【ニューヨーク発】なおちゃんのバンド日記

 [ Last Updated : 2/28/99 ]

バンドの話 <その9:ヴィンス失踪?>


準備は着々と..?

 さて、「出来るマネージャー」ヴィンスの助けのおかげで、コーリーは練習にもきちんと来る様になったし、姿をくらます事も無くなった。 ヴィンスとバンドによるミーティングも数を増し、彼が考えている将来計画の構想もまとまりつつある。 あとはもう少し話を煮つめて、実行のみ.. といったムードになって来た。 

 ただひとつ、前準備としてやる事があった。 それはニューヨークのクラブでもっと知り合いを作る事.. ようするにクラブの関係者、ミュージシャンも含め、とにかく地元での友達をもっと増やす事だ。 確かに僕達にはそのテの知り合いが少ない。 ヴィンスは僕達をプッシュするにあたって、それが第一の壁だと言った。 地元で誰も聞いたことのないバンド、しかも友達も少ない..これじゃ、プッシュのしようがないからだ。


クラブ巡り

 そこでヴィンスとのクラブ巡りが始まった。 とにかく彼が僕達を出したいと思ったクラブ..というか、彼自身の将来のビジネスに役立ちそうなクラブをピックして、そこに出入りするのだ。 そして ・ ・ ・

(1)その場所が自分達に合いそうな所か様子を見る。
(2)クラブのマネージャーや、エンジニア、でなければ周囲の人でもいいから、話をして知り合いになる。
(3)通いつめて、関係者、常連客に顔を覚えてもらう。
(4)そうなれば、向こうはこちらがどこの誰だか分かっているので、ブッキング、今後のライブ活動の際、色々な事で有利になる。
(5)僕達のバンド名くらいは聞いた事がある..という人が増える。

..といった行動をする事にした。


気分はもうアーティスト?

   まぁ、そうやって言うのは簡単だが、実際はそう簡単に知り合いが増えるものでもない。 クラブへ行っても、結局ヴィンスを含め僕達の仲間だけでの単なる「飲み会」として終わってしまったり、ヴィンスが、どうでもよい酔っ払いの女性との会話に熱中してしまったりとか、けっこうくだらない事で時間を費やしてしまう場合も多い。 

 ただ、僕自身としては気分は悪くなかった。 何故なら、クラブへの入場料、ドリンク、タクシーなど全ての代金は彼が「マネージャー」として支払ってくれ、おまけにクラブの入り口やタクシーのドアは、彼が全て開けてくれる。 そう、気分は本当にアーティストなのだ。 もちろん僕の事は「彼はウチのアーティストで..」と周りの人に紹介する。 

 飲みたい物や、欲しい物があれば、彼に言えばいいのだ。 レストランへも行けるし、しゃれたバーへも行ける。 ま、気分が良かったのは僕だけでなく、彼もそうやって僕を他人に紹介して、自分が「マネージャーである」という事を自慢気に話している。


ヴィンスの問題

   そういった具合で、事は順調に進んでいるように見えたが、実は問題もあった。 それはヴィンス自身のプライベートな事であった。 そして、その問題は彼が予定していたミーティングをすっぽかした事で明るみに出た。 

 その日、ヴィンスは僕の家の留守電に「あともう少しで行く」とのメッセージを残し、そのまま現われなかった。 大体、ミュージシャンが予定をすっぽかすのは分かるが、いなくなるマネージャーってのはアリか? まったくこれでは立場が逆ではないか..!!

 彼に連絡もつかず、しょうがないのでオフィスの廊下や、カフェで時間をつぶしたあげく、最後のメッセージを..と彼の自宅へ電話した。 すると、なんと彼自身が出た!

「一体何してるんだい! ミーティングするはずだろ?」
「いや、今は話したくないんだ.. ちょっとワイフとひどいケンカをしてしまって、離婚話になっちゃったんだ.. ミーティングはあさってに出来ないか?」

 しょうがない..彼の言う通りにするしかなかった。 ただ一つ気になった事は、彼は僕に一言も謝らなかった事だった。
 

目標の相違

   その後、ミーティングは続けたが、今度は僕達自身のヴィンスへ対する信用が無くなってきた。 結局彼はデカくてオイシイ話をするが、実際何もしていないではないか。 クラブや、ディナーでの「アーティストとマネージャーの気分」を楽しんでいるだけだ.. あとは、カネ、カネ、カネ。 自分のビジネスの為のデカい額の契約話ばかり。 彼が音楽業界とのコネクションが少ないという事実も見えてきた。

 そんな事をしているうちに、彼は離婚問題のゴタゴタを置いたまま、本当に姿をくらましてしまった。 後になって、彼はビジネスの為にヒューストンへ行ってしまった聞いた。 何か以前から、どうもすっきりしない気分だったが、ここでお互いの相違がはっきりしてきたようだ。

つづく




 NAO
 ミュージシャン

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