■ ゲンジボタルの生態・人工飼育 ■
鳥川ホタル保存会
 


■ 目次 ■


1 ゲンジボタルの生態

 (1)ホタルの種類

 (2)ゲンジボタルの一生

  (a)発生       (h)幼虫の脱皮
  (b)ホタルの光    (i)幼虫の食物
  (c)交尾       (j)成熟幼虫の上陸
  (d)成虫の食物    (k)土にもぐる幼虫
  (e)産卵       (l)さなぎ
  (f)卵        (m)天敵
  (g)幼虫の誕生

 (3)ゲンジボタルの生育条件

  (a)水質       (e)川幅
  (b)水深       (f)川底
  (c)流速       (g)護岸
  (d)にごり      (h)周辺環境

 (4)カワニナ

  
(a)種類       (c)稚貝
  (b)形態       (d)活動


2 ゲンジボタルの人口飼育法

 (1)産卵

 (2)孵化

 (3)幼虫

 (4)幼虫の放流



1 ゲンジボタルの生態

(1)ホタルの種類                             

 ホタルは日本人にとって初夏の風物詩で、昔から親しまれ、愛されてきた。ホタル
は今日までに約2000種発見されており、熱帯地方に向かうほど種類が多く、寒帯
地方では少ない。日本には40種あまりの種類のホタルがすんでいる。そのうち特に
ゲンジボタルとヘイケボタルは有名で全国に多数いる。このほかヒメボタル、カタア
カホタルモドキ、クロマドボタル、オオマドボタル、オバボタル、オオオバボタル、
ムネクリイロボタル、スジグロベニボタルなどがある。滋賀県内ではゲンジボタルや
ヘイケボタルのほかヒメボタル(陸生で山岳地帯に分布する)などがよく見られる。

 これらのホタルの発生する場所はその種類はその種類によって非常な違いがあり、
清水のたえず流れている小川の付近、また畑、谷間、薮、森林、山中、山頂、湖辺の
桑畑などに発生するものもいる。日本にいるホタルのうち、幼虫が水生なのはゲンジ
ボタル、ヘイケボタル及びクメジマボタルの3種だけであり、世界的にも珍しい種類
である。これら水生のホタルは淡水の巻貝を食べる事から、日本住吸血虫の中間宿主
であるミヤイリガイの天敵として益虫と考えられてきた。

 生息地については、同種のホタルでも発生地の違い、すなわち気温・水温・水質・
湿度などの影響を受けて、幼虫に生活差が見られたり、成虫の形態に多少の違いがあ
る。これは同じ日本人でも地方により言語や食物に差ができるのと同様である。

 また、ホタルというと必ず発光するものと思われがちであるが、これは全くそうで
はない。大部分の種類のホタルは発光器があっても発光しない。通常見ることのでき
るホタルで最も明るいのがゲンジボタルである。

   (参考文献 : 羽根田弥太氏「南で見たホタルの木」、         
           大場信義 氏「光の日本地図」[アニマ NO.162])


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(2)ゲンジボタルの一生

(a) 発生

  一般の完全変態する昆虫と同様に、ゲンジボタルも「卵」「幼虫」「さなぎ」の
 時期を経て成虫となる。成虫となって外界に出る時期は、5月の下旬から6月下旬
 にかけてであるが、一般に暖かい地方ほど発生が早く、寒い地方ほど遅れる。また
 オスの方が早く、概ね5月下旬から6月上旬にかけてであるのに対して、メスはそ
 のあとの6月上旬から6月下旬にかけて多く見られる。

  この頃地中に作った土嚢の中で羽化したゲンジボタルは、土をかき分けて地表に
 出る。地表に出た成虫は、草の茎をよじ登ってその葉に渡り、そこでしばらく静止
 しているが、およそ5、6分もたたないうちに温度の高い川の方向へ向かって飛び
 立つ。羽化直後のゲンジボタルはあまり長時間飛ばないが、日が経つに連れて次第
 によく飛ぶようになる。メスはほとんど飛ばす、飛んでいるものにはオスが多い。

