2004年10月11日
株式会社 アイダ設計 代表取締役社長 會田 貞光 様
日本考古学協会会員
鈴木 正博
馬場小室山遺跡に関するご依頼の件
秋冷の候、貴社におかれましては益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
早速ですが、小生は、今回貴社が競売にて落札され、宅地造成の前にさいたま市教育委員会文化財保護課の指導の下にさいたま市遺跡調査会が緊急発掘調査を実施した馬場小室山遺跡で明らかになった文化財の価値に驚き、日本考古学協会に所属する研究者にボランティアを呼びかけたものです。
その結果、大学教官・院生・学生・OB(含地方自治体埋蔵文化財担当の課長補佐、係長)たち、延べ180名が手弁当で発掘調査に協力して下さいました。
しかし、10/1付東京新聞の報道にて一躍脚光を浴びることになりましたように、馬場小室山遺跡の重要性に鑑み、日本考古学協会からは文化庁、埼玉県知事をはじめとして関係各位へ要望書が出されましたが、文化財保護課からは、貴社との契約にもとづき、調査未了であるにも拘らず、9/30に調査期間終了の指示が出されました。
調査期間は猛暑や台風による豪雨により、さいたま市遺跡調査会や研究者ボランティア、及び文化財保護課の努力にも拘らず、当初の計画通りには調査が進行せず、貴社におかれましても懸念であったことは十分に推察されるところであります。
そこで調査未了地区につきまして、貴社におかれましては地域社会への貢献の一環としまして、可能な限り馬場小室山遺跡の埋蔵文化財保存にご理解賜りたく、以下の通りご依頼申し上げます。
尚、ここに至る経緯につきましては別添資料の通り、日本考古学協会に報告済みです。
― 記 ―
1.馬場小室山遺跡の発掘調査区におきましては、10/11(月)時点で調査未了区(調査区全体積の20%)が残されております。特に調査区南側の奥まった高まり部分には縄文時代後期から晩期にかけての包含層が未発掘のまま残されており(「残存埋蔵文化財」と呼称)、この埋蔵文化財の取り扱いが懸念されます。
貴社の宅地造成計画を一部変更し、調査区南側の奥まった高まり部分を現状保存の上、緑地化し、「アイダ設計盛土遺跡記念碑」として貴社の社会貢献活動の一環として、馬場小室山遺跡の重要性を後世に伝えることを提案します。地域住民も貴社のイメージを好感し、長期的には事業拡大に貢献するものと思量します。
2.「アイダ設計盛土遺跡記念碑」が事業的に困難である場合に大きく懸念されますのは、「残存埋蔵文化財」の取り扱いです。
調査区南側の奥まった高まり部分の土を、どこか他所に移動しますと、その土の中には多量の埋蔵文化財が混入しており、他所が新たな遺跡として誤認される恐れが多分にありますので、「残存埋蔵文化財」の取り扱いには、改めて文化財保護課にご相談されますよう、10/11時点の状況から切にお願い申し上げます。
尚、文化財保護課にもこのご依頼の写しを送付し、貴社からのご相談を最優先する旨の要望を行います。
以 上