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検証「骨太方針」


 

 小泉自民・公明内閣は七日、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針(骨太方針)2006」を決定しました。同方針は、「財政再建」を口実に、社会保障の大改悪と消費税増税への道筋を示しました。
 「骨太方針」は全四十七ページに及びます。

借金の責任は誰に 五年間で百七十兆円

 「財政健全化に向けて、『歳出・歳入一体改革』の策定とその具体化に向けて全力を尽くすことが不可欠」。と強調しています。
 国債残高は約五百四十二兆円(〇六年度予算)に達し、国と地方合わせた長期債務残高は約七百七十五兆円にもなります。
 「骨太方針」の第一章で、直面する内外の課題で、我が国固有の困難として、「雪だるま式に増加する借金の返済を後世代に先送りする構造」となっており、「現世代が自ら負うべき借金の返済を『声なき後世代』へ先送りすることは許されない」。と強調しています。異常な借金漬けの責任が、現役世代の国民にあるかのごとく述べています。
 小泉内閣が五度にわたる予算編成で積み増しした新規国債発行額は百七十兆円に上ります。
 小渕恵三元首相が積み増しした新規国債発行額七十兆円の二・四倍にもなります。


 


 「骨太方針」では、これまでの改革の成果として、不良債権処理の加速化を中心に企業部門の三つの過剰問題(雇用・設備・債務)も解消した。としています。しかし、その結果は、失業者の増大、中小企業の倒産,経済的格差の拡大などが顕著となり、年金・医療・介護などの連続改悪による負担増や増税が国民に押付けられる結果となりました。

大企業の税負担は軽減税収の空洞化進む

 自民党政治のもとで、九〇年度予算から〇六年度予算まで間に、国債残高は三百七十五兆円も増加しました。そのうち公共事業の積み増しによる影響が約六十兆円、税収減による影響が約百六十兆円に上ると財政制度審議会はみています。
 「効率化・重点化」の掛け声のもとで、関西空港二期事業、スーパー中枢港湾、大都市の高速道路などの公共事業は温存。
 「国際競争力強化」「経済活性化」の掛け声のもと、大企業にかかる税金は優遇されてきました。研究開発減税やIT促進税制、連結納税製の導入など、大企業の税負担を軽減する税制「改正」が、法人税収を減少させつづけてきました。また、株式譲渡益や配当所得にかかる所得税の軽減措置など高額所得者に対する優遇税制が所得税収を減少させてきたのです。


 


社会保障大改悪と消費税増税の「歳出・歳入一体改革」

 大型公共事業や軍事費は温存する一方、大金持ち・大企業優遇税制で、本来得られる税収を空洞化させてきた小泉内閣。「骨太方針2006」は、「構造改革路線の堅持」を掲げ、この路線の継続を宣言しました。
 「財政健全化」のために小泉内閣が掲げる「歳出歳入一体改革」のいきつく先は、社会保障の大改悪と消費税増税という、国民負担増への道です。
 借金膨張の原因を反省するどころか、そのツケを国民に押し付けるのが、「骨太方針」であり、この道は、くらしと経済の破壊しかありません。

水増しされた不足額 公共事業費は大盤振る舞い

 「骨太方針」は、二〇一一年度までの財政不足額を十六兆五千億円と試算しました。この不足額を「財政健全化」を口実に、歳出削減と増税で賄う考えです。
 不足額が水増しされた数字である事は、経済財政諮問会議でも「(公共投資は)大盤振る舞いした数字を仮定して、そこから歳出削減を考えるという議論はよく分からない」という異論で出ていることからも明らかです。


 


財源不足額二兆二千億〜五兆一千億は増税へ

  十六兆五千億円の不足額を前提に、今後五年間にわたる歳出削減額を十四兆三千億円から十一兆四千億円として、残りの二兆二千億円から五兆一千億円を増税で賄う考えです。
 歳出削減では、各分野の策減額が明示されています。社会保障は一兆六千億円を削減。公務員人件費で二兆六千億円を削減。公共事業は三兆九千億円から五兆六千億円削減するとしています。

公共事業費毎年3%増

 公共事業費が三兆九千億円から五兆六千億円も大幅に削減されるように見えますが、公共事業の削減を過大に見せることによって、社会保障費を大幅に削減しようとするたくらみが隠されています。
 公共事業費は、今後五年間で毎年3%ずつ増やして約三兆円も増加することを仮定。その上で、五兆六千億円から三兆九千億円圧縮するとしています。〇六年度の十八兆八千億円と比較して二兆七千億円から一兆円の削減にしかなりません。

大型公共事業は温存

 「重点化・効率化」の掛け声のもとで、生活に密着した公共事業を削減し、大型公共事業を温存し続けてきた小泉内閣。「骨太の方針」は、今後五年間にわたっても、この方針を「基本的に継続」し、大企業にもうけをもたらす大型公共事業を聖域化しています。


 


軍事費を聖域化 米軍に配慮どこまでも

 (4)では、大型公共事業は温存している事を明らかにしました。今週はもう一つの聖域化している軍事費と大企業税制について考えたいと思います。
 「骨太方針」では、軍事費について今後五年間は「名目伸び率ゼロ以下の水準とする」と明記しています。すでに軍事費については、〇六年度予算で四兆八千億円となっており、これ以上の軍事費の伸びが横ばいでもかまわないということです。

米軍へは特別措置

 しかし、日本負担が三兆円といわれる米軍再編経費については、歳出削減の中で、「支障が生じると見込まれる場合は、各年度の予算編成過程において検討し、必要な措置を講ずる」と特別な上乗せを認めています。

