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わが家で料理教室を始めるぞ!

(マイタウン安城 16)

稲垣 優

 妻のいとこが、わが家を訪れた。二十三歳のOLだ。

 久しぶりの来訪に、わが家は盛り上がった。私はさっそくこの機会に料理の「修業」をと考えた。いとこは無類の食いしん坊で、おいしいものと聞くと、車に乗って飛び出す。浜松だろうと京都だろうと、ひとっ飛びだ。だから料理のしがいがある。適切な評価を下してくれるからだ。

 私は、いとこがやってくる時間の三時間前から台所に立った。前回の経験から偉そうなことは言わない。ひたすら妻にご教授願いながら、黙々と手を動かす。

 夕食は、大いに盛り上がった。いとこは「おいしい、おいしい」と何度も言ってくれた。あんまり連発するので照れ臭くなり「君だって、これぐらい簡単に作っちゃうんじゃないの」と言ってみた。すると「私は食べる専門。作るのは母さんよ」ときた。それでも「本当は料理も覚えたいんだけど」と、恥ずかしそうに笑った。

 なんだ、そうだったのか。それならそうと早く言ってくれればいいのに。そこで私はいとこに提案した。「月に一度ぐらい、わが家の料理教室に参加しないか」と。そんな教室は、もちろんまだない。でもせっかく料理に挑戦したいという者がいるんだ。その気持ちを大事にしたほうがいい。受講者は、いとこと私。講師は妻だ。教えるとなれば妻もいろいろな料理を研究するだろう。ということは、わが家の食卓が今以上に盛り上がることにもなる。これはいい。まさに一石二鳥だ。さっそく今月から始めよう。

 一人で盛り上がっている私を見て、妻といとこが、あんぐりと口を開けてた。それでも「嫌だ」という表情をしているわけではない。よし決めた。絶対にやるぞ!

copyright:Masaru Inagaki (『風車』44号掲載 1992.1.15執筆)

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