♪ラテンの恋とボストン留学 第37号 2003/02/15 -----------------------

今日のトピック: グラフクイーン

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                by 美春 and カルロス  miharuandcarlos@hotmail.com
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このメルマガのタイトルは、「ラテンの恋とボストン留学」です。
どうも前半の方に話の比重が行きがちなんだけど、
今日はちょっと留学の方に注目して書いてみます。

美春とカルロスは大学院でビジネスの勉強をしています。
2001年の9月にスタートしました。
偶然カルロスと美春は同じチームになったんだけど、
私たちのチームには他に3人のチームメートがいました。
アメリカ人のジョシュとアリス、そしてインド人のボビン。
この5人で約4ヶ月半、
いろいろなチームプロジェクトを行うことになったんだけど、
これがねー、想像以上に大変だったんだよ!

アメリカ人のジョシュはまだ24歳くらいで、
若さゆえに血の気が多いというか、自信満々で強気なタイプ。
アリスは美春と同じくらいの歳で、かなりいい人っぽい。
ボビンは、口ひげを生やしてて、匂いがきついのはいかにもインド人。
いろいろ難しいことを考えてそうなんだけど、
口数はかなり少なめ。

何しろ美春が苦労したのはジョシュとの関係。
チーム内には美春とカルロス、そしてボビンという
3人の留学生がいたんだけど、
あきらかにジョシュは我々留学生に対して壁を作ってたんだよね。

チーム結成後すぐのプロジェクトは、
まだお互いにお互いをよく知る前だったんだけど
いきなり、かなり時間に追われて精神的にピリピリしてたところに
たまたまあの9・11のニューヨークの事件が起きたりもして、
ジョシュは相当気が張ってたのね。
で、特に美春やボビンは英語で対等に意見を言うのに苦労してて、
たどたどしい英語だとジョシュはほとんど聞いてくれなかったの。
カルロスはそういう美春を助けようと
ジョシュに「ほら、美春が作ったこれを見て!」と
声をかけたりしてくれてたんだけど、
それを今度はまた美春がうまく説明できなかったりして、
結局ジョシュはほとんどアリスと二人で進めてたって感じ。

このプロジェクトの後、完全にジョシュに無視された気がした美春は
相当悩んだのね。
かなり意気込んで大学院生活をスタートさせたのに、
学校生活のかなりの部分を占めるチームプロジェクトがこんなんじゃ、
本当に先が思いやられるって。
正直言って、自分にはムリ、もうやめたい、って思ったこともあったよ。

この頃、まだカルロスとはそれほど親しくはなかったんだけど、
カルロスもジョシュと上手くやってはいなかったから、
チラっとそういうチーム内の不和について相談してみたのね。
そしたら、ちゃんと個人的に話して早く解決した方がいいよ、って。
とりあえずその意見に従って、美春はまずアリスと二人で話すことに。

アリスは、美春がチーム内で無視されてるような気がする、って言ったら
すっごく驚いてて、全然そんなつもりはないって。
この話し合いはけっこううまくいって、
アリスとはちょっと近づいた気がした。

結局、美春はジョシュと二人で話す勇気は持てなかったんだけど、
こうなったら実力で認めさせるしかない!ってある日強く決意。
そしてそれからは、自分の不得意なことは素直にみんなに任せて、
得意な分野で認めてもらおう、って計画を練ったのね。

まぁそれでも、英語で議論して英語でレポート書いたりする以上、
言葉でハンデがあるとどうしてもネイティブスピーカーには軽視されがちで、
思ったようには上手くいきませんでした。

11月に入って、マーケティングのプロジェクトを立ち上げたときのこと。
5人で役割分担をすることになったんだけど、
美春は一番最初に、一般企業に電話して英語でインタビューするなんて
どう考えてもネイティブに任せた方がいいだろうし、
美春はデータ処理が得意だから、グラフを作って数字の分析をしたい、って
ミーティングのときに勇気を出して言ったのね。
そしたら、もちろんそれに誰も反対はしなかったんだけど、
ミーティングの最後に、インタビューの役割をとったジョシュが、
自分もデータやっとくよ、って言うの。
美春はかなりショックだった・・・
そんなに私一人に任せるのが心配なのか!?って。

