資料3:
コーク大学のマックス・テイラー応用心理学科教授の論文「インターネット上の子どもポルノグラフィーの性質と規模」からの抜粋

(以下翻訳文)

 これから、子どもに性的な興味を持つ大人がインターネット上で収集する類の写真に簡単に取り掛かりたいと思う。これは重要である。なぜならそれは収集の性的及び空想の土台に関する何かを示すかも知れず、今度は我々がより効果的な予防的戦略を発展させるのに貢献するであろうから。インターネット上に現れる素材を我々が見るとき、我々はそれが特に同質でないことが分かる。この素材から、我々は小児性愛者にとって魅力的な多くの異なった種類の写真を確認できる。しかしながら、前述のようにそれらの全てが直ちに法律上の子どもポルノグラフィーの範疇に入るわけではない。子どもに性的な興味を持つ大人が集める写真は、より露骨に性的でないものから裸を通って露骨に性的なものに至る連続体のどこかに当てはまるものとして分類できる。

 第一の範疇を我々はエロチカと呼べる。これらの写真は主として裸や性的な振る舞いの描写を伴わない。それらは単なる子どもの写真であるかも知れない。また、それらには水着や下着を着た子どものように、より明らかに性的な含みがあるかも知れない。子ども服の広告が良い例である。この種の写真の不適当な所持は、恐らく子どもに性的な興味を持つ大人を示唆しているが、ほぼ確実にそれらの製造も所持も違法にはならないだろう。

 確認できる第二の幅広い範疇はある形態の「裸」を含む。たとえばヌーディスト関連の出版物からの写真がこの範疇に属する。勿論ヌーディズムは合法的な活動であり、その文脈内においてそのような写真が適切なこともあると主張しうる。しかしながら、その文脈の外でそれらが存在することは、所持が必ずしも違法でなくともよいけれども、子どもに性的な興味を持つ大人を示唆する。隠し撮り写真と呼ばれる範疇の写真も、裸を含んでいればこの範疇に入るかも知れない。インターネット上には、非常に幼いよちよち歩きの幼児や子どものアクセス可能な写真が何千枚も存在する。それらはしばしば日本を出所としており、(子どもは)裸でまたは部分的に服を着て、例えばゴムプールや水泳用プールまたは砂浜で遊んでいる。撮影者は50から100メートル離れた所におり、高機能のレンズを使ってこっそりと写真を撮っているかも知れない。勿論、親と子どもはどちらも撮影されていることに気が付いていない。これらの写真は安全な領域であるべきものにおいて撮影され、そして無垢で適切な遊びに性的特徴を付与しているので、取り分け精神を蝕む性質がある。しかしながら、これらは子どもポルノグラフィーの法律上の定義の幾つかには当てはまらないかも知れない。

 この範疇に属し、さらに進んだ非常に大きな写真の一群は、裸を伴うポーズ写真(posed pictures)と呼んでよいものである。これは大人のソフトポルノと等価な子どもポルノグラフィーである。このような写真は通常立派に作られ、高品質であり、プロの写真家の関与を示唆する。写真はしばしば戸外で、時にはホテルの部屋に見える場所で、またある時は高価な外見の贅沢なセットで撮影される。後者は再びプロの関与を示唆する。これらの種類の写真は通常それとなく性的(implicitly sexual)であり、露骨な性的振る舞い(explicit sexual behaviour)を示すよりは、むしろ様式化された刺激的なポーズを多用している。通常、関与している子どもは非常に可愛らしく、良く食べて清潔だと思われる。これらの写真全てが必ずしも違法と見なされるわけではないであろうし、ある場合には芸術上の利点という見地から正当化された。しかしながら、これらは子どもに性的な興味を持つ大人にとって疑い無く非常に魅力的である。証拠を手に入れるのは難しいが、子どもに対する性的虐待に関係する仕込みの過程にこの種の写真が時として関係しているかも知れない幾らかの証拠がある。これらの写真の多くは元々日本の立派な作りの雑誌で発表され、雑誌はインターネット上における分配のためにスキャンされる。写真の撮影場所はしばしば西ヨーロッパだと思われる。

