朱美のすきなこと


東南アジアの某国に、比較的穏やかで柔和な人々が暮らす小さな島がある。そこは主に
観光を収入源として、リゾートに特化された美しい島であった。以前から洋を問わず、
観光客が訪れるその島では日本人も珍しくは無く、物価の安さから気軽に訪れる者も後
を絶たない。そして、その島には今日も一人の日本人女性が、訪れて来た。
「ああ、いい風が吹いてる!」
海から吹き付ける潮風を受け、腰まである黒髪を優雅になびかせた一人の美しい女性が、
海沿いのコテージから身を乗り出しながら、叫ぶ。彼女の名は、勝野朱美。そろそろ、
三十路に手が届く年齢ではあるが、まるで十代の様な瑞々しさと、モデル顔負けのルックス、
そして、見るものにため息をつかせるような、均整の取れたスタイルを誇っている。生来
の旅好きで好奇心旺盛な彼女は、裕福な家庭事情を後ろ盾に、暇さえあれば国の内外を
問わず良く旅に出た。
「海!海!海!さあ、泳ぐぞお!くくく!」
朱美はコテージの中でそう叫びながら、一人身をいい事に誰憚る事無く、着替え始める。
まだこの島に着いたばかりだと言うのに、彼女は旅の疲れもなんのその、恵まれた体躯を
フルに活用し、バカンスを満喫しようとした。
「日焼け止め・・・と、サングラス・・・タオル・・・よし!」
朱美は持ち物を確認すると、忙しげにコテージから弾け出て、海に向かう。時差ぼけで、
多少眠くはあったが、体力自慢を自負する彼女にためらいは無い。朱美は、海に向かう
坂道を一気に駆け下ると、目前に広がる海景に感嘆の声を上げた。
「わあ!きれーい!」
日本では決して見られない、南方特有の突き抜けた青い空と海。彼女は、そのあまりの
美しさに身震いが止まらない。

「わーい!」
朱美は気勢を上げ、着替えたばかりの白いビキニに包まれた胸とヒップを大きく揺ら
しつつ、浜辺をかけて行く。辺りに寝そべる観光客を掻き分け、海に飛び込んだ彼女は
押し寄せる波に揉まれながらも、美しい情景を十分に堪能していった。
「うふふ!あはは!海、最高!」
島はそろそろ夕刻に差し掛かっていたが、降り注ぐ日差しはまるで真昼のような強さ
である。それをいい事に、朱美は体がくたくたになるまで泳ぎ、ふと気が付いた時には
海岸線から人気が去り始めていた。
「そろそろ帰るか・・・」
灼熱の太陽が降り注ぐ島国に日が翳り始めた頃、朱美はようやく海から上がり帰宅の途
につく。いささか寂しくなった帰り道ではあるが、治安の良いこの島では物騒な事件など
皆無に近いため、朱美の足取りは軽やかだ。
「ふん、ふ〜ん・・・」
彼女が身につけている白いビキニが、やや薄暗くなった島の大通りでくっきりと浮かび
上がる。そんな道すがらには、大道露天の如き出店がいくつか軒を連ね、朱美の好奇心
を引きつけた。中には、スパイスの効いた南国料理を出す露天もあり、ちょうど夕食時
に差し掛かった彼女の食欲をそそっていく。そして彼女は、ある一軒の肉料理屋の前で
足を止めた。
「美味しそうだな・・・」
香ばしく漂う肉料理が朱美のお気に召したらしく、さっそく彼女はその店で夕食を摂る
ことに決めた。身振り手振りで注文を済ませると、出て来た料理にかぶりつく朱美。
「うん!美味しい!」
思わず声が上がったが、店内にいる地元の客は笑って彼女を見ている。朱美の顔を見れば、
料理を誉めている事がわかるし、元々が穏やかな島の住人たちなので、観光客に対しては
寛容なのだ。

「うん、満腹、満腹」
夕食を終えた朱美が店から出ると、辺りはすでに暗くなっていた。心なしか、少しだけ
肌寒い。いくら南国とは言え、ビキニしか身に着けていない彼女にしてみれば、夜の
気温が暖かい筈は無い。
「まあ、いいや。宿はすぐそこだ」
肩を竦め、小走りで宿へ向かい出した朱美。すると、その時
「ジュース、イラナイ?」
と、片言の日本語で、彼女に話し掛けてきた人物がいた。良く見ると、それは現地の
少年らしく、肩から掛けたクーラーバッグからジュースを取り出し、朱美に向かって
笑顔を向けている。
「あら、可愛い売り子さんね」
朱美は、目前に現れたジュース売りの少年に、おどけながらそう呟いた。日本語など
通じる訳では無いが、朱美はにこやかに少年を見据え続ける。
(可愛いな。日本でなら、中学生くらいかな・・・?)
朱美は少年の差し出すジュースを手に取った。そして、少々大きめの紙幣を手渡すと、
少年の笑顔が急に曇り始める。
「オオキイ。オカネ」
どうやら少年はおつりが用意できない、と言いたいらしく、身振り手振りでその事を
朱美に伝えようとした。しかし、朱美は
「おつりはいいのよ。取っておいて」
と、少年の手を握って、頭を軽く左右に振る。それでうまく伝わったのか、少年の顔
に微笑が戻った。そして、朱美の頬へ親愛のキスを寄せる。
「まあ!」
朱美は少年の口付けに戸惑いながらも、どこか嬉しげな表情を見せた。彼は、褐色の
肌と彫りの深い美しい顔立ちをしていて、何気にエキゾチックだ。朱美の喜んだ表情
を見た少年が、つられるかのように微笑を返す。にこり、と笑った少年の優しげな顔
に、朱美の女が少しばかりぬるんだ。

(ふふっ、可愛い坊やね。お姉さん、悪い癖が出そうよ・・・)
朱美は少年の手を軽く握り込むと、大通りから見える自分のコテージを指差し、
「ちょっと、おいで・・・ちょっとだけだから・・・ね」
と、少年にウインクをして、そそくさと歩き始めた。そして少年は、朱美のいささか
強引なお誘いに、呆気に取られながらも手を引かれ、とぼとぼとついていく。
「ボク、お名前言える?ユア、ネーム?」
まんまと少年をコテージに誘い込んだ朱美は、世にも適当な英語で少年の名前を聞き
出そうとする。
「ロイ・・・」
少年は自分の胸元を指差しながら、ロイと名乗った。彼はまだ、呆気に取られていて、
よもや自分が、姦婦の罠に誘い込まれたとは思わず、コテージの中をきょろきょろと
見回すばかり。そこに、朱美が突然白いビキニを脱ぎ捨て、自身の体を恥ずかしげも
無く曝け出した。
「ワア!」
異国女性の破廉恥な振る舞いに、褐色の肌を持つ少年の体が竦む。彼は、肩からかけた
クーラーバックを思わず床に落とし、生まれたままの姿となった朱美を見詰め、頬を
紅く染めた。しかし、朱美はそんな少年の動揺に構わず、ロイと名乗った彼に近付き、
おもむろにズボンの前を触ってみる。

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