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1991 LAS VEGAS (その2:パーティーの話)
前回までのあらすじ:
1990年12月31日、L.A. のイトコとその友人達5人で、ラスヴェガスのとある家のパーティーに行った。 そこでは30人余の若者が、3日間ブッ通しでパーティーを続けていた。 でも、みんなの一番の目的はラスヴェガスのダウンタウンで行われるカウントダウン... そのカウントダウン数十分前、30人で約束した集合場所にたった一人、マイク・イケガミだけが来ない!! 4人残された我々はどうなるのか?..カウント・ダウンは?...!!
僕たち4人は、車の中でイライラと待った.. みんなが去っても数分間は「 まだ、みんなに追いつく事が出来るかもしれない..」と、わずかな希望を抱いてい たが、10分も過ぎるとその希望も崩れ去った。 もう、カウントダウンにさえ間に合 えば良かった..
そして15分も過ぎた頃、やっとマイク・イケガミが、カジノから出てきた。 僕らを見つけて、のんきにも「あれぇー?」なんて言っている。 「早く来い! バ カヤロー!」僕達は車の窓から叫んだ。 マイクは「あれぇー、オレ、遅れちゃった かぁー?」とやって来た。 頭を掻きながら、笑ってごまかすその姿は、全く日本人 そのものだ。
僕はすぐブレットを見た。 僕は彼が、今にもマイクに飛びかかるのではない かと心配した。 しかし、彼は無言で車を発進させた.. やはり友人同士、さすが ..とその時は思った..
車は大通りを飛ばした。 時計を見ると、カウント・ダウンまでまだ間に合い そうだ。 ブレットはムッとしたままハンドルを握っている.. そんな時、ハンが 、ボソッと言った..「オレ達、逆に向かってんじゃないか? デュード?」。
..ちょっと話しはそれるが、デイヴ、ハン、マイクの3人は、いつもカリフ ォルニアの、ノーテンキなサーファー風にしゃべるので、語尾に必ず " デュード " ( Dude : 「クールな兄ちゃん」的なスラング ) が付く。 これを今の様な、ちょ っと緊張した雰囲気の中で聞くと、まったく気が抜けるのだ..
「ネエ、逆に向かってんじゃない? デュード?」
ブレットは鼻息も荒く、「何っ!」と聞き返す。 ..こんな時になんてこっ た..だ。
「方向が違うと思うよ、デュード」と、ハンが続けて言う。 みんなも、標識 を見ながら、口々に言い出した..「あ、ホントだ、逆にむかってるよ、デュード」 「ヘイ、デュード! 道を間違ってるゼ!」..その瞬間!...
ギュルルルッ!!
怒りの絶頂に達したブレットが、スピードも落とさずに、ハンドルを急に切っ た。 車は大通りのド真ん中で、急スピンした。 「アァァァー!!」4人の乗員は 、遠心力で片方に寄せられながら、一斉に叫んだ!!
..かくして車は反対車線へ乗ったのであった.. ブレットはフンッと鼻を 鳴らした...
それから10分は走っただろうか?...もう少しでダウンタウンである。 何とか間に合う! しかし...
今度は僕の隣に座っていたデイヴが力なく「とめて..」と言った.. 僕が 「えっ? 何?」と聞いている間に、ブレットがあわてて車を止めて、マイクが窓を あけた。 シャンパンの飲み過ぎだ..デイヴが窓から首を出し、オエーッと始め る..。
再出発...車の中は皆無言だ.. 時計はあと3分ほどで12時になろうと していた。 もう、絶対間に合わない..が、どうしようもない.. 誰を攻めるわ けにもいかないし、攻めたところでどうにもならない。 そして、時計はいつも通り の速さで動いていた...はあぁ..力が抜ける。
12時...5人は無言のまま新年を迎えた。
車はダウンタウンに入った。 道端を歩いている人が増えてきて、車も渋滞し 始める。 カウントダウンは終わってしまったが、街の雰囲気は、まだまだパーティ ーだ。
ブレットが車のサンルーフを開けて、音楽のボリュームを一段と上げた。 彼 のご機嫌も少し戻ってきた様である。 シャンパン片手に、道歩く人々に「ハッピー ニューイヤー」とか言っている。
車が信号で止まった。 突然、ブレットが立ち上がって、サンルーフから身を 乗りだし、叫び始めた...「ウオーォォ!! ハッピー・ファッキン・ニューイヤ ー!! ウオーォォォ!! ファック・ユー!! ファーック・ユーゥゥゥ!!」 一体コイツは、メデタイのか怒っているのか... しかし、周囲の人々もメチャク チャ状態だ。 ひとり叫べば、皆叫ぶ。 「ファーック・ユーゥゥ!!」
僕達は、車をパークして、ダウンタウンの人ごみの中に入った。 そして、す れ違う人達と「ハッピーニューイヤー」とハグし合った。 僕は、皆といたらどんな に楽しかったか..と思う分、ヤケになってハグした。 ブレットはまだウサ晴らし が足りないのか、郵便ポストの上に登って、「ウオーォォ!」と、また叫んでいる..
..あとはゲームセンターをウロつくティーン・エイジャーの様に、5人は、 ただただダウンタウンをウロついた...
パーティー会場の一軒家に戻ったのは、午前4時くらいだったろうか?.. 家の中には全員のうち、約半数が戻って来ていたが、何人かは、別の場所に行って しまったらしい。 そして、ここにいるみんなはまた、例の寝袋にくるまっていた。 僕も早速持って来た寝袋にくるまり、キッチンの床に横になった。
しかし、そう簡単に寝付くことは出来なかった。 というのも、家に電話がひ っきりなしにかかってくるのだ.. かなりのヤツらが、ダウンタウンの人ごみの中 で、はぐれたらしい。 聞こえてくる会話の第一声が、みんな "Oh my god !" か "Oh No !" だ。 そして、電話を切った後、誰かが外に行き、車を発進させる音がす る... そして、また電話が鳴る.."Hello?... What !.... Oh my god !!"
朝、気がつくと、僕はイトコのデイヴに「オレのイトコが死んだー イトコが 死んだー」と、寝袋ごとキッチンの床をひきずられていた。 やっとの思いで起きる と、「もう帰るぞ」と言う。 彼は明日からまた仕事があるのだ。
とりあえず、キッチンのイスに腰掛け、まぶしい朝の光に目をならした。 リ ビングでも既に何人かは起きている..
すると、かわいいパジャマを着た、黒人の兄ちゃんが「朝食を..」と言って キッチンにやって来た。 そして、彼は「グッドモーニング」と言いながら、グラス を片手に僕に聞いてきた..
「お前もビール飲むか?」
完
NAO(男・28歳)
ミュージシャン