 我々が確認できる最後の範疇の写真は「露骨に性的(explicitly sexual)」なものである。これらは性器や肛門の領域に焦点を当てた写真から、性的に露骨なポーズをとる一人または複数の子どもを経過し、他の子どもか大人によって行われる実際のまたは擬似的な性的暴行の写真に及ぶと言って良い。自慰行為の写真が幾つか存在し、また拘束や鞭で打つといった加虐的な形象を伴う写真も幾つかある。この範疇の写真は、概して非常に明らかな性的性質を持ち、製造と所持の両方が全ヨーロッパの管轄区域で違法である。

(中略)

 インターネット上の子どもポルノグラフィーはどこから来るのか?過去には、子どもポルノグラフィーの製造には私的な基盤と同様に商業的的な基盤があり、非常に多くの静止写真と映画フィルムが販売のために作られた。ロリータ、ロリポップス、デイヴィット等の題名をつけられた雑誌が作られ、性関連の店で、または郵便での注文に応じて売られた。これらの雑誌は今でも小児性愛者の社会の中で流通しており、これらの雑誌からの初期の写真、及び映画フィルムやビデオからのデジタル化されたクリップは、現在インターネットで入手できる性的に露骨な子どもポルノグラフィーの核を成している。その多くは30年か40年前のものか、あるいはもっと古い。しかしながら、1990年代におけるハードコア的な素材の製造は大部分が「家庭」を基盤とした私的な活動である。今では子どもポルノグラフィーの分配は、私的な個人によって親密に行われるか、またはインターネットを通じてなされる。分配への商業的な関与は未だに見出されるものの、かなり稀である。最近の静止画像の製造にはデジタルカメラの利用を伴うことが増えているが、しかし依然として幾らかはポラロイドフィルムやその類似のものからスキャンされている。写真の背景にコンピューターがますますに写るようになっていることに我々は気がついた。これは写真を製造するために固定されたデジタルカメラが使われていることを示唆している。性的な振る舞いに関わる子どもの動画像は、子どもに性的な興味を持つ大人にとって疑いなく非常に魅力的であるが、しかしコンピュータは長いビデオシーケンスを取り扱ったり製造することが未だ得意ではない。従って殆どの動画像は未だにビデオの形式が元になっており、インターネット上には高品質のビデオクリップやビデオキャプチャーの静止画像が現れる。これは重視するべき大事な点である。何故ならば、これは子どもポルノグラフィーが単にインターネットの問題ではないという事実を強調するからである。子どもに性的な興味を持つ大人はインターネットよりもずっと前から存在したのであり、そして初期の製造形態が未だに重要である。我々がアクセスしたインターネット上の素材のうち、およそ85から90%が10年から15年よりも前のもので、その多くが1960年代と70年代に溯ると我々は判断した。

 現在アメリカやオーストラリア、そして西欧で製造されるハードコアの子どもポルノグラフィーは、その出所や性格が家庭内的である。これらの犯罪においては、他の場合と同様に機会が中心的な要因である。そして、子どもと合法的に接触する手段のある者(実の、または義理の親)が通常は子どもか撮影者の家でポルノグラフィーを製造する。確かに、最近の写真で恐らく最も驚かされるのはその家庭内的な特質であるけれども、勿論それは子どもへの性的虐待に関して我々が知っていることを反映している。写真に撮られている性的暴行は、典型的に寝室や居間、そして台所といった我々の家の通常の生活場所で行われる。買春観光も、その範囲は判断するのは困難であるが、素材の源となることがある。子どものようなイメージを含む静止した、または動く性的な漫画もまた広く入手可能である。文章による素材も(例えばエロティックで猥褻な物語)も同様である。

 先に私がエロチカと称した素材もまた家庭内的な出所から来ることがあるが、しかしここにはより商業的な関与があるように感じられる。前述のように、我々がインターネット上で見るの素材は主として光沢紙に印刷された立派な作りの雑誌からスキャンされており、商業的な関与を示唆している。


