「みっちゃん」
「…うん」
ぎゅう、と、強い力で抱き締められる。
さっちゃんは、私よりちょっとだけ背が低い。けど、やっぱりなんて言うのかな、手も足も大きいし、包容力?があるというか。これはまあ、性格みたいなもんかね。
まあ、身近にいるのが幼馴染の高山『セックスのバケモノ』誠人と双子の弟の屋代『エロの権化』深幸、加えて父親の屋代『結婚20年今だ妻萌え』功太くらいだから、ある意味さっちゃんの穏やかな性格は新鮮なものなんだけど。
…さっちゃんと出会ったのは、高校入ってすぐの事。道行くサラリーマンに押されて、バスに轢かれて入院、留年したという人で、クラスでもちょっと浮いていた。元々友達もいなかったみたいだし。
5月頃、屋上で用務員のおばちゃんといちゃこいていた誠人が、自殺しようとしていたさっちゃんを発見・捕獲して、私の所に連れて来たのだ。
後で聞いたら、視力8.0くらいあるさっちゃんが、大分離れた一軒家に空き巣
が入っているのを見ていたそうだが(通報したら間に合った)。
それが元で、仲良くなって、半年くらい前に深幸が金持ちの令息に間違われて誘拐された事件をきっかけに好きになって、告白して、今に至る。
けど、疑問がひとつ。
会話の45%がエロ話の誠人・深幸と一緒にいても全然普通な顔してて、エロ関係には全く興味無さそうな…まあ、それはそれで健全な男子学生としては問題アリなんだけど…そんな感じだったのに。
「あ、あの、みっちゃん、こっち向いて」
そう言って、私の両頬に手を添える。ああ、下向いてちゃったか。私は顔を上げ、眼を閉じる。すると、すぐにキスされた。触れるだけ。でも、なんだかドキドキしてくる、キス。
でも、どうして?
なんでなの?もしかして、私の事、嫌いなの?
―――なんで、体育倉庫なの?
「…見付かっちゃわない?」
マットの山に隠れるように敷いたマットの上で、私のシャツがはだけられて行く。そりゃ、明日からテストで、部活も無い。最終の見回りも終わったからもう誰も来ない。加えて体育倉庫の置くの扉の向こうのもう1つの体育倉庫だから、ある程度声が出ても大丈夫と。
ついさっき、そんな説明されたんだけど、正直、怖い。
だって、どうしてそんな情報持って…あ、そっか、会話の47%がエロのあいつらの話を聞いていたから…かな。
「大丈夫…だと思う。一応、鍵掛けたし」
にこ、と、その笑みはいつも通り。悪意の無い笑顔。滅多に笑わなかったのに、
最近は結構笑ってくれるようになった。嬉しい。けど。
「……」
手際よく、ブラのホックを外す。薄明かりの中で、好きな人の前でおっぱい晒すって、恥ずかしい。恥ずかしいのに、嫌、と言えない。
「綺麗だよ、みっちゃん」
うわ。そんな簡単な言葉なのに、身体中が熱くなってしまう。
「…ありがと」
どうも、慣れない。さっちゃんとエッチするの、もう6回目くらいなんだけど、
やっぱり恥ずかしい。自分の中で、エロとさっちゃんがどうも、上手く繋がらないからかな…
さっちゃんを好きになった理由に、どこか中世的、というものがあったと思う。
そりゃ、いつもいつも、会話の48%がエロの弟と幼馴染といたら、さっきも思ったけど、やっぱ新鮮だし。
…会った当初は、人形みたいにあんまり反応とかしなくて、誠人・深幸のハイテンション組、私・さっちゃんのローテンション組みたいになって、それでも、少しずつ笑って、慌てたり、怒ったり…泣いたりしてくれて。
男の人として見てなかった訳じゃなくて…いやいや、男の人だ、と思ったから、
きっと好きになったんだと思う。
なんだかよくわからなくなって来たけど、早い話が、さっちゃんと付き合うって決まった時、こういう…肉体関係になるのは、大分先だと思っていた。自分の願望もあったし、身体で繋がるよりも、心で繋がってる時間の方が欲しかった。
けど、さっちゃんはある日から急に、変わっちゃった。
いつもは一緒だし、基本的に変わらない。でも、キスしたり、私の身体を触るようになって来た。
嫌じゃないし、いつかはこうなるとは思っていたけど…正直、早過ぎた。
口にはしなかったけど、行動は完全に『私』を求めていた。
気付かない振りをしてやり過ごす度に、次からの行動がエスカレートして来た。
…怖くなって、言おうかどうか迷った。だって、さっちゃんだから。もしかして、ただ甘えたいだけかと―――人に甘える事が苦手だって、そう言ってたさっちゃんが、私に心を開いてくれたって思った。思い込もうとした。
そんなアフリカの黄色いお菓子くらい甘い考えは、すぐ打ち砕かれた。
ある日、さっちゃんの家でゲームしてたら、どストレートに『抱きたい』って言われた。あまりの事態にパニックに陥り、これまたどストレートに『お風呂貸して下さい』と、いつものようにローテンションで言ってしまった。
恐ろしい事に、お風呂の用意はしてあった。コンドームとか、そういう用意も万端だった。おまけに、家の人がいなかったから、ついでに土曜日だったから、そのままお泊りする羽目になってしまった。あまりにもあっけなく、あっさりと初体験をしてしまった。
…それから、頻繁に身体を求められている。
しかも、ありえない場所が多い。今みたいな体育倉庫、物置、旧校舎、野外…さっちゃんが何を考えているかわからなくて、何も言えずに従ってばかりいる。
自分が思っていた以上にさっちゃんは上手で、行動は強引なのに、喋る言葉や表情は、いつもみたいに自信無さ気で、可愛い。でもって、好きだって、言ってくれる。私も、気持ちには応えている。流されてる、とも言えなくも無い。
言葉通り好き、でいてくれる…とは、思っている。断った所で、きっと笑って引き下がってくれる…事を願っている。
…嫌われるのが怖い訳じゃない。
断って、それで別れるとかだったら、そんな奴こっちから願い下げだ。筋肉バスターのひとつでも掛けて、さっさと忘れてやる。でも、きっと、さっちゃんはそういうタイプじゃないと思う。
むしろ、本当はこういう…人に触れるの、苦手な人だったと思っていた。実際、
そんな事言ってたし。
だから、戸惑っている。この、急激な変化に。世捨て人風味だったのが、いきなり『セックスのバケモノ』『エロの権化』と並ぶ『Mr.マニアックエロス』に
なってしまった事に。
私自身、なんて言うんだろう…興味なかったけど、さっちゃんとのエッチで、感じるようになって来てる。けど、全て、って訳じゃないけど、さっちゃんに求めていたものは、少なくともこんな事じゃなかったと思う。
…結局、どうしたいのか、わからない。さっちゃんも、自分自身も。
「みっちゃん、良くない?」
心配そうな顔で、私の顔を覗き込む。そうだ、今は真っ最中だ。少し強く揉まれた胸が、いやらしく潰れている。
エッチをしようとしているのに、表情はいつもみたいで、頭がこんがらがって来る。
「あ、え、ううん、良くなくない、よ」
自分を取り繕う為に、少しつっかえながらも、やはり普通に応えてしまう。よかった、と言いた気なほっとした表情になり、おでこにキスしてくれる。
―――本当はこの位で、たまに手を握ったりで、遊んだり、美味しいもの食べたりするだけで良かったのに。
熱い手が、身体中を這い回る。極力、声を出さないようにしてしまう。場所が場所だしが、こうやって考え事をしている間にも、身体は反応して、男の人を迎え入れる準備が出来てしまう。でも、本当は、怖いよ。
―――さっちゃんは、何を考えているの?
