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地球侵略

井上 優

 

 その日の朝、日本上空に巨大なUFOが出現した。三河湾上空で止まったUFOは、しばらくの間は沈黙していたが、お昼を過ぎたころ、突然メッセージを発した。地球の言葉を分析したらしく、なんと日本語で話しかけてきたのだ。

「われわれは、この星に移住する。先住民は即刻降伏せよ。さもなければ、集中攻撃を行う」

 こちらはUFOの中。広々としたコックピットで、司令官らしい宇宙人が首をひねりながら独り言をもらす。

「なぜなんだ? 不思議だ……」

 そばにいた部下が聞く。

「司令官、どうされたんですか?」

「この星の住人は、どうしてあんなに、われわれと似ているんだろう」

 地上の様子を映し出すスクリーンを見ながら司令官が言った。

「確かにそうですね。姿形はそっくりだ。それに言葉も似ています。今回分析したこの地域の言語は、私の母国の言葉とそっくりですし」

「この宇宙で知的生命体が誕生する確率は非常に低いというから、われわれに似た知的な存在となると、姿形も、考えることも、似通ってくるのかもしれない。それにしても不思議だ……」

 地球を侵略に来たというのに、当の司令官は、自分たちと地球人の類似が気になって仕方がないらしい。

 そのとき、別の部下がコックピットに上がってきた。

「司令官、大変です。船に搭載してきたほとんどの武器が、使用できなくなっています」

「なんだと? どうしたというのだ」

「出航のときは大丈夫だったのですが……。なにせ長旅でしたからね」

「うーん。壊れてしまったものは仕方がない。しかしこれではこの星に攻撃を仕掛けることはできんぞ」

 つい今しがた、地球人に対して「集中攻撃を仕掛けるぞ」と脅したばかりなのに……。司令官は頭を抱えた。と、そのとき、彼はひらめいた。

「そうだ、この手があった!」

 別の部下に何やら指示をし、地球に向かってこんなことを言いだした。

「われわれは極めて気が短い。今から言う内容は最後通告だ。いいか、今すぐに降伏せよ。さもなければ、お前たちの歴史が変わることになる」

 一時間たった。地球からは何の反応もない。そこで司令官は、先ほど指示した部下に命令を出した。それはタイムマシンの起動命令だった。

「いいか、この星の住民が誕生する前の時代までさかのぼれ。それなら武器などなくても、星を征服できる」

 勝ち誇った顔の司令官。UFOは、タイムマシンによってはるか大昔へと飛び去った。

 太古の地球を制圧した宇宙人たちは、地球で暮らしはじめた。それは、のんびりとした生活だった。

 何年かたったころ、司令官だった宇宙人が、突然あることに気づいて飛び上がった。

「そうか、分かったぞ! やっと分かったぞ!」

 周りにいた者たちは驚いた。

「何が分かったのですか?」

「地球に来たとき、先住民がわれわれとそっくりだった訳が分かったのだ」

「というと?」

「彼らは、われわれの子孫だったのだ」

 胸のつかえが取れた元司令官だった。


copyright 2003:Yuu Inoue(Masaru Inagaki)  ffユニオン74号(2003.3月号)掲載


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