■ 河合の宝「ゲンジボタル」 ■
 


1.ゲンジボタルと仲間たち

 ・ホタルは甲虫

   ホタルは『コン虫』のなかまで、その体は、あたま(頭部)・むね(胸部)
  はら(腹部)に分かれています。そして、むねの部分に三対の足と二対のはね
  を持っています。
   ホタルのなかまは、かたい一対のはねの下に、たたんだうすい飛行用のはね
  を持っています。カブトムシと同じ『鞘翅目(しょうしもく)』に属します。
  そしてチョウなどと同じように、完全変態(たまご−幼虫−さなぎ−成虫)を
  します。
   もし、ホタルが光りを出さなかったら、おそらく他の昆虫と同様、人間から
  無視される存在だったでしょう。昼間見るホタルの成虫は、ゴミムシとあまり
  違いのない姿をしているし、幼虫はまるで水の中にすむヨトウムシみたいです。


 ・ホタルの仲間

   日本人はホタルが好きです。昔は、どこにもいっぱいのホタルが飛んでいま
  した。ゆかたを着て、うちわを持って、
  「ほ、ほ、ほたるこい」
  とホタル狩りを楽しんだものだそうです。
   学校橋を自転車をこいで走ると、ホタルが顔にあたって困ったりという話を
  聞きました。秦梨の大橋では対岸の木がまるでクリスマスツリーのイルミネー
  ションのように見事に光っていたともいいます。
   外国でもホタルは愛されています。
  『中国にも、ホタルはいますよ。
昔、ホタルの光で勉強した貧しい勉強家の話
  はみんなが知っていますよ。』
  と、先日やってきた、フフホト市の親善使節団の人が話をしていました。英語
  ではホタルをファイヤーフライ(火のハエ)と呼んでいます。ちょっとホタル
  を軽視しているみたいですね。


ムネクリイロボタル    タテオビクシヒゲボタル   オオマドボタル   
ヘリアカボタル       ゲンジボタル       クロマドボタル   
ウスグロボタル       ヘイケボタル       オオナワオバボタル  
ムネグロボタル       キイロボタル        ハラアカオバボタル  
カタアカホタルモドキ   コキイロボタル       オバボタル     
クロホタルモドキ      クロイワボタル       オオオバボタル   
アマミクロホタルモドキ   ヤエヤマボタル       コクロオバボタル   
オキナワクロホタルモドキ  ヒメボタル        ヤエヤマヒメオバボタル
アカホタルモドキ      ツシマヒメボタル      スジグロベニボタル 
ウスアカホタルモドキ    キイロスジボタル      ヒメスジグロベニボタル
ハネアカホタルモドキ    オキナワスジボタル                
トクノシマホタルモドキ   アキマドボタル       :岡崎市にいるホタル
キイロクシヒゲボタル    ミヤコマドボタル      :岡崎市で探せば見つ
キベリクシヒゲボタル    オオシママドボタル       かもしれないホタル

日本にいるホタルの仲間 (ゲンジボタルの人工飼育 1990)


   今までに世界中で発見されたホタルのなかまは1891種もあるということ
  です。しかし、このうちのすべてが光を出すというわけではなく、また、成虫
  になっても羽根が退化してしまって無い種類もあります。外国には成虫が肉食
  で、共食いをするホタルまでいるそうです。
   ホタルのなかまは日本では39種、このうち岡崎で発見されているのは6種
  類だそうです。
   河合地区で比較的目によく触れるのは4種類。ゲンジボタルのほか、ゲンジ
  より少し小さく水田の上を飛び回り8月ごろまで見かける「ヘイケボタル」。
  竹やぶなどでゲンジより一足早く発生し気ぜわしくちかちか光る「ヒメボタル」
  このホタルは名古屋城のお堀に発生して有名になりました。そして秋ごろまで
  山道の草むらで幼虫が淡く光る「オバボタル」です。


