[ Last Updated : 10/19/96 ]
保田卓夫氏のカメの話を読んで、そういえば僕にも、変なカメの話があったこと を思いだした。
僕の友人M君は、僕がナッシュビルに住んでいた時の、日本人唯一の大親友だっ た。 ヒマな時はいつも、彼のアパートで人生について語り合ったものである... ウム。(ホントだよ!) そういう時、彼はよく部屋の片隅にうずくまって、コロッ ケ用にゆでたジャガ芋をつぶしていた。 そして長々と話しをした後には、クリーミ ーなコロッケが出来たのだ...こんなことはカメの話と関係ないので、またの機会 に触れることにしよう。
そのM君とよく遊びに行った所は、またしても湖である。
ある日、いつもの様にM君と湖で釣りをしながら、岩場で泳いでいた時(泳ぐと 言うより、ほとんど水に浸かっていた状態だったけど..)彼が僕の背後で「あっカ メだ..」と言ったので、振り返ると、カメが岩の間で溺れていた..そのカメは泳 いでいたのかも知れないが、タプタプと引き寄せる水の中で、4本の足をバタバタさ せている様子は、どうしても溺れているとしか見えなかった。 早速、M君はそのカ メを捕まえて、アパートに持って帰った。
カメの種類は、卓夫君の話でおなじみの(?)ドロガメだ。 ドロガメは陸で生 活するため、しっかりした足を持っている。 どうりで泳ぎがヘタだったわけだ.. .だって、よく湖で日向ぼっこしているカメ達は、ヒレを持っている種類で、ちょっ とでも人が近づくと、タプンッと水に飛び込んで、とても素早く逃げてしまう。 僕 は最初、このカメの種類を知らなかったので、こんなに易々と人に捕まってしまうな んて、なんてマヌケな奴..と思っていた。
さて、M君はカメを持って帰ったはいいが、入れておく場所が無かったので、し
ばらく考えたあげく、ベッドの下に付いていた、木製の引き出しを持って来た。 そ
して、その中にビニールを敷いて、外から持ってきた土をパラまき、水を入れて「プ
ールだ、プールだ」とはしゃぎながら、カメ君の「住みか」を作った。
そして、それはリビング・ルームの、ど真ん中に置かれた。(後日、その水が腐
り始めて悪臭を漂わせるハメになるとは知らずに...)
エサには苦労しなかった。 湖の近くのコンビニエンス・ストアに行けば、ナイ
ト・クロウという、釣り用の太ったミミズが、パックにニョロニョロ入って売ってい
る。(アイスクリーム売り場にあるのと同じ型の冷蔵庫に入って売っている)
ミミズを食べる時のカメは、なかなか凶暴で、人の指まで食いついてくる...
これが痛くて、しかも、なかなか放さない。 そういう時は、おしおきとして、裏返
しにしてやった。(しばらくもがいているが、結構器用に元に戻れるんだ、これが..)
ま、こうしてM君はカメを飼い始めたのだが、そのカメはいつも、「住みか」で ある引き出しをよじ登って、ドロだらけのまま部屋中を這いずり回っていた。 だか ら、毎日M君が学校から帰ると、カメを探すのが彼の日課となった。 M君の部屋は、 思いっきり散らかっていたので、探すのは容易ではなかった。 しかも、カメは目的 地(?)までたどり着くと、そこでジッと止まってしまうのだ。 だから時によって は2日間くらい経ってから、「あっこんな所にいたっ!」と押し入れの中で、カメを 発見することもあった。
湖に遊びに行く時も、カメをバケツに入れて、一緒に連れて行った。 そこでカ メを泳がせているうちに、このカメは陸に向かって泳ぐ習性がある、という事を発見 した。 これはカメ君にとって不幸であった...僕達はカメを水面の遠くへ投げ始 めた。 カメが足をバタバタさせながら、宙を飛ぶ姿は、実に滑稽である。(神様ゴ メンなさいっ) そして、ドポンッと水に落ちてから数分経つと、向こうからエッチ ラ、オッチラと、陸へ向かって不器用に泳いで戻ってくるのだ。 おもしろいので、 すかさず、もっと遠くへ投げる...何度やってもカメ君は戻ってきた。(再度、ゴ メンなさいっ)
そんな事をしているうちに、ある日、別の友人がM君の部屋に「おみやげを持っ
て来たぞー」と、突然やって来た。 その「おみやげ」とは一匹のドロガメだった。
その友人によると、彼が出かけようと、車で道に出たところ、そのカメが目の前
の道路を横切っている最中だったそうな...彼は、危うくカメをひきそうになった
が、「このカメの行く場所はココしかない!」と、すぐさま拾って持って来たそうだ
。 しかしまあ、何ともイナカらしい話だ...
そのカメは少し小さめだったが、来るなり早速、交尾の体勢をとり始めた... もう一匹のコウラの上に被いかぶさり、シッポの先で盛んに相手のおしりをまさぐっ ていたが、相手もオスであることは分からない様だった。
これでM君の部屋には、2匹のカメが住み着いた。 この頃になると、ほとんど 放し飼いに近かったので、まさしく「住み着いた」という言葉がピッタリだった。 エサのミミズは、床にいるカメの目の前に落とし、カメはじゅうたんの上で用を足し た。 しかも、引き出しの中の水は、糞と共に腐り始め、ついでに木製の引き出し自 体が腐りはじめた。 部屋の中はカメの悪臭が漂い、これじゃあ、もう「カメの館に 人が住んでいる」状態だった。
M君も、もう部屋に帰った時、カメを探さなくなった。 すぐに見あたらなくて も、2、3日、又は1週間もすれば、どこかしらで見つかるからである..トイレだ ったり、キッチンだったり.. そして、それくらいエサがなくても、カメが平気な のも分かっていた。
そんな事をしていたら、一匹が本当に行方不明になってしまった...僕はちょ うどその頃、ニューヨークに引っ越すための準備で、毎日ドタパタしていたので、そ れがどっちのカメだったか?とか、どの位の前から姿を消したのかは、記憶にない。
僕がニューヨークに引っ越してからしばらくして、M君から「一匹残ったカメは 、近くの川へ逃がした」と聞いた。 さすがの彼も、あの悪臭には懲りたのだろう. .「住みか」だった引き出しも捨てて、部屋もきれいに掃除した、と言っていた。 確かに、半年後に彼のアパートを訪れた時は、きれいになっていた。(彼の部屋がき れいである事は、まずあり得ないので信用していなかった)
そして、またそれから約一年後、M君は日本に帰る事になり、アパートを引きは らった。
..最後の荷物を出した後、部屋の隅からミイラ化したカメが出てきた...と 後で聞いた...
ナンマンダブ..
NAO(男・28歳)
ミュージシャン