1999年5月

踊る大走査線 THE MOVIE5/2朝日ホール監督/本広克行脚本/君塚良一
期待はしたんだけど、ああ、この程度なのね、という印象。ちと時間をかけてストーリーを練り上げれば、破綻がなく矛盾もない話ができるんだよね、きっと。(逆にいえば矛盾と破綻が大ありの映画が日本には多いということか)3つぐらいの話が交錯しながら進むというのは、ハリウッドでは当たり前。では、それを超えるにはどうすればいいの? という感じかな。しかし、郊外でしか撮れないカーチェイスもなく、盛り上げるんだから立派であるというほかないのかな。日本映画特有のじめじめした部分や、しつこい繰り返しのギャグがないというだけでも、これだけ変わるんだなあ。
の ど 自 慢5/2朝日ホール監督/井筒和幸脚本/安部照男 井筒和幸
面白かった。しかし、つくりが雑。りりぃの娘が妻子ある男とできて出ていく、という家庭の描写はちと疑問。本筋とちと遠い。もうちょっとコンパクトに、姉妹の思い、なじりながらも気遣う母親、という描き方の方がいいんじゃないの? 大友康平の鳥肉のダジャレはおかしい。けど、あとはバケツもって転んだり低俗なギャグ。これが、私は不満だ。工事人足の狩人2人組はおかしい。信用金庫職員もいい。まあ、こういう脇役はいい。主な3人。この描き方が、ちと雑だ。もちろん、感動はした。とくに、予選会、本選のテレビのシーンは面白い。(これって、映像の力か?)出ていった姉を思って「花」を歌うシーンは感動的である。だからこそ、もう少し丁寧につくって欲しいと思ったですね。
萌 の 朱 雀5/2朝日ホール監督/河瀬直美脚本/河瀬直美
人物関係がわかりにくい。両親と2人の子供? にしては嫁の歳が若いかな・・・嫁の弟が同居しているのか? 連れ子どうしの結婚か? 結局分からず。解説見たら同居している従兄弟だって。わかんねーよ。まあいい。しかし、静かに流れる時間と淡々と進む話。感情を殺したような人々。ごく自然な演技のようなドキュメンタリーのような。すべてがよろしい。たゆたうような山の空気に、歓びも哀しみもすべて吸い取られてしまっているような映像が好きでした。とてもいい。もっとも、ビデオ鑑賞では見るための緊張感が持続したかどうか疑問で、きっと途中で中座したりしたんじゃないのかな。この映画は、一気に見ないとそのよさが分からないね、きっと、だからどうしたということを、口を挟む余地を与えない。すべてが、自然の営みのように感じられてしまう。
日独裁判官物語5/3朝日ホール監督/片桐直樹脚本/片桐直樹
日本の司法(裁判官)はいかに開かれていないか。一方ドイツはいかに開かれているか。それをインタビューした60分のドキュメンタリー。いささか単調。もうすこし、動きがあってもいいんじゃないかな。ダイナミズム。ちょっとスタティックに過ぎるような気がする。内容は、あるんだけど、こっちが怒るほどに燃え上がらせてくれないのが残念。
ちぎれ雲〜いつか老人介護〜5/3朝日ホール監督/山口巧脚本/山口巧
細川直美が主演の、老人介護をテーマにして地味な映画。問題の解決の核心には触れられていないのはしょうがないけどねえ。ドキュメンタリーじゃないんだから。しかし、もっとグサッとえぐるところがあってもいいんじゃないのかなあ。老人ホームを住宅地につくるのは反対、と主張する住人たちとの交渉の部分なんか、興味深かったけど。ここをもう一歩踏み込んで欲しかったと思う。クレジットを見たら、おお、片桐夕子の名前が! どこだ? 母親役のあの人だったかな? 分かっていれば、もっとちゃんと見たのに。
カンゾー先生5/3朝日ホール監督/今村昌平脚本/今村昌平 天願大介
丁寧な絵づくり。破綻のない物語。欲しかったのは、私の心を揺さぶる何か、でした。唐十郎の生臭坊主がとてもよかった。裕木奈江がクレジットにあったけれど、どこに出ていたの?
ルーキーズ・ゴト師株式会社5/3朝日ホール監督/中田信一郎脚本/後藤輔
うーむ。金をとって人に見せる代物でとしては辛いのではないのかな。要らない話がありすぎて、必要なシーンが足りない。こういう状態で小屋にかけるというのは、つくった人たちは不満足だろうねえ。
ヒロイン!5/4朝日ホール監督/三原光尋脚本/久保田傑 三原光尋
ママさんバレーの弱小チームが、ライバルの強力チームに勝つまでの物語。面白かった。きっと短時間でつくっているだろうに、そのハンディを補ってあまりあるおかしさがある。覇気のない応援をする子供とか、ささいな部分がおかしい。バレーも本気でやってるシーンがあって(というか、編集ができなかったのか?)、下手だけど妙な迫力があって、よい。たかがスーパーマーケットのオーナーの嫁であそこまで華々しくできるの? というおかしさの中川安奈の役もおかしい。伊原剛志が私は好きなんだけどね。軽薄でお調子者の二枚目半の役所がとっても上手い。