 ・源氏と平家

   私たちが知っていて、よく見かけるホタルは、このうちの「ゲンジボタル」
  と「ヘイケボタル」です。いずれも水辺に暮らし、幼虫の時期を水中で過ごし
  ます。
   すべてのホタルが幼虫時代を水中で過ごすかというと全くその逆です。日本
  ではゲンジボタルとヘイケボタルの2種類だけが水中生活、他の種類はすべて
  陸上で、カタツムリや陸貝をえさにします。ゲンジボタルの幼虫は、清流の流
  れる水田の水路にすむ「カワニナ」をえさとし、ヘイケボタルは水田の溜まり
  水にすむ「ヒメモノアラガイ」をえさにして育ちます。こうしてみると「ゲン
  ジボタル」と「ヘイケボタル」は稲作中心の日本の農業とともに繁殖してきた
  昆虫だといえます。
   今でこそ、ホタルといえば清流、山奥を連想しますが、もともとはホタルは
  人里に住み、人間とともに暮らしていて、文明の発達とともに山奥に追いやら
  れた生き物です。
   「ゲンジボタル」と「ヘイケボタル」を比べてみましょう。
   なぜ、「ゲンジボタル」「ヘイケボタル」の名前がついたかはっきり分かり
  ません。昔からいろいろな説があるようです。源氏ボタルに対して負けて暗い
  平家ボタルといったところでしょうか。河合の人はゲンジボタルを「ホタル」
  ヘイケボタルのことを「コメボタル」とか「ヌカボタル」と呼んでいます。 
  「ゲンジボタル」は「ヘイケボタル」に比べて大型で、光りも強く、光る周期
  もゆっくりで、貫祿があります。
   「ゲンジ」は「ヘイケ」より、いろいろな点でデリケ−トです。
   「ゲンジボタル」が幼虫のときに食べるえさは「カワニナ」が主です。えさ
  がなければ「タニシ」や「モノアラガイ」も食べなくはありませんが、あまり
  好まないようです。その点「ヘイケ」は淡水の巻き貝なら何でも食べてしまう
  ようです。また、「ゲンジ」は成虫に発生する時期が短く、ほぼ6月ひと月に
  限られているのに、「ヘイケ」はゲンジを同じころから発生して8月のお盆の
  ころまでつぎつぎと羽化してきます。
   「ゲンジ」も「ヘイケ」も、さなぎになるときは上陸し、土のなかにまゆを
  作りますが、「ヘイケ」が気楽に浅い地表にまゆを作るのに対し、「ゲンジ」
  は気むずかし屋で、気に入った場所を探すのにとても手間取るそうです。これ
  は「ヘイケ」が水田や沼など、あまり水位の変わらないところで一生を過ごす
  のに対し、「ゲンジ」は清流に住むので、水位の変化でさなぎの時期に流され
  たりする危険性を持っているためと考えられます。古田先生の長年の観察によ
  ると、ゲンジボタルの幼虫は、大水の出る年にはずいぶん高い所まで上がって
  まゆを作るということです。
   ゲンジボタルとヘイケボタルの一匹のメスが産む卵の数は、ゲンジがヘイケ
  のほぼ10倍といわれます。このことからもゲンジがいかに成虫になるまでの
  死亡率が高いかということがわかります。


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■ 補足 ■

 鞘翅目(しょうしもく)

   昆虫の中で、カブトムシなどのように、堅い羽根(鞘翅)を持つ仲間。
  厳密には (1)鞘翅を持つ、(2)蛹にも翅がある ことだそうです。


 昔、ホタルの光で勉強した貧しい勉強家の話
 
   晋の車胤は貧しかったため灯油が買えず袋に蛍を集めてその光で書を読み、
  孫康もやはり貧しかったため、雪明りで書を読んだという故事。
   辛苦して学問することをいいます。

   ちなみに卒業式で歌われる「蛍の光」は、原曲はストランド民謡ですが、
  バーンズ作詞の「楽しかった昔」(Auld Lang Syne)によって別れの歌として
  広く世界中で歌われるようになったものです。
   日本では、明治時代に「小学唱歌集」に採り入れられ広まりました。


 フフホト(呼和浩特)市

   岡崎市の友好都市。中華人民共和国内蒙古自治区にあります。
   このほかにも岡崎市には次のような姉妹都市があります。
  ・ニューポートビーチ市(姉妹都市)はアメリカ・カリフォルニア州の都市
  ・ウッディバラ市(姉妹都市)は北欧スウェーデンの都市です。


 ファイヤーフライ

   飛ぶ昆虫が「〜fly」のようです。単に「fly」だとハエですが、
  ・イエバエを「housefly」・・ 家の中で飛んでいる虫
  ・トンボは「dragonfly」・・ 顔がドラゴンみたいだから?
  ・チョウは「butterfly」・・ ?



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