2001年7月

みんなのいえ7/4上野東宝劇場監督/三谷幸喜脚本/三谷幸喜
やっぱ演劇の脚本だなあ、と思う。映画のカット割りが活かされていない。あの、妙な間というか、シーンの長ったらしさが、私の生理とは合わない。カット尻がみんなだらしなくも長すぎる。しかも、思わせぶりだったりする。吉村実子の母親がいわくありげに設計図を舐めるように見るところでつないだりしているけれど、これは後で一言二言いうのかなと思ったら、そんなこともなかったし。それに、ギャグの間がみんなたるい。予定調和的なギャグばかりで、いかにも古典的なボケやズレが多い。そういうのをあえてやっているんだろうことは理解できなくもないが、お約束、みたいな感じで・・・といいつつ、ときどきクスリと笑っていた私ですが。テーマが、中途半端。アーティスト気取りの設計士と、昔気質の大工の対立、という図式をはっきりさせた方が楽しくなったんじゃないのかなあ。というわけで、唐沢寿明が喧嘩に強いとか運転が乱暴だとかいうのは、余計だと思う。むしろ、アンティーク家具の修復や鉋削りのエピソードなどの、デリケートな部分の方が主人公の性格を描き出していると思う。それに、西洋かぶれと昔気質の対立としては、公平にみれば西洋かぶれの方に軍配が上がってしまうのは明らか。どっちが住む人にとって快適な家を追究しているかは、大工の方は住む人のことより、昔からの慣習や思いこみに囚われている。唐沢くんの方が、妥協していない。というわけで、このドラマは対立のドラマとしてはちと弱い。前半うんざりするぐらいでていた夫婦も、後半は田中邦衛vs唐沢の戦いに移行して影が薄くなった。ま、それでよかったんだけどね。というより、前半の夫婦のドラマがムダに多かった。脚本家の亭主が書いているドラマが面白かったのに、2回しかでてこないのはもったいなかったね。そうそう。途中でインサートされる教訓のタイトル文字は、流れを遮るだけだった。大工仲間の名脇役たちだけど、存在だけで十分価値はあるけれど、もう少し見せ場をつくって上げて欲しかったね。そうた。伊原剛志って役者が私は好きなのだけど、彼の使い方もちょっと物足りなかった。奥さんが学校の先生というのは、最後の頃の1カットで分かるというのは、どうなんだろう? というわけで、いろんなところに“いまひとつ、ふたつ”感の漂う映画だけど、でも、今の日本映画としては大人が鑑賞して物足りる映画のひとつといってもいい。あとは、映画のリズムを煉り込んでくれたら・・・。
映画の日で1000円。11:45分の回が11:55分に上映される。無音のタイトル、無音のマンションとゴジラ・・・と、この辺りまでは意図的かな? と思っていた。しかし、亭主が書き物をしていて妻が出てきて、口がぱくぱくいっているに至って、音声に問題ありと気づく。さっさと受付にクレーム。しかし、既に誰かがクレームをつけていたか、取り込み中。「音が聞こえない。再上映だね、これじゃ」といって場内に戻る。しばらくして声が戻る。しかし、これで上映続行されたのではかなわない。もう一度受付に行って「止めて。場内を明るくして、再上映だね」と念を押す。で、その通りになった。場内が明るくなったのは12:05ぐらい。係りが「払い戻しに応じる」というアナウンス。これは素早い対応だったね。それから5分ほどして、上映再開となった。しかし、音声モニターぐらいしていてくれよな。
ザ・コンテンダー7/5渋谷東急2監督/ロッド・ルーリー脚本/ロッド・ルーリー
毎日36度なんていうクソ暑い今日この頃、映画館に入ってちょいと休憩しようか、なんていう向きにはオススメの1本。よ〜く眠れること請け合い。なんでこんな退屈な、分かりにくい、感動のない、スターの出ていないドラマが日本で公開されるのか理解不能。アカデミー賞ノミネートのせいかしら。「13デイズ」も同じだけれど、アメリカの行政組織や政治、政党のことを知らないと、からっきし面白くない。副大統領とはいかにして指名され選出されるのかとか、大統領の側近の役割はとか、大統領のライバルはとか、下院は上院は聴聞委員会は民主党は共和党はというのを知っているといないとでは雲泥の差。私は知らないので、途中から眠くなってしまって困った困った。