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幻相

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和人は目を醒ました。やわらかい朝日が和人をつつむ。

和人は目を醒ました。やわらかなベッドで朝が戯れる。

しだいにぬくもりを失くしてゆくベッドの中で、和人は目を醒ます。

正体のないもやは、今日は襲ってこない。

   和人、和人、何を夢みた。

和人は森を夢みた。緑あふれる木々の中で人々が集い、語らう。

和人は森を夢みた。

和人は目を醒ました。彼を見守もる街並みが、今日はいつもと違って見えた。和人は目を醒ました。もやは街並に渦巻いている。

失われた街並に、和人は涙を流す。

失われた街並は、和人の変化をじっと見つめる。

和人は風景を切りつけた。(かつて栄えた街並よ)

和人は街に出る。和人は風景の変化を知った。

街並は得体の知れないもやにつつまれている。正体のないあのもやに。

和人は森の中の時間を思いだしていた。

ここには森の時間はない。

和人は一つの風景の前に立ち、今朝切り取った風景をはりつけた。

和人は、その前に一つぶの種を蒔いた。

土へかえろう。

幻の日々にも似たこの街を、森のもとへ返そう。

和人は、失われた街のために、もう一度だけ涙を流した。


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