【ニューヨーク発】なおちゃんのバンド日記

 [ Last Updated : 10/13/98 ]

バンドの話 <その8:コーリー再び失踪?>


目標のない日々

 さて、新しいバンド名は決まったものの、契約は相変わらず中ぶらりんの状態で、僕達はなんだか、目先の目標を失ってしまった感覚に陥った。 まぁ、それでも毎週末には集まって練習をしているのだが、ライブがあるとか、とにかくそういった目標が無ければ、メンバーのバンドに対する気力も、おのずと失せてくるというものだ。


悪いクセ

 そこで、ダラけ始めたのがコーリー。 実は彼の、フロリダから送ってもらったボロいドラム・キットを僕達の練習スタジオに置いた時から、彼はリハーサルの時間に遅れる様になっていた。 それ以前は、時間予約制のスタジオを使用していたので、練習時刻に遅れる事は出来なかったが、自分達のスペースが出来てしまうと、いつでも練習出来るという良い点の反面、遅れても大丈夫という悪いクセがついてしまいやすい。 クラブのビラ配りという、不規則な時間の仕事をしているコーリーは、すぐにその悪いペースにハマってしまった。


バテないのは結構だけど

 僕は、コーリーに時間に遅れないようにと注意すると、次の週はキチンと来る。 が、その次の週はまた遅れてくるのだ。 しかも、彼が遅れた上に、終りの時間も決まっていないので、ずっとダラダラと練習が続いてしまう。 ある日は4時間ブッ通しでプレイし続けた。 そう言うと聞こえは良いが、実際は眠気のとれないコーリーの調子が出るまで1時間、良い内容の練習は1時間半くらいで、あとはヘンテコなジャム・セッションに時間を費やしてしまう。 特に、コーリーの様な若くて元気のある黒人ドラマーは疲れを知らないので、6時間くらいは平気でプレイ出来るのだろうが、ただでさえ少ない練習時間なので、有効に費やしたい。 まぁ、ドラマーはスタミナ勝負なので、30分でバテてしまわれても困るのだが ・ ・ ・


また姿をくらましやがった

 こういった状況を打開するべく、僕はまた時間予約制のスタジオを使用する事に決めた。 そうすれば時間が決まっているので、無駄な練習は出来ないハズなのだ。 ついでにタイミング良く(?)自分達のスタジオでもめ事があって、あのスペースは引き払う事にした。 だが、一度しみついてしまったクセは、なかなか取ることが出来ず、あいかわらずコーリーは遅れて来る ・ ・ ・ 。 そしてある日、ついに姿を現わさなくなった。 以前も触れたが、彼は練習をポカしても必ず電話はよこすのだ。 だが今回もまた、全く連絡なしに消えてしまった。 どこかに電話してつかまるヤツでもないのだが、どうしようもないので色々電話してみるが..。 でも結局はマネージャーのヴィンスに話すしかない ・ ・ ・ 。

「コーリーがいない! 何か連絡あった? 練習もすっぽかしやがったんだ」
「あ〜 ったく。 しょうがないな。 とりあえず当てがありそうな所に連絡してみるよ」
「今度彼と真剣に話してくれよ。 何とかしなくちゃ。 もうやってられないよ」
「次に会った時に言っておくよ。 あいつにもうちょっと責任感を持たせないとな..」
・ ・ ・ この頃になると、コーリーはヴィンスのオフィスに寝泊りする様になっていた。 もちろん仕事中は追い出される。 夜だけ、あの暖房もない部屋にマットレスを敷いて寝ているのだ。 だから、彼がどこに行ったとしても、いずれそこへ戻ってくるのは分かっていた。


そしてまた再会

 2日後、ヤツから連絡があった。 オフィスに戻ったらしい。

「よう、悪かった ・ ・ ・ 。 俺も色々大変なんだ.. 住む所もないしよぉ ・ ・ ・ 」 

 ..とは言っても、結局は他のバンドから「金を払うからプレイしてくれ」と頼まれて、そっちに行っていたらしい。 かわりにこっちのスタジオ代はパアだ。 「どうでもいいけど、オマエにヤル気がないんだったら、セッション・プレイヤーでも雇った方が楽なんだよ! 分かったか?」 僕はそう言って、とりあえずオフィスまで彼に会いに行く事にした。 こういう事は電話で話してもダメだ。


ヤツの悩み

オフィスに着くと、ヴィンスが残したメモがドアに貼ってあった。

"コーリーへ、月曜10時、必ず来い、重要"

当のコーリーは、カゼをひいているせいもあって、落ち込んでいた。 そしてボソッっと「オレをクビにするのかぁ?」と言った。 僕は「そんな事じゃなくて、オマエが大変なのは知ってるし、オマエが他の(バンドの)友達を大切にしているのも良く分かってる。 だけど、オレもオマエの友達だろう? NY に来ていちばん最初の友達だろう? だったらこっちの気持ちも考えてくれよな..ガッカリさせるなよ」といった内容の話をした。 彼は「わかった..」と言い、彼の問題や悩みを話した。
 これは前から知っていたのだが、彼のフロリダの実家でトラブルがあって、最近彼はかなりそのことで精神的にマイッているらしかった。 彼は、とにかく住む場所さえ決まればキチンとなるよ ・ ・ ・ と言った。

その後、ヴィンスがコーリーに「もっと責任感を持つように」といった説教をしたそうだ。 あまり効き目はなさそうだったが、何もしないよりかはマシだろう..。


さすが、マネージャー!?

数日後、コーリーと2人でヴィンスのオフィスへ行くと、ヴィンスは「コーリー! キミにプレゼントがあるんだ」といって、バッグの中をゴソゴソとまさぐった。 ホレ、と渡したものはシステム手帳であった。 「今日から毎日これにオマエのスケジュールを書き込む事! そして、どこで何してるかをオレに見せろ。 他のバンドとスケジュールが重なるなんてもってのほかだ。 で、これから常にこの手帳を持ち歩く事。 もし持っていない所を見つけたらタダじゃおかねぇぞ!」 ヴィンスは冗談半分でそう言い、「オマエはせっかく良い才能を持ってるんだから、くだらない事で全てを無駄にしちゃダメだ ・ ・ ・  もうちょっとで出来るんだから、もったいないよ」と言った。 さすがマネージャー! とある日本企業の上司達に聞かせてやりたい!

やっぱりヴィンスはできる! 素晴しい! 


・ ・ ・ と、この時は思ったのだが ・ ・ ・

つづく




 NAO
 ミュージシャン

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