「じゃあね、ばいばい」
根っからの意地っ張り、というか、弱みを見せるのがとても苦手な為に、結局今まで思っていた事を、1度も話した事が無い。きっと、受け入れて、喜んでくれていると思っているんじゃないか、と思っている。
さっちゃんはいつも通り、何を考えているかわからない顔で、手を振ってくれた。学校から、私の家とさっちゃんの家は逆方向。ここでお別れ。
「また明日。テスト頑張ろうね」
私も、人から見たら何を考えているのかわからないであろう表情で、そう言った。聞けないでいる言葉を、胸にしまったまま。
「……」
明日からテスト。でも、全然頭に入りそうに無い。元々頭、良くないし、数学苦手だし、地理は絶望的だし…さっちゃんはエッチだし…
ぶんぶん、と、頭を振る。歌舞伎よろしく。でないと、他の教科までえらい事になってしまう。
「…どうしよう」
ぽそ、と呟いた。
まだ、身体も熱い。さっちゃんの匂いや、顔に掛かった、ちょっと鬱陶しい髪の毛の感触とか、大きい手とか、全部覚えてる。
…怖い。
気持ちいいのに負けて流されるのも、何も言えないのも、さっちゃんの豹変も。
のろのろと歩きながら、今後の対応を考える。
まず、聞かないと。なんでこんな事になったのか。それだけは、いつも思っている。後、どう対応するか決めなきゃ。どういう答えかによって、言わなきゃいけない事とか、変わって来る。ちょっとした事で、ボロなんてすぐ出てしまう。
…私は、一見さっちゃんのように何を考えているかわからないマイペース野郎だけど、それはそう見えるようにしているだけだ。でもって、年々引っ込みがつかなくなって来ている。もう、どっからどこまで嘘かわからない。
本当は相当のヘタレ野郎だったりする。
原因は、凶悪コンビと名高い弟と幼馴染からの被害を絶対に被らない為だ。こいつらのせいで、私はこんな不思議系にならざるを得なくなってしまったのだ。
いや、これは単なる八つ当たりだけど。
もうあいつら覚えてないだろうけど、相当私は弱気で泣き虫だったからなあ。
あいつらの玩具+なにかあった時の保健にされるのは、もうやだったし。
…あーあ、泣きたいよ。いやマジで。はあ…ていうか、泣いちゃおうかな…
「あ、ミッキーだ」
「お、誠人。何か用?」
そんな事を思っているのに、条件反射でいつも通り応えてしまう。誠人が自転車に乗って現れた。しかし、この呼び方やめてくれないか。美咲でミッキー、深幸でミッチー、幸男でサッチーっての。
「どこ行くの?」
明日はテストなのに、どう見ても遊びに行く格好。まあ、こいつは絶望的な程のアホだから、今更勉強してもしなくても変わりゃしないだろうけど。
「えー、サッチーん家。ノート写させてもらう。サッチー、いい子だからきちんとノート取ってるし」
「…深幸に写させて貰えよ。心の友だろうよ」
「ふん!アイツなんかトモダチジャネーヨ!1人でばっかいい成績取りやがって、
跳び箱4段飛べねー癖に!あ!ミッキーのでもいいや、コピーして来い!!」
1人で、ハイテンションではしゃぎまくる。うーん、馬鹿丸出し。
「やだよ」
速攻断ってやる。ついでに電話でさっちゃんに絶対写させないよう、コピらせないよう、ついでにさっちゃんに写させないように頼んでやった。さあ、これで袋のネズミだぞ、今のこいつはクラス中の男の彼女寝取って、女子更衣室覗いたのバレて、協力者はほぼいない。
「くそうううう、お前、卑怯だぞ!」
「かっかっかっ、潔く学年ビリの座に着くが良い」
そう言うと、勝ち誇ったように笑ってやった。暫くウンコ座りで頭を抱えて唸っていたが、不意に顔を上げ。
「あ、そうだミッキー、お前って昨今の萌え市場についてどう思う?」
と、急に話題を変えた。現実逃避にも見えるけど、こいつはいつもこんなんだ。
流石、会話の54%がエロなだけある。
…私も今更勉強しても仕方が無いし、お互いまだご飯を食べていないという事で、とりあえず家に帰ってご飯を食べる事にした。
「おなかすいたー!」
「オナカスイター!」
家に帰れば帰ったで、いち早く家に帰った癖に、未だごはんを食べていない双子の馬鹿弟、深幸が玄関先にいた。でもって、こんなお言葉。調子に乗って誠人も片言で言う。
生まれた時からの幼馴染で、全員誕生日が一緒。加えて誠人の家は徒歩15秒。
お互いの親同士がなんか、4人でゲーム作る仕事してるから、殆どこの3人でごはん食べたりしている。勿論私が財布を握っている。
「…ご飯は炊いてあるでしょ…ふりかけでも掛けて食べればいいじゃん」
冷たく言うが。
「馬鹿!馬鹿馬鹿、このうんこ!僕等は育ち盛りなんだぞ!肉だよ!野菜もバランス良く取らねぇと、大きくなれねぇんだぞ!」
地団太を踏む深幸。ああ、そうだな、この168cm。
「そーだそーだ!このままじゃ、でかいのはチ○ポだけの大人になっちまうぞ!」
便乗してエロトークに行く誠人。そういえばそうだな、167cm。
「…ま、そのままじゃあ…ね」
プッ、と、笑い、2人を見下す私。コンプレックスですが、169cmで、この中じゃあ一番背が高い。因みにさっちゃんは166cm。どんぐりの背比べだな、私等。
「くそおおおおおおおお!なんでお前ばっか!ズルイ!」
「ズルイー!うわーん!横暴ダー!モチロンソウヨー!!」
各々罵詈雑言(負け惜しみとも言う)を浴びせるが、全く気にならない。どうしてこいつら、こんなにアホなんだろか。しかも深幸は勉強が出来るのにアホだから、始末におえない。
「…親子丼と、野菜スープとサラダでいい?」
でもって、揃って家事が出来ない。お馬鹿2人は顔を輝かせ『うん!』と頷いたのだった。
「なーなー、美咲と深幸は、女の子縛るなら、後ろ手と、前で縛るのどっち?」 かっかっ、と、威勢良く食べながら、そんな質問をする。
…いつもの事だけど、食事中にする話だろうか。
「僕は、当然後ろだな。女の子の乳が触れねー!」
「私は前が萌える。なんか、断然萌える」
普通に応える。うんうん、と、何の参考なのか、メモっている。
「…しかし、最近質問形式が多くないか?この間だって『萌えシチュはどっち?
