【ニューヨーク発】なおちゃんのバンド日記
[ Last Updated : 11/8/97 ]
-
- 地味な ・ ・ ・ バンドの話2
日本行きで活動中止
うまく行かないギグ、コーリーの家出騒動などで、イマイチパッとしなかったバンド活動だったが、僕が日本へ一時帰国する事になった為、ついに活動中止となってしまった。 何しに日本へ帰るかというと、労働ビザ申請の為だ。 最近のアメリカ移民法は大変厳しくなってしまい、そのビザが発行されるのに何日かかるか分からない.. しかも最悪の場合は、発行されないかもしれないという状況だったので、どうせ長期滞在になるのなら、ついでにバンドのプロモーションもしてしまえ! という事にした。
全然ちがう日本のノリ
とは言ったものの、日本に着いてすぐ、友人の車のカーステレオで、僕のバンドのカセットを流した瞬間、「こりゃダメだ!」と思った。 変な話だが、どうも日本の風景と合わないのである。 実家のステレオで聞いてみても、やっぱり「違う」。 まぁ以前、音楽プロダクションで働いていた時に、日本のポップスの独特なノリは、まず基本のテンポから全然違うという事を、十分に体験していたのだが、実際こうやって自分の音楽がチグハグに聞こえると、「うーん、やっぱりダメだな・・」と変に納得してしまう。 オモチャちっくな国?
それはともかく、5年振りの日本帰国である!見るもの、聞くもの全てが変に感じる。 とにかく全体的な感想は、「オモチャちっくな所だなぁー」という事。 特に、電子音の多い事。 実家のチャイムの音から始まり、電話の音、駅のホームの音、自動ドアの音、エレベーターでの電子の声、もちろん携帯の音..とあげればきりがない。
とにかくいつでもどこかでピコピコ音がしている。 テレビ番組も、パソコンの画面を想定した様な画像が多いし、ナレーションは相変わらずアニメちっくな声だし、どうでも良い「世界初機能」を備えた製品も妙にオモチャっぽい・・
それと比べると、この臭くて汚いニューヨークのほうがずっと人間味がある様に感じる。・・まぁ、そんな事も2週間も過ぎたら、何とも思わなくなったのだが・・
やっぱりダメなプロモーション
そういうノリだから、当然「ロックだ!」という気分にもならない。 どう聞いても日本のロックは歌謡曲だし、ロックのノリ自体が日本の社会には存在してない・・。 見かけが凄そうなバンドが、演奏を始めると音がスカスカなので、思いっきりコケてしまう。 きっと日本でもアンダーグラウンドには、その「ロックのノリ」が存在するはずなのだが・・ そういうのに限って表の世界には浮上して来ないのだろうなぁ。
そんな中で、訪れたいくつかのレコード会社も「???」であった。 ま、皆さん以前仕事で知り合った方々なので、真剣に話を聞いてくださったのだけれど(それはそれですごく楽しかったが)、とにかく音楽業界の体質が違い過ぎて、僕にはなんだか良く分からないかった。 ????
はっきりいって、日本で主流の音楽と比べると、僕達なんて完全にのけ者なのだ。
MEGADETH のマーティー
そういえば、日本に帰る数日前に、こちらの大御所ヘヴィ・メタル・バンド、MEGADETH のギタリスト、マーティー・フリードマンに会う機会があったので、ついでに自分達のテープを渡してしまった。 マーティーとは以前、ビデオ制作の仕事の際に知り合い、それ以来、MEGADETH がニューヨークでコンサートをする時は、関係者数名と共に招待してくれるのだ。
彼は、相変わらずの流暢な日本語で、「えっ!なおさんのバンドですかぁ〜? 是非聴きま〜す!」と言ってテープを受け取ってくれた。まったく彼は、その日本語といい、日本人と接する時は完全な「日本人」になってしまう。 つい先ほどまでステージで激しくプレイしていたのだから、いきなり「あ、お元気ですかぁ〜?」と挨拶されてしまうとコケてしまう。 彼の勉強熱心さに感心するやら、あきれるやら・・ 変わった人だ・・。
まぁ、マーティーにテープを渡した所でどうなるワケでもないのだろうが、なんといっても彼は有名ロック・ミュージシャンだ。 自分のテープを聴いてもらえるだけでも光栄な事だ。 こんな機会はめったにない。 とにかく次に会った時の感想が楽しみである・・僕達の音楽は彼らほどヘヴィでもないし、完成度なんて比べ物にならないくらい低いのだが、少なくとも理解は示してくれるだろう。
ロング・ノンビリ・バケーション
そんなわけで、日本でのプロモーションは「どうでもいいや」状態になって、僕の日本滞在生活はほとんどバケーション感覚になってしまった。 以前の生活感覚も戻って来たし、後はのんびりと楽しく過ごした。 何といっても実家にいれば黙っていても3度のメシが出てくるし、僕はあまり飲まないが、酒も飲み放題なのだから、気分は最高だ。 しかも家事をしなくて済むのだから、これ程嬉しい事はない。
・・・てなわけで、ニューヨークで仕事に追われながら、僕の犬の世話をしているガール・フレンドや、バンドのメンバー達には悪いナァーと思いつつ、僕のほうは、温泉へ行っちゃったりして、のんびりさせてもらった。
契約の話?
