受話器ごしの戯れ 1/2


 23:00ジャスト。
 篤志からの電話。

『聡美? うん、俺』

 高1の時にクラブで知り合って、高2の夏に告られた。
 同じクラブに入るだけあって結構趣味が似てた。
 ちなみに歴史クラブ。私はどっちかというとミーハーで、新撰組とかああいうのが好きだった。
 篤志はなんか、ゲームから入ってきたみたい。前に見せてもらったけど地図の上で馬とか兵隊とか戦ってるの。
 将棋みたいなものって言ってたけど、将軍さんの絵がもっと美形のほうが良かったかな。
 持ってる本を貸し借りしたり、議論みたいなことしてみたり。
 文化祭の前、図書館で一緒に資料漁りしたり、本屋さんをハシゴしたり。
 気が付いたら一緒にいる時間が長くなって、休日も一緒に過ごしてて。

 正直イイな、と思ってたから、告ってこなかったらこっちから告ってたと思う。
 というかホワイトデーに告ってほしかった、と後で教えたら頭抱えてたっけ。
 バカ、そんなことで何ヶ月も悩むなっての。何のための本命チョコだと思ってたのやら。
 前にゲームの話をしてくれたときに、「常に相手の先を読んで手を打っておいてから攻め込むんだ」なんて言ってたけど、考えすぎも時と場合によるってば。


『え? 仕事? あぁ、調子いいよ。修羅場は先週で終わったしさ。大丈夫。来週の土日はあいてるから』

 大学を卒業して、篤志は遠い街で就職した。
 離れ離れになってどうなっちゃうか不安だったけど、うまくやってる。
 むしろ近くにいたときの方が喧嘩してたかも。
 ううん、今別に遠慮してるとかじゃなくて。

 月に1度しか会えなくて正直寂しい。おしゃべりは、こうして電話でできるけど、手もつなげない、ましてHもできないのが寂しい。
 こう言うと飢えてるようでヤだけど、これも篤志が悪い。
 あげちゃったのは高校のとき。若葉マーク同士でおっかなびっくりだったっけ。
 でも、いつの間にかあいつってばあたしのこと知り尽くしちゃって、身体中どこが弱いかまで把握されてた。
 あたしがエッチになったのは篤志のせいだ、っていつも言ってやってる。

「今度どこ行こうか?」
『久々に○○ランド行く?』
「や! 並んでるだけでつまんない!」

 遠くから来てくれる篤志と一緒にいられる時間はほんの少し。一泊二日って本当に短い。
 だから、あんな並んでるだけのところに行きたくない。
 そりゃ、二人で一緒に並んでる間のおしゃべりだって楽しいんだけど、だけど、他にできることがあると思う。

 そんな風に話してるうち、二人の声がちょっと躊躇いがちになる。
 お互い何かを期待してて、でもそれを言い出せない雰囲気。
 でも、このあとの言葉は、いつも篤志のほうが切り出してくれる。


『今何着てる?』
「ん? パジャマ」
『ふーん、前みたいにタオルだけじゃないんだ」
「もう!」

 帰宅が遅くなって、いつもより遅い時間にシャワーを浴びて髪を乾かしてたら電話が鳴った。
 慌てて出たからもちろんそんな格好だった。
 篤志ったら、『TV電話だったらなぁ』なんて本気で言ってた。
 その後、電話ごしに脱がされた。変な言い方だけど、篤志の言うなりにタオルを取っちゃって、ヌードでベッドに入った。
「ちょっと寒い」なんて言ったら、『温めてあげる』なんて言い出すの。
 何をしてくるかと思ったら、いつもベッドの中で囁いてくれるような言葉を電話越しに。
 そりゃもう恥ずかしくて真っ赤。確かに温まったけど。
 こっちもヌード、という特殊な状況だったせいもあって盛り上がっちゃって。
 あんなことしたい、こんなことしたいって篤志の妄想につきあって、テレホンSEXってのを始めて経験しちゃた。
 それ以来ときどきこうしてる。そして今夜も。

『じゃ、こっち来て』
「ん」

 これがゲーム開始の合図。ここで私が拒否すればそこまで。
 気分の乗らないときには無理にしてこないのが嬉しい。
 時々、襲ってほしいだなんて思うことが少しだけあるけど、恥ずかしくて口にしたことないし。
 篤志って優しいから、無理強いってのはしてこないだろうな。


『聡美』
「うん」

 二人同時に「チュッ」ってキスの音。
 さすがにその後音だけじゃなんだから、言葉に出してやりとり。冷静に考えると凄く恥ずかしいことやってるんだけど、『その気』になってると気にならない。
 一人で…その、する時と違って篤志が聞いてると思うとドキドキするし、そのぶん感じるみたい。

『唇、あけて』
「ん…」
『舌…いれるから』
「んんっ…」
『聡美、美味しい』
「やんっ」
『胸、触るよ』
「うん…どっち?」
『左』

 篤志は右利きだから、右手で自分の左胸を撫でる。いつも篤志がしてくれるみたいに、服の上からソフトに。
 じれったいくらい時間かけて愛撫されて、いつもこっちから「して」って言わされちゃう。
 今日も、なかなかパジャマのボタンを外そうともしない。
 ボタンを1つずつ外して、胸をはだけさせられる頃には、あたしはすっかり出来上がってる。