これが美春を奮起させました。
とにかく思いつく限りのグラフを作って、
あらゆる角度からデータを分析できるように入念に下準備。
そして渾身のグラフファイルをチームメートに送信。
これでどうだーっ!って「腰に手」の気分だったね、そのときの美春は。(笑)

次のミーティング。
かなりドキドキしながら部屋に入った美春だったけど、
他のみんなは全くいつもと同じ。
う〜ん、誰もあのファイルに感動してくれなかったのかしら・・・と
ちょっと不安になる美春。

何事もなかったかのようにミーティングはスタート。
まさかジョシュに直接それを聞く勇気はないので、
とりあえずジョシュがアリスとしゃべってるすきに、
こっそりカルロスに「私のグラフ見てくれた?」と聞いてみる。
カルロスが見てないと言うので、その場で開いて見せることに。
(それもかなり失礼な話だと思わない?見てないなんて・・・)

美春のグラフを見てカルロスは「This is great!!」と感嘆の声をあげ、
すぐにジョシュとアリスに声をかける。見て見て!って。
そしてやってきたジョシュとアリスにカルロスがグラフを見せ始める。
次の瞬間、ジョシュが声をあげた。
You are a graph queen!(君はグラフクイーンだな!)
ジョシュも自分でいくつかグラフを作ったらしいけど、
美春のに比べたら自分のは nothing だって。

美春、ボストンに来てから一番嬉しかった瞬間!

さらにある日、美春の親友でクラスメートでもあったカタリナが、
他のクラスメートとの会話を美春に教えてくれた。
ランチのとき、10人くらいのクラスメートがいたんだけど、
データ分析の話になったとき、その場にいたジョシュが
「グラフを作らせたら美春にかなうヤツはいないよ!」と
みんなの前で大きな声で話してた、って。

その頃から明らかに、ジョシュの美春に対する態度が変わった。
前よりもずっと美春の意見に耳を傾けてくれるようになったし、
一言で言って、「仲間」扱いしてくれるようになった。

そして12月に入り、このチームでの最後のプロジェクトもいよいよ佳境に。
全チームがPowerPointのスライドでプレゼンテーションをするんだけど、
ここで美春はチームに一つの提案をしました。
普通はプレゼンではチームメート全員が交代でスピーチをするんだけど、
このプロジェクトでは全員がしゃべることは要求されてなかったのね。
で、美春は考えた。
美春の自信のグラフを元に、私たちはかなり質の高いスライドを作れるはず。
もちろんそれには相当時間がかかるだろうけど、ぜひ美春が担当したい。
さらに、スピーチをする人の話のスピードに合わせて
スライドをめくっていく仕事を美春がしたらどうか、って。
そのかわり美春はスピーチしないんだけど、
その方が話す担当の人は動き回りながらしゃべれるし、
明らかにプロフェッショナルなプレゼンになるよ!って。

この提案は採用され、
美春はプレゼン前の1週間、毎朝8時には授業があるというのに
連日夜中3時までスライドの制作にかかりきり。
ジョシュはかなり心配して、自分も手伝うよ、と言ってくれたんだけど、
スライドを分担すると統一感が損なわれる危険があるので、
美春はどうしても自分がやる、と主張をしました。
そして心配そうなチームメートに一言、
I can do it. And I never say I can, when I am not sure.
(大丈夫。私は絶対、自信のないときに大丈夫とは言わないから。)

そして当日。
なんとこの日プレゼンでしゃべらなかったのはクラス中で美春一人!
これには美春も驚いた。
でもね、プレゼンは本当にスムーズに進んで、
クラスメートにもすごく評判が良かった。
自分たちも、出来栄えには本当に満足でした。

かなり無理をしてきたせいで、美春は完全に消耗しきっていたけど、
翌日受け取ったジョシュからのメールが、
そんな美春の疲労を全て吹き飛ばしてくれました。

Miharu,
I have to say, you did add a great deal to the project,
and it was a pleasure working with you. 
I think that your proposal for the presentation added a great deal,
and it showed yesterday. 
Best of luck on your finals and your future team experiences. 
You will be an asset to each and every team that you are on. 
You should be proud with the result of the project.
Regards,
Josh

美春へ
これだけはどうしても言っておきたいんだけど、
このプロジェクトに君は本当にすごい貢献をしたし、
君と一緒にこのプロジェクトに取り組めて良かったと思う。
君の提案は僕らのプレゼンをすごく立派なものにしてくれたし、
それは昨日実際に証明された。
君のファイナル(試験)と今後のチームでの経験が
全てうまくいくことを祈ってるよ。
君はどんなチームにあっても、そのチームの財産になるだろう。
このプロジェクトの結果を君は誇りに思うべきだよ!
ジョシュ

美春、30分くらい涙が止まらなかった・・・
部屋で、声をあげて一人で泣きました。
本当に、4ヶ月間頑張ってきて良かった、って。
どうしていいかわからなくて、何度も一人で泣いたけど、
最後に、こんなステキな結末が待っていたなんて!