そんな矢先、バンドのメンバーから、「ニューヨークのとあるマネージメントが、オレ達のことをいたく気に入ったらしく、すぐ話しがしたいそうだ」との連絡が入った。 しかも、いきなり本気で契約したいらしい。 えっ!僕は興奮した。 やった・・! でも次に僕は困ってしまった。 確かに今までそれを求めてやって来たわけだが、なんでこんな時に限って・・ 何故なら、まだビザが取得出来ていないからである!! 「とりあえず電話で話してみれば?」とも言われたが、いつニューヨークへ戻れるかどうかも分からないのに、具体的な話なんて出来やしない・・
うー、何というタイミングだろう・・。 とりあえずこんな話はどこまで信用出来るか分からないが、後日そのマネージメントの人達と会って来たメンバーによると、小規模だがかなりキチンとした話らしい。 「特に妙にデカい話をしないし、僕達の曲の細かい部分まで聞いていて、かなり信用出来そうだ」..との事だった。 しかも、その数日後には、簡単な契約内容がファックスで送られて来てしまった。
キッカケはなんとコーリー!
そのマネージメントが、僕達のバンドを知ったのは、彼等がまず、バンドのドラマー、コーリーを知ったのがきっかけだったらしい。 実は僕が日本へ帰る前、コーリーから「昨日の晩、クラブでこういう人に会ったんだけど、良さそうだぜ、連絡してくれよ」と、1枚の名刺を見せられた。 それがそのマネージメントだったのだが、彼が同じ様な話を僕にもって来たのは数度目だったので、僕は「どうせ俺は来週からいなくなるから、今度会ったらテープを渡しといてくれよ」と、適当にあしらっといたのだ。 そうしたら、コーリーは自分でテープを渡したらしい。
ビレッジの「顔」のコーリー
後で、マネージメントから聞いた話だと、彼等はある晩、クラブで演奏していたコーリーを見て「コイツはいい!」と思ったそうだ。 コーリーの仕事は、グリニッチ・ビレッジでのクラブやバーのビラ配りで、実はまだニューヨークに来て数ヵ月だというのに、あの界隈では結構な顔なのである。
だから、ビレッジでコーリーと一緒にいれば、ほとんどのクラブに顔パスで入れるし、ビールもタダになる時がある。 そして彼は、バンドの練習がない時は、お金のために、そこらで知り合ったブルーズ・バンドの連中なんかと一緒にクラブで演奏している。 そんな時に、そのマネージメントの目にとまったのであった。 実は彼らは、既に彼らとサインを済ませているロック・アーティスト用のドラマーを探していたのだった。 そしてコーリーが本当はハード・ロック・バンドのメンバーである事を知り、「こりゃ、おもしろい、是非そっちも聞いてみたい」と興味を持ったというワケだ。
・・とにかく、ニューヨークでこんな風に僕達のバンドに興味をもってくれる人達がいたということは、非常に喜ぶべき事なのだが、なんといってもビザの発行待ちで日本を出られない僕は、どうしようもなく、ますます困ってしまったのであった・・
***またまたコーリーがカマしてくれる次回へつづく***
NAO
ミュージシャン
インデックスへ戻る
SPIN OUT Home へ戻る