A:男子トイレで B:旧校舎』って…なんだその二択」
そう言いながら、一瞬、何か引っ掛かったような気がした。が、思い出せないので気にしない事にした。
「え、えー、そういうの興味無い?今、流行だよ」
「そうそう、そんな事より美咲、誠人、初めての道具はローターとバイブとどっちがいい?」
…こりゃまたストレートな…うへぁっ、という顔をしそうになるけど、しない方がいいと、無意識で判断したのか。
「両方加えてアナルバイブ」
『マジっすか!?』
と、ちょっと豪気な応えに、声を合わせて驚かれた。
…なんなんだ、この団欒…
ちょっと現実から逃げたくなったけど、やっぱり気にしないでしれっとした顔でいる事にした。
「さっぱりわかんないや」
はあ、と、ため息をついて教科書を閉じる。
…さっきから、さっちゃんの事ばっかりチラ付いて、全然勉強が身に付かない。
ダメだな、本当に泣きそう。私、これからどうなっちゃうんだろう…ん?
「開いてるよ」
こんこん、と、ノック音。あーあ、1人感傷に浸る暇もないのかい。誰かと思えば、深幸。テスト期間に私の部屋に来るなんて、まあ珍しい。
「お腹空いたの?一応夜食にサンドイッチ作って…」
「それもう食った」
…おいおい、まだ9時にもなってないじゃんか…つい笑ってしまう。深幸は私の方をじっと見て、ベッドに座った。
「お前って、動じないよな」
誰のせいでこうなったと思ってやがる。ちょっとムッとしたけど、勿論表には出さない。はあ、とため息をついて、寝転がる。
「…お前って、どうしたら、慌てたり怯んだりするの?」
…ん?意図がわからない。意味は、わかるけど。
「それを聞いて、どうする」
「どうもしない。けど、お前ってやたらと枯れてっからさ」
じー、と、位置的に天井の、何故か笑いながら怒っているように見える顔の染みを見ながら、言った。
「別に、枯れてるなんて思わないよ」
そりゃそうだよなあ、だって、今完全に泣けるもん。お前が出て行ってくれれば、速攻泣くぜ。不安だし。
「そういうとこだよ。で、どうしたら、お前の感情は動くの」
「某型月に某竜騎士が入社したら、なんともいえない気持ちにはなる」
さらりと、言ってみる。
「…確かに。あ、いやいやいやいやいや、そうでなくて…」
がば、と起き上がる深幸。馬鹿、敵に弱点教える奴がいるかよ。
「んー、じゃあ、おま…」
言おうとして、やめる。
お前と誠人が、切り立った崖にぶらさがっていたら驚く、なんて言ったら最後、
後先考えない馬鹿だから、本当にやりかねない。親も時間無いのに、葬式なんてやってられるか。
「おっ、おま…!?え!?なに!?」
うわあ、すっげぇ喰い付いてる。正真正銘の馬鹿だ、こいつ。
「シモの方じゃないよ。お前が死んだら、って言おうとしたけど、想像したら何ひとつ感情動かない事がわかったし」
眉ひとつ動かさず言う。
深幸の顔が、キョトンとしている。でもって、3、2、1。
「ひで――――――!!超ひで――――――!?ひどくな――――――い!?」「別に」
大騒ぎし始める深幸。
もう眠いし、お風呂も入ったし、ちょっとスッとしたし。
早々に馬鹿弟を部屋から放り出し、眠る事にした。
―――でもって。
「YO!どうだった!?俺は最低!!」
びしっ、と親指を立てながら、晴れやかな顔をする。お前も留年するのか?
「普通」
と、それだけ答えて立ち上がる。私と誠人が3組、さっちゃんと深幸が5組だ。
これから馬鹿2人で隣町に女漁りに行くそうだ。私は、さっちゃんとデートする約束をしている。因みに、さっちゃんと付き合っている事を、こいつらは知らない。教えていない。理由は知らないけど。
「ごはんは自分等で食べなよ」
「オケーグー!いやっほ―――う!」
テスト終わったのがそんなに嬉しいのか、えっらいテンションで教室を駆け抜けて行った。私は5組の方に向かう。同じようなテンションで走る深幸とすれ違った。こいつと身内、という事実を抹消したくなった。
…勉強できるのに、顔はブサイクに近いけど、眼鏡が似合うから基準値に達してるのに、なんでこんな馬鹿なんだろう、と首を傾げる。5組に到着したと同時に、さっちゃんが出て来た。
「あ、みっちゃん」
「あそぼー」
そう言うと、にこ、と笑ってくれた。ま、約束してたんだけどね。
テスト4日間は、何も無かった。ある意味、当然だけど。だから、来るな、と思ってる。予定としては、コンビニでお昼買って、さっちゃんの家で大○笑!人生○場大○戸日記をするんだけど…多分、その後…かな。怖いな…
4日間色々考えていて、ふと気付いた。傍若無人、傲岸不遜に振舞えるのは、あの2人の前でだけで、何故かさっちゃんには、そんな風に振舞う事が出来なかった。思えば、最初からそうだったかもしれない。
もうずっと、2人からさっちゃんを贔屓してる、と言われてた。
さっちゃんには、優しくしたかった。さっちゃんの、無表情に隠された中身を、
自分だけに見せて欲しかった。何故なら―――
「みっちゃん?」
「あ、あああ、あはい?」
にょっ、と、さっちゃんが顔を覗き込んで来た。
なんだか、最近下を向く事が多くなったな…
「ごはん、買おうよ。コンビニ着いたよ」
人の気も知らんと、ボーっとスパゲッティか蕎麦か悩んでる。
因みに、私はこのコンビニの場合はスープスパ一択だ。何故なら好きだから。
悩んだ末にさっちゃんはカップ麺を買った。なんでやねん。
お菓子やアイスも買って、お喋りしながらさっちゃんの家に行く。不安だけど、
やっぱり好きな人と2人きりになれるというのは、嬉しい事だ。さっちゃんの家は洋風で、部屋は2階の奥。なんだか、秘密基地みたいな場所だけど、あまり物が無い。私が持ち込んだゲーム機とか、本とかが、元の部屋にあった物より多い。
「じゃあ、さっちゃ…」
早速食べようか、と、言おうとした、その時だった。
「―――え、え、ええ!?」
コンビニの袋置いて、私の事を思い切り抱きし…え、もう!?もうなの!?
