2000年8月

マネートレーダー 銀行崩壊8/8シネマミラノ監督/JAMES DEARDEN脚本/JAMES DEARDEN
イギリスの名門ベアリングズ銀行をたったひとりのマネートレーダーが倒産させてしまった実話に基づく話。う〜む。先物取引はよくわからん。だから、どうやって損失が生まれていくのかわからん。しかも、シンガポールの取引所で日本のNIKKEIの上がり下がりを見て、それでなんで儲かるのか損するのか、それがよくわからん。じゃあ、難しいことはヌキで映画的に面白いかというと、たいしたことはない。事実の縛りがありすぎるんだろう。まだ、事件が起きて5年だし。てなわけで、とても中途半端な感じがした。ま、現実は映画ほどドラマチックではない、っていうことか。たぶん、ドキュメンタリーにした方が面白くなるんじゃないのかな。
TATARI タタリ8/9渋谷東急3監督/ウィリアム・マーロウ脚本/ディック・ビーブ
原題は"HOUTH OF HAUNTED HILL"ってーことは、"TATARI"ってのは日本題名かい。"RONIN"みたいに、外国人が日本語を面白がってつけたタイトルではないのね。さて、私はホラーは好きではない。見る前からドキドキしてしまう。というわけで、緊張して見始めましたが、映像に重厚感があったオープニングの数分間、あのテイストはなかなかよかった。しかし、怖くない。どこまでいっても怖くない。ちょっとゾクッとしたのは、TVレポーターの女性がビデオで手術室を撮影すると画面には・・・、というところと、最後に悪霊というか怨念がCGで現れたときぐらい。あとは、なんだよー、ってレベル。むしろ、あえで怖がらせまいとしているようにさえ感じられた。で、この映画の最大の「?」である、なぜ5人があの屋敷に呼び寄せられたのか、という答はエンドクレジットが終了してからわかる、という手法はいじらしくてよいね。たいていの、クレジットが始まると帰ってしまう連中には知らせない、という態度がいさぎよい。ざまあみろ。とは思うのですが、昔の怨念を末裔同士で祟り合うというのも、いまひとつ説得力ないなあ。殺された人と生き残った人の差はなんだったのだ? とかね。ちと、分からんところもあるし。
ツイン・フォールズ・アイダホ8/16銀座テアトルシネマ監督/マイケル・ポーリッシュ脚本/マーク・ポーリッシュ&マイケル・ポーリッシュ
誰もが想像しうるエピソードとストーリー展開とラスト。予想外のことが全く起きない。ゆえにかなりつまらない。そもそもあのシャム双生児が娼婦をホテルに呼んだところから話がスタートするわけだけど、なんで呼んだんだ? SEXするためではないのか? そのフォローが、ない。さらに、さまざまな疑問。あの双生児はどこから来たのか?(この答はラストでわかったけど) どうやってやってきたのか? さらし者だよなあ、電車にしても食堂にしても・・・。ホテルに投宿するときは、どうしたのか? 毎日なにを食っていたのか? たとえば、あのケーキはどこで買ったんだ? あの、仕立て上げられた服はどうしたんだ?(これもラストでわかるけど) とかね。基本的に、彼らが秘密で生きていけるはずのない要素がたくさんありすぎる。もうちょいと、リアリティに配慮すべきだろう。まあね、娼婦が双子の一人に恋心を抱くという、ほとんどあり得ない設定は映画だからまあいいとしても。
お盆明けの平日。で、水曜日はテアトル系が1000円均一。なので出かけたというのが、真相です。客層は、8割がファッション誌かなんかの映画評でもみたんじゃないかっていう、いかにも、っていう女の人。うへ。
ヒューマン・トラフィック8/18シネマミラノ監督/ジャスティン・ケリガン脚本/ジャスティン・ケリガン