『胸に頬ずりしていい?』
「うん」

 あたしのさほど大きくない胸にいつも頬ずりする篤志。そのうち舌を伸ばしてあたしのことを舐めてくる。
 前にベッドの中で「大きい方がいいの?」って尋ねたら、「敏感なほうがいい。だから聡美は100点」なんて言われて反射的に叩いちゃった。
 片手でもう一方の胸を揉みながら、先っぽにキスしてくる。

『乳首美味しい』
「やだぁ」

 もちろん、本当にベッドインする時にはこんなこと面と向かって言うような篤志じゃない。
 電話越しだからってのは解ってる。でも、乳首、とか露骨に言われるとやっぱり恥ずかしい。
 前にそう言ったら、凄く遠まわしな言い方された。官能小説風言い回し、とか言ってたけど、笑えちゃって崎が続かなかった。
 だからこんな風に、ストレートに言わせてる。
 受話器から漏れる声が、耳元で囁くようだからすごく恥ずかしい。
 だってそうじゃない。本当に篤志に抱かれてるのなら今は胸のあたりから声がするはずなのに、耳元にくるんだもん。
 なんか二人がかりでされてるみたいに妄想しちゃうことがある。
 篤志の『手』がわき腹を撫でて、ヒップを通って太股に伸びる。肝心なトコロを敢えて迂回されて、こっちも期待が高まってくる。
 内股を上下に撫でられて喘ぐ。篤志って意地悪だからこの時点じゃ絶対に触ってこない。


『じゃ、ズボン脱がすよ』

 ズボンのゴムに手をかけられて、引き下ろされる。誰も見てないと解ってても恥ずかしくなる。
 おかしいよね。いつも着替えるときは平気だし、面倒なときはシャワー浴びてバスタオル一枚でうろうろしているのに。
 ショーツの上から撫でられる。篤志って、女物の下着やパンストの感触が好きなんだって。いつもこんな風に撫でてくる。
「履いてみる?」って訊いてみたいけど、返事を聞くのが怖くて試してない。

「あ…ん……」
『凄い、もうぐっしょり』
「やぁ…」

 あたしがどんな風になっているか篤志もわかってるんだと思う。ショーツごしでも、そこが洪水だってわかっちゃう。
 それを塗り広げるようにして指を上下に使われる。

『クリちゃん、見つけた』
「やああっ」
『だってほら、プックラしてる』
「ああっ」

 指先一つで弄ばれるあたし。受話器の向こうの篤志の思うままに乱れて、声を漏らす。
 ここで激しくされたらそれだけで達しちゃう。でも意地悪だから、そこまでしてくれない。


『じゃ、脱がすから…』
「うん…」

 ショーツに手をかけて引き下ろす。ヘアも、お尻も、あそこも剥き出し。

「見える?」
『おいおい』
「ふ〜ん、せっかく脚開いてあげたのに」

 TV電話じゃなくてよかった。ううん、少しだけ残念な気もするけど。
 まさかカメラつきのケータイってこういうことに使ってる人いるのかしら。

『それじゃそのまま、脚を広げちゃおうかな』
「え? え?」

 たぶんあれだと思う。私の脚をM字型にして広げて…って、一人じゃこの姿勢辛いよ。
 ちょっとズルして膝立ての姿勢で許して。

『じゃ、大事なところにキス』
「あ」

 恥ずかしいくらいに濡れているそこにキスされるイメージ。舌を伸ばしてディープキスしてくる。
 恥ずかしい、恥ずかしい、気持ちいい、恥ずかしい、気持ちいい。
 頭の中がぐるぐるしてくる。


『ん、おいし』
「やだ…あ…」

 どんな風に舐めているか、舌の使い方を耳元で囁かれながら、そのとおりに指でなぞる。
 手で広げられて真ん中を舐められたりすると、首をかしげて受話器を固定して、両手でしなくちゃいけない。
 ハンズフリーの電話買おうかな。でも、耳元で囁かれるの気持ちいいし、ちょっと複雑。

「あ、あ、あ」

 篤志って、いつもあたしの漏らしたおツユを飲み干そうとするくらいに舐めまわしてくる。今もそんな感じで責められてる。
 下から上に舌を使ってくる。丁寧に、優しく、じれったいくらい何度も何度も。
 またクリトリスにキスの雨。受話器越しに『チュ、チュ、チュ』なんてやってくる。
 ああ、もう駄目。耐えられない。手だけじゃなくて腰も動き出してる。

「あ、ア、ね…お、おねが、い」
『なに?』
「い、いかせ、て」


『イきたいの?』
「うン…ああ…は、はやくぅ…」
『何でもする?』
「する、するの、ああっ、ア」
『それじゃクリちゃんの皮を剥いて…』
「イ、ア、アアッ』
『噛んじゃえ!』
「アアアーーーッ!」

 指先でキュ、とそこを摘み上げた瞬間、きつく閉じた目の奥でパシパシッと何かが閃いた。
 曲げたままの膝がベッドにつくくらいに仰け反って、あたしは果てた。

「あ…ン…」
『可愛いよ。聡美』

 耳元でキスの音がする。
 私、イかされちゃったんだ。篤志に全部聞かれながら。
 時間が経つに連れて恥ずかしさが襲い掛かってくる。
 さっきまでとは違う意味で真っ赤になっちゃう。

「今度は私の番だからね」
『オーライ。聡美様』

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