2001年1月

レッド・プラネット1/14上野東急2監督/アントニー・ホフマン脚本/チャック・ファーラー、ジョナサン・レムキン
なんとも底の浅いストーリー。二転三転、意外や意外、なんとまあとんでもないことに・・・という展開に、ならない。あまりにも単純すぎて、どーも楽しさ満足度が達成されないもどかしさがありましたね。だいたい、オープニングからナレーションで人物紹介をしちまうのだけれど、これって何のためなのかよくわからん。そんなひまがあったら、人物を掘り下げるエピソードのひとつも挿入したらどうかいな。というぐらい、人物が描けていない。人物に魅力がない。しかも、火星探査機が不時着するとさっさと1人殺して、さらにもう1人も諍いで殺してしまう。あまりにも呆気ない。わたしゃ2人のうちの片方ぐらいは、あとから“実は生きていた”と、登場するのだろうと思っていたのだけれど、外れてしまった。ラスト。火星から脱出成功したのだけれど、ここでも“実は彼の体内には火星の生物が宿っていた”という「エイリアン」的なおまけエピソードが加わるんだろう、と思っていたら、それも外れてしまった。それぐらい単純なのだ。唯一の女性であり宇宙船の艦長は、いささか逞しい人でしたが、なんとなく「エイリアン」のシガニー・ウィーバーを感じさせる存在。もっとも、彼女みたいに働かない。宇宙船に乗ったままで、地上と連絡してるだけ。見どころは、せいぜい透け乳首程度。なんとも、肩すかし。太陽電池で動くはずの通信機が夜中でも機能したりするいい加減さや、とんでもない爆発にも耐えられる宇宙服だとか、こういうディテールも、なんとかしてくれい、と言いたい。
13デイズ1/16渋谷東急2監督/ロジャー・ドナルドソン脚本/デビッド・セルフ
正直に告白してしまおう。私にはこの映画は難しすぎた。緊迫感も感じられなかったし、ドラマも感じなかった。登場人物が多すぎて誰がどういう役割を果たしていたのかも、よく分からなかった。さらに、字幕には漢字が多くて理解するのに手間取り、その上、ちょっと高級そうなジョーク混じりの会話はちんぷんかんぷんだった。やっぱりこれは、私が悪いのでしょうか。それとも、映画が悪いのでしょうか。・・・なんてね。まあ、その。全体に中途半端にしか感じられなかったね。あの、パート白黒にはどういう意味があるのだ? 全然法則性もなく、突然白黒になる。思ったんだがね、全編白黒の方が、60年代っぽくてよかったんじゃないのかい? だいたい、カラー部分が時代を感じさせないんだよ。つい昨日みたいな感じでね。ファッションには詳しくないが、着衣も時代を感じさせるものでもなかったように思う。せいぜいメガネのフレーム? あと、インサートされる当時のテレビ画像? そんな程度かねえ。でね。当時のことを歴史として知らないということもある。一触即発。その危機感が、記憶として再現されてこない。冷戦の緊張感が、わかんないのだよ。欲をいえば、当時の世界情勢を刷り込んでもらってから話がはじまると、よかったんじゃないか。と、個人的には思う。んでもって、じゃあドラマは? というと、ホワイトハウスの中で政治家と軍人が対立したり怒鳴ったりしているだけで、面白くも何ともない。パイロットに近接撮影を命じてそれを実行する場面と、U2が撃墜されるシーンぐらいが、ドキドキする程度。いっちゃあなんだが、真面目すぎるんだよ。ことの成り行きを史実に近いように演出しているから、ヒーローがいない。誰があの事態を回避したのだ? と考えると、それは時の成り行きじゃねえか。かけひきじゃねえか。としかいえない。しかも、エピソードが断片ばかりで伏線もなく、おおおっという驚きもない。なんかなあ。つまんねえな。おろおろしているジョン・F・ケネディと、弟のロバート、それから補佐官がいただけでさあ。だれが殊勲賞なんだよ。ノンフィクション的に話を運ぶにしたって、もうちっとやりようがあったろう。アメリカだって共産主義の爆発と進行を阻止するためにあちこちに海外派遣、軍事行動を起こしていたんだし。ソ連だけを悪者にするようなやり方が、いまどき通用するとも思えない。それにしても、たかが意地の突っ張りあいで核戦争が引き起こされかけ、戦争したい軍人が爆撃したがっている構造というのは、人間はとことんアホだと思わせてくれる。こんなことで、おめえら世界の人間を巻き込むんじゃねえよ、と言いたいね。・・・ううむ。とにかく、アメリカも共産圏への示威行動をしていて、ソ連もそれに対抗してキューバにミサイルを・・・てな筋立ての方が、勉強になるんだけどねえ。フルシチョフも出せよ。アメリカの仮想敵国がいなくなって、映画もつくりづらくなっているのだなあ。なに? 歴史を知らないお前が悪いんだって? 悪かったな。
さて。上映開始から約50分ぐらいして、ケビン・コスナーが空軍の中佐に電話して低空で撮影を命じるシーンで、画面が明るくハレーションを起こした。と思ったら、サウンドがとぎれた。そして、画面に丸に囲まれた数字やバーなどの画面がオーバーラップしてかぶった。その間、20秒か30秒。短い間だったけれど、とても重要なシーンだったので、こちらの意欲を削がれてしまった。映写室が気づいてフィルムを戻して再映? となるかと思っていたら、そのまま続行。しかも、終映後に「上映中に不備があったのでお詫び・・・」というアナウンスもなかった。おいおい、そういう態度って、観客をなめているんじゃないか? なので、終映後に私は従業員の男性に起こったことについて話をした。そしたら、彼は営業を呼ぶからという。やってきたのは、支配人と名乗る人。で、事態を告げると
