2000年6月

エリン・ブロコビッチ6/1上野東急監督/スティーブン・ソダーバーグ脚本/スザンナ・グラント
脚本がいい。すっきりまとまっていて、過不足なし。この手の訴訟問題をとりあげると、日本映画では謹厳実直一心不乱お涙頂戴独立プロ作品、ってなっちゃうんだよな。なのに、こちらは1人のわがままな女を中心に、母子家庭のことや新しい恋人との出会いやオフィスの様子など、多彩なエレメントが詰められている。なのに、1本筋が通っているからややこしくなっていない。うじうじしたところや重苦しさもほとんどなく、コミカルにユーモアたっぷりに描いている。まあ、その分リアリティに欠ける(いくら事実に基づいているといっても)し、軽い。しかし、この軽さがほどほどによい。がんばる女のステップアップも、面白いしね。まあ、公害問題を扱っているから、スカッとさわやか気分爽快、とまではいかないけれど。主人公に立ちふさがる壁がなく、危機やリスクを乗りこえていく、っていう部分がないからではないのかな。さて、よくないのは画質だな。前半がとくによくない。とてもいい加減に撮っているように思えてしまう。カメラが手持ちでぶれたりピンが甘かったり。色調も、とても神経を使っているとはいいがたい。後半になると、少し厚みがでてくるんだけど、それでも全体としては安手の画面。このあたり、もうちょっと気を使ってくれい。
ロミオ・マスト・ダイ6/1上野東急2監督/アンジェイ・バートコウィアク脚本/エリック・バーント、ジョン・ジャレル
波止場。対立する2つのグループ。お互いの息子たちが殺されて、対立は深まる。そこに、脱獄したカンフーの達人が現れて、対立相手の娘と恋に落ちる。実は、裏で糸を操っていたのは・・・。って、まるで日活ニューアクションの世界だぜ。まいっちゃうな。しかも、殴られた相手のレントゲン写真が出るなんて、かつての必殺が本家本元じゃないのか。うーむ。しかし、ストーリーが単純なようで、よくわからないところがたくさんあって、いったい誰が何を企んで何をしたのか、よくわかんなかったりする。
どら平太6/7上野宝塚劇場監督/市川崑脚本/黒澤明、木下惠介、市川崑、小林正樹
脚本がたるい。今から30年前のものらしいが、そういうテンポだ。過去の脚本を尊重してつくったのだとしても、これでは面白くなりようがない。話の内容もシンプルで、話の先が簡単に読める。裏で通じている奴なんて、最初から見え見え。コミカルな部分もあるけれど(大滝秀治)、アクセントになり切れていない。役所広司の30数人切りもアップばかり多くて迫力なし。どこが痛快娯楽劇なんだ? 眠くてしょうがなかったよ。・・・ラストで馬方から馬を買うシーンで「馬の田楽」なんて言葉がでていたけれど、黒澤明なのかな、落語好きは?
マイ・ハート,マイ・ラブ6/7有楽町スバル座監督/ウィラード・キャロル脚本/ウィラード・キャロル
数組の男女のドラマが断片的に進んでいく。「マグノリア」と同じスタイルじゃん。というわけで、興味はこれなの平行して進む話がどこでつながるかが見物である。収束の仕方はなかなか巧妙で、まあ、途中でうすうす感じとれるものの、気持ちよく収まってくれる。ただし、個々のドラマがすんなりと起承転結というわけではないので、とってもわかりづらい。すべて断片的に、全体ではなく細部のドラマの積み重ねで進んでいく。まあ、1時間を過ぎた辺りから輪郭が見えてくる(私にはね)んだけれど、それまでの脈絡のない断片的な会話が、正直いって何をしゃべっているのかわからなかった。すっごくもやもやが残ってしまった。だから、映画が終了してからもう一度見てやった。そうしたら、今度はセリフのすべてがなんともよく分かる分かる。布石も、仕掛けも、よく分かる。「ジャズを語ること、恋愛を語ることは建築家と踊ること」というセリフは、次女のロマンスの相手が建築家であることを踏まえているんだな、とか。長女の旦那は、あれは虚言癖(?)というか、仮面をかぶって生きなくてはいられないやつなんだ、とか。S.コネリーの夫婦の葛藤の機微だとか。