【ニューヨーク発】それでも住んでるNYC

 [ Last Updated : 1/13/97 ]

 1991 LAS VEGAS (その1)

   何故かしらんが、L.A. には僕の親戚がいっぱいいる。 それも、ほとんどが 日系2世、3世だ。 どうやら昔からうちの家系はアメリカに出たがるらしく、一番 最初に親戚のばあちゃんが移民した年は1920年代だそうな... 

   ま、それはともかく、その親戚の中でも、一番僕と仲がいいのが、従兄弟にあ たるデイヴだ。 彼とは血縁関係だけでなく、年齢も近いので L.A. に行った時は必 ず一緒に遊ぶ。

   数年前、年末を L.A. で過ごした時に、デイヴが「ニューイヤーズ・イヴに一 緒にラスヴェガスに行かないか?」と、一枚のカードをとり出して見せた。 それは パーティーの招待状で、一本の遠くまで続いている道の絵と、その地平線の向こうに "1991 LAS VEGAS " という文字が描いてあった。 デイヴは以前も同じパーティーに 行ったことがあるらしく、「とってもワイルドでおもしろかった」と言うので、僕は 迷わず行く事に決めた。 どうやらそのパーティーというのは、デイヴのルーム・メ イトの知り合いの家で、あるらしかった。

   当日、L.A. から出発するメンバーは、僕とデイヴ、そしてデイヴの友人達の ハン、マイク、ブレットの合計5人だった。 

   ハンはベトナム系で、小柄でとても人なつっこい感じだ。 日本の若い俳優の 誰かに、ちょっと似ていて、英語で話しているのに、不思議と日本的なノリを感じて しまう。 アメリカ名はジェームスと言うらしいが、デイヴとは幼馴染みのため、本 名である「ハン」と、今でも呼ばれている。 
   マイクは日系人で、ラスト・ネームはイケガミという。 おっとりとした性格 が、その丸い顔ににじみ出ている。 そのおっとりとした性格のため、後で僕達はト ンデモナイ目に逢うことになる。
     ブレットは黒人の医大生。 ガッシリしていて、知的そうなメガネをかけてい るが、「車を当て逃げしたヤツを、とことん追い詰めてやった」とか、いろいろ話を 聞いていると、かなりワイルドなヤツらしい。 しかも、彼の一番笑えた話は、少し 長くなるが次のとおりだ。

   ...彼はアメリカ軍、海兵隊の予備兵でもあった。 その当時、アメリカは 湾岸戦争の真っただ中で、彼もいつかは戦地に送られるかも知れない、という日々を 送っていた。 彼は医大に行っていたので、当然医療班として派遣されるワケだった が、それでも彼は戦争には行きたくなかった。

   ある日、彼は友人達とディスコに行って、ノリまくって、PA スピーカーによ じ登り、そこで大騒ぎをしたあげく、そこから床へジャンプして、足をひどくネンザ してしまったらしい。 そして、戦争に行きたくない彼は、その日以来、毎日ジョギ ングを始めた...そう、足をもっと痛めるために!  そして、アパートではデイ ヴをはじめ、何人かの友人達に、「オイッ! オレの足の上にジャンプしてくれ!」 と頼み、ジャンプすると、「ウォー!」と、のたうちまわり、「次はキックだ! 頼 む!」と言い、キックするとまた「ウォーッ!」と転げまわって苦しんでたそうだ. .. 確かに彼は片足にサポーターを付けていた。
   皆、彼のことを「オマエはそれでも米国海兵隊員か!」とか「忠誠心はどこに ある!」、「報告するゾ!」とか言って冷やかしていたが、彼は真剣に、毎日足を痛 め続けた。 全くよーやるもんだが、コイツは何を考えて海兵隊にいるんだろう?  と思った。 別に徴兵された訳でもないのに.. デイヴに「後で足蹴ってくれって 頼まれるかもよ..」と言われたが、残念ながらその機会はなかった...

   ..とまあ、こんな個性豊かなメンバーで、ラスヴェガスまでのハイウェイを 車2台、時速100マイル(約160Km)ですっとばした。 

   夕方、ラスヴェガス郊外の住宅地の、新築されたばかりらしい一軒家に着いた 。 家の前は、沢山の車がごった返して、とめてあった。 そして家の中に入って、 また驚いた。 入るなり、沢山の人間が寝袋にくるまって、リビング・ルームの床に 寝ているのだ。 しかも、その真横でステレオをガンガンに鳴らして踊りまくってる ヤツらもいれば、ビールをのんでウロウロしてるヤツらもいた。 

   僕達は、奥に見えるキッチンへ向かった。 寝袋につまずかない様に注意して 歩いたが、このノイズの中を平気で寝てるくらいのヤツらなら、きっと足で踏んでも 起きなかっただろう。 

   家は2階建てで、リビングが吹き抜けになっていて、2階も見渡せた。 見上 げると、階段を登った上の、中2階のテラスにも何人か寝ていた。 2階にはベッド ・ルームがあって、そこにも女の子とか、何人かが出入りしていた。 家の中には合 計30人くらいただろうか?  ほとんど白人だが、家の主は韓国人らしかった。  聞くと、何と、みんな3日前からブッ通しでパーティーをしているそうだ!! 

   何とも言えない雰囲気の中で、先に来ていたデイヴのルーム・メイトを紹介さ れた。 白人の彼は、ビールを飲んでいて、目の下に隈が出来ていた。 彼がどもり ながら説明してくれた..「み、み、みんな3日前からいるんだ..」 彼はスーツ を着ていたが、不気味な黄緑色の、魚の形をしたネクタイをブラさげていた。 彼は 続ける..「い、い、いつまで L、 L.A. にいるんだい?..」

つづく..

NAO(男・28歳)
ミュージシャン

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