確かにこの作品で扱われているテーマの基盤を支える、心理学、ユダヤ教およびキリスト教文化、果てはカバラなどのオカルティズムや波動学的な要素は、十分に刺激的でしたし、何よりも庵野秀明総監督の内面世界をそのまま投影したかのような異常なテンションの高さには、ただただ目を見張るばかりでした。よくもまあ、こんな超ハイパーな作品をいわゆるテレビ番組として制作、放送できたものだと思います。
ところで、ストーリーの中でエヴァに乗り込むパイロットつまり「チルドレン」を選出する諮問委員会として、「マルドゥック機関」なるものが出てきます。
このマルドゥックというのは、古代シュメール・アッカド神話に出てくるバビロニアの超能力神の名前なのですが、このマルドゥックこそが現在の太陽系の秩序を生み出したと神話には伝えられています。言い伝えによると、このマルドゥック神は智恵の神エア (Airか?) の息子で、「四つの目、四つの耳、火を吐く口、光り輝く衣」を持ち、他の神々の2倍の力を兼ね備えていたとされています。
で、実は一説には、このマルドゥックは火星と木星の間の軌道上にあった幻の第五惑星「マルデク」のことなのではないかと言われているのです。
そして何らかの原因で爆発し、粉々になったマルデクの残骸こそが、現在、火星と木星の間にある小惑星帯 (アステロイド・ベルト) だと言われているのです。
話は飛びます。
最近テレビ・新聞等でも連日取り上げられているように、火星探査機「マーズ・パスファインダー」の活躍のおかげで、われわれ人類は初めてカラー写真で火星の地表の模様を見ることが出来ました。
まさに荒野といった感じの黄色い大地に転がる岩。しかしこれまでの調査結果によると、太古の昔ここには水があり、大洪水が起こった形跡すらあるということです。ということはそこには生物が存在していた可能性も大いにありえるということで、話題は盛り上がっています。
さて、ここからはあくまでも、アメリカのホゼ・アグエイアス (惑星全体システム文化人類学者) の説なのですが、人類のDNAが最初に芽生えたのは第五惑星「マルデク」だというのです。つまりアダムとイヴ (ドイツ語的にはエヴァ EVA ) が、禁じられた「智恵 (善悪) の木」の実を食べ、追われた失楽園こそがこのマルデクだということです。
別の説によると、「創世記」に出てくるこのアダムとイヴの寓話は、それまで肉体としての境界線を持たない意識としての集合体であった人類が、自らの肉体化を熱望しだしたことから、単一の生命体としての惑星のバランス自体がくずれたことを意味しているとも言われています。エヴァンゲリオンの映画をご覧になった方なら、ピンとくるでしょうが、これはまさに「人類補完計画」の逆パターンですよね。
人類の文明における善悪の意識、そこから派生する全ての不平等はここで生まれたということでしょうか。いずれにしろ、様々な均衡を失った惑星マルデクは爆発したということです。
そうしてマルデクを追われたアダムとイヴつまり人類のDNA胞子が次に転移した先が、第四惑星「火星」だということです。おそらくこの惑星で人類は、かねてから「種の悲願」であった肉体化を成し遂げたのかもしれません。しかしここでも人類は高度な文明の濫用から、高エネルギー体による地表破壊そして大洪水を招いてしまい、その結果として火星は現在のように人類が生存できない荒れ果てた大地に変わってしまったというのです。
そしてその時、消滅、分散しかけた人類のDNA胞子が、奇跡的に第三惑星「地球」に流れ着き、地球における人類の歴史が始まったというわけです。この時、大洪水が起きた火星から地球に人類のDNAを運んだとされるのが、いわゆる「ノアの箱船」なのです。そして人類は今、みたび存亡の危機を迎えているというのも、言うまでもありません。
どうでしょう。確かに信憑性という点ではあまりに途方もない話ではありますが、同時に十分に刺激的な説ではありませんか?何よりもこれらの事柄については、未だ科学的にも決定的な見解が出されていないものばかりです。「なぜ神話は存在するのか?」ということを考えたとき、そして「DNAにはこれまでの人類の足跡が全て刻み込まれている」という説を聞くにつれ、あながちデタラメとも思えないなというのが、私の実感です。皆さんはいかがでしょうか?
山下火
フリーランス・ライター