「いままでそんなことはなかったんですが」という。おいおい。私が嘘をいっているとでもいうのかい?
「実際あったからいってるんですよ。嘘だと思うなら、観客に聞いてみればいい。いまの回から残っている人もいるかも知れない。出ていった人を追いかけて聞いてもいい」
「いえ、そういう訳では・・・」
「問題があったので、ストップして巻き戻して再上映するかと思ったら、そうしない。その時にクレームをつけに出てこようかと思ったけれど、上映がストップする気配もない」
「その時にいっていたたければ・・・」
「そうですか? その時に上映を中止してやり直せ、っていったら問題はもっと大きくなっていたはずですよ。なかには、あのぐらいは気にならないという客もいるだろうし。騒ぎが大きくなっていたんじゃないですか?」
「あ、ええ。そうですね」
「とにかく、金を払って見ているんだから、完全な形で見たいのは当然です。他の人はクレームつけないかも知れないけど、私はつける」
「はあ」
「映写室でもモニタしてるんでしょ。それで気がつかないのはおかしいですよ」
「はあ。申し訳ありません」
「申し訳ありませんで済ませるんですか。私は、気になったところをもう一度確かめたい。これからもう一回見ればいいんだけれど、時間もない。といって、また金を払ってみるのは嫌だ。もう一度見られるような手配をしていただきたい。本来なら、見ていた人全員にその手配をするべきだろうけど、私しかクレームをつけていないのだから、他の人はそれでいいのだろう。けど、私は納得がいかないからクレームをつけている」
というと、分かりましたといつて、今月有効の東急グループの劇場招待券をもってきてくれた。半券のところに彼の印を押したものだ。そう、それでよい。わたしはなにも因縁をつけているのではない。当然のクレームをつけているだけだ。むしろ、文句をいわない客がほとんどであることの方が、私には理解できない。「金を返せ!」ぐらいいってもいい状態なんだぜ、これって。
アヴァロン1/23渋谷東急監督/押井守脚本/伊藤和典
映画を勘違いしているとしか思えない。ドラマのない映画なんて、ひとつもワクワクしないのだよ。なに? これはゲーマーのための環境ビデオだ? ゲーマーが喜ぶのは、この程度なのか? 予告編が一番よかったな。予告編以上のものは、本編には何もなかった。からっぽ。まあ、せいぜい15分から20分ぐらいの短編にまとめれば(いまからでも遅くない)、そこそこの見られる、眠らないで済む映画になるんじゃないかな。それにしても、ねえ、「アーサー王」の本を借りに行ったら、日本語の背表紙が見えるってさ、映画中では(たぶん)ポーランド語をしゃべってるのに、すっげーヘンだぜ。
13デイズ1/30渋谷東急2監督/ロジャー・ドナルドソン脚本/デビッド・セルフ
というわけで2度目の「13デイズ」を見てきた。1度おさらいしているので、話はわりとすんなり頭に入る。分からないところを考えていて置いてきぼりになることも、ほとんどない。室内劇だし役者がたくさんでるし派手さがないしテンポもいくぶんもったりしている。だから、リズムに酔うということはできなかったけと、前回よりは緊迫感は感じられた。でも、やっぱなあ、目の前で人が落下するとか、そういうどぎつさがないので、背筋が凍るような切迫感は感じられない。どっかで、冷戦なんていうバカな時代のバカな出来事じゃねえか、と思ってしまう。ソ連とアメリカ。はったりのかましあい、だな。どうみたってアメリカが不届き千万だ。よその国の上空から監視したり、トルコにミサイルを配置したり、先手を打っているのはアメリカ。後手がソ連。後手がアメリカの真似をしたからって、アメリカに正義があるわけじゃない。どこまでいっても、自分たちは正義だとつっぱっていく姿が、嘆かわしく見えてくる。今も変わらんぜ、その姿勢は。で。やっぱり、分からない部分やセリフはいくつかあった。説明しても分からないから説明していないのか、私がバカなのか。ま、どうでもいいけど。んでね。最初にケビン・コスナーがホワイトハウスに出かけてパーティについて話す相手、あれは秘書じゃなくてジャクリーン・ケネディなのかな? どうもそんな気がしてきた。でもって、キャンディーがどうのこうのいうのは、あれはハロウィンが近いからなのかな? どうもそんな気がしてきた。分からなかったのが、途中から現れてきた黒縁メガネの男で、草稿を役割のテッドという人物。あれは、どういう役職なんだろう? それと、どっかの掲示板でもあったけれど、副大統領のニクソンはどうして出てこないんだろう? ああ、それと。低空で撮影するパイロットにケビン・コスナーが電話するシーン。そこで前回は数字や記号のイメージがダブったのでしたが、今回は大丈夫でした。がしかし。そのシーンに移るところで、明らかにフィルムを後から編集したようなブツッという違和感が見えた。あれは、たぶん、本家の編集じゃなくて、後から日本で編集したに違いない、と私はにらんでいる。ひょっとしたら、妙なイメージが転写している部分をなくすために・・・。しかし、真相は謎である。

 
 

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