2000年7月

ザ・ハリケーン7/5上野宝塚劇場監督/ノーマン・ジュイソン脚本/アーミアン・バーンスタイン、ダン・ゴードン
私はこういうプロパガンダ色の強い映画は好きではない。差別や公民権運動なんかが扱われると、だいたいがメッセージは決まっているし、ワンパターンだからだ。娯楽じゃなくて、教育になっちゃうからね。という意味で、感動したかというと、差ほどではない。大きく分けると、前半が生い立ちと転落。後半が、法廷。いうまでもなく、後半は面白い。前半は、テンポはまずまずだけれど、罠に陥れる悪徳警官がもの足らない。罠にはめた動機だとか、憎しみだとかが表現されていたら、もっとルービン・"ハリケーン"・カーター(デンゼル・ワシントン)にシンパシーを感じたかも知れない。でも、なんか、事実らしきものを羅列するだけで心にグッと来ない。カナダの連中もそうだ。得体の知れない連中は、結局ラストまで得体が知れないままだ。これも、全面的に応援するまでには至らない。こういうもやもやのまま後半に突入するわけだけれど、証言集めや法廷闘争には心を動かされる。しかし、いかんせん突っ込み不足。怪しい町の名士たちはなぜルービンを憎み、陥れたのか。そして、それを暴こうとする人々を妨害しつづけたのか。その辺りの闇に迫っていかない。平板で淡々として、心を揺り動かさない。対立のないドラマほど面白くないものはない。できるならば、前半を半分以下の時間に圧縮して、支援者たちが去っていったあとの孤独感でも描写して欲しかった。そして、後半の、絶望の中にいるルービンを救う正義の使者として現れて欲しかった。そうしたら、感動はもっと高まったに違いない。意あまって肩すかしの映画だった。
クロスファイア7/5上野東宝劇場監督/金子修介脚本/山田耕大、横谷昌宏、大谷幸
稚拙だ。日本映画って、やっぱりダメだなと、思い知らされる。編集が下手だからブツ切れのシーンが多い。脚本が下手だからだらだらと解説する場面が多い。金がないから背景も味気ない壁だけのシーンが頻出する。そして何といっても人間が描けていないし、テーマが置き去りだ。原作にはあったであろうメッセージを捨て去って時間内にストーリーをいかに押し込めるかに心を配り、CGだけに金も心も使い果たしたって感じ。で、そのCGがどれほどの出来かというと、驚くほどにもなっていない。だからさあ、中途半端なままで本数だけ稼ぐ日本映画のスタイルを変えなくちゃいかんよ。観客を嘗めてばかりいると、本当に日本映画には客はこなくなるよ。CGなんか凝らなくてもさ、いい映画はできるんだから。
レインディア・ゲーム7/19上野東急2監督/ジョン・フランケンハイマー脚本/アーレン・クルーガー
映画の素材としては面白いストーリー展開だし、ひねりも二重三重に効いている。というのに、あんまりハラハラドキドキしない。どーも、その、役者たちがあまり面白がってやっているように見えないんだな。なんというか、みな暗いし元気がないし、やる気がなさそうな風。勢いが画面から感じられないのです。主役のベン・アフレックにあまり魅力がないせいもあるのかな。それと、文通相手、実は・・・のシャーリズ・セロンはそこそこ可愛いのだけれど、わざわざ見せるほどのオッパイじゃなかったねえ。彼女の兄貴役、っていうか、実は・・・の、男優はなんて名前だったか、最近よく顔を見ますが、悪漢役がまさにはまり役。だけど、あんまり頭のよさそうな役はないのかな。この映画でも、「なんでここで殺さないんだ」とかね。そんなことを思わせるシーンがあった。それに、いくつもの「なんで?」は、やっぱりあって、ひねりを効かせたぶんあちこちでムリが来ているっていうところか。悪党グループが全部で何人いて、どんな個性や性格? っていう描写にも欠けていたし。うーむ。大御所フランケンハイマーらしいなあ。
ドグマ7/20渋谷東急監督/ケヴィン・スミス脚本/ケヴィン・スミス
