6.「ねこの苦悩」

 結女は、ポリシーとプライドをもったねこです。人間とベタベタ接するのは嫌。気に入らないことをさせられるのも嫌。でも自分が一番じゃなきゃ、もっと嫌。
わがままと言ってしまえばそれまでですが、そこがまた可愛くもあり、世のねこ好きファンを魅了しているとも言えるでしょう。

 ねこ好きな家族に囲まれて、結女はそこそこに幸せな毎日を送っています。ごはんもおいしいし、陽当たりのいい部屋もあるし、お気に入りの寝場所もいくつかキープしているし。平凡だけど楽しい我が家。何も不満なんかないはずでした。それでも、結女にはひとつの悩みがあったのです。
 それは、うさぎの「おはな」です。
聞くところによると、自分が来るずっと前からこの家にいるらしいうさぎ。年上とはいえ、自分よりも小さなうさぎ。遊ぼうと声をかけても、手を出しても、無視するうさぎ。そうかと思うと、急に鬼ごっこを始めるうさぎ。何を考えているのか、さっぱり心の読めないうさぎ。そう、うさぎという奴が曲者なのです。
なぜなら、人間になんか構ってもらわなくても全然平気さ、という顔をしているくせに、ちょっと目を離したすきに、頭をなでてもらって目を細めていたりするからです。
家族はみんな自分のことを可愛がってくれている。けれど、うさぎには邪魔されたくない。結女にとって、うさぎは常に勝たなければならないライバルなのです。
 たとえば、人間がうさぎを抱き上げたり、声をかけたりしている時。結女は、タンスの上や押し入れの物陰から、じっとこちらを見つめています。幸せそうなうさぎを見つめる結女の目は、それはそれは恐い目になっています。でも、その時はじっと見つめるだけです。決してうさぎに手出しはしません。
人間が離れ、うさぎが一人になった時、結女はゆっくりと歩き始めます。こんな時の結女は、肩をいからせて、とてもガラの悪い歩き方をします。
そして、うさぎの前にくると、睨みをきかせて脅します。「誰に断わって、人間と仲良くしとんねん。ええ、根性やのぉ。」という感じです。こんな時の結女は、関西弁をしゃべります。
ところが、うさぎは無表情でねこを無視するので、結女の怒りは頂点に達します。さらに睨みをきかせて、頭もペンペンとたたいてみます。でも、うさぎは「関係ないもん。」という顔をしているので、暖簾に腕押しです。
そこで、さらに頭をペンペンとたたいてみます。すると、うさぎが何の前触れもなく、急に自分に突進してきます。驚いた結女は、おもわずお腹を見せて、降参のポーズをとります。しまった・・・と思った頃には時すでに遅しで、結果はうさぎの作戦勝ち。うさぎは悠々と、元いた位置へとまた戻っていくのです。
すっかりやる気のなくなった結女は、うさぎの横でゴロ寝。
お互いに匂いを嗅ぎ合ったりしながら仲良くツーショットになるというのが、我が家のいつものパターンです。

うさぎは嫌いじゃない。でも人間にはいつも甘えていたい。うさぎはライバルだ。でも勝てない。
そんなジレンマに苦悩する結女なのでした。



←もくじへ  つぎのお話→