あまりにびっくりして、何も言わないのをオケーグーと取ったのか、さっちゃんは更に強く抱き締めて来る。
「え、あ、さ、さっちゃん…」
どうしよう、いや、どうするかは決めて来てる。でも、こんな早いなんて、思ってもみなかった。だから、余計に怖くなった。10年以上にも及ぶ、押さえていたヘタレ貯金が、ここに来て満期になってしまったのか。
「え!?」
さっちゃんの、物凄く驚いた声。結構レア。
…出てしまった。涙が。いや、もうなんで今なんだよ。まあ、泣こうと思えば邪魔が入るし、予定外の行動取られる事が何よりも苦手だし。
最初に言ってさえいれば、こうならなかったのに、と、今更後悔する。
「み、みっちゃん、や?やだった?ごめん、俺―――」
私の顔を見て、どんどん蒼褪める。最早、修正が効かないくらい、泣いていた。
「ごめ、あ、ごっ、ごめ、んなさい、そ、うだよね!こんなの―――」
大パニックだ。正に鼠目前にした青い猫型ロボ、犬目前にした白いオバケ、生放送の音楽番組で歌詞全部飛んだ某アイドルの如くだ。泣いている割に、よくこんな事を思い付くものだ。が、泣いてしまったんだから、仕方ないって、もう思ってる。
「…ごめん、なっ…泣いて、あ、あの、ね…」
「うん、なに?ごめんね、ごめんねっ俺、酷いよね…ごめん」
私の肩を掴んで、顔を覗き込む。最早、さっちゃんも泣きそう。
…なんだ。
こんな事なのに、もう、安心してしまった。とりあえず、私が心配していた事の70%以上は、杞憂だった事が、判明した。
さっちゃんは、こんなに私の事、大事にしてくれてる。私が泣いたから、という事の方がでかいんだろうけど、2年近く付き合ってれば、なんとなくわかって来る。でも、とにかく、今は言わなきゃ。事態が余計こんがらがる。
意を決して、
私は考え考え、口に出した。
「…あの、ね、あの…先に、言っておけば、良かったの。あの、私…さっちゃんとするの、怖いの。だって、違うの。さっちゃんじゃないみたいで、私、怖いの。
本当は、もっと、こういう事の前に、したい事、一杯あったの」
―――さっちゃんの、無表情に隠された中身を、自分だけに見せて欲しかった。
何故なら―――自分の中身を、見て欲しかったから。
…2人きりになって、もっとさっちゃんを知りたくて、私の事、知って欲しくて、お互いの事、もっと理解して、それから。
早過ぎた。お姉さんぶって、そう振舞って、実際は小さい頃から大して変わらない、情け無い自分を知って貰って、本当に好きになって貰ってから、そうして欲しかった。
「…怖かったの。私、いつもみたいにする以外、どうやっていいかわかんなくて、
だから、さっちゃんが、そういう事したがるの、怖かったけど、受け入れるしか無くって、すっ、好き、だよ?でも、でも―――」
自分でも、一体何を言っているのか、どんどんわからなくなっている。
さっちゃんも、物凄く戸惑って、少しずつ、私の言葉を噛み締めて、理解しようとしてくれて、そして理解して―――
「っ…ごめん…なさい」
ぼろ、と、ぶっちゃけ私より大きい瞳から、涙が流れた。
部屋には、温めて、少し匂いが漏れてるスープスパの匂いと、鼻を啜る音。
お互い泣いてしまって、どう収拾つけるんだろう。考える…考える。
…ダメだ。今の私は、全然頭が働かない。どうしていいか、全くわからない。
「…ごめんね…ってか、ダメだよね…なんで俺、みっちゃんが傷付いてるって、思わなかったんだろ…そうだよ、よく考えなくたって、こんなの…」
「いや、やりすぎ!」
年下の恋人に向かって土下座しようとするから、とりあえず、突っ込んだ。
「でも、俺、みっちゃんの事…」
「…いいよ、じゃあ、抱っこしてよ。私の事、まだ好きでいてくれてるんでしょ」
そう言うと、必死だな、と笑いたくなるくらい、高速で頷き始めた。でもって、
さっきより乱暴に、でも、さっきより確実に安心できるような、そんな感じで抱き締めてくれた。
「ごめん、本当にごめんね、俺、焦り過ぎた。みっちゃんが俺から離れて欲しくなくて、みっちゃんが喜ぶっていうから、その通りにして、あーもう!俺の馬鹿!」
…珍しく、本当に珍しく、自分を激しく罵るさっちゃん。
が、なんか、今、引っ掛かった。ん?と、思ってしまった。
「…その通りって、どういう意味?」
どうにもこうにも気になって、すっげぇ嫌な予感がして、聞いてしまった。するとさっちゃんは黙るかと思ったら、あっさりと。
「え、ちぃちゃんとまっちゃんに。こうしないと、みっちゃんにすぐ見限られるから、って」
でも、間違ってたんだよね、と、暗い顔で、そう言った。因みに深幸と誠人のさっちゃん流の愛称だそうです。
「―――はぁ!?」
‐3ヶ月程前‐
「…あの、ね。俺、みっちゃんと付き合ってるの」
私はあいつらに言う気は無かったし、さっちゃんもそうだと思ってた。けど、どうやら私と生まれた時から一緒にいるこいつらに嫉妬して、それを言ってしまった。馬鹿だなあ、私とこいつらに恋愛感情は何があっても発生しないのに。
『マジっすか!?』
当然、男に興味が無いと思っていたであろう2人が、驚くのも無理は無い。しかも、相手は人畜無害の権化、さっちゃん。
しかし、話はそれで終わらなかった。奴等は親身にさっちゃんに接してくれ、普段の私―――これは私が悪かったんだけど、私の性格を慮って、奴等はさっちゃんにとんでもないアドバイスをしやがった。
『早く、肉体関係を作れ』
と。
親の職業や、こいつらの会話全てに冷静に反応し、うろたえさせるのが目的で、
ウケ狙いの発言ばかりしていたのが災いとなり、気付けばなんと奴等の中では、私は『エロい事が何よりも好きなハイパー女王様で、並の男じゃ相手が出来ない』
と思われていたらしく、どう見ても人苦手、女子もっと苦手、童貞のさっちゃんじゃ、ボロボロにされて捨てられるのが関の山だと、そう判断した奴等は…
