2000年3月

スリーピー・ホロウ3/1上野宝塚監督/ティム・バートン脚本/アンドリュー・ケヴィン・ウォーカー
ジョニー・デップって、こないだ見た「ノイズ」の男優だあ。こっちでは、少年っぽい感じででてました。えー、感想は。前半の30分過ぎまでは、とってもとっても退屈だった。魔女に出会うあたりから、さわさわと話が動き出す。しっかし、それまではドラマが何にもなくて、とっともつまらない。もっとも、その部分でいろいろと伏線があったりするのですが。で、中盤から後半にかけて、犯人は誰だ? という推察が混沌としてくる部分では、人物関係が入り組んでいて(年のせいか、役名と顔が一致しないときがよくあるのですよ)、主人公の推理に追いつけず。ややや。まずい。しかし、ラストでは、なあんだ。ってな犯人が出てくるざます。クラシカルで重厚な映像が見どころですね。首チョン切りは、全然怖くないです。笑えます。ジョニー・デップの母親に拘わるトラウマと、実証主義を重んじる性格、そして、マニアックな解剖道具などは関連があるんでしょうが、それだけで終わっちゃってましたね。もう少し突っ込んでもよかったんじゃないかな。そうしたら、映画的な厚みがかなり出たのではないでしょうか。とても、もったいない。(後記:ティム・バートン、ジョニー・デップは「シザー・ハンズ」のときのコンビなのね。後で知りました。ってーことは、あの機械マニア的なメスなどが出てきたときに、笑わなくちゃいけなかったのね。名前やフィルモグラフィーが覚えられない私なのですが、これは映画の楽しみ方に関わってきますねえ 3/6)ジョニー・デップの上役にクリストファー・リーというのは、面白かった。ああ、そういえば、ヒロインはあんなブタ面ではない方がよかったなあ。
リング0 バースデイ3/1上野東宝監督/鶴田法男脚本/高橋洋
90%が室内撮影で、重苦しいね。ボロアパート(白髭あたり?)の外を歩くシーンと、階段と。前半ではそれぐらい。後半、最後は森の中(これは伊豆の設定かな)だけど、ここはまるで「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」みたい。で、感想ですか。う〜む。話にひねりがないよね。単純すぎて意外性がない。なんで劇団員が呪われるんだ? とか、もう1人の貞子は双子なのか? 最後は一体化したのか? とかね。謎に終わらせようとした、というよりは、つじつま合わせができないまま締切がきちまった、って感じ。脚本にもっと力点をおかないとねえ。といいつつ、わざとらしいおどろおどろしさに、ゾクゾクとはきてしまいましたが。
ISOLA 多重人格少女3/1上野東宝監督/水谷俊之脚本/木下麦太、桑原あつし、畑島ひろし
こっちは、前半を見ている分には、映画になっているな、と思った。設定も面白いし、主人公の木村佳乃自体が得体の知れない女、というのも興味をそそる。ところが、人物の掘り下げが甘い。たとえば、鍵となる人物がまったく描けていない。遊体離脱に興味を持ち、多重人格の少女にも関心を抱いていたが、実験中に死んでしまった女性研究者。彼女のことが描けていないから、すべての謎もスッキリとは解決しないのだ。なぜ彼女は少女の人格として入り込み、悪さをするのか。それが分からなくては話にならない。ここを詰めていくと、なかなかデキのいい映画になったのではないかと思うんですがね。原作者貴志祐介、浪曲師国本武春、監督三池崇史、気になる女優長曽我部蓉子の名前がクレジットタイトルに。ううう。どこにでていたんだあああ。それを確認したいなあ。
マグノリア3/14上野東急2監督/ポール・トーマス・アンダーソン脚本/ポール・トーマス・アンダーソン
オープニングの3つのエピソードが、畳み掛ける。目をそらすことも、耳を逸らすこともできないくらい素早く。そして、主要主人公のひとあたりの紹介が、これももの凄いスピードと情報量、カットでがががかっとつづく。見てる側は「あああああ・・・」と言っている間に、お話の中に引きずり込まれてしまう。すげえテクニックだ。その後の、個々のエピソードではいささかの冗漫さも(オープニングに比較して)見られるけれど、ぐいぐいと展開に引きずり込んでいくんだから、やっぱり凄い。とうぜんながら、個々のエピソードも起承転結で話は進まない。時間が交錯し、意外な事実がこぼれだし、人々は戸惑い、奔走する。中盤のテンションは相当盛り上がっていたなあ。個々のお話だけではつたわらない人生模様が、複雑に交差させる同時進行によってひしひしと炙りだされてくる。そうして、あのラストのすさまじい雨(? ないしょ)になる。う〜む。あの、ときどき出ていた天気予報のクレジットは、これだったのかあ。・・・えーと。あの元天才少年は、「ER」のモーゲンスターン部長だよねえ? それはそうと。ラスト・クレジットに出てくる"magnolia for fa and ea"の意味は何なんでしょう? それと、気になったのはクレジットの名前に大文字がなく、みな小文字だったこと。なんか、意味深長な気がする。
ダブル・ジョパディー3/15渋谷東急2監督/ブルース・ベレスフォード脚本/デビッド・ワイスバーグ、ダグラス・ S・クック
予告編で面白そうだったんだよね。しかも、ヒロインのアシュレイ・ジャッドの容貌が造形美に満ちていたので・・・。で、基本的には三文映画。だいたい、予告編が語りすぎていて、前半はとてもつまらなかった。予備知識なしで見るべきだね。アシュレイ・ジャッドを見るだけでも幸せなのですが・・・、トミー・リー・ジョーンズがいい。人物造形がかなり綿密に練り上げられていて、多の登場人物の薄っぺらな様子とは段違い。無教養でだらしなく、過去に悔恨の深さをもち、とんまだけど正直な田舎者を見事に演じている。演技賞ものだねえ。さて、お話は、ちゃち。亭主のニックが妻を陥れる動機に説得力がない。殺害されている身分で堂々と世間に身を晒しているのも解せない。だいたい、これでは初動捜査した警察がまったくお粗末としかいえなくなる。しかも、ヒロインの知り合いの校長や弁護士、警官などもなんの力にもなっていない。それに、子供だけは殺さずにずっと引きずっているニックが理解できない。殺さないまでも、どこかに捨てるぐらいの冷酷漢でないと納得できないなあ。だいたい、あたしゃ、もっと組織的犯罪でもあるのかと思ったら、なんだ、個人の犯罪なんだもん。まあ、筋立て上致し方ないのだろうけれど、それでもなあ。脚本がお粗末すぎる。という欠点ばかりのストーリーだけど。まあ、重箱の隅をつつかず、スリリングなリベンジ劇と見れば、まあ、いいか。
救命士3/31新宿東急監督/マーティン・スコセッシ脚本/ポール・シュレイダー
駄作。退屈で死ぬかと思った。「ER」が当たっているからつくってみるか、という発想か。しかし、「ER」のレベルに達していない。「ER」の群像劇、治療のリアリティを真似るわけにはいかないから、救命士という職業にスポットライトを当てたのだろうが、ドラマがない。助けそこなった少女の亡霊も実態がない。だらか、主人公が悩み苦しむ理由もつたわらない。たまたま出会った中年女につきまとう心の弱さも説得力がない。しかも、全体に暗い。あえてつまらなくしてるみたいな映画だ。ああ、くたびれた。

 
 

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