  ホタルが一番よく飛ぶ時間は、午後8時30分〜9時30分頃までの間であるが
 このほか午前0時前後と、午前3時前後にもよく活動する。


(b) ホタルの光

  ゲンジボタルは、一般にメスよりもオスの方が発光力が強い。そして風雨の夜や
 乾燥した夜に鈍く、湿度の高い日はよく光る。ゲンジボタルの発光は一般に連続的
 ではなく明滅がある。

  このようにゲンジボタルは夜行性であり、昼間は藪の中の葉裏や、茎間の暗くて
 涼しい場所を選んで静止し、ほとんど光を出さない。

  ゲンジボタルの光は交尾のためのラブコールで、光でオスとメスとが呼び合って
 いるのである。種類によって光り方が異なり、種類独特の光り方をする。メスは木
 の葉に止まって発光しており、オスは飛びながら発光している。お互いに光を確認
 すると強く光りあって、オスがメスのところへ飛び降りて交尾する。このように、
 ゲンジボタルの光は人間にとっては神秘的で幽玄的であるが、ゲンジボタル自身に
 とっては子孫を残すための大切な行為なのである。

  発光は、発光細胞の中で、光を出す物質ルシフェリン(発光物質:光る物質)と
 ルシフェラーゼ(酵素:反応を進める物質)が、体内に取り込まれた酵素に触れ、
 酸化ルシフェリンという物質に変化する。このときに出される光エネルギーにより
 光が作り出される。体の中で空気を出したり、止めたりして光を明滅させている。
 この反応で発生するエネルギーの約98%が光エネルギーに転換されるので、熱の
 発生はほとんどみられない。


(c) 交尾

  ホタルの種類はたくさんあるが、自然界では異種のホタルによる交尾はしない。
 すなわちゲンジボタルはゲンジボタルと、ヘイケボタルはヘイケボタルだけと交尾
 する。


(d) 成虫の食物

  ゲンジボタルの成虫にも口があるがこれは全くといってよいほど役に立たない。
 なぜならゲンジボタルは幼虫時代に十分食物をとっているため、成虫となったあと
 は酸素を吸収し、水を飲むだけで全く断食生活を送っているからである。いいかえ
 れば、幼虫時代にとった栄養が十分体内に蓄えられ、水と酸素はこの栄養を生命の
 維持に必要なエネルギーに換える役目を果たしている。


(e) 産卵

  交尾を終えたメスは、早いものでは3、4日ぐらい、遅いものでは6日目くらい
 に産卵を始める。産卵はもっぱら夜に行われる。その場所は孵化した幼虫がすぐに
 水に入れるように、主として川岸の水面から約50センチ以内の斜面に生えている
 柔らかいコケである。産卵する場合あちらこちらと分散して産みつけるのではなく
 ほぼ一定の場所に、卵が重ならないように行われる。1匹の産卵数は、約300〜
 500個である。

  産卵を終えたメスはやがて死んでしまう。成虫の命は、オスで約10日、メスで
 約2週間である。


(f) 卵

  産みつけられた卵は、ほとんど球状に近い楕円形をしている。(直径約 0.5mm)
 産み下ろされた直後は極めて柔らかく、チキン質の淡黄色をしており、日が経つに
 つれてだんだん固くなる。産卵後およそ10日程たつと、卵の中が白く見えるよう
 になり、およそ16日目で将来の幼虫の背面の黒い部分が、小さな点となって卵殻
 を通して現れ、日がたつにつれて卵全体はしだいに淡灰色を帯びてくる。この色は
 やがて茶褐色になり、ついに黒褐色となる。

  ゲンジボタルの卵は昼夜にかかわらず弱いながらも発光しており、これはメスの
 腹内にあるときも同様である。(卵の光は明滅しない。)


(g) 幼虫の誕生

  産卵後、約1ヶ月で幼虫は卵殻を突き破り外に出る(孵化)。
  孵化直後の幼虫は、体長がわずか 1.5mm程しかない。孵化直後から第1回の脱皮
 まではいわゆる赤ん坊の時期であるが、これを一令の幼虫と呼ぶ。幼虫は孵化した
 直後から背光的性質を持っているので、夜の明けないうちにコケの間をさまよい、
 あるいは草の根本の湿気の多い付近に集まる。また地球の引力の方向へ動いていく
 向地的性質も持っているので、低い方へ低い方へと歩んでいく。そしてついに小川
 の水際にたどり着き、孵化した日の早朝より水中生活がはじまる。このように水中
 生活(約265日)を始めた幼虫は、体に合ったカワニナの稚貝を求めて、夜間に
 敏捷な行動を開始する。そして翌年2〜3月頃には成熟した幼虫となる。