大企業優遇税制で聖域 大企業減税を検討

 「骨太方針」では、わが国税制に求められる「基本的あるいは政策的課題」として、「経済のグローバル化の中で、わが国経済の国際競争力を強化し、その活性化に資すること」を強調しています。これは、裏を返せばもっと法人税率を引下げる、大企業減税を検討するということです。実際に、政府税調委員の丹羽宇一郎氏(経団連前税制委員会共同委員長)は、七月に政府税調の会合に出した文書の中で、「国際競争力強化に資する法人課税の見直し」として「法人実効税率の引下げ」を求めています。


 


社会保障費 一兆六千億円削減 国民への痛み「継続」

 「過去五年間の改革を踏まえ、今後五年間においても改革努力を継続する」と強調する骨太方針。
 方針では、一兆六千億円に上る社会保障分野の「削減額」について、「過去五年間の改革(国と地方あわせてマイナス一・六兆円相当の伸びを抑制)」に相当するとしています。これは、過去五年間に国民への痛みを「継続」し押し付けることになります。

「自然増」を圧縮

 高齢化の進展によって増加するいわゆる自然増。これを制度「改革」によって圧縮・抑制するというのが小泉内閣の方針でした。小泉内閣は、〇二年度予算以来、毎年の概算要求基準で社会保障の自然増分の圧縮を打ち出していきます。これが、〇二年度の医療改悪、〇四年度には年金改悪、〇五年度には介護保険改悪、〇六年度は医療改悪として具体化・実施されてきました。

低所得者を排除

 サラリーマンの医療費本人負担を三割に、物価スライドによって年金給付を〇・三%削減、高齢者の医療費一割負担徹底・さらに引き上げ、厚生年金保険料を毎年〇・三五四%引上げ、介護保険料引き上げ…。
 小泉「構造改革」の下で、国民に押し付けられた社会保障改悪によって、庶民の負担は増え続け、逆に給付は切り詰められてきました。
 これは、所得の少ない人ほど自らが望む福祉を受けられない事態を引き起こしています。


 


負担あれど、給付なし

 先週号で医療・年金・介護などが三年または四年サイクルで改悪されている事を示しました。今年の医療制度改悪では長期療養型病床と介護療養型のベットの全廃などが決定され高齢者の病院・施設からの追い出しが現実化されてきます。
 現在でも、一般病床では在院日数の短縮で病後の容態が安定しなくても追い出される事態が進行しています。
 窓口負担や保険料が値上げされているにもかかわらず、必要とされる治療から排除されます。 高齢者を対象として部屋代や食費を保険からはずし、大幅な負担増で低所得者を病院から追い出そうとしている事からも明らかです。

社会保障改悪を五年間継続 低所得者を作り出す

 「骨太方針」が示す「改革の努力を継続」というのは、社会保障改悪を今後五年間も継続する負担増計画なのです。
 それは、給付削減によっていっそうの低所得者を作り出し、社会保障サービスから排除される人々を増やす事につながります。

社会保障の財源は消費税で

 「骨太方針」は社会保障の安定財源として消費税を明確に位置付けることを「検討する」ことを盛り込みました。財源不足額と歳出削減分の差額については、「歳入改革」として消費税の引上げを示唆しています。
 消費税は所得の高低弐かかわらず同じ税率での負担を求められます。
 消費税が社会保障財源として位置付けられれば、“負担あれど、給付なし”の状況をいっそうひどくすることになります。


 


“兵糧攻め”の末に増税

 六十五歳以上の老年人口が総人口に締める割合が二十一・〇%に│。
 総務省が発表した調査結果は高齢化の進展を浮き彫りにしています。
 「骨太方針」はこうした状況を踏まえ、増加する社会保障関係費の伸びを厳しく抑制することを求める一方で、社会保障の「安定財源」確保にこだわっています。方針では、「安定財源」を「国民が広く公平に負担し、かつ、経済動向に左右されにくい財源」と特定しています。これは、消費税のことを意味しています。

目的税化の狙い

 「歳入改革」では、「消費税をその財源としてより明確に位置付ける」という目的税化については、「給付と財源の対応関係の適合性を検討する」という文言が盛り込まれています。「給付と財源の対応」とは、“財源なくして給付なし”ということを意味します。これが目的税化の狙いです。つまり、社会保障の給付を確保するためには、それに見合った財源が必要だとして消費税率の引上げを図るというやり方です。
 「歳出削減をどんどん切り詰めていけば、やめてほしいという声が出てくる。増税をしてもいいから、必要な施策をやってくれという状況になってくるまで、歳出をカットしないといけない」。小泉首相は「歳出削減」の本音を語っています。
 “消費税増税がイヤなら社会保障をカットする”“社会保障カットがいやなら消費税を増税する”。
 小泉自民・公明内閣は、国民に選択を迫ろうとしています。


 


最終回は小泉内閣の五年半の政治が社会保障の分野で何をしてきたのかを検証してみたいと思います

圧縮し続けた社会保障費

 高齢化の進展によって増加する自然増分の社会保障費は、〇二年度から〇六年度までの五年間で、一兆一千八百億円削減されています。〇二年の医療改悪に始まって、〇三年雇用保険、〇四年年金、〇五年介護保険、今年の医療改悪へと、連続して社会保障改悪が行なわれてきました。一方で国債の発行残高は増え続けています。

借金は過去最高へ

 小泉内閣が積み増しした、新規国債発行額は約百七十兆円と過去最高となっています。
 この間企業の経常利益はバブル期の最高(八九年の三十九兆円)を大きく超え、〇四年には四十五兆円に拡大しています。ところが、この間の法人税収は十九兆円から十一兆円、八兆円も減っています。
 庶民には大増税、企業・高額所得者には減税したままです。この方針を引き継ぐのが、「安倍新内閣」です。
 小泉政治の継承では、庶民の暮らしを守ることはできません。来年の参院選・地方選挙で審判を下すことが必要です。