さっちゃんに、徹底的なまでのエロスパルタ教育を施した。
後は、本番を残すだけ、という事になり、私を誘う技も見に付けさせられたが。
‐そのちょっと後‐
「は!?ミッキーキスされて、乳揉まれてんのに気付かんの!?」
「…もしかして、幸男がどの程度か計っているのかもな、よし、次は―――」
‐その少し後‐
「ウッソ、くっそぉ、僕等程度の教えじゃ、あいつの足元にも及ばないのか!?」
「もういいよ!押し倒せ!そこまですりゃあ後はミッキーから誘うだろ!」
‐その直後‐
「…え、処女!?マジで!?えー…あ、でも、ミッキー理想高そうだしね…」
「喜べ幸男、お前は美咲の眼鏡に適った、という事だ。それが幸せかどうかはしらないけどな」
‐今より大分前‐
「ミッキー結構マニアだからな、さっき聞いたら、旧校舎でやりたいってよ」
「男子トイレとの二択なら、僕も旧校舎だけどね」
‐今より少し前‐
「ねーねー、野外プレイがいいみたいだよ、僕もこの季節はオススメだ」
「マジで!?いーなー、俺もしたい!ヤリタイ!!」
‐今より、ほんの少し前‐
「いいスポットあるんだけど。体育倉庫の云々」
「へー、そういえばあそ(以下ry)
「…という訳で…今日も、これ…」
紙袋を取り出す。中身は―――
「…さっちゃん、ちょっとこっち来なさい」
当然、バイブにローター、アナルバイブにスパイク棒…
馬鹿な弟と幼馴染の完全に間違った心使いに、なんともいえない感情を抱く。
そうか、やりすぎたか…と。話を聞く限り、本気のようだったし…
さっちゃんはさっちゃんで、何の危機感も抱かずに私のすぐ側まで来た。あーあ、まだ修行が足りない。奴等なら、声の調子で自分の生命の危機が察知できるぞ。つい、にやけてしまう。
そして。
ばしん。
「いたっ!?」
手で、頭を引っ叩く。
「いぁっ、いたたたたたた!?」
ばしん、ばしん、ばしん、ばしん、ばしんっ!
同じ場所を、同じ力で、計6回叩く。マジで痛かったのか、さっちゃんは頭を押さえ、涙眼になっている。
「…言わなかった私も悪いよ。でもね、さっちゃん。私はさっちゃんの彼女でしょ?それなのに、どうして私に聞かないで、あの馬鹿2人の事を信用するの!」 気が付けば、普段通り。しかも、あいつらにするのと、全く同じ態度。いや、寧ろテンションが高い。ついさっきまでの、さっちゃんに抱いていた恐怖や不信感は全て消え去っていた。そりゃそうだ、と納得出来るくらいのカミングアウトだったからな。
さっちゃんは完全に脅えて、正座して私の断罪を受けている。
「いい?さっちゃんも馬鹿だけど、深幸と誠人は、それに輪を掛けて馬鹿も馬鹿、
ウルトラ馬鹿スペシャルなの!だから、金輪際奴等の話は話半分で聞く事!でないと、馬鹿菌が感染して大変な事になるからね!」
「…はい」
すっかり意気消沈して、声もちっさい。
私は膝を着いて、さっきとは逆に、さっちゃんの顔を覗き込む。
「もしかして、私の事、怖い?もう、私と別れたい?」
と、意地悪く聞いてみる。と、やっぱり物凄い勢いで首を横に振って。
「やだ!みっちゃんと別れるの、ぜった…」
よくできました、と、口を塞いでやった。私から、ってのは初めて、かな?
「うへへへへへへへっ」
「う、うへ?」
戸惑ったような声を出すさっちゃん。そりゃなあ、こんなキモイ声出しゃなあ。
キモイよなあ。でも、出ちゃうんだから、仕方ないじゃん。
「みっちゃん?」
私の感情をわかってくれたのか、ぎゅう、と抱き締めてくれる。それが、今まででいっちばん、気持ち良くて、幸せだった。私も遠慮せずにしがみつく。
「大好きっ、さっちゃん大好き。一杯こうしたり、遊んだりしたい。ずっと、仲良しでいようね」
疑問さえ解ければ、何も怖いものなんか、無い。話したい事とか、知って貰いたい事とかあったけど、今は割とどうでもいい。それより何より、こうしていたかった。まあ、追い追い、でいいか。
「…うん。俺も。ごめん、変に焦っちゃって。敵わないって、そう思ってて。そんなの、関係無いのに。ごめんね。みっちゃん、好きだよ。大好き」
暫く、抱き合ったままでいる。
なんだか、幸せだ。言葉とか、そういうの、今は必要無いっぽい。あっても困らないけどさ。
身体を押し付けるようにして、本当に、後2日くらいこうしていたいな、と思ってる。さっちゃんは、どうなんだろう。顔は見えないけど―――
「…さっちゃんって、もしかして、ムッツリ?」
馬鹿2人のテンションにはならないだけで、エロエロさは、もしかして変わらないんじゃないかな、と思った。
さっちゃん、おっきくなっちゃったよ。なんだよ。マジシャン芸人かよ。
…もう。
「あ、あの、ごめん、あの、ごはん、先に食べてて、俺―――」
「…さっちゃん、しよっか」
「え!?え、いいよ、ダメだよ!俺、みっちゃんの事、もう絶対傷付けたくないもん!だから、あ、お湯入れて置いてくれると…」
「私が、したいの。お風呂、借りるからね」
びしり、と、今こそイメージ通りのハイパー女王様の如く、言ってやる。
今まで、どうしてかわからなかったから怖かったけど、今は怖くない。寧ろ、やりてぇ。悪いが、エロへの興味と探究心は、あいつらよりデカイ。と、思う。
さっちゃんは、私の事好きで、私はさっちゃんが好き。でもってお互い今、性欲も最高潮。いつも通り、コンドームも用意してるだろう。ここまで条件揃って、
何を拒む必要があるんすか。私は半ばワクワクしながら、お風呂場へ向かった。
「ま、待った?」
さっちゃんもお風呂に入るよう薦めて、結構なスピードで戻って来た。
「んー、待ってない。寝てた」
なんか、緊張してるっぽいさっちゃんをおいでおいでして、2人で布団に包まって、抱き合う。今までは何か、ムード重視、みたいな感じだったけど、今のはなんだか、気持ち重視とでも言うのかな、とにかく抱っこしたい。
