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 私がここ枇榔島に来たのは、去年の12月でした。それから少しずつ仲間も増えてきて、2月頃から妻と二人で何度か島の上空を飛び回りました。3月に入ると巣穴のチェックです。だいぶ草も生え、去年の春とはだいぶ周りが変わっていたけれど、私にはすぐ自分たちの巣穴がわかりました。
 3月の半ば、あの日は海を渡る風が甘く薫っていましたっけ。妻はいよいよ産卵です。日が暮れると私は妻に付き添い、島の上まで見送りました。妻は産卵を終えるとすぐにまた海に戻ってきましたが、昼間見た妻とは別人かと思うほど、げっそりとやせてしまいました。私たちの卵はとても大きくて、体重の2割くらいあるんです。それから一週間して、妻は二つ目の卵を産みに行きます。卵はこれで全部です。
 二つ目が産まれてから3日後、私は卵を抱きに巣穴へと行きました。それまではたまに夜だけ来ては卵を抱いてみたりしたのですが、それから妻とだいたい2日交代で、昼間も抱くようになりました。