日本考古学協会会長→埋蔵文化財保護対策委員会委員長→委員各位                                           2004年10月8日

日本考古学協会会員  鈴木 正博

馬場小室山遺跡緊急発掘調査の経緯と研究者ボランティア活動推移

地域住民の保全運動と研究者ボランティア活動(含新聞報道)

さいたま市教育委員会の対応

さいたま市遺跡調査会の対応

********研究者ボランティア概要(9/17〜9/30)********

【専門家(大学、長野県・関東各県の周辺自治体専門職員(含課長補佐、係長)など)】

・延べ180名参加

【埋蔵文化財担当(役職)者(複数)による発掘調査見積】

・費用:50百万円(最低30百万円)

・調査期間:最低でも半年

【特記すべき学術成果の概要】

【1】縄文時代中期中葉集落を基盤とした後晩期「多層位住居累積盛土遺構」の発見と「環状土塚集落」の存在証明(本邦初!)

【2】縄文時代晩期「多埋設土器群大土坑」と「環状土塚集落」とのセット展開

・指定文化財を検出した第51号土坑の群在を確認(本邦初!)

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◎馬場小室山遺跡の保存運動(2003.8・9) :元地権者の保存意志と浦和市教育委員会の保存啓蒙努力を継承。競売の中止と保全を求める活動を地域住民(リーダ:飯塚夫妻(三室在住))が行い、三室地区住民を中心とした約5,500人の署名を財務省関東財務局とさいたま市(公用公共用優先の原則の適用)に提出。地域住民へはその旨を逐次チラシで周知・徹底。

        

◎<9/8(水)>日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員の視察

・早稲田大学高橋龍三郎教授と保護対策の必要性検討。

◎発掘調査体制適正化の検討と要望書など(【 】内ゴヂック体は正式文書名)

<9/15(水)>明治大学阿部芳郎助教授と共に9/17の調査終了は不可能と判断、高柳としや議員に来跡を請い、文化財保護課との交渉を決断。

<9/16(木)>【馬場小室山遺跡の調査に関する要望書】(2004-9-16)

・文化財保護課に対し、発掘調査情報公開と発掘調査体制の適正化を要望。

<9/17(金)>【馬場小室山遺跡の発掘調査に関する支援体制】(2004-9-17)

・支援体制具体化と有識者へのボランティア支援メール送信、及びメール内容の文化財保護課へのFAX。六一書房も支援依頼をHPに掲載。

<9/20(月)>【馬場小室山遺跡の発掘調査支援結果報告と今後の対応(要望)】(2004-9-20)

・再度現地説明会の実施と発掘調査の適正化を要望

<9/21(火)>日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会から【馬場小室山遺跡の保存に関する要望書】(2004-9-21):文化庁長官、埼玉県知事、埼玉県教育委員長、さいたま市長、さいたま市教育委員長、さいたま市遺跡調査会長宛発状。

<9/30(木)>埋蔵文化財保護対策委員長の視察(9/29)結果を、【馬場小室山遺跡に関するコメント】(2004-9-30)として一般公表(日本考古学協会のホームページで情報公開)。

<9/30(木)>【馬場小室山遺跡の発掘調査終了の件(研究者ボランティア結果の概要)】(2004-9-30)

・調査の進捗(調査未了)と調査精度低下の報告、及び今後の対策の要望。

◎東京新聞 磯谷佳宏記者による関係機関・関係者の取材(2004.9.30)と報道(10.1朝刊)

・「縄文遺跡の調査“強制終了”」、「市教委「最低限は終えた」」、

「考古学協会保存求める」

◎<10/7(木)>【馬場小室山遺跡緊急発掘調査の課題(研究者ボランティア報告)と今後の対応(要望書)】(2004-10-7)

・調査未了地区の現状保存、及び情報公開の早期化対応「馬場小室山遺跡研究会」の立ち上げと推進支援

◎埼玉県教育委員会による遺跡の範囲確認調査(1983.4・5)

◎文化庁と浦和市教育委員会などによる国指定史跡化の推進・遺跡の資格は充分。区画整理事業の中断により断念。

◎『浦和市歴史文化叢書F 馬場小室山遺跡』(1984.3.31)

・馬場小室山遺跡の重要性と保存を市民へ啓蒙!!

発行所:浦和市郷土文化会(浦和市教育委員会内)

  発売元:(株)さきたま出版会/現在購入可(1冊525円)

◎東側半分を浦和市が区画整理事業の一環で購入(1991)

◎『浦和市出土品百選』刊行(1994.10.1)

・百選中、馬場小室山遺跡出土品は最多の11選を占め、浦和市で馬場小室山遺跡の重要性は最優先の位置付け。

発行者:浦和市教育委員会教育長

◎西側半分は相続税として物納(1997)

◆さいたま市文化財保護課は浦和市教育委員会のこれまでの保存継続努力と遺跡としての指定を否定(2003.7.13) : これまで重要な遺跡として住民に啓蒙してきた経緯を全く無視しており、住民に対して遺跡であることを否定した理由が不明。文化財保護の方針を変更し、特に今回のように馬場小室山遺跡を保存対象から除外した対応や、住民運動を無視した緊急発掘調査(含試掘調査結果)に至る経緯が全く不明。速やかに全経緯の情報公開を要望する。

◎ <9/16(木)>即時に調査体制の適正化(作業員の増強、文化財保護課職員(特に馬場小室山遺跡発掘調査経験者)の支援、研究者ボランティア支援の受け入れ、調査期間の9/22までの延長)を指導し、結果を文書にてFAX回答。

◎<9/23(木)>調査体制適正化の継続を指導(9/30までの延長)

★<9/30(木)>調査期間終了指示!

・事業者との契約期間の終了を以って自動的に調査終了とする立場を強調し、調査未了でも工事開始を指示!

事業者への説明内容及び事業者との契約内容が不透明のため、経緯を含めた全資料の情報公開を要望すると共に、契約内容を教訓として文化財保護の観点から審議したい。

*国指定史跡化を推進した経緯のある馬場小室山遺跡の調査には、事業者の立場を弁護するのではなく、文化財保護の立場で万全の体制で臨み、今回のような状況を二度と繰り返さないようなリスクマネジメントを要望!

◆<10/7(木)>要望への文化財保護課長以下役職者対応は沈黙のみ! 昼休みにフォローするも事業者弁護に終始!

★<10/8(金)>重機による工事進行に伴う緊急事態にも拘らず、文化財保護課の担当者と連絡不能。保護努力に不信感!

◎「盛土遺構」の認識 :主任調査員が南方遺跡の発掘報告書(2002.3.22)で注意を喚起。

・後晩期遺跡の調査では、高低差の問題に拘らず「盛土遺構」の存在は確実となり、精査の必要性を強調。

◎発掘調査方法の検討と実施状況 :馬場小室山遺跡は国指定史跡「井野長割遺跡」よりもダイナミックな「盛土遺構」に特徴があり、主任調査員も慎重に調査方法を検討。

<6/25(金)>明治大学阿部芳郎助教授他と現地で調査方法の事前検討会

<7/23(金)>明治大学阿部芳郎助教授他と現地での調査状況検討会

<7/30(金)>国指定史跡「寺野東遺跡」発掘調査担当者と現地で調査状況検討会

◎以上の検討会を通して、馬場小室山遺跡の緊急発掘調査方法応としては、最善の努力が払われていることを確認。

◆但し、遺構の密度と広がりに対して、専任の調査員が絶対的に不足。

◎<9/30(木)>調査期間終了指示まで文化財保護の倫理観・使命感に則り、最善の努力で発掘調査を遂行。

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