●Reader's Column――つんさんの「マザーズライフ・パパと子どものいる風景


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第8回 ついに息子がキレた夜

ずっと手を離さないからね……

           つ ん

 それは、あと三日で息子が9カ月になる日曜の晩のことでした。寝る時間になっても、息子はダンナさまと大はしゃぎ。それならと、私もお風呂に入り、ゆったり幸せな気分にひたっておりました。すると、扉のむこうから息子のグズグズ声が。声は次第に近づいてきて、ついにお風呂の戸がガラッ。ダンナさまに抱かれた息子と私の目があった、その瞬間。突然、息子は火がついたように泣きはじめたのです。それも、今までに見たことがないような、尋常でない泣きっぷり。

 私は急いでお風呂から出て、息子を抱っこしようとしました。いつもなら、これでOKなのですが、このときばかりは様子が違いました。私が近づくと身をよじってイヤがり、ダンナさまにしがみついて、離れようとしないのです。

 イッタイ、どうしたの?

 こうなったら、ぐずったときの奥の手。おっぱいを口にふくませ、これでどうだと思いきや、さらに身をよじってイヤがるばかり。

 えっ、ど、どうして……。

 これには何か理由があるはずと、よくよく考えてみて、ハタと気づいたんです。私が、とっても息子にひどいことをしてたってことに。

 実は、その二日前の金曜日。大雨の中、電車を乗り継いで出かけた託児つきコンサート。演奏もイマイチだったけど、息子を預けた託児所は最悪。狭い部屋に、ギャーギャー泣きわめく赤子がすし詰め状態。そんな中に息子を置いていくのは、しのびないと思いつつ、エイヤーと預けてしまった私。案の定、迎えに行くと息子は大泣き。もう、こんなコンサートはやめようと思ったあくる土曜日。今度は息子を連れて、ダンナさまの実家へ遊びに行きました。せっかくなんだから、孫とのふれあいを邪魔してはいけないと、息子と妙な距離をとってしまった私。さらに、追い打ちをかけたのが日曜日でした。たまにはゆっくりお茶でもしたいわなんて、実家の母に息子を預け、ダンナさまと二人で喫茶店に出かけてしまったのです……。

 あぁ、なんてヒドイ親なんでしょう……。

 これじゃ、息子が怒るのも当たり前。私が一人で幸せそうにお風呂に入ってるのを見たら、ついにカンニン袋の緒がキレちゃったんでしょうね……。ゴメンネといくら謝っても、息子は私を拒絶するばかり。とうとう私までイジイジして、後ろを向いていると「何やってるんだ、ほら、しっかり抱いてやれ」とダンナさま。「Rちゃんのこと大好きだよ。一番大事にしてるのに、放っておいてゴメンネ、ゴメンネ……」

 それからしばらく泣き続けたあと、息子はどうにか許してくれました。するとダンナさまは私と息子の手を引っ張って、鏡の前へ。「さぁ、仲直りのしるしだ。にっこり笑って。そんな顔してちゃダメダメ。はい、みんなでニーっ」

 とっても無理やりだったけど、なんだか私までふっと笑い声がもれてしまいました。その晩「よし、じゃあ寝るぞ」とダンナさまの一声で、いつものように川の字になって、三人仲良く床についたのでした。

 たかだか、生まれてから9カ月とは言え、もう何でもお見通しなんですね。自分の身勝手さを反省しつつ、この二人の温かい手をずっと離さないようにしなくっちゃ。そう、心に誓った夜なのでした……。(つ)


(ホームページ管理者の注)

この文章は『ふれあいポスト』に掲載されたものと少し違う(かも)。文字数の関係で『ふれあいポスト』掲載版は、少し短くしたそうです。上に掲載したのは、短くする前のもの。ここでしか読めないレアものでっせ〜。


copyright:Tsun! (『ふれあいポスト』1998年9月号掲載)

※縦書きの原稿を横書きに直してありますので、数字等の表記が『ふれあいポスト』掲載時と異なります。


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