【ニューヨーク発】なおちゃんのバンド日記

 [ Last Updated : 3/12/98 ]

バンドの話 <その3:弁護士>


エンターテイメント・ロイヤー

  さて、バンドがマネージメントと契約するにあたって、ロイヤー(弁護士)が必要となった。 それもこのテの業界専門のエンターテイメント・ロイヤーである。 彼等の役割は、契約書にインチキがないかどうか調べるとかいう単純な事だけでなく、出来るだけバンドにとって良い条件での契約が結べるように、文章の細かい単語をひとつひとつチェックするのだ。


契約書が完成するまで

  バンドはマネージメントから受け取った契約書を、ロイヤーにチェックしてもらい、それをマネージメントに渡す。 そしてマネージメント側はそれを彼らのロイヤーにみてもらって、またバンドに渡す ・ ・ ・ といった具合になるのだ。 だから、お互いが合意に達しない限り、契約書の受け渡しが延々と続く事になってしまう。 そうなるとかなりの時間とお金を費やす結果になる。 したがって、お互いはある程度の妥協点を見い出す必要がある。


契約書の重要性

   ・ ・ ・ そういった契約はとても面倒な作業だが、将来バンドが売れようが売れまいが、バンドに関する権利問題はこれから何年、いや何十年と付いて回って来るのだ。
 ここで少しでも腑に落ちない契約をしてしまうと、後でとんでもない訴訟問題になったり、大損したりする事になってしまう ・ ・ ・ 。 特に訴訟の多いアメリカでは、こういった事はしっかりと済ませなければならないのだ。 僕達の契約なんて小さなものなのだが、契約書自体は10ページに渡るもので、それもほとんど専門用語で書かれている。 僕は以前の大学生活を思い出しつつ、辞書を片手にそれを少づつ読み始めた。


束の間の感傷 ・ ・ ・

  さて、僕達はとある知人から紹介された弁護士事務所を訪れた。 場所はタイムズ・スクエアのど真ん中のビルの28階、受け付けからオフィスへの壁には、エアロスミスを始めとするアーティスト達のゴールド・ディスクが飾ってある。 こういう光景は、仕事で訪れるレコーディング・スタジオなどで見慣れているので、何ら変りはないのだが、今度はいつもの仕事ではなく、自分達の番だ ・ ・ ・ そう、自分達の話の為にここにいるのだ ・ ・ ・ 。 僕は「あぁ、やっと自分達もこの世界の入り口まで来たのか ・ ・ ・ 」と、少々感傷的な気分になった。


担当ロイヤー、ローズ

  僕達の担当のロイヤーは、ローズという白人の女性で「30代になると色々大変だわ ・ ・ ・ 」と冗談を言いながらも、まだまだ20代と言われてもおかしくはないルックスで、美人ではないがチャーミングな人だ。 彼女は契約書を見ながら「悪くないわね ・ ・ ・ でも、この辺はちょっと気になるわね ・ ・ ・ 」と早速チェックを始めた。 そして僕達がどうやって出会ったかとか、マネージャーとどうやって知り合ったかとかいう話しをした後、彼女は「なかなか興味深いわね ・ ・ ・ これは全体的には悪くない契約よ ・ ・ ・ 後はあなた達が、そのマネージャーをどれだけ信頼できるか、ね ・ ・ ・ 」と言 った。 


人生の道が見えた?

  僕達は、契約書の改訂を彼女に頼む事に決めて、オフィスを出た。 その時僕は、今までとてつもなく不安だった人生の道が、ちょっと見えた様な気がして、妙にホッとした。

  しかし、ホッとしたのも束の間、「この世界への入り口」はまだまだ、程遠かったのである ・ ・ ・ 。


 バンドの話 <その4:続・弁護士> へつづく。

 NAO
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