さっちゃんも嬉しそうにしてくれてるし。
「ねえ、あいつらのスパルタ教育ってどんなんだったの?」
ふと思って、聞いてみる。あ、微妙な顔になった。
「…あー、の、なんていうか、俺が女の子役やって、一通りやったら、次、男役になって…みたいな」
しどろもどろに答える。うわあ。
「えー、やだ、前から思ってたけど、深幸と誠人ってホモなんじゃないの?」
…大抵2人でいるし、そんなん出来るって…どうよ…
うえー、と、気持ち悪くなった。けど。
「それは無いと思うよ、だって、終わった後、本気で蒼褪めてたし」
「なら、やらなきゃいいのに…」
その姿も容易に想像出来る。馬鹿にも程が無いか。
「…それはやっぱり、俺とみっちゃんの事、心配してくれたからだと思うよ。もしかしてみっちゃんは気付いていないかもしれないけど、まっちゃんもちぃちゃんも、みっちゃんの事、大切に思ってるよ」
まあ、それはさっちゃんが、過去の悪行を知らないからそう言えるんだろうけどさ。まあ、いいや。今は、さっちゃんの事だけ、考えていたいんだから。
しかし、今まで見る余裕とかあんまり無かったけど…ちょい伏目がちで見下ろしてくる顔って、ちょっとかっこいいかも、と思った。
「髪の毛、切ってあげよっか?」
ちょっとだけ、鬱陶しい前髪。キスして、顔に当たる感触が、ちょっと気持ちいい。
「いいの?じゃ、今度お願いね」
そう言って、もう一度、キス。舌が入って来て、鳥肌が立ってしまう。帰る途中で上げた、リンゴ味のガムの味がした。キスするの、好きだなあ、と思って、さっちゃんの唇が離れてしまった時、慌てて追って、今度は自分から舌を絡めた。
舐め合っている内に唾液が溢れそうになって、飲む。一旦顔を離して、自分の唇を舐めてから、もう一度キスをねだる。
キスをしながら、さっちゃんは髪を梳いてくれた。とても、気持ちがいい。
…やばい、このまま寝てもいいや。多分、さっちゃんもいう事聞いてくれるだろう。が、これはとてつもなく非道な意見なんだろうな。
「わ…」
そう思った瞬間、今度は、別の場所にキスして来た。
「さっちゃ…くすぐったい…」
ちゅ、と、音がして、吸われるように首筋にされた。背中がぞわぞわして、やっぱ鳥肌が立ってしまう。前は、緊張してそれどこじゃあなかったんだけど。
「そ、そう?ごっ、ごめんね」
ちょっと慌ててしまった。前と、反応が違うのが、想定範囲外だと見た。
「…謝っちゃ、やだ」
ぺふ、と頬と頬を擦り合わせてみた。こんな、素っ裸同士なのに、楽しいや。
「…うん、なるべく気を付けるね」
そう言って、そっと、少し熱い手をお腹に置いた。パン職人向けの手だ。
すっ、と移動して、その手が…なんか、少し迷って、私の腕を掴んだ。何をする気だろう、と思ったけど、そのまま、指にキスだけして、放した。その仕草がなんとも可愛くて、嬉しくなった。
「あ、の、おっぱい、触っても…」
「いいよ。ていうか、聞かないでいいよ。今までだって、気持ち良かったんだもん。もう怖くないから、さっちゃんの好きにして」
律儀というか、めんどいというか。私のその言葉を聞いて、ようやっと普通にしてくれるみたい。
…なんか、期待してる自分がいる。そりゃ、最初は痛かった。意地張って、痛いなんて言わなかったし。でも、回数重ねる内に、どんどん、あの、胸とか、気持ちいい場所とかでなくても、感じるようになった。
…さっちゃんに、されて。
さっちゃんの…で、私の、中…いっぱいになって…
「あ…」
熱い手が、今度こそ胸の上に。さっちゃんの大きい手で掴まれると、ドキドキしてしまう。両方、掴まれる。少し、強めに。
「…みっちゃんのおっぱい、気持ちいい。やらかいし、すべすべだし」
「ありがとね。さっちゃん…んっ」
強めなのに、やんわりと揉まれる。なんかおかしいけど、こうとしか、言い様が無い。こうされると、本当に私自身、女なんだなって、そう思う。ちょっとだらしなく、口が開いてしまうと、蓋をするように、さっちゃんがキスをしてくれる。
舌を舐めるだけで、すぐに顔が離れてしまい、胸の方に視線が下りる。案の定、さっちゃんはおっぱいを吸い始めた。
「…いっぱい、吸って…」
少し、注文を出してみる。今までだって、気持ち良かった。けど、もっと、吸って、舐めて欲しかったな、と思った。さっちゃんの口の中で、私の乳首が舐められる。たまらず、声が漏れてしまう。
「さっちゃぁん…」
声を、我慢しようとして、する必要が無い事に気付く。今までなら『怖い』と言ってしまいそうだったのを堪えてたけど、そんなの、今は無い。
「…いい、よう…さっちゃん…」
今度は、私がさっちゃんの髪を梳く。さっちゃんの左手は、私のもう片方のおっぱいを揉み続けて、右手は、手探りで私の頬を撫でてくれた。
不意にさっちゃんが顔を上げると、少し潤んだ瞳と眼が合ってしまった。表情は、完全に年上の男の人で、ドキドキして、少し困ってしまった。
「や、んっ…」
にこ、と笑って、もう片方の胸に吸い付く。吸われて、濡れて硬くなった乳首を、右手の指の間で挟まれると、声がまた、出てしまう。指の間で、好きなように挟まれ、また硬く、膨らんでしまう。
「う…ふぅ…ん、ん…」
ちゅう、と、少し押し付けるように唇へのキスをされる。今度はまた舌を絡めて―――というよりも、口の中を舐めるような、そんな感じだった。
「ふ、ぅ…むっ!?」
そのままで、両方の乳首を指先で摘まれる。びくっ、として、上半身が一瞬だけ浮き上がった。ズン、と、下半身にまで快感が伝わる。摘まれたまま、さっきの、指の間でされるよりも強く弄られると、どうしようもなくなってしまう。
唾液を飲み込む事も出来ず、口から溢れてしまう。
「ん…ふ、みっちゃんの口、中もいっぱい濡れてる」
…何かと比喩するように、ちょっといたずらっぽく言う。そうだ、さっちゃんはムッツリ系の、回りくどいエロだ。時として、物凄く達の悪い―――