5人の青少年が主人公。インポのジップ(いかにも頭わるそう)の父親は刑務所、母親は娼婦。ルル(美人じゃない)はいいとこのお嬢さん。黒人の音楽狂クープ(お調子者だけど猜疑心が強い)の父親は精神病院に。警官の息子のモフ(オタクだけどモテそうな顔)はスターウォーズとマスターベーション狂い。そして、たくましいニーナ(猿顔のオバサン面)・・・って、とんでもない設定だ。全体にとんでもなく暗いというか閉息感が漂い、若者たちは鬱屈し、絶望感に浸っている。で、ストレスの発散場所が、クラブとセックスと麻薬。うーむ。チラシに「これがイギリスの若者の真実」なんて書かれていたけど、イギリスの現実を拡大するとこんなものなの? 冒頭にドキュメントフィルムが流れて、警官とやり合うシーンもあったけど、あのケースは政治的な背景はあったのだろうか? それとも、ただのアホの暴走なんだろうか? どうも、本編では政治の“せ”の字もでてこなかったので、関係なさそうね。まあ、先進国で保証がしっかりしていて、働かなくても食えるような環境にいると、若者はみんな頭が腐っていくようだ。しかし、この映画では暴力はでてこなかった。それが、リアリティに欠けるような気もするんだけど。で、悪いのは政治とか親だとか、環境に向けられているかというと、差ほどでもない。陰にこもっている。だから、哀れである。しかも、かっこいい主人公じゃないところが、それを増幅させる。・・・観客の立場からすると、かわいい女の子にでてきて欲しいんだけどね。現実から想像のシーンに入り込むとか、映像の技法としては新鮮味はない。はっきりしたストーリーもない。最後はセンチなラブストーリーみたいになっちゃって、興ざめである。なんか、みんなストレスを溜め込んだまま終わっちゃう感じでね。あぶない気がするんだけど。主人公たちが個性的すぎるところが、しかも、普通ならとんでもない設定なのにあっけらかんとしているので、許そう。稚拙ながら、なんか気になる映画ではある。
さて。字幕がサイテーである。言葉のセンスがない。読んでいるだけで疲れる字幕は、珍しい。まだ逐語訳の域をでておらず、ニュアンスや真意をつたえるものになっていないんだよね。まだ初心者なのか素人なのか知らないが、ちゃんと監修する人がつくべきだろう。
ルナ・パパ8/25シネスイッチ銀座監督/バフティヤル・フドイナザーロフ脚本/
ほとんど何の前提もないまま見た。「黒猫・白猫」に世界が似ているね。平らな船や風物だけでなく、低空飛行をつづける複葉機や空から牛が降ってくる破天荒さ、跳ねっ返りの娘、すぐカッと来る親父、吉害の兄貴。すぐ死んでしまう演出。ことごとくが、「黒猫・白猫」のテイストだ。もっとも、あちらには政治色や民族的なところがにじみ出ていたけれど、こちらはそうしたエキスをしぼりとった後みたい。といっても、魅力が薄れるわけではない。エキセントリックな登場人物はなかなかに味わい深い。たくましく生きる主人公の17歳の娘や詐欺師の彼氏、吉害の兄貴、使用人のブスな娘、低空飛行ばかりしている色男の役者・・・。みな不思議な味わいだ。といっても、「黒猫・白猫」は魅力的すぎた。なにせ、こちらの主ストーリーは、闇夜で娘を孕ませた男探しというのだから、スケールはさほど大きくもなく、かっ飛んでいるわけでもない。奇妙な世界がふくらむわけでもない。意図的なストーリーのドンデン返しや断絶で、そこそこエキセントリックを造り上げているってとこかな。まあ、ああいう中央アジア(サマルカンドといっていたし、ロシア語みたいな言葉もあったし)という環境そのものが、エキセントリックなのかも知れないけれど。もっとも、ラストはちょっとねえ。幻想を通り越して、まるで「天空の城ラピュタ」じゃん。笑っちゃったよ。あれは、死を意味しているのだろうかねえ・・・? でも、並みの映画よりはかなり楽しかったことは事実だよ。
平日金曜の午後の回。行ったら「レディース1000円デー」だと。こちとら1500円だして交通会館でチケット買っているのに。女性だけ安くするというのは差別だから、撤廃して欲しいと思うのであります。しかし、女というのは落ちつきがないねえ。映画が始まったと思ったらすぐ席を外す人が3人ほどいた。通路を歩くたびに私の視線はさえぎられる。トイレか電話か、なんだか知らんがもっと落ちつけ、といいたい。終わってからも、エンドクレジットが流れている最中に出ようとする人がたくさんいる。ゆっくり映画の余韻に浸って音楽をきき、クレジットロールをながめるゆとりが欲しいね。・・・暗いので、階段に足をひっかけてつんのめっているオバサンがいたけど、はっはっはである。

 
 

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