このメールがカルロスからだったらそこまで感動はしなかったんだよね。
彼は基本的にいつも美春の味方だったし。
これがあの気難しい自信家のジョシュからだったから本当に驚き。
最初の頃の、美春に対する冷たい無表情な態度を思い出すと、
美春にはこれが奇跡としか思えませんでした。

その後カルロスと付き合うようになってから、
このときのチームでの経験を何度か話したことがあるけど、
カルロスに言わせると、ジョシュは世間知らずの子供だ、って。
一般的にアメリカ人は、国や資源が広大で、世界での立場が強いが故に、
「井の中の蛙」的な性質があると言われてるけど、
ジョシュはまさにその代表のような人。

そういえばある日驚いたのは、
美春のパソコンのディスプレイを偶然目にしたジョシュがいきなり叫んだ。
Windows in Japanese!?(ウィンドウズの日本語版?)
あのねー今どきウィンドウズが英語だけだって信じてたの・・・???
いかにも「井の中の蛙」アメリカンだと実感した瞬間だった・・・

ま、そんなジョシュだったけど、
美春の頑張りを心から認めてくれて、
仲間としてきちんとその存在を尊重してくれるようになった結果を見ると、
美春は逆にアメリカ文化の良いところを見た気がした。
つまり、本当の意味での実力社会。
日本のように、年齢や肩書きで暗黙の尊敬を置くようなことはせず、
そのかわり、実力で結果を見せられたら、今度は全幅の尊敬と信頼を抱く。
そこには変な「ひがみ」とか「わだかまり」とかは全然なくて、
とにかくスゴイものはスゴイと素直に認める。
その潔さは、日本人が見習っていいものだと思いました。

このチームでの地獄と天国の経験を経て、
美春はすごく強くなれました。
その後も毎学期、違うチームメートと組んで、
いろいろ問題はあったけれど、
結果を見せれば文句は言われない、と信じて、
いつも口よりまず行動、と頑張ってきたし、実際に、
周りのみんなにも認められてきたと思う。

一般に、日本人留学生は他の国の留学生(特に中国人)に比べて、
ベースとなる頭の良さはあっても、
ずうずうしさに欠けるせいで周りから認められにくい傾向にあるんだけど、
英語のハンデなんかは気にしないで、
とにかく結果を示して有無を言わせない!という勢いで頑張れば、
この国では絶対に認めてもらえると思う。

もしこれから留学を考えてる人、
あるいは今現在留学中で苦労している人がいたら、
ぜひ自信を持って頑張ってください。
日本人はもともと勤勉で几帳面だから、
アメリカの実力主義は、頑張れば必ず味方をしてくれるよ!
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発行者: 美春 and カルロス  miharuandcarlos@hotmail.com

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《編集後記》

♪このジョシュのメールをカルロスに見せて、
彼に「asset」って呼ばれて嬉しい、って美春が言ったら、
Oh, I can call you so, then! とかってニヤっとしながらカルロスが言って、
それ以来たまに「My dear ASSET...」「Come here, ASSET...」なーんて
ふざけて美春のこと呼ぶんだよー!
ひどくない?ひどくない?
美春が思うに、日本には「君はうちの会社の宝だ」とか、
「人材」って言葉があるように「財産」を人に対して
良い意味で使う習慣があるじゃない。
でもどうやらスペイン語では、英語のassetに該当するactivoという単語を
そういう良い意味の比ゆで人に対して使うことはないらしい。
だからカルロスには、美春が「財産と言われて嬉しい」って言う気持ちが
わからないんだよね。
3言語にまたがって交際していると、
こういう言語的、意思疎通の難しさが多々あるものでございます。はい。
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