは現在流行りの多数の色を使った派手なものではなく,淡く渋い色調で趣味の良さを感じさせます。まさにヴェテランゲーマーにお勧めしたい,東部戦線マイナー・ゲームのひとつです。

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