1999年11月

DEAD OR ALIVE-犯罪者-11/5Bunkamuraシアターコクーン監督/三池崇史脚本/龍一朗
最初の5分間の軽快で流れるような映像美、とラストの5分間のコミック映画もぶっ飛ばす脳天気で爆裂的な盛り上がりは、秀逸と驚きで、高く評価したい。が、しかし。ちょっと待った、である。中間に挟まれたお話の部分が、いまひとつググッとこないのだ。全体に暗い(逆光が多い)、カメラはFIX(動きがない)、アップを避けて(ほとんどロングかミドルショット)役者主義にしないスタイル(だから、しばしば誰がどういう役回りで、どういう顔の役者か分からない)。そういうトーンで進む中からアップも少しずつ使われだして、次第に在日中国人2世の不良とヤクザな警官、の日活ニューアクションを髣髴とさせる2人の対立が浮かび上がってくるんだけどね。これが、ちと強引で。対立の根拠になるのは、在日中国人2世側からは麻薬取引をオシャカにされたこと。刑事側は、そのお返しに妻子を爆死させられたこと。それまでは、直接対決はあまりないんだよね。むしろ日本のヤクザが意味なく出すぎだと思う。もう少し、在日中国人2世と刑事の対立を明確にあぶりだす必要があったんではないのかな。さて。大雑把な表現から、次第にポイントに的を絞るような演出は、監督が意図してやっていることだろうけど、効果的だったのだろうか? 静的で単調な映像は、しばしば退屈だった。当初は見ていて何が何だか分からないし。役者の顔も分からない。つじつまをムリに合わせないアバウトなストーリー展開は、ちょっといらつく。死体を運んだりビルの屋上で焼いたりするのはおかしいとか、新宿の街頭でマシンガンぶっ放すのは変、とかいうんじゃなくてね(そういうのは嘘だと初めっから分かっているからいいの)。あの写真は誰が撮ったんだ、刑事の聞き込みを見抜けないチンピラとか、誰が麻薬情報を警察に知らせたんだ、とか。そういう、筋書きに関係のある方ね。そういうつじつまの合わない「あれ?」がリズムを乱すんだよなあ。さて。脇役で儲けたのは、ピンク屋の情報屋ダンカンだなあ。これは、いい。尺八をつくる警察署長。ひとこと多い警察の同僚なんてのもいい。それに、水辺の墓場(なぜか墓石が傾いて半分埋まっている)のシーンは、しぶい。骨壷から取り出した骨の粉が赤いのも、うーむ。凄い。・・・と、要素的にはいいものがあるにもかかわらず、全体の(といっても、中間部分ね)リズムがグッとこないのは、困ったねえ。しかし、ラストで帳消し、っていう手もありますが。それくらい、ラストは大笑いの大拍手であります。
●第12回東京国際映画祭/上映前に、司会塩田時敏で、三池崇史、哀川翔、竹内力(会場から、タケウチー! と声がかかった)、甲賀瑞穂、山口祥行、柏谷みちすけ、が舞台挨拶。哀川と竹内には、前列のバカ女が「キャー!」などと手を振っている。やれやれ。終映後、塩田&三池登場で、客席からの質問に応じる。「帰国中国人子弟が主人公ということに」という質問に、のらりくらりと歯切れ悪く、「犯罪者っていう設定でも見てくれて反応があれば嬉しい」的な答。あんまり考えていないことが明瞭だ。他は、「よかったで〜す」的な質問だったので、つまらなかった。映画の反応はよく、随所で歓声や拍手が起こる。きっと、監督や役者への思いこみが強いファンが多いのだろう。終わると、大拍手。いやほんと、ラストシーンは、日活ニューアクションも腰を抜かすすさまじいもの(はははは、大笑い)だったしね。
真夜中まで11/6Bunkamuraオーチャードホール監督/和田誠脚本/
マイルス・デイビスとホレス・シルバーが鳴り響く映画。トランペッターが演奏と演奏の間の休憩時間に、警官による汚職と殺人事件に巻き込まれ、中国人ホステスと深夜東京を駆け回る映画。という設定は、とても面白い。フィルム・ノワールとしても色彩が豊か。だけどさ。カメラがダメだよ。巻頭の夜景からビル、ジャズスポットへというカメラの動きを1シーンで撮ってるけど(途中暗転でごまかしている)、動きがぎくしゃくしていて見られたものではない。その他、カメラを移動させての撮影が多いが、ぜんぜんなめらかではない。いらいらする。さらに、手持ちの多用でぐらぐらしている。三脚の上にちゃんと載せて撮れ! と、叫びつづけていた。車中シーンも、トラックの上に載せての撮影か、地面より高いのがありありで興ざめ。ラストの格闘シーンは、ミドルショットだけで、手や頭などのアップのインサートも欲しかったところ。とにかく、カメラが不必要に揺れるのは、いいことないよね、絶対。気分的には、あと15分程度つまむと、テンポがもっとよくなりそうな気がした。
