【ニューヨーク発】なおちゃんのバンド日記

 [ Last Updated : 5/17/00 ]

バンドの話 <その13:emit 解散>


emit 解散

 僕はまだまだバンドを続けるつもりだったから、早速ビレッジ・ボイスにベーシスト募集の広告を出し、バンドの練習用テープも用意し、オーディションを始めた。 しかし、そのオーディションも難航した。 というのはほとんどのベーシストは、C.K. のようなスタイルで弾くのを嫌がった。
 
 ひとつは C.K. の技術が高度であった事と、彼のスタイルがあまりにも RUSH のスーパー・ベーシスト、ゲディー・リーにそっくりだった為だ。 個性を出したいミュージシャン達にとっては、彼らのスタイルが「RUSH のコピー」と言われたくはないのは理解出来る。
 そんな中でもバンドに興味を示したベーシストを2人ほど見つけた。 ・・・が、今度は両者共「ヴォーカルがソフトすぎるのが嫌だ」と言った。

 ・・・このバンドに合ったベーシストを見つけるのはかなり困難だった。 いや、「困難」どころではなく僕は途中で「不可能」と判断した。
 そこで僕は、「ヴォーカルは気に入らないけれど、やってみてもいいよ・・・」と言っていたフランス人ベーシスト、フランソワに妥協してプレイしてもらう事にした。

 彼はテクニック的には C.K. ほどではなかったが、ゴリゴリしたその音は「そのもの」だった。 もちろん同じベースラインをプレイするのは無理だったので、彼の好きに弾かせた。 曲の雰囲気が随分と変わってしまうが、それはこちらが妥協することにした。
 しかしこの事で、C.K. のベース・ラインというのがどれだけこのバンドの曲に貢献していたのかを思い知らされた。

 まぁとりあえず、曲風は変わってしまっても、バンドを続ける為ならしょうがない・・・フランソワのベース・ラインも、そのうちに馴染んでくるはず・・・だった。 そんな時、突然フランソワがバケーションを取ってしまった。 1 か月ほどフロリダのキー・ウエストに行くのだと言う・・・!
 こういう所はまったくフランス人的ではある。 まぁ、バンドも今までずっと走り回ってきた感じだったので、たまには休息も良いだろうという事にした。

 数週間後、バケーションから戻ったフランソワから電話がかかってきた。 「本当に申し訳ないんだが・・・ 実はキー・ウエストに引っ越す事にしたんだ。 もう家も決めてきたんだ・・・」

 「な・・・」 絶句。

 もうこうなったら何も言えない。 「そう、それじゃGOOD LUCK・・・」 これで、苦労して見つけたベーシストもいなくなってしまった。

 ここで僕の中でひとつふっ切れた。 「もうやめよう・・・」 作曲、練習、メンバーのスケジュールの調整、クラブへの売り込み、それと一番やっかいだったコーリーの世話・・・
 僕はあまりにも疲れ果てていた。 とてもではないが、これからまたベーシストのオーディションなんて出来なかった。 

 コーリは盛んにバンドの再編成、または新バンドを結成を提案したが、僕はとうていその気にはなれなかった。 バンドの音にも飽き飽きしていたのも確かだった。 音に無理がありすぎた。

 というわけで、メンバーにはとにかく「しばらくバンドの事は考えたくないから、ちょっと放っといて・・・」と告げる事にした。 それでもコーリーはしつこく電話してきて、「オイ、どうするんだよ、いま何やってんだ・・・」と言っていたが、数ヵ月後にはさすがの彼も「バンド・・・終わったんだな・・・ちくしょう、いいバンドだったのによう・・・」と言いはじめた。

 そう、これで emit は解散した。

つづく。




 NAO
 ミュージシャン

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