夜になると、ひなたちの小さな体を温めていたお父さんのところに、
お母さんが戻ってきました。
「さあ、坊や、殻をやぶって出ておいで。」
お母さんがそう言うと、ひなたちはつきづぎと殻から出てきました。
遠くでオオミズナギドリの声がしています。
「明日の夜は巣立ちだ。坊やたちを海に連れていくよ。」
お父さんはそう言うと、ぶるぶるっと羽音をひびかせ、
まっすぐに海に飛び去っていきました。
ひなたちはお母さんに抱かれながら聞きます。
「海ってなに？」
「海ってどんなところ？」
「海ってこわいの？」
「きゃー、こわい」
お母さんが言います。
「こわくない、こわくない。海には何でもあるのよ。
さあ、今日はもうおやすみ。」