(h) 幼虫の脱皮                              

  幼虫は水中で6回の脱皮を繰り返しながら、体長約25mm〜30mmほどの終令幼虫に
 成熟し、その体は幼虫より大きくなり、背面には黒い斑点があり、その形によって
 脱皮回数が推測できる。

  孵化して幼虫になるとほとんど発光しないが、終令に近い幼虫になると、刺激に
 反応し青緑色の光を水中でも発っし、体を丸くする習性がある。


(i) 幼虫の食べ物

  ホタルの仲間はどの種類でも肉食をし、貝類を好む。ゲンジボタルの主要食物は
 淡水性巻き貝のカワニナである。幼虫は歩きまわっているうちに出会ったカワニナ
 のすきを見て、いきなり体に噛みつき、口から独特の黄色くて苦い液を出してカワ
 ニナの全身を麻痺させる。幼虫は体内から消化液を出して、カワニナを液状に消化
 させ、それを吸収する。捕らえられるカワニナは、幼虫の体長と同じくらいであり
 大きなカワニナには、フタで絞め殺されることもある。

  1匹の幼虫が終令幼虫になるまでに食べるカワニナは約40匹くらいである。


(j) 成熟幼虫の上陸

  3月下旬頃の成熟した最終令の幼虫は、もはやエサを求めるようなことをせず、
 昼間は小石や瓦のかけらの下の暗い所に潜み、毎夜川べりまで寄りついて、上陸の
 上陸の機会を待っている。

  毎年4月の上旬から中旬にかけては気温と水温がともに14度くらいに一致する
 のであるが、幼虫はこの頃の雨の夜の午後8時から9時頃に上陸を始める。

  上陸は一般に比較的傾斜の少ない、上陸しやすい土手を選んで行われる。しかし
 このような適当な場所が見つからない場合は、どんな急斜面でもよじ登る。例えば
 両岸がコンクリートで築かれ、高さが1.5mにも達した、ほとんど垂直な所でも
 よじ登る。

  上陸を始めて水から上がると、その瞬間から発光する幼虫が多いが、中には発光
 しない幼虫もいる。この発光は、成虫のように一定の間隔で明滅するのではなく、
 光ったままゆっくりと強弱を繰り返しながら歩行する。

  エサ不足によりやや小さい幼虫は、上陸せずに越年するものもあり、2年幼虫と
 言われている。


(k) 土にもぐる幼虫

  上陸した幼虫は、やわらかい土のある所まで来ると、小さな窪みや草の根本の穴
 を見つけて頭からもぐり込んでいく。土の中にもぐった幼虫はそこに自分が動ける
 だけの部屋を作る。体を回転しつつ液体を染み込ませ、周囲の土を固め3〜5cmの
 土嚢の部屋を作る。幼虫はこの中で体を丸めて5月中旬ぐらいまでいる。(この間
 約40日間)。土嚢の中にいる幼虫は、地温が23度くらいになると最後の脱皮を
 行い、蛹(さなぎ)となる。


(l) さなぎ

  脱皮後のさなぎは、体全体がうすい黄色であるが、6日目くらいから眼は次第に
 黒くなり、9日目くらいには前胸の背面は薄赤く色づいてくる。そして約11日目
 から羽化をはじめ、およそ3日間で羽化が完了する。このようにして地中で成虫と
 なったゲンジボタルは、夕方から夜にかけて土をかき分け地表に出て、私達に淡い
 光を表してくれる。


(m) 天敵

  ゲンジボタルが卵から成虫になるまでの生存率は非常に低い。その原因のひとつ
 に天敵がある。ゲンジボタルがカワニナを食べるように、ゲンジボタル自身も他の
 生き物の食料にされるのである。幼虫の時は魚・ザリガニ・鳥などで、成虫になる
 と蜘蛛が天敵であると言われている。