●第12回東京国際映画祭/上映前に、司会襟川クロで、和田誠、立川直樹(音楽プロデューサー)、篠田昇(撮影監督)ミッシェル・リースの挨拶と、上映後にも同じメンバーでの質問受付あり。つまらないので途中で抜けた。
アナライズ・ミー11/6渋谷パンテオン監督/ハロルド・ライミス脚本/ピーター・トーラン&ハロルド・ライミス&ケネス・ローナガん
軽いコメディ。なにがどうしたと、別に言うことなし。でもやっぱさあ、この程度の映画でもちゃんとカメラはきれいに動いているぜ。なぜか眠くて眠くて、ちょいと寝てしまった(映画のせいでなく、ね)。
クリミナル・ラヴァーズ(仮題)11/6Bunkamuraオーチャードホール監督/フランソワ・オゾン脚本/
やっと、技術云々を離れて映画に言及できる。うれしい。フランス映画。現代版ヘンゼルとグレーテルって感じの話。う〜む。嘘つき女の言いなりになって、同級生の男の子を刺殺してしまう17歳の少年。・・・この動機がいまいち納得できないが、そういう衝動はあるのかもしれないと、妙に納得してしまう。2人で死体を山奥に埋めに行ったら、山男につかまって地下の穴蔵に押し込められてしまう。その穴には、埋めたはずの同級生の死骸が・・・。彼は、山男に愛撫され、イッてしまう(彼はまだ童貞なのに・・・)。しかし、なんとか逃亡後、吹っ切れて彼女ともセックスできる。ううむ。なんなんだ。かといって、男色の道は刷り込まれてしまった。ううう。尻のアナが痛そう。なんともまとめられないけど、次はどうなるんだ? という興味でぐぐっと引っ張っていくので、あっというまに、終わってしまった。楽しかった。もっとも、日本では17歳の男女っていやあ、大人でも怖がるぐらいなのに、かの国ではジジイに貫禄負けしてしまうのかねえ。うーむ。
●第12回東京国際映画祭/上映前後に、制作者のオリビエ・ヘルボスト(?)とかいう人がでて挨拶と質疑応答。途中で出た。
将軍の娘/エリザベス・キャンベル11/10渋谷東急2監督/サイモン・ウエスト脚本/クリストファー・バートリーニ、ウィリアム・ゴールドマン
うーむ。ストーリーは重くスカッとしない。話は、謎を解いていく過程はスリリング。でも、結末は「な〜んだ」という部分と「あらま」という部分と2つあって、割り切れないところがある。後半ともなると話が錯綜して混乱する。けど、まあ、なんとなく「いいか」ってな理解で終わってしまうなあ。細かな部分のつじつまや、未解決の問題などもあったりして、知りたいところがいくつかある。けど、「いいか」ってな具合。そうそう、ムーア大佐のホモだちみたいな男が情報を提供したようだけど、あいつは誰だったんだ? 看守の男か? 年をとってくると役者の顔もしっかりと覚えきれないし、名前も覚えられない。ううう。哀しいよぉ〜。
黒の天使Vol.211/24シネマミラノ監督/石井隆脚本/石井隆
天海祐希主演。コミック原作の映画化。センスは悪くないと思うんだけどね。日本映画に対していつもいってる通り、ストーリーの合理性がいささか欠如している。しかも、このお話では情緒がどぼどぼで、昔の任侠映画みたい。もうちょいと、からっと、ドライにやれないものだろうか。ショットもたるい。前1.5秒、お尻2秒削って、過剰な演出をやめて、カメラワークと色彩にパワーを注ぐと、もっと快適でスリリングな展開になるだろう。そう。スリリングじゃないんだよな、この映画。テンポもとろいし。あと、ディテールね。ベッドの枠とか、壁の絵とか、ペンギンの照明だとか、その他諸々の、フレームの中に出てくる小道具が、だっせーんだよ。ちゃんと考えて揃えているんだろうか? そういう中で、天井が見える室内シーンは、なかなか空気感が出ていてよかった。全体に、あと一歩、っていうところで「ああ、面白かった」「楽しかった」といえる映画になれる可能性があるんだから、そこに努力とお金をつぎ込んでもらいたいものである。がんばってね。

 
 

|back|

|ホームページへ戻る|