1999年8月

豚の報い8/4テアトル新宿監督/崔洋一脚本/鄭義信、崔洋一
つまんない。意味が分からない。ムダなシーンが多い。もちろん、あとから「ああ、あれは、そういうことだったのか」と理解できるシーンもある。でも、そういうのでない不必要なイメージが多い。そうしたイメージが映画の役に立っているかというと、立っていないように思う。ある状況を、ぽん、と放り投げる手法を今回は使っている。説明は後回し。徐々にわかるというテクニック(?)ね。北野武がよく使う。でも、この映画を見ていて、いらいらしたのは、放り投げられた状況がわからない、そのせいだと思う。正吉(?)と3人の女の関係は、なんなんだ? これは最後まで解けなかったね。島の宿泊施設が民宿だというのは、途中で気づいた。はじめは親戚の家かと思ってた。海に吸い込まれていくのは誰? 最後で父親と分かった。では、あの女を押し倒してセックスするシーンは、なんなんだ? 打ち上げられた死体は? あれ、父親だったのか? 葬式のような場面は何だったんだ? よくわかんないシーンがいっぱいあるので、いらいらいらいらした。沖縄弁のイントネーションが、生理的に合わないのは仕方がないとしても、セリフが聞きづらいのは困るよ。12年も前の死骸の骨格があんなきれいに残ってるわけないだろ。わからん映画だ。逐次的に、じわっと表現した方がつたわるのではないのかな、と思った。気をてらった分だけ、大損をしている気がする。腹を下しただけが、豚の報いではないだろうに。そういえば、冒頭の、豚がスナックに突入して追い出そうとするシーンの演出は不自然で下手だった。なんとかならないかねえ。退屈した2時間だった。
アイズ ワイド シャット8/8上野東急監督/スタンリー・キューブリック脚本/スタンリー・キューブリック、フレデリック・ラファエル
面白かった。2時間40分、張りつめた緊張感がたまらない。とはいえ、期待はしていなかった。退屈して眠るんじゃないかと思っていた。随所にリスキーな部分があって、それがとっても神経を高ぶらせる。とはいえ、扱っているテーマは、つまらない。倦怠期の夫婦の関係。パートナーへの信頼。Sex(Fuck?)の必要性。で、そのメッセージは「1.婚外Sexは黒魔術的、反宗教的なものである。2.売春婦とSexすると病気になるよ。3.未成年を相手にしてはいけない」のように読めるのですが、なんなんだ? もっと深くて哲学的な意味があったりするのかい? わしゃわからんよ。浮気なんて、日本人の平均的な家庭じゃ問題にならないよな。どうして1本の映画のテーマとなるのか、そのことが不思議だ。宗教的呪縛から抜けられない西欧人と違って、男が女に惹かれるのは動物的本能だってことぐらい、日本人ならそんなことは誰でも知っている。そして、配偶者以外と性的関係を結ぶことをたいして罪悪とは思っていない。それは、昔から変わらない(現代社会では西欧的概念の流入によって、いささかいけないこと、という思想もあるようだけど、江戸時代のおおらかさを見てみればいい)。結婚するとき、神に誓って「この人としかやらない」なんて、言ったり思ったりしないからだ。だから、夫婦外の性的な欲望と妄想に惹かれる2人の罪悪感や言い訳は、馬鹿みたいにしか思えない。といって、反宗教がテーマであるようにも思えないし。
でもなー。医者とその美人妻(子供を生んでもセクシーだったら贅沢いうなとしか思えない。だって、日本の妻たちは子供を生めばみなぶくぶくと太りはじめ、髪は短くまとめ、化粧も衣装も無関係で、愚痴しか口にしなくなるのだから)という設定では、なーにいってんだかなー、という感想もでてきてしまうなあ。それにさあ、トム君だって、妄想しているだけで、結局なにもしないしさ。典型的な問題として提起するなら、フツーの、ビンボーな、産後の膨らんだ色気のない妻と、妻を女と見なくなった甲斐性なしで口臭のするダセー夫との関係の中で「倦怠期の夫婦の関係。パートナーへの信頼。Sexの必要性」を語ってくれよな、といいたい。というようなことを考えつつも、お話はとても楽しく、緊張感に溢れ、剃刀のように切れ味が鋭かった。
で、ひとつの疑問は、秘密のパーティでトム君のパートナーになって彼を救ったのは、黒人の女性かと思っていたんだけど。そして、その彼女はトム君の秘書じゃないの? と思わせる個所もあったのだけど・・・。わからん。
パラサイト8/14上野東急2監督/ロバート・ロドリゲス脚本/ケビン・ウィリアムソン
US版「学校の怪談」って感じ。寄生虫のボスは意外なところに・・・。というのは、「スクリーム」や「ラスト・サマー」風だけど、おいおい、じゃあなんで教諭たちから寄生していったんだ? へんじゃねーか。というツッコミはやめときましょう。美男美女が、このたびは少なかったです。そのせいもあって、眠かったです。
ホーホケキョ となりの山田くん8/17渋谷東急2監督/高畑勲脚本/高畑勲
のんびりほのぼのしていてよかったろう、って? つまんなかったよー。眠りそうだった。テンションを保てたのは30分ぐらいで、あとは飽きてしまった。第一、毒気が抜かれている。広岡先生や、ラストにちょっとでてきた小学校の先生とか、もっとでなくちゃ。いしいひさいちの味を削ぎ落として、つまらなくしているだけ。間も、悪い。余韻のつもりで残しているムダ、尻切れのままでわからないエピソード。ギャグを理解していないなあ、と思った。

 
 

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