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(3)ゲンジボタルの育成条件

(a) 水質

  ゲンジボタルの幼虫の育成に適する水質については、次のような研究成果が示さ
 れている。

項  目範  囲
水温(℃)2.0 〜 28.0
PH水素イオン濃度6.5 〜  8.3
DO (mg/l)溶存酸素量6.8 〜 11.8
BOD(mg/l)生物化学的酸素要求量0.5 〜  1.8
COD(mg/l)化学的酸素要求量0.5 〜  3.4


  炭酸カルシウム(CaCO)が多く含まれ、炭酸カリウム(KCO)、炭酸
 ナトリウム(NaCO)、硝酸塩、リン酸塩、塩化物などは少ない方がよい。

 (参考文献:次の各文献の数値の最大範囲を掲載した。            
        世田谷区公園課「世田谷区のホタル」             
        横浜市公害研究所「ホタルの生息環境づくり」         
        出口吉昭氏「ホタルの棲む水」【インセクタリゥム No17】)

(b) 水深

  幼虫が特に多く棲んでいる場所は、水深が30〜40cmであり、大部分が水深約
 50cmまでである。


(c) 流速

  ゲンジボタルの幼虫は、川の流速が毎秒10〜40cmの所を好み、ある河川では
 毎秒15〜17cmのところに最も多く見られた。また、流速を保つためにある程度
 の水量が必要である。


(d) にごり

  泥系のにごりは、生息には支障がない。


(e) 川幅

  単に川幅だけを取り上げても意味がないが、概ね1.5〜2.5mの川幅の所に
 幼虫が多く見られる。


(f) 川底

  砂地ばかりの所や粘土の多いところ、あるいは小石などの少ない場所にはゲンジ
 ボタルの幼虫の発見は非常に少なく、砂9〜7、土1〜3の割合で玉石・礫が多い
 川底には幼虫が多くいる。
  川底が玉石や礫になるところは、一般に水量が多く比較的流速もあるためにDO
 (溶存酸素量)が多く、水質や水温も安定していることから、生息に適していると
 考えられる。


(g) 護岸

  ゲンジボタルが棲息する川は、土にもぐり蛹(さなぎ)となるための砂まじりの
 土があることを条件とする。また、水はけがよく、樹木や雑草等による日陰があり
 適度な湿気と柔らかさが必要である。
  最も理想的な護岸素材は土羽であり、次に木や石を用いた自然素材が良い。土中
 水分の連続性や産卵場所となるコケの付着度から次の図のような形状が望ましい。
 (*図は省略します。)

(h) 周辺環境

  ゲンジボタルの育つ河川は、飛翔するための広い空間と、休息したり、交尾する
 ための樹木や草で囲まれている必要がある。また、昼間の直射日光を防ぐとともに
 夜間における街路灯、車のヘッドライト、人家の明かり等の人工的な光も防御する
 必要があり、そのためにも樹木等で囲まれた空間が必要である。


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(4)カワニナ

(a) 種類

  分類学上のカワニナ属は、日本本土では約10種類に分類されている。
  カワニナ・チリメンカワニナ・ヒタチチリメンカワニナ・クロダカワニナ・ヤマ
 トカワニナが主な種類である。このうち、カワニナは北海道から九州・沖縄にまで
 分布が見られる。クロダカワニナは東海地方から中国地方東部にまで見られ、チリ
 メンカワニナは関東・信越地方に多く見られる。ヒタチチリメンカワニナは霞ヶ浦
 以外での生息は見られない。また、ヤマトカワニナは琵琶湖を生息地としている。
 市内江西川には水温の高い川にしか棲まないヌノメカワニナの生息が見られる。 

  (参照:遊磨正秀氏「総説 カワニナの生活様式」【第14回ホタル研究会】)


(b) 形態

  生まれたての稚貝は淡褐色であるが、成熟するにつれてしだいに黒褐色になって
 いく。殻は卵円形をしており、蓋は角質で螺旋(らせん)をした筋がある。


(c) 稚貝

  カワニナは卵胎生で大きい母貝の体内には孵化したたくさん稚貝を持っている。
 毎年5月上旬から10月上旬にかけての約5ヶ月間は、毎日2、3匹の稚貝を産み
 落としている。5月始め頃から、0.2〜0.5mmの稚貝が生まれ、7月上旬には
 約2mmに育つ。これが生まれたてのゲンジボタルの絶好の食物となるのである。 