ブルースハープ5/4朝日ホール監督/三池崇史脚本/松尾利彦 森岡利行
音楽と暴力と、ファーストシーンの疾走する映像で期待したのだけど、中味はがっくり。ストーリーはよくあるタイプで、ヤクザと音楽好きの売人とのふれあい。しかし、そのふれあいの様子が「これはなにかあるな」と感じられるまで描かれていない。だから、後半で意外性や哀しみがつたわらない。たかが、一度危機を救ってもらっただけで、命を張って助けに行くか? 行かないよ、ふつー。解説を読むと、この2人「ホモセクシャルな愛情を感じ・・・」とある。そんなことは描かれていない。もっと、「冒険者たち」みたいに、心と肌のふれあいが描かれないと・・・。で、解説を読んで、あーそーか、と思ったのは、組長の女房と寝たあとに歯を磨いていること。「ん? ほんとはこんな女はいやなのか?」と思ったのだけれど、そうじゃなくて、ヤクザは女が嫌いで男が好きだったのね。そういうことは、映像で見せてくれなきゃダメだよ。それに、ヒロインが可愛くないし、主人公が彼女にするタイプには見えない。丁寧な映像をつくっているのだから、文脈もちゃんとしたらいいのにと、残念でした。
プラクティカル・マジック5/18渋谷東急2監督/グリィフィン・ダン脚本/ロビン・スウィコード、アキバ・ゴードン、アダム・ブルックス
日本人には理解不能な部分があるんじゃなかろうか。ぜーんぜん面白くない。いったいこれは、なんなんだ? コメディ? ラブストーリー? ホラー? うーむ、いずれのようでもあり、いずれとも違う。こういうオカルト系のジャンルって、あるのかな? 向こうには。魔女とか、その系譜については、アメリカ人なら説明なしで受け入れるのかな。日本で、たたりや呪いの映画がしぜんと受け入れられるみたいにさ。でないと、この奇妙な一家の物語は導入からしてなんのことやら分からない。それとも、ただ単に出来のよくない映画だった、ってだけだったりして。サンドラ・ブロックは「スピード」以後恋する女の役が多いけど、選んでいるのかな。あの厳つい顔、がっしりと広い肩。やっぱ、女ランボーみたいな役が合ってると思うんだけど。
恋に落ちたシェークスピア5/18渋谷東急3監督/ジョン・マッテン脚本/マーク・ノーマン、トム・ストッパード
実に丁寧に作られていました。荒唐無稽な部分がかなりあるのだけど、重箱の隅をつつくような疑問は蹴飛ばしてさっさとストーリーを進める。このいさぎよさと、割り切りがいいのだね。もっとも、設定はわかりづらい。当時の舞台や劇場に関する知識、劇作家や歴史上の人物についての常識が足りないせいもあって、わけ分からないところがたくさんありました。どの作家が、どのオーナーと契約関係にあり、誰に作品を書いているのか、劇場と作家とオーナーの関係は? とかね。わからない。グウィネス・パルトロウは美人じゃないけど、一途さがかわいい。シェイクスピア役のジョセフ・ファインズも熱演なのに、賞がもらえないなんて可哀想ですね。
事件がありました。途中で映像が消え、5分ほど声だけになってしまいました。どうするのかなと思ったら、照明がついて劇場の人の説明があり、絵が切れたところまで巻き戻して上映する、ということでした。しかし、切れる前の画像とダブっていなかったので、少し空白があったのは確かです。やれやれ。我慢しろ、なんていわれたら金返せ、ですけどね。
シン・レッド・ライン5/25上野東急監督/テレンス・マリック脚本/ロバート・マイケル・ガイスラー、ジョン・ロバルチュー、グラント・ヒル
最前線で先頭に立って歩け、といわれたら足腰立たずにゲロ吐いて漏らしちゃうだろうな、と思った。平和な世の中に生まれて、よかったとつくづく思うです。若い命を恐怖に晒してムダに殺す戦争は、やめましょう、といいたい気分です。それはさておき、登場人物がたくさんいて、似ている(と思うようになったのは年寄りの証拠ですが)ので、誰がどの立場の役かわからん、という部分がかなりあったです。偏執狂的に名誉を欲しがるニック・ノルティ。艦上の態度との豹変ぶりがすごかった。ところで、年をとると3時間近い映画は尿意との戦いとなるので、ほとんど見なくて「タイタニック」も見てないんだけどね。本日はオーケーだったぞ。途中に休憩でも挟んでくれるといいのにねえ。

 
 

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