うーむ。わからん。これは、日本人にはムリなのではないか? 神、キリスト、使徒、天使、予言者、教会、とくにカソリック。こういった存在の位置づけを知るには、旧約聖書の知識がないとダメでしょう。その下地というか共通認識があって、それをパロディ化しているというか、皮肉っているというか、茶化しているというか。しかし、どう料理していて、それがどの程度の遊び方なのかということが皆目見当がつかない。そういえば、ネイティブらしき客がきゃはきゃは笑っておりましたが、悔しいねえ。・・・ということを差し引いても、なかなか刺激的な感じがつたわってくる映画。挑発的で、けんか腰で、お膳をひっくり返しているみたいな様子が、小気味いい。登場人物たちが、それぞれに立体的に表現されていて、しかも、なかなかに深い。セリフがね、効いているんだと思うのだけど、その意味が分からないところが多分にあるのが残念至極。字幕を呼んで考えていると、すぐ次の字幕で、たいへんでした。オープニングのクレームへの対応のクレジットのしつこいくらいに念の入った仕掛けや、エンドクレジットタイトルの後にも「少し黒人が混じってるのか?」なんて声がはいっていたり。コメディタッチも、粋というか洗練されている感じで、いいなあ。この内容が理解できれば、もっと楽しめることだろう。そうそう。映画界の内情や映画の知識がないと分からない映画のパロディもたくさんありましたね。しかし、どうしてカソリックなんだ? 
アメリカン・パイ7/20渋谷東急3監督/クリス・ウェイツ&ポール・ウェイツ脚本/アダム・ハーツ
大笑い。下品なところもあるけれど、あっさりと、笑いで片づけられる。この手の、高校生のスケベな好奇心と脱童貞、そして、プラムをあつかった映画はいままでもたくさんあるけれど、上出来。あまりドタバタ喜劇になってないので、見終わっても爽やかな印象が残る。登場してくる少年たちが、なかなかによく描かれている。もちろん、女の子たちもみな個性的。家族たちも、なかなかよい。しかも、インターネットでHなシーンの生放送があったりと、最新の社会環境もよくとりいれている。変わらないのは、人間の心、っていうことだろうか。ただし、音楽がまったくだめだった。この映画でも、ネイティブの方々らしき観客がヒャーヒョーと騒いでいた。楽しそうでいいねえ。
オール・アバウト・マイ・マザー7/27テアトル池袋監督/ペドロ・アルモドバル脚本/ペドロ・アルモドバル
なんか、ずらずらと受賞歴が画面に流れたけど。それほどのもんかいな。感想の最初は、うげ、すげえ世界だ。スペインもゲイが充満しているの? ゲイでありながら女性とセックスして子供をつくるの? 男の売春婦と、女の売春婦同士で男女関係になるの? うーむ。なんか、得体が知れない。まあ、そういう世界に生きる女性たち(女装男もいるけど)をダイナミックに描いたところが評価されたのでしょうか。実際、登場する人物のキャラクターはそれぞれに個性的かつ魅力的。トンマさバカさも一流ぞろいだけれど、人生の掃き溜めの中で、前向きに生きていこうとする姿を表現しています。まあ、でも、とくに共感はしないけどね。台詞やシーンのつなぎも切れ味が鋭くて、緊張感もあります。気にかかるのは、それぞれの動機かな。いまさらなぜ昔の彼、子供の父親を捜しにいくのか? といっても、とくに捜しているというシーンはあまりない。わざわざバルセロナにきても、昔の仲間や新しい知り合いのなかで、暮らしていくだけ。必死さは感じられない。それと、理性的な感じのシスターが、どうしてエイズのゲイとセックスして子供を・・・。てな、なんでえ? という疑問符があちこちにつく。まあ、ゲイ自体にも疑問符はつくのだけれど、それはまあ、しょうがないとしてもね。とにかく、逞しく、したたかな女(女装の男性)たちの群像は、つたわった。繰り返すけど、共感はないけどね。
1回半見てしまった。1時からの回を見たのですが、開始早々カシャカシャとコンビニの袋から弁当を取り出したりする女が1人。こいつ、10分以上カシャカシャ音をさせっぱなし。もう1人は、袋入りのパンでも食っているのか、カサ、パリパリ、とうるさい。この2人の雑音攻撃で映画開始から30分は画面に集中できなかった。だもんで、前半だけをもう一度見たのだ。すると、今度はいろいろな部分が鮮明に見えはじめてきた。いま、見終わった映画だというのに「ああ、そうか。そうだったのか」という部分がたくさんあった。2度目も最後まで見通したかったのですが、都合があって中座してしまいました。なかなか含蓄のある映画ですね。それにしても、アナウンスで「飲食は他のお客への配慮を」といっているのに、なんと堂々としたオバサン(30歳過ぎぐらいだったけどね)だ。飯時がまずかったのはみとめるが、とんでもないやつだね。1800円もの正規の窓口料金を払っているのにオープニングから邪魔されて、とっても不愉快。この女に、金返せと言いたい気分だ。こういうとき、困りますね。注意していれば自分が映画を見られなくなっちゃうし。いざこざになれば他の人の迷惑だし。まったく。迷惑女は、世にはびこる。

 
 

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