次女の最初の結婚相手が誰だったかとか。まあ、いろいろな脚本の細部が見事にピシッピシッと収まりだした。まあ、これは私の記憶能力の問題もあるんだろうけれど、1回見ただけで劇場をあとにしていたら、おそらくもやもやのままだったろう。というわけで、2度目の(といっても2度目は都合によって前半の1時間しか見なかったけれど)観賞で、とってもすっきりして気持ちよく劇場をあとにできた。まあ、問題は、2度見なくてはわからないぐらいの、断片的すぎるドラマの構成ということにつきるんじゃないかな。ボーッとみていては、ついていけない。普通に見ていても、見逃しや気がつかない点はたくさんあるだろう。こんなんで、いいのかな? というのが課題だ。2度見ればよくわかる、なんてキャッチフレーズにはなんないしね。アンジェリーナ・ジョリー目当てってこともあったのだけれど、やっぱ、かわいいね、まくれ唇。ちょっと落ちつきのない、でも、何かを求めている真面目さがよく出ていた。「ER」のグリーン先生ことアンソニー・エドワーズも出ておりました。
ナインスゲート6/16上野セントラル3監督/ロマン・ポランスキー脚本/アンリック・ユルビズー、ジョ ン・ブラウンジョン
うーむ。とても新作とは思えない映画の中の時間・・・。20年前の映画だといわれても驚かないぞ。流れもテンポも緩慢で、いささか解せないところも多々あるけれど、秘密めかして結局はオカルト肯定となってしまう筋書きはポランスキーらしいところかな。まあ、「なんで?」「どうして?」をいちいちいい始めたらキリがないけれど、まあ、そのあたりを故意に曖昧にしているところがこの映画の主旨でもあるんだろうな。しかし、なんで主人公は悪魔に心を売り渡してしまうのだ? というラストは最大の「?」ですが。もう少し、古書の造詣がいろいろ描かれているといいのにね。ポルトガルの造本作家兄弟がなんともいい味を出しておった。うーむ。堪能。そうそう。耽美な音楽もよかった。
ところで、上野セントラル3という劇場ですが、初めて入って驚いた。ミニシアターなんだね。なんか、地下の物置を改造したみたいな妙なカタチで、椅子は80ぐらい。ゆったりとカップホルダーもあっていいんだけど、これは許せないというのは明るさ。上映中も新聞が読めるほど明るい。なにせ天井にライトがついているんだ。非常口のライトもでかくて、煌々としている。途中出入りの客がいると、ロビーの明かりがモロに入る。小さい小屋なんだから、出入口に黒幕をたらすとかすればいいのに。新宿ピカデリー3のようにねえ。しかし、ドキッとしたのはCMなし予告編なし時間になるといきなり本編という上映スタイル。それは望むところなのですけれど、たいがいの小屋が15〜10分の時間をとっているので、「10分ぐらい遅れて入っても大丈夫だろう」と思って入ると大失敗、ということになるわけですよね。うーむ。これはこれで困るよね。今回は上映時間前に入って、本編上映時間を確認してたら館員に「時間になるといきなり本編上映ですから」といわれてあわてて小水して座ったんですが。
鬼教師ミセス・ティングル6/22シネマミラノ監督/ケヴィン・ウィリアムソン脚本/ケヴィン・ウィリアムソン
「スクリーム」のスクリプターが昔の脚本を引っぱり出して映画化? うーむ。「スクリーム2」「スクリーム3」よりは楽しめました。それにしても、ぜんぜん鬼教師じゃないじゃん(原題には「鬼」はついてないけどね)。むしろ、生徒の方が鬼じゃん。あんだけ悪さをして生徒はお咎めなしで、教師はお払い箱? そりゃ、たとえSMの先生だとしても、可哀想ってもんだ。
ところで。シネマミラノは内装が変わりましたね。壁に描いてあったアニメキャラクターの絵がなくなった。それだけじゃござんせん。座席もカップホルダー付の新しいのに変わって、バネもびんびんになりました。客席数は、増えたのかな? どうなんだろ。

 
 

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