(d) 活動

  カワニナは殻が炭酸カルシウムなので、カルシウムイオンを含む水を好む。食物
 は雑食性であるが、一般的には珪藻や草などを食べている。生活の条件としては、
 水温14〜20度くらい、水深15〜30cmが好適であり、流速はそれほど関係は
 ない。春から秋にかけてカワニナの活動が活発になる。12月頃になると川の真中
 にいるか、川底の土砂浅くもぐって静止する。稚貝は浮水生を持ち浮き沈みできる
 のであるが、これはゲンジボタルの若令の幼虫と全く同じ習性を持っている。  
  また、カワニナの天敵は、ヒル・魚・鳥である。


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2 ゲンジボタルの人口飼育

(1)産卵

 羽化して成虫となったゲンジボタルを捕獲して、オス6割メス4割くらいの割合で
ほたる籠の中に入れて、日陰に置く。はたる籠には防水シートを敷き、水苔(または
スギゴケ)を入れておく。これは産卵の場所を確保するためである。成虫は水以外、
ほとんど食べないので、朝夕噴霧器により湿気を与える。

 そうすると交尾を終えたメスのゲンジボタルが3〜6日後に水苔に産卵をする。 

 卵は非常に分かりにくいが直径0.5〜0.6mmの球状をしており、生まれて直ぐ
は淡黄色をしている。1匹のメスからは約300〜500個の卵が産卵される。



(2)孵化                                 

 産卵された水苔はほたる籠から静かに取り出し、少し荒い目の網の上に乗せ、水を
浅く入れた飼育箱の上に置く。この時水苔には適度な湿気を保っておかなければなら
ないが、腐ったりカビが生えたりするおそれがあるので、注意が必要である。また、
水にはエアーポンプによりエアレーションをして、水面に膜ができるのを防ぐ。

 産卵後、卵は淡黄色、淡灰色、茶褐色、黒褐色と変化しつつ、約1ケ月後には孵化
し幼虫となる。孵化後の幼虫は、水苔を伝って網の目から水中に落ちる。この場合、
水温は約20℃に保っておく。また、幼虫の隠れ家となる小石を飼育箱の中に入れて
おく。



(3)幼虫

 若令の幼虫にはカワニナの稚貝か、これが入手できなければカワニナの肉をミンチ
状にして与えてやる。水は必ず25℃以下に保ちながら、こまめに水の交換を行い、
常に新鮮な水で飼育しなければならない。また、エアレーションを施したり、足し水
をする必要がある。

 飼育箱には、最初は2000匹くらいの幼虫を限度とし、徐々に分散させる。また
成長の度合いに応じて区分けする。

 幼虫の飼育には、幼虫の大きさに合ったカワニナを投与、25℃以下の水温の維持
水質の管理を怠ってはならない。カワニナは、稚貝・親貝を含めて10平方cmあたり
10個程度必要である。幼虫は、すき間に潜む習性があるので、飼育箱には小石や砂
または石灰石、サンゴ砂などを入れておくとよい。このようにして飼育した幼虫は、
9月〜2月くらいにカワニナのいる河川へ放流すると、合計6回の脱皮を繰り返し、
成熟した幼虫となり、翌年の春にさなぎとなる。



(4)幼虫の放流

 幼虫を放流するには、その河川にエサとなるカワニナが豊富であること、近くの岸
 (川岸より2mぐらいの範囲)にさなぎとなる場所として柔らかい土砂があること。
 また、近くに低木があることがその条件になる。

 ゲンジボタルの成育に必要な水質と、カワニナの生息に必要な水質は完全には一致
しない。ゲンジボタルは清水のようなきれいな水から、わずかに汚れた水にしか生息
しない。しかし、カワニナにとっては清水のようなきれいな水では、エサになる珪藻
や草がないため繁殖が悪く、ある程度魚の糞や有機物を含んだ水の方が繁殖が良い。
ただし、汚れがひどいと酸素が欠乏し、生息ができない。


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