「ねぇ、キスしていい、口に」
「…一々、聞かなくても…」
翻弄される。こういう時だけの、悪戯っぽい笑みに。
そうだ、最初から、さっちゃん自身も楽しんでた。私が、喜んでると思い込んで、だから、さっちゃん自身も…
「え…キス、は…?」
ぐうっ、と、両足を左右に開かれる。これは、流石に恥ずかしい。
「するよ、こっちの、みっちゃんの口。いっぱい濡れてるね、もう」
うううううううううっ。さっちゃんめ、いつからそんな子に…
「や…あっ…やっ、ちょ…」
さっちゃんが口を付けると、くち、と、濡れる音がした。慌てて脚を閉じようとしたけど、がっちりと押さえ付けられて、出来ない。舌が中に入って来て、嘗め回す。あったかい口の中に、入口ごと食べられたみたいな感覚。
わざと音を立てて啜っている。
「やああ…だめ…そこ、あっ…変、やあああっ」
急速に、身体から力が抜ける。脚からも力が抜けたのがわかられたのか、両手を使って、さっちゃんは私のを弄り始める。
ちゅ、ちゅ、ぐち、と、指が行き来する音が、耳に入る。好きな人に、大事な部分を曝け出して、感じている。
「さっちゃん…あう…うう、だめぇ、そこ…わたし…」
さっきみたいに、感じる場所を指で摘まれる。濡れて、ヌルヌルしてるから、指が滑って、擦るようにされる。そうされて、さっちゃんの指を締めてしまう。
「これがいいの?…あの、もしかして、苦しい?」
…意地悪なのか、気にしぃなのか。首を横に振ると、今度は瞼にキス。涙を舐め取って、また唇にキスをしてくれた。私はさっちゃんにしがみついた。
「好き…大好き…私、あのね、さっちゃん…」
全く脈絡の無い言葉だ。けど、さっちゃんは笑って抱き締めてくれた。けど…「やぁん…そんな…っ」
手が、また下半身に伸びて来る。トロトロになったそこは、簡単に指を受け入れてしまう。唇を舐められ、そのまま舌を這わせたまま、また首筋に吸い付かれる。今度は、びくっとしたけど、また、指を締め付けて、感じたのがわかられてしまった。
これって、開発されてる、って事なのかな…
「…あ…え?」
身体が火照って、力が入らない。ふわふわした状態で、不意にさっちゃんが私から離れる。どうしたのかな、と思って、すぐその意味に気付く。ここまで来て、
身体を離したなら、ひとつしか無い。今までもそうだったし。
「みっちゃん、力抜いて」
そう言って、覆い被さって来る。脚は開いたままだったから、すぐに…あの、さっちゃんのが、当たって…
「…うん…」
そう言われても、いざされると、力が入ってしまう。痛い、という事はもう無いんだけど、でも、やはり緊張してしまう。
「―――あ…」
ゆっくりと、さっちゃんが、私の中に入って来る。
大きいのかどうかは、よくわかんないけど、最初は、ちょっとだけだったのに、
身体中いっぱいにされたような錯覚に陥った。実際は、20cmも無いようなものが、入ってるだけなのに。
それなのに、こんなに熱くて、頭も、身体もどうにかなりそうになる。
「さっちゃん…さっちゃんっ」
ぴったりと、さっちゃんの身体が密着してる。私より小さいのに、なんだか大きい。胸が潰されそうなくらい強く抱き締めて、名を呼び続ける。
…私が、さっちゃんを、こんな風に思ってるみたいに、さっちゃんも、私を違う風に感じているのかな…そう、思った。だよね、こんな、弱気な声、出てるから…きっと。
「あ…あああっ…ん、熱い…の…ひぁ…」
さっちゃんのが、私の中を擦る。もう離さないみたいに締め付けて、快感を搾り取ろうとする。さっきの指より何倍も太いものが、出たり入ったりして、指よりもいやらしい音を立てて、熱くて、声が出てしまう。
「いい、いいようっ、もっと、していいからっ…」
自然にぼろぼろ涙が出て来て、とんでもない事を口走ってしまう。
私の言う通りに、掻き回すように、私の中を抉り、快感を与えてくれる。その度に、声を出して、また求める。
今までみたいに、声を我慢しないだけで、もっと、もっとこんな気持ちいいなんて、知らなかった。きゅう、と、さっちゃんのを締め付けて、その中で、また激しく動かされると、余計に気持ちいい。
「…みっちゃん…っ、美咲」
不意に、そんな風に、名前で呼ばれた。
「っ…さっ…あっ…ひああっ、あああっ!?」
名前を、呼ぼうとしたけど、少し体勢を変えようとしたタイミングとかちあって、悲鳴に近い声が出てしまった。
「っ…ああ…っ…」
ウソ。なんだか、痺れるような、感覚だった。頭の中がぼやけて、変な声が出た。さっちゃんは、少し意地悪く笑って。
「どうしたの?」
と聞いて来る。頭がボーっとしていたから、正直に。
「っ…変なの…今、されたの、あそこが、なんか…っひゃあっ!」
下半身を浮かされ、さっきと同じ場所を、同じように突かれる。我慢出来ず、また声を上げる。さっきよりも派手な水音が聞こえ、それが、自分達の出している音だと気付いて、恥ずかしくなってしまう。
…でも、いい。乱暴なくらいに攻められて、それがそのまま快感に繋がって、声に出る。私が感じてるの、全部わかられてる。
「ぅああっ…もう、ダメぇっ、や、さっちゃ、あああっ…」
びくびく、と、引き攣るように、今まで以上にさっちゃんのを締め付ける。瞬間、快感が広がって、一際大きい声を出してしまう。
少し遅れて、さっちゃんが…なんとなくだけど、終わったような気がした。
暫く経ってからさっちゃんのが抜かれて、脱力感が襲って来る。そして同時に。
ぐうぅううううう。
と、お腹が鳴った。
なんとも色気の無い話だけど、育ち盛りだから、仕方の無い事なんですよ。でも、その前に少しだけ、余韻を味わっていたかった。
「…じゃね。また来週、学校で」
「送るよ、もう遅いし」
空は、もう夕焼け色。でも、私は断った。
「いいよ、逆方向なんだから。ちょっと、1人でいたい気分だし」
