3.「ききみみ日記」

 まるで何も考えていないかのように、無表情なうさぎ。
そして、1日のほとんどをゴロゴロと寝て過ごす、怠惰なねこ・・・。
ともすれば、のほほーんと暮らしているかのようにも見えるのですが、彼等にもそれなりの日課があり、実に規則的な生活をしているものです。

 たとえば、朝。
静寂を切り裂いて、目覚まし時計が鳴り響きます。しかし誰も起きる気配がない。すると、どこからともなく、ねこがのっそりと姿を現わします。
 ねこは、まず最初に目覚まし時計の持ち主の顔をじっと見下ろします。目撃者の話しによると、それは、あたかも呪いをかけているかのような、恐ろしい光景なのだそうです。しかし、悲しいかな、呪いの儀式はほとんどの場合成功しません。そこで、ねこは仕方なく熟睡者の布団の中にもぐり込むと、まずは足元で一緒に眠ります。ひと眠りしてから、今度はおもむろに背中あたりまでいくと、「そろそろ起きろよー」とばかりに頭を押し付けます。それでも起きないと、今度は胸の上に乗り、自分の全体重をかけるという危険な手段にうってでます。呼吸困難な状態になった人間は大変苦しいので、たいていの場合、ここで起きることになります。
 こうして、人間を起こすことができたものの、なお、ねこの監視は続きます。のろのろと顔を洗っていれば、業を煮やして耳元で「にゃっ!」とせかします。トイレに入れば、「早く出ろー」と外からドアノブをカリカリとひっかき、今にも開けてしまいそうな雰囲気をかもし出します。人間が、朝からゆっくりネットサーフィンでも・・・なんて考えようものなら、マウスを操作する手をガジガジとかんだ挙句、とどめに「にゃっ!」と怒るという具合です。
 この拷問は、人間がねこの朝ごはんを用意するまで延々と続けられるのです。

 ねこの朝ごはんの次に、やっと人間の朝ごはんの時間です。しかし、ねこの呪縛から解放されたからといって、安心してはいられません。なぜなら、まだ我が家にはうさぎ様が控えていらっしゃるからです。
 一晩カゴの中に閉じ込められていたうさぎは、ねこ騒動が落ち着いた頃を見計らって、「さぁ、今度は僕を出せ、出せ、出せ!」と、すごい勢いで騒ぎ始めます。
エサ箱はひっくり返すし、水はこぼすし、ベッド用の箱は背負い投げするしで、お前はそこまでやるか・・・と泣きたくなるほど、むちゃくちゃやります。カゴから出してもらえるまで、30分でも1時間でも騒ぎ続けるのです。
仕方なくカゴの扉を開けると、待ちかねたようにうさぎが飛び出してきます。
 うさぎは、いかにも嬉しい!ということをアピールするかのように、頭をぶんぶん振り回しながら跳びはねます。時には頭を振りすぎて、勢い余ってタンスに激突したりもしますが、そんなことはお構いなしです。うさぎは何度か危険なジャンプを繰り返すと、今度はダダダダッと無意味なダッシュを始めます。でも、ふだんの運動不足がたたってか、すぐに体力を消耗してしまいます。しかし、体力の消耗がなんぞや!とでもいうかのように、さらにダッシュを繰り返します。
陸上部員のような練習メニューをこなしたうさぎは、しばらく石のように動かなくなります。でもすぐに、ねことの鬼ごっこを始めます。追いつ追われつのスリルを楽しむかのように、いつまでも家の中を駆け回るのです。
 このように、ひとしきりの好奇心を満たしたうさぎは、気が済むと途端に静かになります。そしてまたカゴの中へと、自ら戻っていくのです。

 夜は夜で、夕ごはんを作れとねこが訴えます。
そして、またしてもうさぎが自主トレを始めるのです。
人間がお風呂に入ると、ねことうさぎが交代で様子を伺いにやってきます。中に入るのは嫌いなくせに、必ず見にやってきます。
そして、人間が寝る準備を始めると、うさぎが「もう、そんな時間ですか。」というように、カゴの中へ帰っていくのです。

 これが、我が家の一日です。
ねっ、なかなかどうして、規則的ではありませんか?
こんな彼等に幸あれ、と願わずにはいられません。(笑)



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