[訳者注: ここでのエロチカは前述の「ポーズ写真」を指すものと思われます。欧州サイバー犯罪条約の注釈書や「子どもの売買、子ども買春および子どもポルノグラフィーに関する子どもの権利条約の選択議定書」に関する国連文書を読む限りでは、インターポールの定義にあるような「性的に露骨」なポルノグラフィーとそうではないエロチカは国際的に見て区別されています。なお、訳者は子どもエロチカを擁護する立場をとりません。]

Convention on Cybercrime
Explanatory Report
http://conventions.coe.int/Treaty/EN/projets/FinalCyberRapex.htm

Question of a draft optional protocol to the Convention on the Rights of the
Child on the sale of children, child prostitution and child pornography
http://www.hri.ca/fortherecord2000/documentation/commission/e-cn4-2000-75.htm


(中略)

 しかしながら、より賢明で尋ねられるのがより恐ろしい質問は何人の子どもが関与しているかということである。私が関係している仕事の一部は、インターネットのソースに基づく子どもポルノグラフィー写真のデータベースの構築である。このデータベースの主要な機能の一つは新しいイメーの古い物からの区別を手助けすることである。我々がインターネットで2年以上に渡ってダウンロードした50000枚以上の写真のサンプルでは、我々が大まかに見積もった所、2000人以上の少年少女が性的に露骨な写真に出演させられており、エロティックな裸のポーズを含む写真でも同様の人数が出演させられていた。我々が見積もった所では、我々が持っている性的に露骨な写真の85%が、そして裸のエロティックなポーズ写真の20%が10年から15年よりも前のものである。従って我々のサンプルの中には、過去10から15年以内に、性的暴行を受けている間に写真を撮られた子どもがおよそ300人から500人おり、その写真は公然と入手できるようにされた。同様の時間的枠組みにおいて、裸でしばしば暗示的な刺激的ポーズを取っている間に写真を撮られたおよそ1600から1800人の子どもの写真が分配された。これらは我々がもっているサンプルに基づく大まかな見積もりである。しかし、私はこれらの数字が、関与する子ども、特に性的に暴行されている間に写真を撮られた子どもの数を少なく評価していると信じる。

 我々の経験では、新しい子どものポルノグラフィックな写真は毎月一人か二人の頻度でインターネットのニュースグループに現れる。しかしながら、それらの出現は不規則である。これらの子どもがどこの国の出身なのかを確実に知るのは時に難しい。ヨーロッパ、南アメリカ、オーストラリア、そしてアメリカ合衆国が最もありえそうな出所である。しかし、日本、タイ、フィリピンの撮影地も見出される。子どもポルノグラフィーに描写される子どもは、アジア人が頻繁に見出されるものの概して白人で、しばしば北欧人種の特徴を備えている。しかしながら、黒人の子どもは稀である。裸の写真は、元がアメリカか西欧である傾向があるが、しかし多くの日本または東洋の子どももまた明らかである。我々は現在、週に2000から4000枚の子どもポルノグラフィックな写真をニュースグループからダウンロードしている。

 昨年を通じて、新しい子どもポルノグラフィーに現れる子どもの年齢が下がっているというのが我々の印象である。現在、5歳か6歳以下に見える子ども(取り分け女児)を関与させた極めて動揺させられる新しい写真が大量に現れている。関与させられている子どもの年齢ゆえに、また幾つかの写真が子どもにとって非常に気がかりな加虐的な性質を持つがためにこれらの写真には動揺を招くものであり、我々は描写された子どもの健全な成長を懸念しなければならない。これらの写真を除けば、全ての写真の典型的な年齢の範囲は7、8歳から10、11歳の範囲に入る傾向がある。

(翻訳元)
http://web.archive.org/web/20010217054625/http://www.asem.org/Documents/99ConfVienna/pa_taylor.html
これは一九九九年にウィーンで開催された「インターネット上の子どもポルノとの闘いに関する国際会議」の論文から抜粋して翻訳したものです。