そう言うと、最後に、キス。エッチの時はあんななのに、今、ちょっと頬にしただけで真っ赤になってしまった。愛い奴め。
「そういえば、あの時、名前だけで呼んでくれたよね」
ふと、思い出して言ってみた。
他意は無いのに、妙に慌ててしまった。
「あ、あの、別に、ごめん、気に障った?あの…なんとなく」
「なんか、くすぐったかった。私も呼んでいい?幸男くん」
返事を貰う前に、言ってみた。なんか、くすぐったい。呼んで、と、視線で訴えると、やっぱり恐縮しながら。
「…美咲」
って、呼んでくれた。でもって。
「やっぱ普通がいいね、みっちゃん」
「だぁよねぇー、さっちゃん」
そう言って、笑った。
笑っていた。少なくとも、表面上は。
やるべき事があったから。だから、こっそり、さっちゃんが貰ったという例の紙袋を拝借していた。
家に帰ると、既に空気はピリピリしていた。
電話で、即家に帰れ、と告げた時、察しのいい奴等は、もう気付いていた。なんとかして逃げようとしていたみたいだけど、深幸が、余計に恐ろしくなると思ったのか、誠人を宥めて家に戻って来させた。
「ただいま」
ばんっ、と、乱暴に戸を開ける。私の部屋の床に、深幸と誠人が正座して待っていた。
「お、おかえり」
「オカエリナサイ」
完全に脅え切った、家畜の目だった。まあ、そうなるようにしてたんだけどね。
「さっちゃんから聞いたけど、余計な事してくれたね」
くっくっくっ、と笑って、私は勉強机の椅子に、脚を組んで座る。制服だからパンツ丸見えだけど、全く意に介さない。眼の前の2人も、パンツ所の話では無いという事を、身体でわかっているから。
「あ、あの、俺等は、ミッキーの為を思って…」
「うるさい。お前等に発言権は無い」
静かに、言う。深幸はやっぱりわかっているのか、ガタガタ震えながらも、機嫌を損ねないよう、顔を伏せずにまっすぐこっちを見ていた。
―――怖かった。この数ヶ月で、体重大分減った。
好意だったというのは、今のこいつらの様子からも見て取れる。が、関係無い。
今の私は、とにかく、腹が立っていた。
「…あのさ、3択があるんだけど、内容知ってから選ぶ?」
口の端だけを上げ、眼は全く笑わずに言う。2人ははい、と、頷いた。
A:『魔女っ子★TEACHER(30近い独身教師が次元を超えてやって来た
魔法の国のプリンセスと、クラスの生徒を守る為、魔女っ子になって戦う、
子供向けだが大きいお兄さんにもお姉さんにも人気のあるアニメ)』のコス
プレをして、日曜11時から町内を牛歩で一周
B:漫研女子部員の前で、実践801講座(撮影可)本番アリ
C:ここで、私に犯される(順番は自分達で決め、一部始終を見る義務アリ)
「…マジですか?」
「マジです。あ、ちゃんと道具はさっちゃんから預かって来たから」
「え、でも犯すって、え、このバイブはアナル用じゃあないよ…」
詳しいなおい。そんなん、よく知らんかったわ。
「別に、入れるの私じゃないし。まあ、私の機嫌を損ねる度に太いものになって行くけどね。まあ、どの選択肢選んでもいいけど」
脚を組換え、脅え出す2人を眺める。
「あ、名物コンビのお前等だから、意外と需要あるんだよね。因みに誠人攻の方が人気高いらしいよ」
知りたくなかった事実を死って、ガクガク震え出す。お父さんお母さん叔父さん叔母さん、貴方達の息子は、近日中に2/3の確率でホモになります。まあ、これが子供を放って仕事に勤しみ過ぎた報いなんですかね。
ふう、と、すっかり暗くなった空を見ながら、本気で相談し始める馬鹿な弟と幼馴染。多分、総合的な事を選んでAになるだろうな、と考える。
ふと、さっきのさっちゃんの『みっちゃんは気付いていないかもしれないけど、
まっちゃんもちぃちゃんも、みっちゃんの事、大切に思ってるよ』という言葉を思い出した。
…完全に、ありがた迷惑だったんだけどね。
まあ、これも、幼少時の復讐も結構入ってるからなぁ。別に、今のこいつらに恨みは無いんだけど…
「…そういえば、なんで気付いたの」
本当に疑問に思ったのか、誠人が聞いて来る。
「明らかに童貞のさっちゃんにしちゃ、なんか手慣れてると思ってね。甘いんだよ、プロを舐めるな」
…まあ、私のこの、こいつらの前で必要以上に変なイメージを作らせてしまう言動も…悪いんだろうな。あーあ、プロって言葉にものっ凄い喰い付いてるよ… ていうか、逃げればいいのに、完全に『やらなければいけないもの』として受け止めている時点で、こいつら本気で馬鹿だなあ、と思ってしまう。
「…仕方ないなあ…ま、今回だけだよ」
2時間経っても決まらなかったし、もう飽きてきたし、なんか怒りも風化して来たので、そう言ってしまった。その瞬間、2人の眼が輝く。が。
「その代わり、3ヶ月くらい炊事洗濯掃除買い物宿題、全部任せるから。あ、弁当もちゃんと作れよ。代金はその都度払うし、規定料金超えたら自腹だしね」
…ま、この位にしてやるか。
思考停止状態から脱したのか、今になって『マジっすか!?』と声を揃えるが、
3択よりもマシだと踏んだのか、渋々納得し始める。
ま、これでこいつらも将来1人暮らしする時の修行にもなるだろ。
いつまでも、3人でいられる訳じゃあ、無いんだし。
―――事実、さっちゃんが加入した事で、あんまり変わりはしないけれど、何かが変わってしまったような気はする。
悪い事じゃ無い。けど、本当は…
…3人でいる事が、永遠だと思っていた。
本当は、こいつらが嫌いだったのか、もうわからない。
けど、大切な家族、と言い切れるこいつらが、今は一番大切な人ではない、というのはわかる。
きっと、こいつらもそうだと思うけど…
「…なんか、複雑」
ぽそ、と呟いた言葉は、誰にも気付かれなかったようだ。
もう一度脚を組み替えて、真剣に当番を決めるこいつらを見るのだった。
「あ、宿題は深幸じゃなきゃヤだからね」
『…はーい』
終