【ニューヨーク発】東16丁目のちゃぶ台
[ Last Updated : 10/23/97 ]
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続いてゆく、ということ。
" LIFE IS WHAT HAPPENS TO YOU WHILE YOU ARE MAKING OTHER PLAN. "
(人生とは何かを計画している時に起きる、全く別のこと。)
龍村仁監督の「地球交響曲ガイアシンフォニー第三番」の中に出て来るアラスカ在住の元ブッシュ・パイロット、シリア・ハンターという女性の言葉である。
写真家、星野道夫はこういう言葉を残している。
「…もし、あの時、あの本を手にしていなかったら、僕はアラスカに来なかっただろうか。いやそんなことはない。それに、もし人生をあの時、あの時とたどっていったら、ただ、限りなく無数の偶然が続いてゆくだけである。
人生はからくりに満ちている。日々の暮らしの中で無数の人々とすれ違いながら、私たちは出会うことがない。その根本的な悲しみは、言いかえれば、人と人が出会う限りない不思議さ、すばらしさに通ずるのだ。」
アラスカの大自然を撮り続けた写真家、星野道夫は昨年の8月にロシアのカムチャッカで熊に襲われて亡くなった。それぞれに彼とのつながり、接点を持った世界中の多くの人が大きなショックを受け、悲しみに沈んだ。私は以前アラスカから届いた星野氏からの葉書を見つめながらただただ呆然としていた。彼とアラスカで会うことはもうかなわない。彼の撮るアラスカはもう一枚も増えることはない。彼はもうシャッターを押さない。
この映画は出演者の一人であった故星野道夫氏に捧げる作品になっている。彼の死の悲しさを乗り越えるにはまだまだ時間の流れが浅すぎるけれど、彼の本の中に出て来る彼の友人たちがこの映画で彼のために集まっていた。そして私は手紙のやり取りでしか知らない直子夫人と星野氏の一人息子(となったしまった)、翔馬君にも映画を通して会ってみたかった。
映画を観た人それぞれが個人的に思うことがあると思う。私も個人的に思うことがそれはそれはたくさんあって、ここでそれを綴るのはあまり意味がない。ただ私が今回伝えたいことはこの映画、星野氏から続く、何かのつながりが、彼が亡くなった今、新たな出会いに確実につながっている、少なくとも私にとって何かがカチリ、とつながった気がした。
でももしかしたらそれは忘れていたことを思い出しただけなのかもしれない。
この映画でナイノア・トンプソンというハワイ在住の外洋カヌー航海者が出て来る。彼は一切の近代器具を使わず、星を読み、波や風を感じることで正しくナビゲーションをしてかつて祖先たちが数先年前に渡ってきたタヒチからハワイまでの5千キロの航海の旅をした人である。彼がそのナビゲーションの技術を伝授された最後の日、ハワイの海岸で師・マウにこう聞かれる。「タヒチがどこにあるか指すことだけきるか?」ナイノアはその方向を指差す。すると次にマウはこう問う。「タヒチが見えるか?」ナイノアは「はい、見えます。」と答えた。
このナイノア・トンプソンのストーリーは私に大きな何かを与えた。
「見えない島を見る力」はきっと私たちの中にもあるのだと思う。
星野道夫氏を少しでもご存じの方、ご存じでない方も、ぜひ観てみてください。2時間以上ある長いドキュメンタリー映画ですけど、寝ちゃっても気持ちいいです。音楽もいいし。
星野氏の死という悲しみをどうやって乗り越えればいいかという質問に彼が最も尊敬していたアラスカに住む友人ビル・フラー氏はこう答えている。
「悲しみと喜びはいつも共にあります。例えば子供に愛を注ぐことは至福の喜びですが、そこには深い悲しみが織りなされているのです。幸せはその中に悲しみを内包しています。だからこの深い悲しみを知ることなしに、至福の喜びを知ることはできないのです。」
息をのむくらいに美しいものに出会ったときや嬉しい出来事が起きたとき、私の中のどこががキュンと悲しむときがある。ああ、そうなんだな、と納得してしまう。
機会があったら、ぜひ見てください。
朝香はつみ
テレビ・ディレクター
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