[ Last Updated : 9/26/96 ]
イナカの話シリーズ1:蛍の話
アメリカにはホタルが多い。と言ってしまうとアメリカ全土にホタルがいるみたいに聞こえるのでちょっと違うかも知れないが、少なくとも今まで僕が住んでいるアメリカ東部には初夏から夏の間--特に雨上がり後の夕方などチラチラと光を放ちながら飛んでいるのをよく見かける。
やっぱりアメリカの自然は広大である..なんて思っていたらなんと驚いたことにこのマンハッタンでもたまに見かけることだ。
..しかしこんな街中にまで生息しているなんて、きっとアメリカのホタルはゴキブリの様な生命力を持っているに違いない。
さて、前回にも書いたが僕は以前、アメリカ南東部のテネシー州、ナッシュビルに住んでいた。そこではホタルなんて特に珍しくもなく、夏になれば手でつかまえられる。日本人の僕からすると、とても信じられない事だった。
それから数日後、学校で僕よりも数ヶ月ほど前から、留学生としてナッシュビルに来ていた日本人のおじさんに「ここ、ホタルがいますねぇー、びっくりしましたよ」と話をしたら、「うん、僕も最初はびっくりしたよ..」と彼のホタル体験の話をしてくれた。
---彼はメガネをかけていたので、寝るときは勿論メガネをはずして寝る。
「あはははー、マーヌケーッ」と笑ってその話を聞いていたが、その数年後に自分も人の事を笑ってはいられない出来事があった。
僕は夏になるとよく友人達と湖に泳ぎにいった。(テネシー州には海がない)そしてたまに夜中、ヒマになると同じメンバーで湖に遊びにいった。
月の出ていない深夜の湖はシーンと静まり、当然まっ暗闇である。泳ぎだしても、進んでいるのか止まっているのか分からない..振り返った時、かすかに見える陸の林の陰で何となく、どのくらい陸地から離れたのか分かるが、一瞬、自分がどこの岸から泳いできたのか、分からなくなってドキッとする。聞こえる音は、自分達のピチャピチャという水をかく音と、たまに通る夜釣りボートの、曇ったブーンというエンジン音が聞こえるが、なにせ広大な湖である..それがどの辺を通っているのかは全く見当もつかない。
そんな時、ひとつの光りが遠くの空に見えた。それは音もなくスーッと空を横切るとフッと消えた..。次の瞬間、また離れた場所から光が現われ、ユラユラと飛行している。
目の錯覚だ...と気付くのに数秒かかった。
暗闇では遠近感がなくなる。地球上からは、隣同士に並んで見える二つの星が、実は隣同士どころか何十光年も離れている事と同じ様に、暗闇では遠くの光も近くの光も同じ距離に見える...ホタルの光も一緒だ。
その後皆から大ヒンシュクをかったのは言うまでもない。
今でもホタルを見かけると、こんな当時の感覚がよみがえってきて、何だか心が弾む。しかもこんな汚いマンハッタンで元気に(?)飛んでいる様子を見ると、とてもうれしい気分になるし、ホッとひと安心もする..
来年もまたマンハッタンのホタルさん達にお目にかかることが出来るだろうか?..
NAO(男・28歳)
昨晩の夢の中では、もう音楽がどうしたなんて言ってられない!命が..!と、マジメに思っていました。あーこわかった..
久しぶりに、世界人類が平和でありますように、ああ、平和でありがたやーありがたやー、と思いました。
日本では水と空気の澄んだ田舎にしか生息していないはずなのだが、こちらでは家の庭などでも沢山飛んでいる。
まぁセントラル・パークにだったらいそうだが、僕が見たのはイースト・ビレッジのとあるアパートの庭先で、確かに木は何本か立っていたが、とても大自然とは程遠い環境の中を一匹で飛んでいた。その時はきっと、どこからか迷ってきちゃったのだろうかとも思っていたが、今年の夏も何度かミッド・タウン近くの公園でチラホラと数匹飛んでいたので、つかまえたりして遊んだ。(もちろんすぐ逃がしたよ)
日本でも子供の頃、キャンプ場で一回だけホタルを見た事があったが、その時は一匹だけで、しかも光ってるのか光ってないのかよく分からなかった。しかし今度はアメリカに来て二日目にして、ホームステイ先のだだっ広い、霧が漂う庭の中を無数の光が自分の回りをふらりふらり飛びはじめた...特にまだ来たばかりのせいもあり、とにかく見るもの全てが珍しかった為か、その時の光景はとても幻想的な光景として、今でも鮮明に覚えている。
ある日彼がベッドに入りうつらうつらしていた時、ふと気が付いたら、何か目の前にぼうっとした緑の光がユラユラしていた。メガネをしていない彼にはそれが良く見えなかったが、彼はその当時、同じ日本人留学生の女の子の霊体験談をよく聞いていたので「ついに自分にも来たか..」とその光の玉をみながら思ったそうだ。
数日経った朝、彼が床を見るとホタルの死骸が落ちていた。その時やっと、あの光が部屋に入りこんだホタルのものだったと気付いたそうだ---
完全にトワイライト・ゾーンの様な不思議な世界だ。しかも湖はかなり深く、足は暗黒の水中でもがいているのだが、今もし、何か足にでもさわったら?..なんて考えが頭をよぎる..
UFO だ!この飛行パターンといい、大きさといい間違いない! すぐに、隣を泳いでいる友人に「ちょっと、あれ何だ? あの光、みえるか?」と教える。友人も「おーっ」と言って見ている。後方の陸地にいる友人達が「どうした? どうした?」と聞いてくる。振り返って「ホラ、あれあれ」とかなんとか言っていると、今度は同じ光が林の中にも見えた。でも、どうもそれはさっきの光より、だいぶ小さく見える。そしてまた別の光が..心臓が高鳴る..一瞬何が何だか分からなくなった。
きっと最初に見たホタルは自分達のかなり近くを飛んでいたのだと思うが、暗い夜空をバックに見ると、星の光と混同して、かなり大きな物体が遠くの空を飛んでいる様に見えたわけだ。次に林の中を飛んでいたホタルは、林の陰がバックに見えたので実際の大きさが分かり、そこでやっとそれがホタルだと気が付いたのだった。(実は気付く前に、一瞬 UFO がウルトラセブンの様に縮小して林に降りて来たのかとも思った!)
この街でも夏の夜は、彼らのおかげで、ちょっとした幻想旅行に連れて行ってもらえるのだ。
ミュージシャン