VIDES 世界大会'98

 1998年10月28日、私たちはイタリアのナポリで開催される第4回VIDES世界大会に出席するために成田を発ちました。どのような会合なのか、どんな出会いがあるのだろうかと期待に胸を大きく膨らませながら。

テーマは " There's more Globalization "

 ロンドン経由でローマに着き、10月30日にナポリの会場に向かいました。ここはドン・ボスコの学園の宿泊施設でかなり山深いところにあります。車がやっとすれ違える程の急な坂道をバックパッキングを背負った若者たちが続々と登っていきます。その中にはシスター方の姿もあります。辿り着くと受付には大勢の人・人・人!いくつもの言葉が交錯して私の頭の中はメルティング・ポットのようでした。 ここは1〜4Fに100以上の個室といくつもの会議室を備え、地下に広々としたサローネと聖堂、最上階にはナポリ湾やベスビオス火山を眺めながら200名以上が食事のできるリストランテが完備されている質素だけれどとても心の安らぐ所でした。

 大会 第1日

 いよいよ開会式がはじまります。はじめに扶助者聖母会の総長であるSr.コロンボのご挨拶。温かい笑顔が印象的でした。そしてSr.ジョルジーナのお話と続きます。VIDESの総責任者であるSr.カプートから今日のスケジュールが伝えられ、皆、席を立って隣の建物に移動し始めました。私もよくわからないけれど人の流れについて行きました。するとそこではVIDES UKの若者たちによるパフォーマンスが繰り広げられていました。それが終わると2Fのバザール会場へ。こちらでは、各国のVIDESメンバーの持ち寄ったお土産が並んでいます。日本からは和紙で作った小物やお手玉、箸、押し絵などを持っていきました。この収益金は、援助を必要としている国の代表が次の世界大会に参加するための渡航費用として使われます。こんなところはとてもVIDESらしい配慮だと感じました。

 地下のサローネに戻り参加グループの紹介があり、それぞれの国のVIDESのスローガンを発表し合いました。私たちVIDES JAPANの「気負わず ムリせず できることだけ」を日本語で江崎さんが伝えると会場全体から歓声があがりました。それをSr.豊島がイタリア語に訳し、さらにロッセーラさんがフランス語と英語で同時通訳する、という具合進められていきます。スペイン語やドイツ語圏のグループには同時通訳できる人が率先して輪の中に入り小声で伝えています。ですから、拍手や歓声がウェーブのように少しずつずれるのですが、皆が耳を傾けて理解しようという気持ちは通じ合うのですね。会場全体が不思議な一体感に包まれていました。

 夕食後、中庭で開催地のVIDES NAPOLIの若者たちによる歓迎の踊りが披露されました。その後サローネに移動してコンサートと劇が深夜まで続きました。本当に皆、何と元気なのでしょう。私たちは旅の疲れと時差から睡魔に襲われつつそのパワーに圧倒されて長い1日が終わりました。

大会 第2日 

 鳥の声で目覚め、ベランダに出るとちょうど夜が明けるところでした。かなたにひろがる碧い海と白く浮かびあがってくる街の光景は日頃喧噪の中に暮らす私たちの心を自由に解き放ってくれます。今日は私たちの発表の場も何回かあるので少し緊張気味!

 午前中は地下のサローネに一堂に会しシンポジウムからはじまりました。Sr.ジルジーナが「Today's world challenging the Volunteer Movement」というテーマで話され続いて大学で人間学を教えておられるロベルト・ラフィーノ氏の「Intercaltural communication」。そして企業人としてボランティアに関わっておられるサマンサ・パロンボ氏の「ボランティアは組織的で政治のバックがないと困難である」という話。最後にNGOでネットワークを作り性的虐待等の深刻な問題を克服していこうと訴えるリリアナ・レオーネ氏の提言と、2時間以上に及ぶ実に内容の濃いシンポジウムでした。

 さていよいよ分科会1です。はじめは14のグループが発表をします。それぞれ興味のある分科会に参加してディスカッションに加わるという形態です。私たちは「Casa Main Tokyo」というテーマで「自立を支援する家」とそこに暮らす2人の女性の話をしました。

 続いて分科会2では「日本のストリート チルドレン」の話題を提供しました。分科会3では9つのグループの中から私たちも関わり深いフィリピンのグループによる「ミッション・キャンプの活動」の発表に参加させていただき、分科会4では「VIDESJAPANの活動とスカラシップ制度」について発表しました。昼食をはさんでこの分科会が終わったとき、もうあたりは暗くなっていました。日本のようにタイムテーブルを細分化していないので何時に終わるのかわからない!というイタリア流にもやっと馴染んできました。

 こうして主要なプログラムが完了したところで、またすべてのメンバーがサローネに集って「この大会に参加して感じたこと」を述べ合いました。発表したい人が進んで壇上に上がり自分の言葉で語るのです。発表しようとマイクの脇に並ぶ人の列はどんどん長くなっていきます。空腹でお腹はグーグー鳴っているにも関わらず、この体験は新鮮な感動で満ちあふれていました。ことにひとりのUKの若者が「今まで私は最高のボランティアをしていると思っていたが、ここに来てそうではないことに気づいた。ボランティアには数え切れないほど沢山のやり方があるとのだと」と淡々と述べていた姿に心うたれました。

 夕食後、サローネには民族衣装に身を包んだ人々が続々と集まってきました。これからアカデミアが始まるのです。私たちは江口先生が拵えて下さったお揃いのVIDES JAPAN特製紅白のハッピを着てスタンバイします。振り付けを考えてくれたのは澤さんの息子さん。さぁ、はじまり、はじまり! アカデミアが終わったのも昨晩同様、深夜でした。部屋に戻ってベッドに身を横たえると足がジンジンしています。もうここに数日滞在しているような錯覚にとらわれます。シャワーを浴びる力もなく眠りに堕ちていきました。

 大会 最終日

 早朝の聖堂は静まり返っています。祭壇の手をさしのべておられるマリア様は何と優しく微笑んでいらっしゃるのでしょう。いよいよがミサが始まりました。先唱がイタリア語で、英語で、スペイン語でとリレーしていき、ギターに合わせて歌います。私はシニョーレ・ピエタ(また司祭とともに)と繰り返すことしか出来ませんでしたが、この3日間を振り返り、いただいた大きなお恵みに感謝を込めて唱えました。

 もう少し私に言葉を理解する力があったなら、そして表現する力があったなら、もっと深い心の交流が出来ただろうに、と思うと学生時代、語学の授業を遠ざけていたことが心底悔やまれます。別れる時に大きなHUGをしてくれた友達のぬくもりが消えないように今からでももう一度挑戦してみようかしら!と密かに決意をするのでした。

                                        (つづく)