しかも、かわいいお姉ちゃんもFBIの娘しかでてこない。しかも、メガネなどをかけてしまって色気もなにもない。せいぜい健康そうな歯茎が色っぽかった程度。もちろん裸は・・・この映画では重要なファクターとなっているけれど、保養になるようなものはでてこない。爆発もアクションもない。これは、辛いよ、2時間あまり。ジェフ・ブリッジスぐらいしか、私は知らないしねえ。でも、あのチンピラや蓮っ葉な兄ちゃんが似合ってた彼がアメリカ大統領を演っちまうってところが、驚きでもあり、隔世の感でもある。「夕日の群盗」「ラスト・ショー」「ラスト・アメリカンヒーロー」「サンダーボルト」とかね。しかし、恰幅よく齢を重ねて、大統領らしい風格まで身につけてしまって・・・。うむむ。
A.I.7/6上野東急監督/スティーブン・スピルバーグ脚本/スティーブン・スピルバーグ
おお。退屈で退屈で、瞼がくっつきそうになって、困った。最初の50分間は延々と屋内シーン。ここには何のドラマもない。と、おお捨てられるのか!? ドラマになってきたかな? と思ったが、「ピノキオ」のなぞり。しかも、SFシーンがありきたり。「エスケープフロムF.A」なんていう3流SFを連想してしまった。まるでスピルバーグのテイストは感じられない。ロボットを残酷に殺したり、なんか露骨だし。で、廃品ショーから抜け出してドクター・ノウ(声は、ロビン・ウィリアムズがやってんだね)の辺りで眠くなってきた。一向に面白くならないので、飽きてきたんだろう。13:05分からの回を見たんだけど、15分ぐらい前に隣の北京飯店で牛バラ角煮丼を腹一杯食べたので、そのせいもあるかも知れないが、映画が面白ければ眠気なんて発生しないんだってば。あとは、半ばうつらうつら。あああ。早く終わんねえかな、とばかり思っていた。ところが、だらだらとあのゆるゆるのテンポでいつまでもつづく。おまけのエピソードみたいな2000年後の世界では、そのまたおまけの話みたいなのがつづいて、もういいからさっさと終わってくれ、と身体をよじりながら見てました。んで。なにがいいたいんだ? 「愛を感じ表現するロボットは、人間に危害を加える恐れがあります」とでも、いいたかったんだろ、きっと。ラストもわかんなかったよ。涙を流すのは機能の一部なのか? 夢の国に行ったとは、機能を停止したということか? 不思議だったことといえば、住宅が日本の障子みたいな窓ガラスや欄間を持っていたこと。ロボットのバッテリーがなかなか切れないこと。スパゲティでショートしまくりだったのに、プールに落ちたりマンハッタンの海底深く落ちても平気だったこと。・・・まったく、とっても期待して見に行ったのに、面白さのつぼを外して、感情移入をさせてくれない、とても退屈でつまらない映画だ。
デンジャラスビューティー7/7渋谷東急監督/ドナルド・ピートリー脚本/マーク・ローレンス
ゴリラ顔のサンドラ・ブロック。実をいえば期待してなかった。けど、そこそこ面白かった、が感想。ラブ・ロマンスだの魔女物語だの、いっちゃなんだが任じゃない役柄で寄り道してきたサンドラ。でも、やっぱ「体育系の粗忽者」が似合うよ。口は半開き、鼻を鳴らす、自分で乳いじる。ほんと、脳味噌が筋肉って感じがぴったり。面目躍如本領発揮。というわけで、前半は面白かった。こういうがさつな女がレディに仕上げられていく。まるで「マイ・フェア・レディ」。仕上げるのは、マイケル・ケイン。ここに英国俳優をもってくるところなんか、そのものだよね。でも、わくわくするのもそこまで。ミス・コンの話になると、途端に面白くなくなった。ラストもちゃち。第一、犯罪を起こすミス・コンの女ドンとその息子っていうのが、なぜミス・アメリカを爆死させる必要があったのか、というところが弱い・・・というより、なってない。むちやくちゃいい加減。「ボディガード」なんて映画があったけど、ああいうリアルを追究してないんだもん。コメディだからしょうがない? そういうもんじゃないと思うけどねえ。そうだ。音楽は懐かしいところがたっぷり聴けて、なかなか楽しかった。

 
 

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